緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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金の潜入2

さて、前回紹介したプリンちゃんこと、なっちゃんだが……どうも目をつけられたらしい。入院によるストレスか知らないが暇を見つけてはここに来てキンジに八つ当たりをして行く……銃が出ないだけいいとキンジは考え聞き流しているが……

 

それよりまだアリアの状態すらわからない……このまま時間を無為に流していくのはな……とキンジは考えていた。このままバイトの定着するわけにもいかんのだ……どちらかって言うとストレス的な意味でも。一回一毅に黒服とサングラス着けさせて来店させて店長たちビビらせたい……あ、でもそれやったら俺と関係がないと言っても八つ当たりでまたバイト料引かれるか……どちらにせよこいつのこと一回相談センターみたいなところにチクってやろうか……

 

「おい聞いてんのかよ!」

「あ、はい勿論……やはりお好み焼きはご飯のオカズにならないって言う話ですよね?」

「んな話一度だってしたことねぇよ!」

 

しまった……この間武藤と喧嘩になった一件の方出しちまった……いやあいつお好み焼きはオカズだとか言うんだぜ?信じらんねぇ……お好み焼きは主食だ。っとそんなことを話したいんじゃない。こう言うときってほぼ間違いなく……

 

「てめぇやっぱ舐めてんだろ!やんのかおらぁ!」

 

胸ぐらを捕まれた……素人って何でこんなときに確認取るんだ?それに襟って一番暗器を隠しやすくて危険だからつかむなって言われるんだぞ?武偵高校の制服にだって隠し針を仕込んでおく仕掛けがあるしな……まぁキンジはつけていないのだが……

 

「す、すいません……ちょっと考え事を……──っ!」

 

キンジは慌てて頭を下げようとしたとき入り口から入ってきた人影に目を見開いた……そりゃそうである……そこにいたのは……

 

「む?遠山か」

「閻……」

「貴様!閻様を呼び捨てに!」

 

キンジは目を半眼にして身構えた……不味いぞ……今こっちは通常モードだ……やられる……

 

「おぉー!見ろ閻!握り飯が山ほどあるぞ」

 

そう言って閻の肩からピョンっと飛び降りたのは極東戦役開戦の時に居た鬼の子供だった……

 

「ひ……」

 

一方明らかにヤバイ奴等の登場になっちゃんは腰を抜かしている……それを閻はちょっと道端に落ちてた空き缶を蹴って退かすように足を振り上げた。

 

「あぶねぇ!」

 

キンジは咄嗟になっちゃんの襟を引っ張って転がって避ける。おいおい、レジの台に穴が開いたぞ……

 

「おいバイト!一体なんの騒ぎ……だ?」

 

そこに店長とその女達がゾロゾロ出てきた……おいおい余計なことしないで奥にいろって!そして……

 

『キャアアアアアアアア!』

 

と当たり前のごとくパニックになった。最悪だ……鬼たち相手にしながらこのパニックもどうにかしろってか?しかもさっきからなっちゃんはキンジの腕にしがみついて離さない……いつものキンジなら強引に振りほどくが残念な事にこの行動のせいで若干ヒスりかけてる……

 

(不味いぞくそったれ……)

 

キンジは鬼たちを見ながらゆっくりなっちゃんを引っ張り安全圏に下がる……

 

「おい閻……お前なにしに来た」

「…………」

 

何で閻のとなりにいる鬼はこっちを睨んでくんだよ……

 

「食料を取りに来た、あとこの上の者を見にな」

「そうかよ……」

 

キンジはなっちゃんからソッと離れると腰を落とす……つまり、お前らはアリアに手出しするってことだな?

 

「いい目をする……」

「そうかい……」

 

閻とキンジの視線が交差する……すると、

 

「閻様の手を煩わせるまでもありませぬ」

「津羽鬼……」

 

津羽鬼と呼ばれた鬼はキンジを見る……

 

「閻様を呼び捨てにし……挙げ句その言いぐさ……勘弁ならない」

「ならやってみろよ……」

 

キンジがそういった刹那の間を挟んだ次の瞬間……

 

「なっ!」

 

津羽鬼はキンジの目の前にたっていた……

 

(橘花!)

 

桜花を用いた減速防御で津羽鬼の一撃を防ぐ……だがそれでもキツイ……どういうパワーしてんだこいつは……

 

閻ほどの圧力は勿論ない……だがそれでも人間の枠を軽く凌駕するパワーだった……

 

(下手すると素の一毅よりはパワーあるんじゃねぇか……)

 

無論津羽鬼の一撃は力任せではない。拳撃の威力と言うかぶつかったときの威力はその物質の早さと重さ……あとは堅さによる。つまり鬼である以上人間より遥かに堅く、キンジの眼でも不意打ちと甘いヒステリアモードだったのを込みにしたとは言え危なかった速さ……そして閻には遠く及ばずとも人間の枠を軽く凌駕するパワーで殴れば普通の人間なら簡単に肉塊に変えられる。無論……ギリギリの橘花で痺れはしても肉塊にはならずに済んだが……

 

(こいつらはまだヒートを使える……)

 

キンジは軽く舌打ちした。欧州での閻の言葉を素直に受けとればヒートは元は鬼の力……ならばこいつもヒートは使おうと思えば使えるだろう……

 

(窮地もいいところだ……)

「ハァ!」

 

と、そこに更に津羽鬼の追い討ち。連続橘花で受けていくがそれでもダメージが残る……しかも後ろにはパニックを通り越して固まってる奴等や津羽鬼の方には閻や楽しそうに手足をバタつかせる覇美がいる……多勢に無勢ときて足手まとい多数……不味い状況をあげていくときりがない……

 

「うぉ!」

 

キンジは津羽鬼の角を使った頭突きを躱す……後ろの棚にあった缶に穴が開いた……

 

「がぁ!」

 

次に噛みつき……キンジは咄嗟にその穴の空いた缶を掴むと津羽鬼の口に突っ込んで隙を作り離れた……まぁその缶はあっという間にベキベキと噛み潰されてペッと捨てられたが……つうかあれスチール缶だぞ……どんな咬合力してんだ、さすが鬼だぜ……

 

だが段々追い込まれ始めてきた……何とか凌いでるがこのままだと……そうキンジが考えた瞬間津羽鬼が消えた……

 

「しまっ!」

 

瞬きほどの一瞬で間を詰めてくる津羽鬼……一瞬反応が遅れたキンジ……どちらに分があるかなど言うまでもない。

 

「終わり……」

 

津羽鬼がそう呟いた次の瞬間……

 

「むっ!」

 

津羽鬼は横から飛んできた何かを掴んで急ブレーキ……手に入っていたには……銃弾?

 

「二天一流 拳技……」

「っ!」

 

更にそこに別のなにかが来た……勿論それは……

 

「煉獄掌!」

 

ドン!っと津羽鬼に生じる衝撃……

 

「一毅!それに……」

 

キンジは入り口を見る……そこに立っていたのは、

 

「アリア……」

「なにやってんのよキンジ」

 

クルクルと銃を回しながら言うアリアにキンジは苦笑いを返した。すると、

 

「ほらキンジ」

 

一毅がキンジには銃やナイフ……後龍桜を渡す。

 

「よし」

 

仕事用のエプロンを脱ぎ着ていた武偵高校の制服の上に龍桜を着ると銃とナイフを構える。

 

「そういえば一毅、お前ずいぶん遅くないか?」

「悪い、寝てた」

「お前こんな寒空の下でか?馬鹿かよ……あ、バカは風邪を引かねぇのか」

「オイ……」

 

そんなやり取りをしていると隣にアリアも来た……これで数は同数、さて相手はどうでるか……

 

「津羽鬼……怪我はないか」

「平気です」

 

と、向こうもやり取りしている……残念ながら一毅の煉獄掌は然程効かなかったらしい……やはり素の状態ではな……

 

「俺あいつらと戦うと人間だわぁ……って気分になれるぜ」

「安心しろ……気のせいだからな」

「キンジもでしょ」

 

アリアが言うとキンジは眉を寄せた。心外だぜ……

 

「ふむ……今のところ変わりは見たとことなしか……?」

 

閻は呟くと体から白いオーラが漏れ出す……

 

「確かめてみるとしよう」

「来るぞ……」

 

閻が戦闘体制にはいると津羽鬼も体から純白のオーラ(ホワイトヒート)を漏れ出させ覇美にそこにいるように願うと閻と並んでキンジたちの前にたつ……

「……シュ!」

「オォ!」

 

津羽鬼は腰に履いていた刀を瞬時に抜刀しキンジを狙う……だがその間に蒼いオーラ(ブルーヒート)で強化した一毅が心眼も併用し刀で止めた。

 

「フン!」

 

そこを閻が一毅に向けて拳を振り上げた。

 

「シャア!」

 

だがそれをキンジは閻の腕を横から蹴っ飛ばして軌道を反らす……これくらいならいける……逸らした先に棚があってそれが当たった瞬間吹っ飛んだが……今回は仕方ないと言うことにしよう。そうしよう……

 

『オォ!』

 

その間で一毅と津羽鬼は刀をぶつけ合う……火花と轟音が店内に響き店長に至っては完全にチビっている……

 

「キンジ!」

 

その時後ろからキンジを台にしてアリアが飛び上がり銃を発砲……一毅と津羽鬼は咄嗟に離れる。無論の拳銃の天才であるアリアが跳弾でも一毅に当たる角度で撃つわけ無く銃弾は正確に津羽鬼とえんの方に飛ぶ……二人の背後には覇美がいる……ってアイツ!勝手に棚から酒を取って飲んでやがる!並べんの大変だったんだぞ!

 

っとそれは余計な話だ。とにかく飛んでくる銃弾を閻は掴み津羽鬼は切り飛ばす。

 

「火縄の時代から進歩がないようだな」

「そのようですね」

 

つかんだ銃弾をポンポン手で投げて遊びながら言う閻と津羽鬼……全然まだ余力残してるぞ……

 

無論キンジの方だって今は前回と違い元気だし余力は残してる……キンジに至ってはまだ甘いヒステリアモードだ……だがそれでも相手が強敵だと言うのは簡単に理解できる。文字通り人外だしな……当たり前と言えば当たり前だが……

 

「ふむ……津羽鬼……確認して帰るぞ……覇美様が退屈し始めた」

「ですね……」

 

そういう二人の背後では確かに飽きてきたのか売りものお菓子を勝手に開けては食べ散らかしその挙げ句欠伸までし始める覇美がいた……あのチビ鬼……どんだけこっちが苦労したと……いつかぶん殴る……

 

「ならば……」

 

すぅ……っと閻が息を吸った……まさかこれは!

 

「全員耳を塞げ!」

 

キンジの叫び……その声音に半ば無意識にその場の全員が耳を塞いだ……次の瞬間!

 

「吽!!!!!!!!」

 

たった一言だった……だがその声量はブラドのワラキアの魔笛を遥かに上回る声の砲弾だった……耳を塞いでいても前後不覚に一瞬陥るほどの声の爆発。ここが狭い室内だと言うことを差し引いても全員の動きだけじゃない……思考まで止まった……そして、

 

「やはり目覚めてはいないか」

 

閻の呟きを聞きつつキンジの目に飛び込んできたのは津羽鬼に制服の裾を捲り上げられ小振りな胸を包む布地を御開帳させられてしまい顔を真っ赤にするアリアだった……

 

ドクン!っキンジの心臓が跳ねる……血流が熱く……そして速くなる。思考が高速回転を始め集中力が高まる……

 

さて……()()()()()の出番だな。しっかり仕事をしようか……

 

「津羽鬼!退くぞ!緋緋神様は何れ来る!」

 

そう言って閻は覇美を小脇に抱え津羽鬼と一緒に猛スピードで店を出ていった。

 

「キンジ!一毅!逃がさないわよ!」

「ああ、分かってるよ……アリア」

 

キンジの口調にアリアは一瞬止まり……ギギギと効果音をつけれそうな動きでこっちを見る……

 

「あ、あんたまさか……」

「まぁ、そう言うことかな」

 

優しくアリアの頬を撫でヒステリアキンジは囁く。

 

「言いたいことはあるだろうけどそれは後にしよう。後でたっぷり話せる。二人きりでね」

「ふ、二人!」

 

ゆで蛸か何かみたいになったアリアを見てから振り替える……するとその先ではビビった店長たちを睨み付ける一毅がいた。

 

「おうお前ら……うちの頭に随分舐めたことしてくれたじゃねぇか……どう責任取ってくれんだ?」

「ひ、ヒィ!」

 

見た目だけなら本職やくざにも負けず劣らずの一毅である……その一毅が睨めば一般人はビビって当然……そもそも今回はわざと怖くした感じがある……そんな一毅にキンジは声を掛けた。

 

「一毅、もういい……それより鬼たちを追うぞ」

「あいよ、キンジ(リーダー)

 

一毅は睨むのを止めて外に向けて歩みを進めた。

 

「あ、店長」

「ひゃ、ひゃい!」

 

それと入れ替わるようにキンジは店長を見た……別に取って食う訳じゃないんだからそんな怖がらんでも……

 

「俺今日でバイト辞めたいんですけど良いですか?」

「ど、どうじょ……」

「後バイト代って今日まで出るんですか?それとも先月で終わりっすか?」

「きょ、きょうまででじゅ……」

「じゃあちゃんと払ってくださいね?」

「ひゃい!」

 

やんわりとバイト代ピン跳ねしているの知ってんだぞ?みたいな感じで言うと店長はブンブン首を縦に振って答えた。

 

「さぁ!風穴タイムよ!」

 

アリアの号令で三人は鬼を追って走り出したのだった……


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