「ガフガフハグハグゴクゴク!」
「お前そんなに腹減ってたのか?」
「あふぁふぃふぁふぇふぁふぉふぉ!」
多分当たり前だろ……言いたいんだろうなぁ、とキンジは苦笑いしつつ一毅に食べるのを促す。
前回の戦いから次の日……キンジたちはフランスに戻ってきて
そこでは一毅はまず風呂に入り全身を洗ったあと無精髭も剃ってある……そのあと船につくまで暫く殆ど飲まず食わずの状態だった一毅は満腹になるまで食って良いと言われた食事を食べていた。その量は凡そ10人前は余裕で行くであろう量だ。
「お兄ちゃん今まで飲まず食わずだったの?」
「いや?海泳いでたときに襲ってきたサメ食って生き延びてた」
『……は?』
「俺が流した血にわらわら寄ってきてさぁ~マジで死ぬかと思った~……あ、知ってるか!意外とサメって身の部分は引き締まっててそこそこ旨いんだぞ」
『一生知らなくても困らない知識をありがとう』
とキンジとロキは半眼になって言った……そりゃもうそう反応するしかない。それ以外にどう反応せいと?
「ったく……どういう生き残りかしてんだよって話だぜ」
「ふふ……そうですね。ある意味新鮮そのものな食事でしたね」
そこに来たのはカツェとメーヤだった。
「二人ともなんでここに?」
と、口に一杯いれてるため喋れない一毅に変わってキンジが聞くと……
「アタシはいても邪魔だしな……抜けてきた」
「私も同じようなものです」
と二人は言う。一応この場で火花を散らす気はないようだ。
そんな話を聞きながらキンジは頭をかきつつ今回の一件を考えていた。
まず今回は
だが例外がある……それはバチカンだ。案の定ローレッタさんは地方に左遷されることになったらしく今回の会議でもバチカンに発言件は皆無に等しいらしい。ザマァみろと思う反面完全にローレッタさんは蜥蜴の尻尾切りにあったと言うとこだ。哀れでもある。
「それで桐生さん……」
「ん?」
メーヤは一毅の前に立つ……一毅も真面目な話だと感じて口にあるものを飲み込んだ。
「すいませんでした……」
メーヤは頭を下げた……キンジには先程ローレッタさん共々頭を下げられていた……一毅の方にもローレッタさんが先程来て謝られていた……だがメーヤは事後処理もあり遅れていたため若干遅れての謝罪だ……それを聞いた一毅は、
「いや、俺気にしてねぇから良いよ」
と言った。キンジもだが武偵は騙される方も悪いのだ。今回は良い勉強になったと言うところだろう。
「ですが……」
「気にすんなって……俺は別に気にしてねぇからさ。まぁキンジやロキにジャンヌを殺そうとしたのは気に食わんがそれをグチグチ言うのも面倒っつうか……時間の無駄って思うし良いよ。それに俺ローレッタさんを踏んづけちまったし……」
「あれクッキリ残ってたぞ」
とカツェが言うとキンジは吹いた……そういえば土下座されたときに一毅の靴の汚れがローレッタさんの背中にあったのだ。一毅がロケットランチャーをぶっぱなし目を回したローレッタさんを踏んづけて慌てていたのは今でも記憶に新しい……
「とりあえず腹減ってるから食って良い?」
「あ、はい……どうぞ」
メーヤが呆気に取られる中一毅はガツガツと食事を再開する。
「こういうやつだよ……」
とキンジは肩を竦めた。すると、
「んぐ!んぐぐ!」
「ほら水」
とキンジは喉を詰まらせた一毅に水を渡した。さながら熟年夫婦のような連携である。
「やっぱりお姉ちゃんたちじゃなくて一番の敵は遠山キンジ先輩だよね……」
『やめろ気持ちわりぃ……』
とキンジと一毅が苦虫を100匹位一気に噛んだような表情を浮かべた。
「まぁそういうなって。うちのとこでも何かお前らのあれな話で盛り上ってたぜ?」
『マジかよ……』
一毅とキンジはカツェの要らない情報に頭を抱えた。
「そ、そういう関係だったんですね……どうりで仲が……」
『違う違う違う違う違う!』
メーヤまで変な誤解をしそうだったためキンジと一毅は慌てて否定した。まあ冗談ですよとメーヤは言うが二人にしてみれば冗談にならない。
「まぁ二人が仲良いのは事実だしね」
『それは否定しないが……』
否定はしない……だがそう言う関係だと思われて二人は良い顔はしないものだ。武偵高校でもそんな噂が出ているのを二人は聞き及んでいる手前そんな嘘情報が世界進出何てしようものなら二人はもう外に出れなくなりそうだ。
「ですが……そんなお二人が私は羨ましいですよ?」
そう言うメーヤに一毅は首をかしげた。
「そんなもんか?」
「はい……ですから……」
メーヤは口を開いた。
「……私も桐生さんを信じて良いですか?」
ビキッ!っとロキとカツェの空気が凍った。
「おれ?信じるもなにも何か約束したっけ?」
「私が勝手に桐生さんを信じているだけです……キンジさん見たく貴方を信じて良いですか?」
「別に良いけど?」
一毅は全く理解していないが……メーヤの場合信じると言うのは別に意味も混じってきているのは言うまでもない。
「おい……テメェ人の使い魔になに言ってんだよ」
「お兄ちゃんは使い魔じゃないけど同感だよ」
ガルルと威嚇してメーヤを睨むカツェとロキ……だがメーヤはなんのことでしょうとにこやかに笑うだけだ。
「……ちっ!ホラよ桐生」
「ん?」
カツェが投げてきた欠片を一毅はキャッチした。
「殻金じゃねぇか」
「今回のでまずそれの返却が盛り込まれてるからな。やるよ。あといくつなんだ?」
「鬼が持ってるので最後だ」
一毅が投げた殻金をキャッチしつつキンジは言う。
「あと……一歩だな」
「ですがうまく行くでしょうか……」
メーヤの言葉に皆は首をかしげた。
「今回で
そうメーヤが言うが……
「知るか。元々この殻金はこっちのものだしほっとくと危ないんだ。勝手にやらせてもらうだけだ」
キンジがそう言うと一毅は笑う。
「まぁ、もう少し頑張れば平和でのんびりできんだろ」
「だねぇ」
一毅とロキが同意する。それをみたカツェとメーヤポカンとみた。
「いやいやおめぇら……下手スッと
「そ、そうですよ……」
だが一毅は肩を竦めて笑う。
「そういわれたってなぁ……うちのリーダーが決めたら俺は黙ってついてくぜ」
「お前な……」
カツェが口を開こうとしたが一毅が先にしゃべる。
「だってアリアの身も絡んでたらキンジが止まるわけねぇもん。つうか止まったら俺がケツを蹴って歩かせてやるよ」
「だそうでな……俺もアリアが殻金一個なくたって良いなら良いがそうでもないんだ……だから鬼からきっちり取り立てる。これでも俺の取り立てのしつこさは本筋からも恐れられてんだぜ?」
そうキンジが笑うとカツェとメーヤは目を合わせて……笑う。
「おめぇらの周りは飽きなさそうだな。よし、おい桐生。何かあっときはアタシに連絡しろ。力貸すぜ」
「はぁ?」
「私も同じです」
「はぁあ?」
一毅にしてみればいきなり何?状態である。
「お前の周りはいつも面白そうだ。なぁに、フルマンに借り作れるって言うならうちの連隊からも引っ張れるさ」
「なんだそれ……」
キンジが聞きなれない言葉に首をかしげた。
「
「マジかよ……」
それを聞いて一毅が笑うが、
「お前だって死神とか貧乏神って呼ばれてるぞ」
「ガッデム!」
随分な言われように一毅は落ち込んだ……
「まぁお前らも寄り一層危険視されるのは間違いないからな。気を付けておけよ」
そんなカツェの言葉に肩を落としていると……
「ご主人様」
「リサ?」
キンジが振り替えるとリサがいた……
「どうしたんだ?」
「
「…………なにぃ!」
キンジがアングリと口を開けて驚愕した。
何でもリサの話を聞けば今回の一番の功労者、遠山キンジへの報奨……功労者への一流のメイドを進呈的なことが行われそれがリサだったらしい……いやいやそんなの要らんぞ……
「私は……ご主人様が例え誰を好きでいようともお慕いし続けます。いつか少しだけこちらをみていただければリサは満足ですので」
「へぇ?どう言うことだキンジ……まさかとは思うがお前俺がサメと格闘したり、リバティーメイソンから逃亡しているときお前まさかこんな可愛い子を捕まえてお世話されれたのかおい?」
一毅は割りと洒落にならない闘気を発しながらキンジに迫る……
「い、いや……色々あって生活面に世話になっただけで……」
「お前ようは心身充実のヒモ生活送ってたんだろがい!」
「ヒモじゃねえよ戦闘を俺が担当してたんじゃい!」
キンジと一毅は言い争いを始めた……先ほどまでの仲良し空気はどこへやらとドッカンバッキンと殴り合い……そんなことをしつつ……
「お前でも日本に来てどこに住む気なんだよ……」
「勿論ご主人様の居るところがリサの居場所です」
あ、また騒がしくなるわ……と一毅、キンジ、ロキの脳内がリンクしたのは……余談である。
そんなこんなで……欧州戦役と……今世紀の極東戦役はキンジたちの活躍もあり……幕を閉じたのであった……
「今回の一件の報告です」
とある部屋の一室……そこにいた男に書類が渡された。年の功は凡そ40台と言ったところか……眼光に隙はなく……今はスーツを着ているがその中の肉体は凡そ年齢には似つかわしくないだろう。椅子に座ってはいるが今もし襲撃を受けても何ら問題はないと書類を渡しに来た男は思う。
この男もいくつもの修羅場を潜り抜けた。現在いる組織……公安0課でもトップクラスの腕前をもつ。
「獅童君……もう少しきちんと纏める気はないのかね……」
「すいません。デスクワークは苦手なもんでね」
そう言った獅童と言う男の悪びれない言動に相手の男タメ息一つ吐いて終わる。
「遠山キンジ……か」
「最近急に名前が出てきましたね。あの遠山金叉の次男坊でしたよね……」
「……戦ったらどっちが勝つんだい?」
「間違いなく俺ですよ。あいつは強い……だがあれはアマチュアだ。所詮はガキのお遊戯ですよ」
「手厳しいね」
「事実をのべただけです」
獅童と言う男は謙遜も過剰評価もしない……普段の言動から想像できないかもしれないが彼はそう言った目は確かだった。
「そう言う点では桐生も同じです。あいつはアマチュアだ……そもそも戦いの中で動きが鈍くなるような事態に陥る時点でバカです」
「そう言う評価の時は君って人が変わるねぇ」
そんなことを言いつつ男は書類を置く。
「だが今回の一件で間違いなく遠山キンジは世界から一目おかれるだろう……なにせ極東戦役を終わらせた男だ。それに応じバスカービルと言うチーム事態が見られることになる……」
「敵が増えますね」
「だろうね……できるなら死んでもらわれると困るんだがね……」
「ですが……こいつ嫌われてますよ……あんたの下でも消した方がいいんじゃないかて言われてんじゃなかったんでしたっけ?
「今は抑えてるけどね……これ以上何か起こされると……少し面倒だな」
総理……そう呼ばれた男の目には何処か悲しげな……そんな色が写っていた……
今回でやっと欧州編終了……次回は対談やってそれから緋緋神編ですね。