緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍と鎧武者

「オォオオオオオオ!!!!!!!!!!!!」

 

一毅は殺神(さつがみ)を抜くと飛び上がりながら振り下ろす。

 

「っ!」

 

無言で鎧武者は一毅の一撃を弾き返すとその体躯からは考えられない速さで切り返す。

 

「くっ!」

 

一毅は体を捻って直撃を避ける。平賀 あやからの新装備の龍桜(りゅうおう)は軽くて非常に高い防御能力を誇っており刀が振るわれたと言うのに切れずに叩かれたような痛みが走る。しかし、一応衝撃分散も入ってるが相手も腕力も高すぎるのだろう。かなり痛い。

 

「……………………」

 

鎧武者は斬れないと判断したのか次は首を狙う。

 

「くっ!」

 

一毅は横にスウェイで躱すと、

 

「二天一流 秘剣!霞ノ太刀!!!!」

 

回避と斬撃同時に行う牽制技……だが、鎧武者の鎧は固く一毅の放った斬撃を簡単に防ぐ。純粋な剣士としても相当な鎧武者だと言うのに生半可な剣撃では鎧を通らない。

 

「っ!」

 

そこに鎧武者の横凪ぎ一閃……それを一毅は後ろに跳んで躱す。

 

「っ!」

 

だが更に鎧武者は間合いを詰めて襲い掛かる。それを一毅は、

 

「二天一流……」

 

鎧武者の刀の振り下ろし……

 

「秘剣 閃ノ太刀!!!!」

 

攻撃が当たる瞬間にスレ違いながらカウンター斬りを叩き込む剣技で斬る……だが、

 

「っ!」

「なっ!」

 

今度は斬った……事実胴の半分ほど斬り込みが入ってる。なのに動いた。

動いて一毅を一閃。それを一毅は殺神(さつがみ)で防ぐがあまりのパワーを流しきれず壁に叩きつけられる。

 

「が……はぁ……」

 

世界が揺れる……歪む……グニャリと……不味い……鎧武者がこちらに歩み寄る。

 

「ぐぁ……」

 

気合いを込めて立ち上がる。龍桜(りゅうおう)のお陰か骨に異常はない。

 

「っ!」

 

鎧武者の振り上げを後ろ……は行けないため横に跳んで躱す。すると壁に刀突き刺した。

 

「おらぁ!」

 

その隙を突くため一毅は刀を振り上げる。だが、

 

「っ!」

「なにっ!」

 

腕力に任せて壁を斬り裂きながら一毅を狙う。

 

「くっ!」

 

急遽狙いを変更し防御に神経を注ぐ。

 

「がっ!」

 

再度凄まじい衝撃が一毅を襲う。

 

「ごほっ!」

 

一毅は何度もバウンドしながら吹っ飛ぶ。

 

「くっ……はぁ……ふぅ……はぁ……はぁ……」

 

一毅は意識を覚醒させるため何度も息を吐いたり吸ったりする。

そんな中でも鎧武者は歩みを止めない。

 

「っ!」

 

鎧武者が振り下ろすために刀を上にあげる……

 

(死ぬ……)

 

訳にいかない……ここで止まってられるほど……暇では……ない。

そう思った瞬間無意識に一毅の体が動き出す。

それと共に一毅の頭から全身に電撃が走ったような感覚が現れる……

 

「オォオオオオオオ!!!!!!!!!!!!」

 

鎧武者の振り下ろしに対して方膝を付いた一毅が放ったのは突き……しかもぶつけたのは刀にだ……するとなんと鎧武者の刀が折れた。

 

何故こんなことができたのか…それは二流以下の武器の多くは実はある一点だけ脆い部分が存在する。俗に破砕点や目と呼ばれるその部分を的確に突くと案外簡単に武器を壊せる。

その名も刃砕き(ソードブレイク)と呼ばれるその妙技はその単純な理論にたいし非常に高度な技術を要求される。

理由はほんの数ミリ擦れれば効果を発揮しないからだ……コンマ一秒でも遅れれば逆に斬られる。数ミリ外せば刀に当たらず斬られる。

そんな危なげな綱渡りを一毅はやり抜けた。

本能的に……無意識に体が動いた。

 

「二天一流!秘剣!!!!」

 

一毅は間合いを詰めると殺神(さつがみ)を構える。

この技は本来相手の剣を上空に打ち上げた状態で放つがそこは少し変えさせて貰う。その技の名は、

 

巻鳶斬(まきわしぎ)り!!!!」

 

三連続斬りを叩き込む。しかもそれは全て鎧の隙間を切り裂くように斬り飛ばす。

三分割にされた鎧武者は遂に後ろに倒れ動かなくなった。

 

「はぁ……はぁ……ん?」

 

一毅は鎧武者をマジマジと見る。

 

「あれ?何で何時の間に倒れてんだ?」

 

一毅の記憶が残ってるのは鎧武者が刀を振り上げたところまでだ。それ以降は記憶がなくなっている。

 

「………まあ、いいか」

 

一毅は殺神(さつがみ)を鞘に戻しながら頭を抑える。

記憶にはないが全身を駆け巡った不思議な感覚事態は覚えている……何だったのだろうかあれは……前々から起こってはいたが今回のは全身に駆け巡った上に力は恐らく最大級だった。

 

まあそのうち分かるだろうと一毅は先に進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて少し時間を戻しキンジとアリアの戦いは……

 

「ハァアアア!!!!!!!!」

 

アリアの銃撃は全て銃弾撃ち(ビリヤード)で弾く。

本来は鏡撃ち(ミラー)で一発決着をしたいが銃弾の威力がアリアの方が上だ……撃って逸らせてもこちらの銃弾も負けてしまう。

 

「まあ構わないけどな」

 

キンジはアリアに肉薄すると蹴り上げる。

それをアリアは簡単に躱しながら銃を構える。

だが発射される前に銃口からキンジはスウェイで外れる。

 

「くっ!」

 

アリアは困惑していた。

 

「この!」

 

アリアは小太刀を抜き振り上げる……が、

 

「はっ!」

 

振り上げた腕を掴み投げる。

 

「どうしたアリア。顔色が悪いぜ?」

「うるさい!」

 

アリアは受け身を取りながら銃弾を発射……だがキンジはそれを銃弾斬り(スプリット)で対処しながらキンジは距離を取る。

 

「アンタ……まだ隠し球を持ってたのね!」

 

アリアは叫ぶ。

先程からキンジの動きは良すぎるのだ。先程から全て攻め手は攻める前に潰される。まるでこちらの動きが読まれてるみたいに……

 

「残念だが使えるようになったのは今さっきだ」

 

とは言えオンオフができないが……と言う注釈が付くもののパトラの所に行く直前から感じた視界の違和感……それは一毅達の動きが二重に見えていたのだ。

それは時間を追うごとに強くなり最終的には重なっていた動きはハッキリと別の動きに変わった。

キンジの目には現在ハッキリと見えるアリアと別の動きをする薄く写るアリア二人が見えている。

つまりキンジには……

 

「教えてやるよアリア……俺はお前の動きを読んでるんじゃねぇ……見えてんだよ。凡そ五秒前後のお前の動きと現在の動きがな!」

 

キンジの言葉にアリアは耳を疑った。




次回、遂にキンジの力が語られます。

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