緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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金と龍の追走

「あいつらめっちゃ速くねぇか!?」

「そうだな……見失わないのがやっとだぞ」

 

キンジと一毅は地を蹴り鬼たちを追走する……アリアとは途中で別れた、何か秘策があるらしい……しかし鬼たちを追走して思ったのは見失わないのがやっとなほどである……と言うことだ。明らかに人知を越えてる。すると、

 

「なっ!」

 

一毅が空を見て驚愕の声を出した。キンジもそれを見て絶句する……その先にあったのは何と飛空船……確かあれは……

 

「富嶽……」

「知ってるのかキンジ」

 

一毅が聞くとキンジはうなずく。

 

「大戦中に考案……及び製作されて大陸横断を前提とした爆撃機だ。だがコストもバカみたいにかかるし何より完成前に戦争が終わった……そのために日の目を見ることがなかったらしいが……まさかあんなもんを……」

 

キンジの解説を聞いてる間に鬼達は富嶽と地面を繋ぐロープみたいなのがあるのだがそれをかけ上がっていく……

 

「追うぞ!」

「おう!」

 

二人も鬼を追うためロープにしがみつくと登っていく……勿論鬼達と違いしがみついて普通に懸垂の要領で上がっていくのだが……

 

「くそ……下を見るなよキンジ」

「頼まれたって見るか!」

 

二人とも身体能力が高いためかなりの速度で上がっていく……気がつけばかなりの高度になっていた……そのため二人は下を見ないように上がっていく……別に高所恐怖症ではないがそれでもこの高度は怖い……しかし、

 

『いっ!』

 

一毅とキンジは視線を先に向けて眼を剥いた……何故なら鬼達はすでに富嶽に到着し何と津羽鬼がロープに刀の刃を立てているのだ……

 

「ば、バカやめろ!」

 

一毅が叫んだのも空しくあっさりと津羽鬼はロープをざっくり斬ってしまう……勿論そのまま重力によって……

 

『ァァァアアアアアアアアアア!!!!!!!!』

 

二人はそのまま地面に向けて落ちていく……この高さから落ちたら流石に死んでしまう!っと二人が思った瞬間今度は急に空に向かって上がり始めたのだ……

 

『あ、アリア!』

 

そう、アリアがホバースカートで二人を引っ張りあげたのだ。

 

「全く、平賀さんに改装してもらってたのを持ってきたのよ。でも持続性がまだまだだから近くまで運ぶわ。あとはなんとかできる?」

「ああ、十分だよ」

 

キンジはそう答える。

 

「だがキンジ……ワイヤーを引っ掻ける部分がないぞ?」

「大丈夫だ。俺も平賀さんに幾つか新装備貰っといたからな」

「じゃ、任せとく」

 

そんなやり取りを終えると富嶽に大分近づいた。あとは自分達で何とかなる。

 

「じゃあ投げるわよ!」

 

アリアがそう宣言すると回転し遠心力を味方にしてキンジと一毅を放り投げた……ここまで男二人を引っ張りあげて更にぶん投げるとか相変わらず体に不釣り合いな力だと一毅は思う。

 

だがそんなことを考えたのも束の間でキンジは銃を抜くと発砲……銃口からシュルシュルと何かが発射され富嶽の壁面に刺さった……

 

「アンカー弾って言うらしい……」

「そうかい……そりゃすごい……」

 

と、富嶽に二人はぶら下がりながら言ったのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゼィ……ゼィ……』

 

その後二人はヒィヒィ言いながら船に乗り込む……乗り込んだと言っても通気孔のような場所なのだがそれでも鬼達の元に近づいているのは同じである。

 

「鬼達と戦う前に疲労で死んじまう」

「そうなりかけたら心臓に衝撃ぶちこんで復活させてやっから安心しろ」

 

死んでも復活可能なことは自身の経験上分かっているキンジが言うと、

 

「お前と一緒にすんな」

 

と、一毅も返す。そして息を整えてるとキンジがなにかを投げてきた。

 

「何だこりゃ」

 

一毅はそれをキャッチする。それは一発の銃弾だった。

 

「クッション弾だ。撃って着弾するとそこにエアバックみたいなのが出るらしい。トラックにはね飛ばされたってこれひとつあれば平気だってよ」

「平賀のだしなぁ……話し半分くらいにしとくか」

 

と一毅は言いつつその銃弾を自分の持ち銃であるジェリコに初弾で出るように入れておく……これを使用することがないのが一番と言うかそもそも船の上ではトラックが突っ込んでくることはないので多分使われることはないが……

 

それからキンジもベレッタの初弾にクッション弾をセットするとデザートイーグルを抜く……それから二人は歩伏前進の要領で進んでいく……すると、一つの部屋に繋がった……そこには、

 

(あれを見ろ)

 

キンジが指で指し示す……そこから覗くと下にはあの【風のセーラ】がいた……こいつ戦役のあと姿を消したらしいが鬼と一緒だったらしい……まぁどうでもいいのだが……

 

(行くぞ)

 

とキンジが目で合図すると一毅は拳を握り通気孔をぶん殴る……その結果通気孔の弁が壊れ盛大に音をたてながらキンジと一毅は飛び出した。

 

「っ!」

 

セーラは突然の音に驚きはしたが咄嗟に弓矢を構えようとした……だが、

 

『動くな……』

 

それより早くキンジはナイフを……一毅は神流し(かみながし)を抜いてセーラの首に突きつけ動きを封じた……

 

「近距離だとナイフの方が速いときもあるんだよ……覚えとくといい。特にそっちは弓矢だしね」

 

キンジが優しく言うがセーラは睨みつけてくる……

 

「遠山キンジ……そして桐生一毅……」

「俺も知ってるのか……」

 

一毅が言うとセーラは当たり前だと言う。

 

「お前達は自分達が思ってる以上に有名……それに妖刕たちからも聞いてる」

「そういえばあいつらが何処にいったのか知らないのか?」

 

キンジはそう問うたがセーラは知らないと言う。

 

「だけど魔剱はいっていた……遠山キンジには酷い目に遭わされてるし逢っていると……何かした?」

「俺が聞きてぇよ……」

 

そう言いながらキンジはセーラから弓矢をとると一毅に弓を渡す。それを見たセーラは顔色が悪くなった。

 

「な、何を考えてる……?」

「そうだな……一毅、その弓折って使えなくしてしまえ」

「わかった」

 

そう言って一毅は弓を持つと曲げてはまらない方向にメキメキ曲げていく……次の瞬間……

 

「返せ返せぇええええ!」

『え?』

 

セーラが目に涙をためながらポカポカと一毅の胸を殴ってきた……アリアのに比べれば蚊に刺されたようなものだが……何かすごく悪いことをした気がしてきた……例えるなら子供のおもちゃを取り上げた気分だ……これは……辛いな……

 

(どうする?)

 

と一毅がキンジを見ると肩を竦めたキンジは弓を一毅から受け取り代わりに矢の方を渡す。

 

「こっちならいいだろ?」

「………………」

 

まだ不満げだが我慢してもらおう……とキンジは矢を纏めてベキベキへし折る一毅を見ながら内心呟いた……しかし一毅にかかれば毛利家の三本の矢の話は意味のないものになってしまうな……あれ結構いい話なんだけどね。

 

「さてと……まさかセーラもここにいたとはね。何だって鬼と一緒に?」

「……金払いがいい、フット家は代々傭兵の一族、そして稼いだお金を貧困の地に寄付する」

「……因みにひとつ聞くけど君を雇うとしたらいくらかかるんだい?」

「金塊30キロ……それ以下はない」

「……………………それは随分高くないかい?」

「それにそもそも今は鬼達と契約を結んでいる。契約を反故はしない、この世界は信頼がすべて」

 

成程……まぁこう言う裏社会において信頼を失ったら同時に仕事もなくなるしな……仕方ないか……だが、

 

「なら俺の弟が農業をやっていてね。食べきれないほどのブロッコリーを作らせることもできる。いるかい?」

「…………要らない」

 

今完全に迷ってたよね……とキンジは思ったが黙っておく。

 

「さてと……」

 

何時までもここで時間を使うわけに行かない。一毅も矢を全部へし折ったようだし先に進もう。

 

ということなのでセーラを人質にして奥に二人は向かう。セーラに道を聞かなくても鬼達のばか騒ぎが聞こえてくるのでそれを頼りに行く。

 

「この先だな」

 

音が扉一枚を隔ててすぐそこで聞こえるほど近くまで来た……二人は目で合図すると……そのまま一気に!

 

『動くな!……え?』

 

二人同時には扉の大きさ的に無理だったので銃もちのキンジが先にはいる……だが……キンジは扉を開けた都合上手を伸ばしていた……そのため……

 

「む?遠山に桐生ではないか」

(おぉおおおおおい!)

 

一毅が突っ込む。何せキンジは何と閻の乳をがっちり掴んでいるのだ。相手の方は然して気にした様子はないが閻はガタイが良いくせにこういったところはちゃんと柔らかいらしい。アリアのように存在するのかしないのかが判断しにくい胸も何だかんだで柔らかいのだからある意味必然なのだろうか……

 

「す、すまない!」

 

キンジも慌てて離れた。流石のヒステリアモードでもこれはビックリしたらしい。そして閻の背後の方では……

 

「と!とと!とおやま!何てうらやま!じゃなくて閻さまに破廉恥な!」

 

と、津羽鬼がキンジに殺気を飛ばしている……それを見た一毅は苦笑いしつつ閻も随分慕われてるのだと思った。

 

「よ!ミスターラッキー助平男」

 

と、序でにからかい、スパコンっとキンジに叩かれてから、

 

「とにかくだ……覇美はいるのか?」

『っ!』

 

閻や津羽鬼だけじゃない……他にも複数の鬼がいたがそれらが全てキンジへ視線を集める。序でに殺気や闘気も混じってるぞ……その為一毅も何時でも刀を抜けるようにしておく……

 

「ん?おー!」

 

その時である。奥から山のようにおかれた酒瓶から顔を覗かせた影……それが覇美であった。

 

「よく……来ラ!!」

 

多分……よく来た!っと言いたかったのだろうが微妙に呂律が回ってない……顔も赤いし……こいつさっきも勝手に棚から飲んでたのにここでも飲んでやがったな。

 

「うわ……こいつはいい酒だ。旨いわ」

「お前も何勝手にご相伴預ってんだよ」

 

ポカッと床に落ちてた酒瓶から飲んでた一毅にキンジは叩いておく……しかし今気づいたがいつに間にかセーラのやつ鬼達の方に逃げてやがる……まぁ仕方ない、ハッタリやらなんやらで誤魔化すしかないな。

 

「まぁいい、おい覇美」

「ん~?」

 

周りの奴等が更にキンジを睨むが知らんし覇美も然して気にした様子はない。

 

「お前殻金持ってるよな?」

「ん~……ああ、持ってるぞ」

「何処にあんだ?今すぐだせ、でないと強制的に取り立てるぞ」

 

キンジがそういった瞬間……ダン!と聞こえた……そして次の瞬間には一毅と刀をぶつけ合う津羽鬼がいた。無論背後で起きたことなのでキンジは見えてないが音的に大体そんなもんだろうと踏んでいた。

 

「ふむ遠山よ……今殻金は覇美様の鬼袋の中にある……それを奪うと言うのは即ち覇美様に危害を加えるということ……延いては我らへの宣戦布告と受けとるが?」

「もう受け取ったやつもいたようだけどな」

 

ガチガチと刀を鳴らし津羽鬼の圧しに耐えてた一毅は弾き返し津羽鬼は一旦距離をとる。

 

「おー!喧嘩か!よし!やろう!」

 

と、一人楽しそうな覇美……こいつは気楽そうでいいな……

 

「なら勝った奴等の言うことを聞く!以上!」

 

つまりバトルロワイヤルってやつか……簡単にいってくれるぜ……

 

そう二人が苦い笑みを浮かべながら思ったのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝負は一対一……か」

 

その後二人は富嶽の翼に出ていた……それに相対するのは鬼……一毅は津羽鬼と、キンジは閻と戦うことになっている……だが、

 

「大丈夫か?津羽鬼も厄介だが閻なんて俺たちどっちも疲労してたとはいえ二人でも苦戦したんだぞ」

「何とかするさ……殺されたって勝つまで生き返ればいい」

「そうだった。比喩でもなんでもなくお前は殺しても死なないんだった」

 

と、二人は軽口を叩き会う……さてと……

 

「勝つぞ」

「おう……!」

 

キンジと一毅はそれぞれの相手へと飛びかかったのだった……


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