緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

164 / 177
龍VS緋鬼

「ウォオオオオオ!」

「ダァアアアアア!」

 

ガギィイインっと派手な音をたてて一毅と津羽鬼の刀が火花を散らす…… 少しでもバランスを崩せば富岳の翼から落っこちて死んでしまうだろう……そのため一毅は足場の不安定さも考えながら戦わなくてはならなかった。幾ら靴の裏にスパイクを出しているとは言えこの津羽鬼を相手にしながら戦うのは骨がおれた……

 

「ガッ!」

「ちい!」

 

何せこの津羽鬼の速力……まず、肉眼でとらえるのは無理であった……ならば心眼……と言うわけで心眼で対処するが今度は肉体的なスペックが一毅を苦しめた……

 

今までの戦いの中で一毅は肉体的なスペックと言う点では比較的優位にたっていた……無論ルゥや他にも化け物じみた身体能力のやつは腐るほど見てきたがこいつは化け物じみたではなく正真正銘の化け物である……なら!

 

「くっ!」

 

一毅の体から純白のオーラ(ホワイトヒート)が溢れ一毅の身体能力を引き上げる……これでなんとか打ち合える……

 

「ハァ!」

 

そこに呼応するように津羽鬼の斬撃……それを一毅は飛び上がって回避すると同時に刀を交叉……そこから放つのは二天一流 必殺剣!

 

「秘技!円明!!!!」

「っ!」

 

津羽鬼は刀でそれを防いだ……だが防げたのは二刀のうち一刀……もう一刀が津羽鬼を狙う……だが!

 

「んなっ!」

 

ガギィン!っと言う音と共に津羽鬼はもう一本の刀の刃を噛んで止めた……そして次の瞬間津羽鬼の体から純白のオーラ(ホワイトヒート)がでた。

 

「ガァ!」

「がはっ!」

 

メキィ……っと言う音が肋骨に響いた……ドロリとした血の味が口に広がる……蹴られたと判断するのに時間はそうかからなかった……

 

「ごふっ!」

 

そもそも鬼の蹴りを喰らって生きてること自体が普通じゃないが一毅の体にたった一発で尋常じゃないダメージを叩き込んでいた……一毅はそれでも立ち上がって構え直す……まだ動けるし戦える……なら立ち上がるだけだった。

 

「ふぅ……」

 

一毅は一旦純白のオーラ(ホワイトヒート)を静めると次に蒼いオーラ(ブルーヒート)で体を覆った……ダメージが入ったがこのヒートで無理矢理体を動かせば戦える。

 

「おぉ!」

 

一毅は飛び上がると津羽鬼に接近する。

 

「っ!」

 

津羽鬼と刀をぶつけ合う一毅……純粋な身体能力にはやっと着いていくといった感じだがそれでも一毅は恐怖でもないかのようにぶつかる……津羽鬼はそれに冷や汗を流した……

 

鬼にとって人間とは弱気者のことである。極まれに自分の同胞を討つものがいるがそれが例外だ。鬼を見れば人は恐れる……戦えば絶望の表情をする……そう言うもののはずだ。なのに一毅は戦う……いや、こいつは自分の同胞の血が入ってるからなのだろうか?だが津羽鬼はそれをすぐに思考の角に追いやった……この程度なら……

 

「ハァ!」

 

津羽鬼の体から出ていたヒートが純白から蒼に変わった……この変わりかたの早さは流石に自分の力だったと言うだけはある…… 慣れている……

 

「くっ!」

 

放たれる斬撃を一毅はバックステップ……だが津羽鬼の人外の速度が一毅を追う……しかし一毅はそれを利用し刀を握った……

 

「二天一流……必殺剣!」

「っ!」

 

追撃をギリギリで回避し放つカウンター斬撃……

 

「二刀瞬斬!!!!」

 

津羽鬼の斬撃とすれ違いながらの斬撃……だがそれも津羽鬼は殆ど直角に曲がって避けた……

 

「厄介な野郎だ……」

「私は野郎じゃ……」

 

津羽鬼は姿勢を低くした……そして、

 

「ない!」

 

ドゴン!っと地面を踏みしめながら突貫する津羽鬼……それに一毅は正面から迎え撃った。

 

『ラァ!』

 

幾度も刀をぶつけ合わせ叩きつけ会う……

 

(い……てぇ……)

 

一毅は蹴られて折れたであろう肋骨の痛み耐えながら戦う……はっきり言ってかなり不利だった。

 

そもそも足場が不安定すぎる。一毅の二刀流は足場がしっかりしているのが重要なのだ。それの引き換えこの富岳の翼は富岳事態の揺れもありそっちの神経もいる……更に一毅の反射神経では捉えきれない津羽鬼の動き……一毅は反射神経も動体視力もずば抜けてはいる……だがそれを上回る速さだ。完全に心眼に頼りきらないと反応しきれない……

 

心眼を使うと言うのはそれだけ神経をすり減らすのだ。常に気を張った状態にする……常に極限の緊張状態を半ば強制的に体に強いるのだ。疲労が半端じゃない……

 

普段は反射神経等で心眼の負担する部分を減らすが今回は常に全開状態だ……これはキツイ……だが……

 

「何がおかしい」

「え?」

 

一毅は自分の顔を触れる……確かに……笑っていた。それに気づいて一層笑みを強くしながら一毅は言う。

 

「まぁあれだ……お前くらいの化けもん相手だとよ……楽しいんだよ……」

 

俺の中のバケモンを楽しませるには……上等な相手だと一毅は一層口角をあげていった……

 

「っ!」

 

ゾクッと津羽鬼の背に悪寒が走る……間違いなかった……この男が体に飼っている()()と言う名の鬼は……並の鬼じゃない……だがそれをみた津羽鬼も笑う……

 

「お前もだ……普通の人間じゃない……壊れなさそうだ」

 

鬼は……戦いを求める……血を……慟哭を……だがそれは己の快楽のためだけじゃない……己の……捧げるべき者のための唄なのだ。

 

【鬼畜】……等と言うが真の鬼はそのように言われるようなことはしない……己が捧げ……支える……そういうものに対しては従う……勝てと言われれば勝つ……言葉に発せられずとも……無言の内に受け取り無言の内に完了させる……

 

『さぁ……』

 

二人はニィッと笑った。

 

「キンジの勝利のために消えろ」

「閻姉様の勝利のために死んで」

 

一毅の体から深紅のオーラ(レッドヒート)が溢れだす……津羽鬼の体から蒼いオーラ(ブルーヒート)が溢れる……一毅は極めし者のオーラ(クライマックスヒート)を使うわけには行かない……なぜなら背後にはまだ鬼が控えている……それを相手取るにはここで極めし者のオーラ(クライマックスヒート)を使うわけには行かない……故に深紅のオーラ(レッドヒート)……()()としての桐生一毅が出せる全力だった。

 

迎え撃つのは津羽鬼の蒼いオーラ(ブルーヒート)……深紅のオーラ(レッドヒート)も勿論使える……だがこれは全力を出すわけに行かない……人間のとして戦わざるを得ない一毅への気遣い?違う……

 

この瞬間を楽しむための枷だ。この男との戦いを少しでも長くするための枷……深紅のオーラ(レッドヒート)を使えば勝てるだろう……それだけヒートの上昇率は鬼が使うと文字通り桁違いなのだ。故に加減……この男との力比べを楽しむために……

 

「おぉ!」

 

二人の刃が常人では見えぬほどの速度で交差しあう……

 

「ガァ!」

 

刀が折れるのではないかと錯覚してしまう程のパワーでぶつけ合う……このパワーに耐える刀にも称賛を送りたい……

 

『ウォオオオオオオオオ!』

 

一瞬の隙をついて一毅の二刀が弾かれた……

 

(っ!)

 

今!っと津羽鬼の刀が一毅の腹部を深々と指し貫く……

 

(終わった……ん?)

 

だが津羽鬼はふと気付く……刀が今いる位置より深く入らなければ抜けもしない……

 

「二天一流 拳技……金剛の気位……」

 

吉岡 清寡戦でも見せた筋肉に力を込めて絞めることで防御や相手の武器を肉体で咥えとる無茶技……しかも今は深紅のオーラ(レッドヒート)でのそれだ……効果が高まっていた……

 

余談だが一応内臓とかは当たらない角度で受けてる……一毅もGⅢの内臓避け(オーガン・スルー)は見ていたから……

 

「くっ!」

 

津羽鬼は離れようと力を込めた瞬間一毅は逃がすものかと胸ぐらを掴みあげた……自慢の速度もこれで役に立つまい……

 

「離せ!」

 

津羽鬼は一毅の顔面に拳を叩きつけた……鬼の膂力でパンチ……それがどんな破壊力を産むか想像したくない……だが一毅は正面からそれを受けながらも耐え抜く……そして、

 

「二天一流……絶剛……」

 

一毅は背中の断神(たちがみ)をゆっくり抜き天高く掲げる……

 

「っ!」

 

ヤバイ……津羽鬼は本能的にそれを悟った……一層一毅を殴るが一毅はペッと血を吐き捨てニィっと笑った……

 

「俺の勝ちだ」

「っ!」

 

一毅は断神(たちがみ)を振りおろす……渾身の刃は津羽鬼の体を確実にとらえた……

 

龍 尾 鉄 鎚(りゅうおてっつい)……」

 

その姿は龍の裁き……龍の裁きによって落とされ続ける尾は如何なる者も討ち滅ぼすまで止まらない……

 

そういう思いを込めて名付けられたその技と放たれた剣の巨大さを利用した連続叩きつけ……それは津羽鬼の意識が飛ぶまで何度でも何度でも……その刀身を津羽鬼に叩きつけたのだった……


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。