緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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第四章 落ちこぼれの大泥棒
龍と新たな騒動の開幕


「ふん!はぁ!」

 

一毅は殺神(さつがみ)振り下ろし素早く切り返すと振り上げる。

その周りには自然とギャラリーができていた。

あらゆる物を切り裂く剛剣の体現…だが同時に体にはまるで鉄の棒が一本入っているかのように真っ直ぐで人の目を引き付ける。

おおよそ齢16、7でたどり着けるような領域ではない。まさしく超人的だ…

あまり強襲科練に顔を出すことは少ない一毅だがここには器具もあるし何より広い。一応一毅の部屋にもトレーニングルームと称した部屋がありそこにも色々器具はあるがこっちの方が種類は豊富だ。

とは言え桐生の一族全てに言えることだがあまり一毅は自分の強さの研磨は余りしない。同時に鈍ると言うこともないと言うのが不思議なのだが特異体質なのか桐生の一族は特別な訓練を毎日続けているわけではないのに年を重ねると勝手に強くなっていく節がある。無論絶対鈍らないと言うわけではないためある程度の特訓は必要だがそれ以上にどうも戦いとかの巻き込まれやすい体質らしく下手な訓練より一度の命がけの激戦が桐生を強くする。

一毅もその例に漏れず剣筋の鋭さは宝蔵院、ジャンヌ・ダルクと続いた戦いの中でまるで野生の獣が自ら牙を磨かず…狩りの中でのみその強さが磨かれて行くように鋭くなっていた。

 

「ウッラァ!」

 

床がドン!っと言う音と共に震動し一毅の手にある殺神(さつがみ)の横一文字一閃…そこから残心を行い息を着くと鞘にしまう。

とは言えこれはいわば準備…本当の相手は今来た。

 

「待たせたわね」

「はぁ…」

 

一毅がアリアを相手に溜め息を吐く羽目になったのは少し時間が先上る。

 

 

 

 

 

前回の一件でライカが一毅の部屋に住み着いて早くも3日…だが3日もすれば皆分かる。

 

「それでなんですけどね一毅先輩」

「と言うことがありましてね一毅さん」

 

気分は聖徳太子だ…二人の言葉を一言一句逃さず一毅は聞き取る。

下手な戦いより集中する。

 

「あら、一毅たちも来てたの」

 

そこにアリアとあかりと辰正も来ていた。

 

「全く、あんたもキンジの幼馴染みだけはあるタラシっぷりね」

「あれと同列ってのは勘弁して欲しいがまあ反論はしない」

 

すると一毅は周りを見る。

 

「あれ?キンジは?」

「どっか行ったわ」

 

アリアが特に気にしてないと言うことはあまり気にしなくてもいいのだろう。

その為一毅はメニューを注文し席に着くとその場の流れで皆と食べることになる。

 

「そう言えばレキ以外全員強襲科(アサルト)ね」

「そうですね」

「でもSランクが半分も居るんですね…何気にすごい状況ですよ」

 

アリアと一毅とレキ…この三人は特にこの東京武偵高校内でも有名なSランクだ…

 

「そう言えばそうでしたね…でも…」

 

辰正の言葉が今回の事件を引き起こす。

 

「アリア先輩と一毅先輩ってどっちが強いんですか?」

『そりゃあ【一毅】【アリア】先輩』

 

あかりとライカの声がハモった。

 

「おいおいあかりと、一毅先輩の方が絶対強いぞ?」

「ライカ…惚れた弱味かなんか知らないけど絶対アリア先輩だよ」

 

バチバチと二人の間で火花が散る。

 

「どっちが強くたって良いだろ…」

「でも面白いんじゃないかしら?」

「え?」

 

アリアが笑みを浮かべながら立つ。

 

「一毅、今日の五時間目に強襲科練で勝負しましょ?ノックアウト制降参アリ…のね」

「はぁ?」

「私あんたとは戦ったことがないのよ。丁度良いわ」

「マジかよ…」

 

ちなみにその間レキは完全に音楽の世界にいた…最近はなぜか演歌を聞いている。

 

 

 

 

 

 

拒否権等あるはずもなく一毅は引きずり出された。因みにどっちが勝つか賭けまで行われている。

オッズとしては僅かに遠近共に成績がいいアリアが勝っている。

確かに一毅は銃も上手いがアリアと比べれば劣る。

どちらかと言うと一毅の才能は剣術寄りだ。

そうやって考えるとアリアは銃も刀も無手も出来るオールラウンダー…対する一毅は普段の任務では基本的にレキに遠距離は任せてあとは近距離の相手をすることが多い。接近戦では強いが離れられたら…と思うものは多いだろう。だが二天一流は戦国時代から端を発しずっと両手に一振りずつ刀を持ち…背中に三本目の刀をもってその身一つで戦ってきた…気後れなどない…ただ一つは問題があるとすれば…

 

(アリアって女なんだよな…)

 

極力女性相手に刀を抜きたくない…だが抜かずに勝てるか…と言われたら難しいと言うのが本音だ。

アリア相手に遠慮や手加減…等いったものを持っていては勝てない相手だ。とは言えわざと負けても怒るだろう…それに幾ら女相手とは言えこんな状況で態々負けてやるような紳士的な人間でもない。

 

「おら!並ばんかい!!!!」

 

蘭豹の声で現実に戻される。

まあなるようにしかならないだろう。

そう思いながら一毅は軽く腕を回し首をコキリと鳴らす。

 

「手加減抜きよ」

「むしろ俺を本気にさせてみな」

 

アリアは銃二丁を…一毅は拳を構える…

 

「うらぁ!」

 

先手は一毅…だがそれを直感で予測したアリアは下がりながら銃を撃つ。

 

「ちっ!」

 

一毅はスウェイで躱し更に二発目を…

 

「二天一流 拳技!達磨避け!!!!」

 

スウェイから更に転がって避ける回避技で銃弾を避けるがアリアは構わず正確無比な銃撃で一毅を狙う。

 

「なめんなよ!」

 

一毅は躱しながらアリアに肉薄すると、

 

「二天一流 拳技!煉獄掌!!!!」

 

アリアに向けて掌打を放つが、アリアはそれを伏せて躱すと一毅の顎に向けアッパーを繰り出す。

 

「っ!」

 

一毅はそれを後ろへのスウェイで躱すがアリアは小太刀を抜いて追撃する。

 

「しぃ!」

 

一毅はそれを体を逸らして躱す。

しかしアリアはしゃがみながら一毅の足を狙う。だがそれを一毅はバック転で避けると二人は一度止まる。

 

「お前…なんで俺の避ける方向が分かるんだよ…」

「勘よ」

「ずるいな!」

 

勘で全部行き先バレるとか狡すぎる。

 

「あんただって結構身軽じゃない」

「キンジほどじゃない」

 

空は飛べないからな等と考えながら一毅は考える。

 

(さて…やっぱりつぇえな…マジでやってるってのに少しの気の緩みが敗けになりそうだ…)

「悩んでる場合じゃないわよ!」

 

アリアは一気に間合いを詰める。

 

「くっ!」

 

一毅はアリアの二刀流を躱していくがアリアの方が僅かに読みが早い。

 

「はぁ!」

 

アリアは回転しながらs瞬時に一毅の死角に入る。

 

「やあ!!!!」

 

普通ならばこれで終わる…一毅は死角に一瞬で入られたためアリアを追いきれていない。

このまま一毅の後頭部に入れて終わる…はずだった。

 

「うぉおおおおお!!!!」

「なっ!」

 

一毅はアリアの一撃を頭を下げるだけで躱すとアリアの刀を真剣白羽取りで取ると…

 

「二天一流 拳技…無刀転生!!!!」

 

刀を相手から奪う二天一流の技でアリアを投げながら刀を奪うとアリアに突きつける…だがアリアも空中で体制を戻すと一毅の腹部に刀を突き付けていた。

 

「引き分け…だな」

「どうかしらね。私はあんたに刀を抜かせてないわ」

「まあ、その辺は勘弁してくれ。どうしても抜かせたいなら俺を殺しに来いよ。そしたら俺も死にたくないから全力だぞ?」

「嫌よ。それにしても…あんた今すごかったわね」

「ん?ああ…」

 

アリアの死角からの一撃…今までならあそこからで終わったが…と言うかこちらとしては無刀転生でアリアに刀を突きつけてからアリアは死角から攻撃したことに気づいたのだ。その間…一瞬意識が飛んだ…全く記憶になかった…

頭がピリッとした後からない…不思議な感覚だ…

 

「やあお疲れ」

 

そこにペットボトルが投げられた。

 

「不知火」

「流石Sランクがぶつかると迫力があるね」

 

不知火は柔和な笑みを浮かべる。そこに、

 

「一毅さんお疲れさまです」

「イヤー凄かったですね。あのとき躱したときの一毅先輩すごい速度でしたよ」

「でもやっぱりアリア先輩もすごいです!」

「すいません俺が要らん事言ったせいで…」

 

労われてから立ち上がると、

 

「そう言えば桐生くん火野さんとも住んでるんだって?よくレキさんが許したね」

「色々あってな…」

「まあ良いと思うよ。火野さんが桐生くん好きなの皆知ってたしね」

「……え?」

「気づいてなかったのあんただけよ?」

 

アリアに言われて一毅は更に落ち込んだ。

 

「でも気を付けるんだよ?レキさんと付き合ってるってだけでも桐生くん睨まれてたのに更に火野さんだからね」

「どういう事だ?」

「いやぁ、最近男子の火野さんを見る目が変わってきたところだったからね」

 

不知火が言うにはライカは一毅と一緒の時はどこか女性的で用は恋する乙女になっていて男子たちも最初は女男と馬鹿にしていたが段々男子の視線が変わってきていたらしい。だがそこに前回の一騒動で一毅に取られて男子たちは「あんなデカ女が化けるなんて反則だ。分かってれば先輩にみすみす渡さなかったのに!」という男子が大勢たらしい。

 

「まあ火野さんを可愛くさせたのはいろんな意味で桐生くんのお陰だしね。そういう深い所を気づけなかった彼らが悪いんだし気にしなくても良いと思うよ」

 

すると不知火はまた少し笑い、

 

「でもレキさん含めて一毅くんは女の子の魅力を引き出すのが得意だね」

「?」

 

一毅としてはレキもライカも元々かわいいと思っているのだが…

 

「レキさんは何て言うか…表情が出たよね?始めてみた頃は本当にロボットみたいで焼き餅とかからは無縁だっただろう?」

「まあ…確かに」

「火野さんは女の子らしいところができたし君も遠山くんに負けず劣らずの女の子泣かせだね」

「アレよりはマシだと思うが…」

「五十歩百歩って言葉知ってる?」

 

すると何かを思い出したような顔になり、

 

「そう言えばさっき遠山くんものすごい人数に追い掛けられてたけど何かあったの?」

『え?』

 

その場の全員が固まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃キンジは全速力で走っていた…

 

『トオヤマァアアアアアアアアア!!!!(タマ)取ったらァアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

「何でだぁあああああああ!!!!」

 

キンジは叫ぶ。相手は追い掛けてきてるのは強襲科(アサルト)諜報科(レザド)…更に遠距離から狙撃科(スナイプ)から狙撃され装甲車を乗り回す車輛科(ロジ)がしつこく、折角隠れても情報科(インフォルマ)が見つけ出して来るので息つく暇もない。

 

「待ちやがれぇええええええキンジィイイイイイイイ!!!!」

「むとぉおおおおおおお!!!!てめぇ!装甲車で俺を轢き殺すきか!!!!」

「てめぇこそ神崎だけに飽きたらず星伽さんとまで同居とかうらやま…じゃなかった!なに考えてやがる!轢いてやる!」

「くそ!」

 

遮蔽物のないこの場所では不利のためビルに飛び込む。

 

「待てキンジィイイイイイイイ!!!!」

 

武藤の叫び声が聞こえるがキンジは無視してかけ上がる。

だが強襲科(アサルト)諜報科(レザド)もかけ上がってきた。この二つは普段から鍛えてるし逃げてるものを追うのは十八番だろう。

 

「しつけぇんだよ!」

 

二ヶ月ほど前にはセグウェイに追いかけられたし今度はこの人数にかなりマジで殺されそうだ…

と言うか白雪もアリアも無理矢理住み着いたのになんでこんな目に会わなけれならないのだろう…別に一度も住んでくれとは言ってない…

だがそれを言ったら更に怒りを買ったのは言うまでもない。

とは言え何時までこんな大勢の人間とチェイスバトルをしなければならないのだろう…

 

「しねぇ!遠山!!!!」

 

追い付かれそうになるがキンジは伏せて躱すと顎に蹴りを打ち込む。

 

「うが!」

「ちっ!」

 

キンジはビルの縁に足をかけると思いきり飛ぶ。

 

「くっ!」

 

転がって受け身を取ると後ろを見る。

 

『くっそぉおおおお!!!!』

 

追いかけてきた方は思いきりが足りなかったらしく自他んだを踏んでいる。

 

「じゃあな!」

 

キンジは走り出した。

 

 

 

 

 

 

「ぷはぁ…」

 

キンジは寮の部屋に入るとソファに横たわる。

人工埠頭を縦横無尽に走って逃げ続けたため全身が疲労している。

喉も乾いたがアリアは一毅と模擬戦とかすると言ってたし白雪は合宿に行った…誰もいないから自分でやるしかないだろう。

だが動くのもだるい…

 

「はい、お茶」

「あ、悪いな」

 

キンジは飲む。

 

(ん?)

 

なんでお茶が出てきたんだ?

 

「相変わらずトラブルに巻き込まれてるねぇ…」

「ぶふ!」

 

キンジはお茶を吹いた…なぜなら目の前に…

 

「久し振り~」

 

金髪を夕日で反射させ、その小さな体からは想像もつかない胸の大きさ…今は童顔の少女だが将来絶対妖艶な美人になると思う少女…

するといきなりキンジを押し倒してきた。

 

「キー君…」

 

元クラスメイトにしてイ・ウー構成員…そしてついこの間起きた飛行機ジャック事件の主犯でキンジと戦ったばかりの少女…

 

「理子…」


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