緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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金の兄弟喧嘩

「どういう意味だよ。兄さん!無法集団のイ・ウーで何をされたんだよ!」

「そう、イ・ウーは真の意味で無法……何を願っても良い。同時にどのような手を使っても許される」

「っ!」

「それを束ねているのが教授(プロフェシオン)だ。あの男でなければイ・ウーは束ねられないだろう。だが教授(プロフェシオン)にも寿命があった。そしてイ・ウーの人間は探したのだ……後継者を」

「それが……アリア?」

「そうだ。俺はイ・ウーを潰すために考えた。そして至ったのが同士討ち(フォーリングアウト)……アリアを消すことで仲間同士で潰し会わせる……これが第一の可能性だ」

 

そして……と金一は続けた。

 

「アリアが教授(プロフェシオン)を相棒と共に倒すこと……これが第二の可能性。だがパトラに遅れを取るような程度ではそれは無理だ。ならば俺は第一の可能性に戻る」

「待てよ……アリアを殺すのか!?あんた武偵だろ!」

「武偵であるまえに俺は遠山の義賊だ。大きなものを救うには小さなものを切り捨てなけてればならない事もある。お前もそろそろ知るべきだ」

「っ!」

 

キンジは歯を噛み締める。兄の言っていることは正しい。何も間違っていない。だが何かがキンジの心を締め付ける。それで良いのかと……

 

「さっき言ったように……犠牲はアリアだけで良い」

「っ!」

 

ブツンっとキンジの中で何かが切れた音がした。

 

「ふざけんなぁああああああ!!!!」

 

キンジはバタフライナイフを兄のいる船に刺し登る。

 

「あんたは自分を誤魔化してるんだ!本当に義を考えるならアリアも……誰も犠牲がでない方法を考えるべきだ!それが武偵だ!!!!」

 

金一がキンジを睨む。鬼検事(オルゴ)と呼ばれた父と同じ恐ろしい眼だ。

 

「これは百万回考え……百万回悩んだ上での答えだ。いい加減現実を考えろキンジ!!!!」

「百万回考えた?百万回悩んだ?違うね!あんたは考えたつもりになってるだけだ!!!!」

「っ!」

「俺は神崎 ホームズ アリアのパートナーだ!その覚悟は遊びでもなければふざけて名乗ってるわけでもねぇ!例え世界を敵にしたって俺はアリアの隣に居続ける。決めたんだ!協奏曲(デュエット)になるって」

 

キンジはホルスターからベレッタを抜く。

 

「兄さん……いや、元武偵庁特命武偵 遠山 金一!殺人未遂の現行犯で逮捕する」

 

金一はキンジを見据える。

 

「おまえのそのHSS……アリアでなったものか?」

「……ああ」

 

すると金一は両手をダラリとおろす……

 

「良いだろう。ならば見せてみろ。お前のアリアへの想いを……」

 

そう言った次の瞬間キンジの腹に銃声と共に痛みが走る。金一の得意技……不可視の銃弾(インヴィジビレ)だ……

 

「なぜ避けない」

「態と喰らったんだ……それくらい分かれ」

 

キンジはニィっと笑う。

 

「見えたぜ……その技の正体」

 

見ること叶わぬ銃撃……それが不可視の銃弾(インヴィジビレ)だ……だがその正体は単純。

 

「何であんたがコルトSAA何て言う美術館にありそうな銃を使うのか不思議だった」

 

精度や威力……リロードの早さだって自動式拳銃が上回る昨今……だがこの銃は……

 

「その銃は早撃ちに適した銃だ……その銃でヒステリアモードの反射神経を使って撃つ……これが不可視の銃弾(インヴィジビレ)の正体だ」

 

金一は瞳を閉じる。

 

「流石だな……だがキンジ。それがどうした。お前の使う技に不可視の銃弾(インヴィジビレ)を防ぐ手立てはない」

 

そう……そんな技はない。だが、

 

「……なに?」

 

金一は眼を見開く。何故ならキンジは銃を腰のホルスターに戻したのだ。構えは間違いなく不可視の銃弾(インヴィジビレ)……

 

「浅はかな……お前の銃は早撃ちに向かない」

「やってみなきゃ分かるまい」

 

風が吹く……まるで西部劇のように……

 

「やはり……兄を越える弟はいない!」

 

金一の不可視の銃弾(インヴィジビレ)が発射される……

確かに不可視の銃弾(インヴィジビレ)を破る技はない。

だが無理、疲れた、めんどくさい……この言葉を封じられているのだ。

 

(無ければ作る!それだけだ!!!!)

 

コンマ一秒後にキンジの銃弾が発射される。二発しかでない三点バーストで……

この新技は一発目の銃弾で弾き、二発目で相手の銃を撃ち抜く技……名付けて、

 

鏡撃ち(ミラー)!!!!)

「っ!」

 

金一は突然自分の銃が砕け散り驚愕した。だがそれだけでは終わらず、

 

「ウォオオオオオ!!!!!!!!!!!!」

「なに!?」

「シャアアアアア!!!!!!!!!!!!」

 

キンジは一気に間合いを詰め飛び上がると金一の顔に飛び蹴りを叩き込んだ。

 

「がっ!」

「立てよ……」

 

銃が壊れたから俺の勝ちだ決着です……何て言う喧嘩は遠山はしない……きっちり決着を着けなければいけないのだ……

 

「俺の不意打ち一発で倒れるような柔な鍛え方してないんだろ?」

「……ふ、そうだな」

 

金一も立ち上がる。

 

「覚えてるか?俺とお前……今まで何回喧嘩したか……」

「ああ、99戦中99敗……これで丁度100戦目だ。そして今回は区切りも良い……だから……」

 

初勝利を頂こう。

 

「ああ、今回で100勝目だ……丁度区切りも良くてスッキリする」

 

だから今回も勝たせて貰おう。

 

「後悔するなよ……キンジ」

「あんたこそ……何時までも餓鬼だと思ってると痛い目に遭うぜ?」

 

キンジと金一は自分の服の肩の部分をつかむとバッ!と上に来ていた服を脱ぎ捨てた。これからやるのはただの喧嘩だ……防弾繊維の支給されたスーツなど要らない。

少し暑くなった気温が二人のさらけ出された上半身を包む。

 

「いくぞぉおおおお!!!!キンジぃいいいいいいいい!!!!!!!!」

「いくぞぉおおおお!!!!金一ちぃいいいいいいいい!!!!!!!!」

 

二人のハイキックのぶつかった音が開始の合図とばかりに響いた。

 

 

 

 

「シャ!」

「っ!」

 

キンジの掬い蹴りを金一は跳んで躱しながらキンジに先程のお返しとばかりに蹴りを叩き込む。

 

「ぐっ!」

「ふん!」

 

更に連続蹴りがキンジを狙う。

 

「くぉおおおお!」

 

キンジも蹴りの応酬で対抗する。

 

『オッシャア!』

 

更に同時に蹴りの軸足にローキックを打ち込んだ。

 

「くっ!」

「ちぃ!」

 

だがキンジも金一もそのまま蹴った脚を一度戻しそのまま相手の横顔に蹴りを入れる。

 

『がは……』

 

キンジと金一は横にふらつく。

 

「うぉら!」

 

金一の脇腹を狙うミドルキック……

 

「シャ!」

 

それを脛で受け押し返すと逆に蹴り飛ばす。

 

「ぐっ!」

 

そして間合いを詰めると、キンジの体から深紅のオーラ(レッドヒート)……そして其処から放たれるのは、

 

「エアストライク!!!!」

 

ガン!っとキンジのバック転蹴りが金一を打ち上げる。そして更に追撃すべくキンジも跳ぶが……

 

「おぉおおらぁあああ!!!!」

 

瞬時に体勢を立て直し金一は蹴りを放つ。

 

「っ!」

 

空中でキンジと金一の蹴りがぶつかり合う。

 

「ぐぁ!」

 

キンジは咄嗟に受け身を取りつつも落ちた。

エアストライク……再び破れたり……である。

 

(重い敵や俺と同じく身軽な相手には嵌められないって感じだな)

 

キンジは立ち上がると金一を見据える。エアストライクが破られた程度で勝利を捨てるような必要はない。

 

『……………』

 

トントントンっと軽く二人はその場に跳んでリズムを刻む。

 

「強くなったな」

「まぁな……」

 

キンジは脚に力を込める。

 

「シャ!」

「ルゥア!!!!」

 

ゴッ!と二人の後ろ回し蹴りがぶつかる。

 

「オオ……」

「ぬぅ……」

 

二人が押し合う……

 

「オオオオ……」

「ぬぅうう……」

 

ググ……と金一は僅かに押すが押し返される。

 

「オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!」

「ぬぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

キンジの体から再度深紅のオーラ(レッドヒート)が溢れだすと金一を押し飛ばした。

エアストライクは通じない……だが前から構想だけは出来ていた新たな技……一毅で言う絶技に該当する技をキンジはぶっつけ本番で行うことにした。

 

「勝機!!!!」

 

キンジのハイキックが金一に決まる。

 

「ぶっ!」

「はぁ!」

 

更にミドルキック……

 

「ヨッシャ!!!!」

 

飛び上がり右足と左足の連続蹴り……

 

「ウッシャ!」

 

更に降りると最初とは逆の足でのミドルとハイの蹴り叩き込むとキンジは一瞬腰を落とす。

これで終わり……深紅のオーラ(レッドヒート)で超強化された蹴りを連続で叩き込み最後に強烈な一撃をブチ込むキンジの絶技……その蹴りの連撃は相手に自分への勝利と言う夢すら破壊する。名付けて、

 

「ファンタジスタブレイク!!!!!!!!」

 

キンジは飛び上がると回転……遠心力とレッドヒートの超強化、そして元からの破壊力などを味方につけた渾身の踵落としを金一の頬に叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

キンジは立ったまま荒く息を整えながら金一を見下ろす。

 

「本当に……強くなったな」

「……兄さん……ごめん」

 

分かっている……こんなの我が儘だってことは……でも……

 

「分かっている……そんな器用にお前は生きられない。まるで父さんのようだ」

「え?」

「傷つきながら戦って……現実を知ってもそれに準ずることができなくて……」

 

金一は笑う。

 

「俺はお前が羨ましいよ。自分の思ったことに誰もが疑問を持つ。だがお前は自分を信じて決めた意思を貫こうとする」

「……馬鹿な親友がいたから馬鹿が伝染ったんだよ」

 

キンジは服を着ると、

 

「俺はまだ……走ってみるよ」

 

そう言ってボートにのって行った。

 

「全く……どんなバカに育ったもんだ」

 

金一はどこか晴れやかな顔で言った……

 

 

 

 

 

 

 

 

キンジはその後車輛(ロジ)のドックに来た。

一毅からその後連絡が来たのだ。

 

「皆……」

 

キンジが来ると、

 

「事情は知ってる。行けるか?」

「おう!」

「でもどうしたんですかその顔」

 

辰正が見てくる。確かにキンジは先程の蹴り合いで顔が結構腫れていた。

 

「ちょっとな」

 

すると眼帯を着けた理子が来た。

 

「アリアの場所がわかったよ」

「どうした?その顔」

「パトラにやられたのだ」

 

其処に松葉杖を着いたジャンヌと包帯とギブスの白雪が来た。

 

「スカラベっていう虫に憑かれちゃったの」

「虫……」

 

そう言えばアリアにも虫がくっついた……それでか……

 

「さて、行くんだな」

「当たり前だろ」

 

キンジがそう言うと背後の潜水艦の入り口が開いた。

 

「ん?キンジも来てたのか」

「武藤!」

「僕もいるよ」

 

中から不知火も出てきた。

 

「何で……」

「ま、何かお前らがヤバイ事件に巻き込まれてるのは知ってたからな。俺たちにできるのはこの潜水艦を動けるようにすることだけだ」

「仲間を信じ仲間を助けよだから。何に巻き込まれてるか分からないけど絶対に殉職しないでね」

「二人とも……」

 

すると、

 

「あやや!あやや!」

「平賀さん?」

 

其処に合法ロリ改め平賀さんがやって来た。

 

「ふぃ~疲れたのだ」

「どうしたんだ?」

 

一毅がいくと、

 

「何かヤバイ事件に巻き込まれてると聞いてお得意様の遠山くんと桐生くんに新装備をあげにきました!」

『なに!?』

 

キンジと一毅がそれを見る。

見てみれば……ロングコート?

 

「ついさっき完成したばかりでどれくらい使えるのか未知数だけど絶対に役立ちますのだ」

「用は俺たちでテストか?」

「まあそうとも言えますのだ。だから絶対帰ってきてほしいのだ」

 

平賀なりのエールと言うところだろう。

 

「で?これは?」

「最近完成した新繊維、【AYAYA】で作ったロングコートですのだ。防弾防刃耐衝撃性に優れ、更に暑いときは涼しく、寒いときは暖かくなるようになってますのだ。ちゃんと防炎加工や絶縁機能も完備、これ一着であらゆる状況に対応できますのだ」

「へぇ~。名前は?」

「【龍桜(りゅうおう)】ですのだ」

龍桜(りゅうおう)……か』

「因みにこっちが桐生くんの、こっちが遠山くんのですのだ」

 

そう言ってキンジには縹色の龍桜(りゅうおう)を……一毅には銀色の龍桜(りゅうおう)を渡された。

 

「ん?」

 

そして気づいたがこれ……背中にそれぞれ刺繍がある。

例えばキンジには背中に桜の木の刺繍で右腕にかけて桜の葉が舞い散っている。

そして一毅には背中に巨大な龍の刺繍……恐らく王龍と呼ばれる龍だ。

 

「派手だなぁ」

 

キンジが眉を寄せる。

 

「遠山くんの先祖に合わせてみました!」

 

これ最初からあげる予定だったんじゃ……と思ったが其処は敢えて突っ込まない。

 

「ありがとな。で?誰がいく?」

「うん、本当は超能力者(ステルス)が居るから私が行きたかったんだけどこの腕じゃ足手まといになる。だから行くのはキンちゃんとカズちゃんと……」

「私たちもいきます!」

『っ!』

 

其処に間宮たちも来た。

 

「おい、遊びに行くわけでもないし何より今から行くのは大規模な戦闘が前提だ。お前らじゃ……」

「でもアリア先輩ほっとけません!なにもしないで待つなんて嫌です!!!!」

 

間宮に言われキンジは弱る。

 

「まあ、前回のような砂鉄人形(ゴーレム)が大量に出た場合人数はある程度いた方がいいとも思いますが?」

「レキ……」

 

レキもフル装備で入ってきた。

 

「……わかったよ。但しお前ら絶対前に出るな。パトラとは俺が戦う。後、島は絶対だめだ」

「分かってますの……」

 

一毅が言うと間宮たちも頷く。

島も不承不承といった感じだが自分では戦闘には完全に役に立たないことを分かってるため了解した。

 

「良いのかよ」

「来んなって言っても聞くやつらじゃねぇだろ」

 

キンジと一毅はボソボソ二人で話す。確かに言うことを大人しく聞いてくれるような奴等ではない。

 

「仕方ない……お前ら!俺たちはこれからアリアの救出にいく!準備は良いな!」

『はい!』

「おう!」

 

キンジが言うと皆は返事した。時々リーダー能力の高いやつである。

そしてキンジと一毅が龍桜(りゅうおう)を着ると皆は潜水艦に乗り込んだ。


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