緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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大分更新に間が空きましたが更新やめたわけじゃないんです。すいません。

もう少しこっちも定期的に更新せねば……


龍と秘密

「俺を殺すため?」

「はい」

 

レキの言葉に、一毅は不思議なくらい冷静だった。寧ろ納得すらしている自分がいる。

 

「理由を聞いてもいいか?」

「風は……璃璃神は17年前、日本に新たな桐生が生まれたのを感じました。強く、強靭で何よりも歴代でもトップクラスの狂気を持った桐生。それが貴方です」

 

レキは珍しく饒舌に喋り始め、そのまま言葉を続けた。

 

「危険でした。遙か昔狂気に呑まれ、当時の遠山と星伽に討ち取られた桐生よりも遥かに一毅さんは強かった。まぁ飽くまでも才能では、ですけどね。まだ赤ん坊でしたし」

 

何てジョークを挟みつつ、レキはまた言葉を続ける。

 

「だから今度こそ、風は我らウルスと桐生との誓いを果たすため、私は一毅さんに近づきました」

「ウルスと桐生の誓い?」

 

それには一毅は驚く。無理もないだろう。ウルスと桐生の間に交流はないはずだ。父もレキを見ても何も反応しなかった。

 

しかしレキはそんな一毅の心中を察したのか、

 

「一明さんも知りませんよ。この誓いは昔、桐生が桐生ではなく、別の名前を名乗っていた頃の誓いですから」

 

別の名前?と一毅が呟くと、

 

「私の先祖はチンギス・ハン。ですがその前に名乗っていた名前があります。それは源義経」

 

それは知っていた。レキと初めて会った頃、光一に調べてもらった。そう言えば、レキには言ってなかった気がする。

 

「源義経は、昔一人の鬼と出会いました。その名は武蔵坊弁慶。突出した強さを持ち、男へと変化した緋鬼の一人。その鬼は武を振るう理由を探していて、ならば自分がその理由になるといった義経は、弁慶と共に暴れ回りました。暴れて戦いながら、友を作り、愛する家族を作っていきます。しかしある時、義経は裏切りに会い、弁慶は義経を……そして家族を逃がすために一人戦い、その命を散らした。その後、義経は弁慶の妻とその間に生まれた双子の子を連れ、星伽に助力を願い、海外に逃れました。しかし、双子の片割れが一人日本に残ると言い、行方をくらまします。理由は父の敵討ち。いえ、それは正しくありませんね。彼は父から鬼の狂気を強く継いでおり、それに伴い強さへの欲が強かった。何れ父を超えてみせると常々思っていたようです。ですがその目的を奪われ、その子供は新たな目的を求め飛び出しました。そしてもう一人の子供は母に着いていき、共にチンギス・ハンと名乗った義経と共に戦う中、彼も妻を娶り、子を成します」

 

そして50年後、物語は動き出します。そうレキは続け、

 

「50年後。海を超え星伽から連絡が入りました。もう一人の双子が見つかったと。しかしそれは喜べる内容ではありませんでした。一人孤独に強さを求めた片割れは、遂に国を壊そうとします。父を殺した国を壊せば、それは父を超えたことになると言いながら、恐るべきは当時もう70近い老人だったこと。ですが緋鬼の血を濃く受け継いだ影響か老化速度が遅く、肉体強度は未だ全盛期。そんな彼がたった一人で起こし、国を大混乱させた戦い。たった一人にこんな自体を起こされた。と記すのが恥ずかしかったのか、当時の国はそれを【寛喜の飢饉】と記して事実とは異なる事を歴史としたようですがね」

 

まぁ、当時の星伽も情報操作にはかなり関与していた様ですが、とレキは言うと、少し喉が渇いたのか水を口に含む。

 

「レキ。何故白雪……じゃない、星伽はそこまで力を貸したんだ?」

「星伽は古来から色金の研究をしてきた一族です。その際緋鬼も知ったのでしょう。そのため義経のため、と言うより弁慶を気にしていたようです。義経の逃亡の手伝いは、弁慶への義理が大きかったと聞いてます。今で言うなら、弁慶や子供達は貴重なサンプルでありモルモットでもあった様ですからね」

 

色々あったみたいですよ。とだけレキは言う。少なくとも、義経が最後に星伽を頼る程度には信頼があったようだが、色々あったらしい。

 

「とはいえ、モンゴルへの逃亡も星伽に仕組まれてたようですがね。当時の星詠みで義経たちをここに逃がせと出ていたみたいで、当時の巫女たちはそれに従っていただけみたいです。恐らく璃璃色金の存在に気付いていたのでしょうし、その辺りが関係してると思われますが、その辺りは聞いていないのでわかりません」

 

なるほどね、と一毅は頷き、

 

「話を遮って済まない。続けてくれ」

「はい。そしてその知らせを受けた母親について行った方の子供……と言っても、彼も緋鬼の血の影響で若々しかったようですが、それでも70近い老人だった彼は日本に戻り、星伽の案内で双子は再会し、その直後に殺し合いに発展。両者引くことの無かったそうです。日本に残った方は勿論1人武を磨き、母親について言った方も長い間戦場で磨いたその武は引けを取らず、戦いは10日続いて最終的に、日本に残った方の死亡によって決着。ただ生き残った方も瀕死の重傷を負い、治療と療養のため日本で3年程過ごした後に、国に帰ったそうです」

 

成程、と一毅は頷く。しかしまだウルスと桐生の関係がはっきりしない。と思っていると、

 

「ですが、その3年の間に当時案内をしてくれた星伽の人間とも恋仲になってたようで、彼女は妊娠してたようです。勿論共にウルスに連れて帰ろうとしましたが、彼女はそれを拒否。厳密には星伽がそれを拒否ですね。何せ彼女が孕んだ子供は緋鬼の血を引く者です。ましてや星伽の力も持った子供となれば、まぁ手放せないでしょうね」

 

勿論身柄の取り合いで、あわや戦争に……となったところで、とレキは続け、

 

「彼女は日本に残ることにしたそうです。色々思惑があったのかもしれませんが、星伽と争うのを良しとしなかったのが大きかったようです。そして別れの際、二人は約束しました。もしこの子供が、緋鬼の強さだけではなく、狂気まで色濃く受け継ぎ、日本に残っ片割れのようになったら、この子がそうならずとも、もしこの先そのような者が産まれたら、殺してでも止めてほしいと。そう誓い、ウルスに彼は帰り、女性はその後出産。しかし、子供は緋鬼の血を引いた証である髪色も瞳の色も受け継げず、かと言って星伽の力も使えない。謂わば欠陥品でした。星伽は失望し、女性と子供は半ば追い出される形で家を出ました。その後は星伽の影響を受けない片田舎に住み着き、そこで出会った女性と子供は結婚し、血は脈々と受け継がれていき、その一人がこう名乗りました」

 

宮本 武蔵とね。とレキは一毅の目を見ながら言い切った。

 

「一方。ウルスに帰った後。男も長生きして後に死んだあとも、その血は受け継がれていきました。ですがその中で、璃璃色金の意思によってウルスは剣を持たなくなっていきました。璃璃色金は無を好む。肉を斬り、血を浴びて高揚する剣は、謂わば相容れぬもの。そして同時に自分たちの中にある狂気を抑え、鎮めるには剣を捨てるしかなかった。そうして長い時を経て、自らを否定し続け、狂気を少しずつ削ぎ落とし続けた。そして同時に、もし日本でまた同じ事態が起きたときに、どうすれば倒せるか考えていました。何せ自分たちは剣を捨てることで狂気を捨てた。それに対し、日本にいる方は、狂気を捨てていない。狂気を内包しつつ、それを飼い慣らすわけでもなく、どちらにでも転びかねない危険な均衡を保ちつついた。そこで生まれたのが狙撃術です。昔は弓矢でしたが、それを用いた遠距離戦術。それを編み出し、私達は剣から弓矢に、そして狙撃銃と心を殺し、更に外から優秀な遺伝子を取り込み続けることで有事の際に桐生に対抗する道を選んだ」

「そうだったのか……ん?」

 

待てよ、と一毅は首を傾げ、

 

「つまりだ。俺とレキ……と言うかウルスはその弁慶の子孫なのか?義経じゃなくて」

「いえ、何せその男の嫁というのは、チンギス・ハンの娘です。さっきも言ったように緋鬼の血のせいで寿命が長かったようで、結構あっちこっちの女性に手を出してたらしいですよ?その中にはチンギス・ハンの縁者何かも結構いたそうです。そのせいで、現在のウルスの大半は家系図を辿っていくと何処かにその男の名前が載ってます。何せウルスを何世代にも渡って見守っていたそうですからね」

 

なんてことを聞きながら一毅は思わず感心しつつ、

 

「そりゃ随分長生きしたんだな」

「大体個人差はあれど4世代目位までは緋鬼の血の影響で比較的長生きだった様です。まぁ星伽との間の子供には、殆どそういった影響も無く、当時としてはガタイがよく身体能力が常人と比べて優れてる程度だった様ですが、宮本 武蔵の代で覚醒して以降は、それぞれの代で多少の上下はあれど、その力と狂気を取り戻したようです。寿命は人間基準ですがね」

 

レキは椅子に腰を下ろし、一毅の目を見つめた。

 

「この辺りが私が璃璃色金に選ばれ、璃巫女となってから教えられた歴史です」

 

一毅は腕を組んで息を吐き、

 

「幾つか聞かせてもらっていいか?」

「いいですよ」

「じゃあ最初になんだけど、確か歴代の桐生に居たんだよな?狂気に呑まれた奴が」

「はい」

「その時にはウルスは動かなかったのか?」

「正直に言うと、侮っていました。所詮は既に何世代にも渡って緋鬼の血は薄まり、そこまで危険性はない。と考えていたんです。ウルスが実際そうで、その頃にはウルスも殆ど人間と変わりませんでしたからね。幾ら自分達のように緋鬼の力を否定していなかったとしても、宮本 武蔵のように完全に覚醒してるわけでもなく、更に言うと、当代の桐生はそこまで狂気が生まれつき強いわけではなく、後天的に様々な事件に巻き込まれることで歪んだと聞いてます。後は当時のウルスも色々ゴタゴタしてたらしいです」

 

だから今回は万全を期してレキが来たと?と一毅が問うと、レキは首を振り、

 

「それも無関係ではありません。ですが今回はそれだけではありませんでした。璃璃色金は感じていたんです。近い将来。緋緋色金が目覚め、緋緋神が降臨する気配を。緋緋神は恋と戦の神。戦いを求め、血と肉を求める狂気に支配された桐生とは引き合う運命にあった。ましてや歴代でもトップクラスの狂気を持っていた一毅さんは、緋緋神に惹かれ、共に戦う未来もあった。そうなれば日本だけじゃない。世界中にとっての驚異。だから璃璃色金は私を選んだ。一毅さんと同じ年だった私は、生まれたときから璃璃色金と共に過ごし、いざという時を差し違えてでも貴方を殺す一発の弾丸として育てられたのです。それがプランA」

「プランA?」

 

まだあるのか?と一毅が疑問符を浮かべると、

 

「私が作戦中に命を落とした場合、ウルスから引き継ぎ役の人間が送られる予定でした。それがBです。飽くまでもまだ一毅さんと私が出会った頃は、観察対象でしたから、武偵としての任務を優先することを許されてたので」

「成程。だからあの時自爆しようと出来たのか」

「はい。一毅さんは緋緋神引き合えば驚異であると同時に、緋緋神と戦う上で切り札ともなる存在でしたので、殺さずに味方にできるなら、それに越したことはありません」

 

もしかして初対面で結婚を申し込んできたのは……と一毅は問うと、

 

「桐生は情に弱い。同世代の恋人であれば、それは顕著でしょう。だから接近しました。いざという時、最も近くで貴方を撃ち抜ける存在になるためにね。狂気に呑まれた桐生も、当時の遠山と星伽に討たれたのも、結局は情に流され、その隙を突かれてだと聞いています」

「今は違うのか?」

 

その一毅の問い掛けに、レキは頷きを返した。

 

「実はシャーロック・ホームズと戦いの後、キンジさんの所に行くように璃璃神にいわれました」

「なに?」

「理由は一毅さんが目覚めようとしてたからです。ヴラドとの戦いで目覚め、シャーロック・ホームズによって完全に一毅さんの堰は壊れました。後はただ濁流が流れるように一毅さんの力が増すだけ。実際それ以降の一毅さんの成長速度は異常でした。それを予見した璃璃神は、キンジさんに付き、一毅さんを殺すように命令してきました。まぁ断りましたがね」

 

信じてましたから。と笑みを浮かべるレキに、一毅は頬を掻く。

 

「そして一毅さんは狂気を持ったまま、桐生 一毅としての限界を超えてみせた」

「それが極めし者のオーラ(クライマックスヒート)ってことか?」

 

はい。とレキは頷き、

 

「璃璃神も予想しなかった、人のまま緋鬼の力と狂気を纏う新たなヒート。それが極めし者のオーラ(クライマックスヒート)でした。正気のまま狂気を纏う。そんな矛盾した存在は、本来ありえないはずですから」

「成程」

 

一毅は頭を掻いて息を吐くと、

 

「修学旅行の時にな。白雪の妹の風雪に話されかけたんだ。多分話そうとしてたのは、この話だと思う」

「でしょうね。恐らく星伽から見た話や、こちらでは分からない話もあったと思いますよ」

「それでもお前から聞きたかったからさ」

 

と一毅は笑うと、

 

「でもまさかお前と俺が親戚だとは思わなかった」

「親戚と言うには、少々遠いですがね」

 

狂気を宿しながらも、それを否定することなく血を残し続けてきた桐生と、狂気を否定し続け、外から優秀な血を入れることで鬼を捨てたウルス。海を超えて異なった緋鬼の子孫たちが、こうして出会ったのだと思うと、何だか感慨深いものがある。

 

「しかし俺を殺しにか。それが今じゃこうして一緒にいるんだから分からないもんだな」

「怒らないんですか?」

 

まさか。と一毅は肩を竦めて笑うと、

 

「俺は殺される気はない。だってお前と生きたいんだ。いや、お前だけじゃないな。ライカやロキ。チーム・バスカービルの皆。一年共だってそうさ。だがアイツらは直ぐ色んなものに巻き込まれてるからな。そして離れ離れになっちまうかもしれない。いや、なるだろうな。だけど俺がそれをさせない。どんなに離されても、邪魔するもんを全部ぶった斬って、離れた奴らを全員引っ張り戻す。それが俺の……チーム・バスカービル所属。二天一流現継承者・【応龍】桐生 一毅の仕事だ」

 

そう言ってニッと笑う一毅に、レキも釣られて笑みを浮かべた。しかしレキはまたシリアスな表情に戻すと、

 

「ですが一毅さん。気を付けてください」

「なんだ?ウルスからまたなんか刺客でも来るのか?」

 

いえ、と一毅の問いにレキは首を横に振りながら否定すると、

 

「ひとまずは極めし者のオーラ(クライマックスヒート)に目覚め、危険性はおちついたと判断されている様ですからね」

 

レキは言いつつ、

 

「一族は狂気をウルスや桐生とは違い、否定も受け入れもしなかった。寧ろ求めた。もっと強い狂気を。もっと強い力を。もっと強い遺伝子を、とね。何世代にも渡って狂気を宿しながら、強さを求めて優秀な遺伝子と交わり続け、強い次世代だけを残し続けることでその強さを増し続けてきた」

「まるでウルスと桐生のいいとこ取りみたいな一族だな」

 

優秀な遺伝子取り込みながらも狂気を否定し続けたウルスと、狂気を宿しながらも、遺伝子には拘らず自分の愛した相手と交わり続けた桐生。

 

「だがそいつ狂気を宿してるってことは、緋鬼の子孫なのか?」

「えぇ、と言うか日本に残った弁慶の息子の子孫です。どうも気まぐれに孕ませた女性がいたらしくてですね。ですがその子供は星伽との間に生まれた子とは違い、緋鬼の力を受け継いでいたようで、歴史の闇の中にてその牙を研ぎ続けていたようです。そしてその中で名乗った名前は、亜門」

 

一毅もその名前に聞き覚えがあった。確かシャーロックとの戦いで聞いた名前で、あのシャーロックですら手も足も出なかったやつの名前が、亜門だったはずだ。

 

「その中、互いの素性を知らずに宮本武蔵……あぁ、その時は桐生一馬之介と名乗ってたようですが、二人は出会い戦った。そして桐生一馬之介が勝ち、亜門と桐生には因縁ができた。亜門はその当時から既に優秀な遺伝子を取り入れ、狂気を高め続けていた。ですが桐生に破れ、更にそれはエスカレートし、代を変えながら亜門と桐生は互いの素性を知ってたり知らずだったりとしたようですが、争ってきたと聞いています。まるで運命のように、敵対する間としてね」

 

とレキは続け、

 

「最後の戦闘は今から20年前に起きた、現役の武装検事だった一毅さんの父である一明さんと、亜門 丈鬼の父である丈一の戦いで、僅差で一明さんが勝ったようです。そして今、それぞれ息子がいる」

 

レキの言葉に、一毅も言おうとしていることは理解できた。

 

「いつか今代の亜門は俺の前に現れるってことか?」

「はい。今の亜門は間違いなく一族最高傑作と言っていい存在です。今まで幾度となく世界中から刺客を送られ、その全てを打ち負かし、何にも縛られることなく自由に生きている。私が知る中で、異常という言葉があれほど似合う人はいません」

 

会ったことがあるのか?と言う一毅の問いに、レキは頷きを返すと、

 

「海外の仕事で、一毅さんに会う前に一度だけあります。会った時、不思議な懐かしさを感じると同時に、恐怖しました。感情を殺し、一発の弾丸だった当時の私が、初めて感じた恐怖。強いとかどうとかそういう次元ですら無く、そして何よりも、狂気と正気を両立させた一毅さんと違い、彼は狂気が正気です。悪意も善意もない。ただただ己の純度100%の狂気を宿し、そこからくる異常なまでの戦闘欲求と力。それが亜門 丈鬼です」

 

そう言いながら、レキは自分を抱き締めるように腕を交差させると、

 

「私は怖い。いつかあの怪物と一毅さんが対峙する時が。私は一毅さんを信じています。誰にも負けない。そう思っています。でも亜門だけは違うんです。あれはダメです。あれだけはダメです。全く勝てるビジョンが浮かばない。何よりも襲い掛かってくる刺客達に優しく相手をしているのも、また強くなって再度襲い掛かってくれば己の戦闘欲求を満たす事ができるから。でももし一毅さんと出逢えば、きっとそんな考えは吹っ飛んでしまう。だって一毅さんと亜門は持っているオーラが似ている。いや、似すぎている。きっと出逢えば響き合ってしまう。そうしたら最後、どちらかが死ぬまで止まらない。止まれない。私は一毅さんが死ぬところはもちろん見たくない。だけど誰かを殺すところも見たくない。でもどうすれば良いのかわからなくて……ずっと考えても答えは出なくて。そんなことを考えてる間にも、もしかしたら出会ってしまうんじゃないかって」

 

気づけば、レキは泣いていた。ポロポロと涙を流して泣いていた。

 

ずっとレキが抱えていたもの。それを吐露し、レキは泣いている。

 

そんな彼女の姿に、一毅は思わず抱きしめ、

 

「大丈夫」

 

たったそれだけ。先程とは違い、たったそれだけ言う。だがレキは、それだけで安心した。

 

それだけで、大丈夫な気がしている。

 

「一毅さん」

「何だ?」

 

レキに見つめられ、一毅が見つめ返す。

 

「信じますよ?」

「あぁ」

 

レキの問い掛けに、一毅は頷くと、レキは笑みを浮かべ瞳を閉じた。

 

それに一毅は応えるように、瞳を閉じると唇を重ねる。

 

ゆっくりと唇を合わせ、舌を絡めながら離れ、そのままソッとレキをベットに押し倒すと、

 

「レキ」

「はい」

「もう俺に言ってない秘密はないよな?」

 

そう問うとレキは少し考えて、

 

「いえ一つだけありました」

「それは?」

「気づいてなかったと思いますけど、私一毅さんが思ってる以上に一毅さんを愛してて依存してます。一毅さんがいない世界なんて考えられないほどに」

 

なんて言われ、一毅は思わず緩みそうになる頬を引き締めると、

 

「そんなこと知ってるよ」

「あ……」

 

そのままレキをベットに乗せたまま、自分もベットに上がるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふわぁ』

 

そんな次の日、一毅とレキ二人は大きな欠伸をし、

 

「何だお前ら。昨日寝れなかったのか?」

「ったく。ちゃんと寝るのも武偵の仕事だろ?」

 

とGⅢとキンジに言われたものの、

 

「んもう。二人共、そんな野暮なこと言わないの」

『?』

 

なんてコリンズにフォローを入れられ、

 

「うぅ……」

 

更に鼻血を出してティッシュを鼻に詰めながら、後ろ首をトントン叩くロカの姿があったのだが、それはきっと余談だろう。




やっとこの話ができました。この設定や話自体はこのシリーズを書き始めた頃から考えてて、現在の原作では合わない部分があったり、これからも出てくるであろう部分です。なのでまぁこのシリーズの設定だと思いながら読んでいただければありがたいです。

さて明かされたのは、実はレキもと言うかウルス自体も実は一毅同様緋鬼の血を引く者たちだったと言うことですが、桐生のようにそれを背負うことはせず、否定し拒絶し続けることで狂気を捨てた一族でした。そのため現在は一毅や亜門と違い、緋鬼の特性は持っていません。

そして亜門と桐生の因縁も明かされましたね。こっちの世界の亜門と桐生は、代を変えつつ幾度となくぶつかったという設定です。スタンド使い同士は引かれ合うレベルで引かれあった2つの一族ですが、桐生は甘いので亜門の一族をその都度見逃し、亜門は更に強い次世代を作っていくうちに、とんでもない怪物を生み出しました。それが今作の亜門 丈鬼です。

とまぁずっと書きたかった部分を書けたし此処から先はもうちょいトントン話を勧めていく所存ですので皆様気長にお付き合いいただければ幸いです。

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