「と、トオヤマ……キンジ……」
宝石のような色の瞳……マシュマロのように白く、柔らかそうな肌……そんな少女には似つかわしくない血のついた服と地面に落ちてるのは弾丸だろうか?更に腹部には傷がある……既に縫い合わせてあるが弾痕なのは見ればわかる。まさか自分で治療したのか?
「おい、こんなところで何してるんだ?しかも俺の名前をどこで知った?」
キンジは警戒しながら少しずつ近づくと突然相手の少女は平伏……と言うか土下座をしてきた。
『へ?』
キンジとロキがあっけにとられると少女は口を開く。
「わ、私は
『………………』
キンジとロキは銃を降ろす。突然の申し出に困惑中だ。だが嘘をいってる感じはない。しかし……
「残念だったな……リサ。俺たちは
「え?ですが……トオヤマ……キンジさん……ですよね?」
「悪いがさっき裏切り者認定されちまってな……仲間一人おいてきてなんとかここまで逃げ延びたんだよ」
「じゃ、じゃあ……」
「悪いな、俺も追われる身だ」
「そんな……」
リサと名乗った少女は肩を落とす。
「つうか……お前なんで怪我してたんだ?」
「はい……取り合えず塞ぎましたが……私は
「…………」
この弾丸の大きさ……考えるにたぶんワトソンの銃弾じゃないか?多分そうだ。あいつ遠慮なしに撃ったんだな……
「だが感染症とか良いのか?」
「私は体質でそういうのは大丈夫なんです。更に回復も早いですし……」
恐らくそういった体質もあるから任されたんだろう。つうかタイミングよく起きた
「ですがもう痛みで動けなくて……もう降るしかないと考えていたのですが……」
「そうか、じゃああとは頑張れよ」
心配ではあるがここで止まってるわけにもいかない……こっちも追われてる身なんでな……ジッとしているわけにもいかないとキンジはロキを連れてリサを尻目にして先を急ぐ。
「良いの?」
「誰かの心配してる場合じゃねぇだろ、こっちも命狙われてんだし……」
「…………ならひとつ聞くけどなんで十歩ほど歩いて踵返してるの?」
とロキは呆れた視線を投げ掛けるがキンジは無視を敢行した。
「?」
リサはいきなりキンジが戻ってきたため何なのかわからず首をかしげた。それを見ながらキンジは胸ポケットの武偵手帳から注射器をだしリサに渡す。
「痛み止めだ。一回切りしか使えねぇが無いよりマシだろ、感謝しろよ……俺も脇腹が痛いんだ……あるやつに蹴っ飛ばされてな」
今思い出してもムカッ腹がたつあの中二野郎を思いだしキンジが苦い顔をする。
「はい?」
だがリサはなぜ渡されたのかわからないといった表情だ。
「ここでお前をそのままにしていくと夢に出そうなんでな。安眠は大切だ……それに俺が男だし痛みにも慣れてる。だがお前はどう見たって非戦闘員の女だろ?考えるまでもなくお前に優先権はある」
そういって今度こそ先に進むため背を向けた……すると、
「ま、待ってください!」
「……今度はなんだよ」
キンジは突然リサに話しかけられ眉を寄せながら振り替える。
「ど、どうやって
「…………宛はないが取り合えずリバティーメイソンやバチカンの追撃が来ないところまで離れる」
そういったキンジを見ながらリサは口を開いた……
「でしたら……私に任せてもらえませんか?」
「なに?」
「私に逃亡先に心当たりがあります」
リサの突然の提案にキンジは更に眉を寄せたのだった。
「ぷふ……ぷふふ……」
「ロキ、静かにしてろ……怪しまれる」
リサの提案のあと……キンジとロキはリサの提案を受け入れる形でリサに連れられオランダ行きの電車を待っていた。なんでもリサはオランダに土地勘があり言語や更に
「俺だって女装するなんて予想外だったぞ……」
「大丈夫ですよキンジ様、よくお似合いです」
「嬉しくない……」
そう、キンジは欧州にてヨーロッパ美人にされてしまった。少しきつめの美人……髪が黒いだけで完全に銀河鉄道999のメーテルだ。クロメーテルとでも名付けたろうか……だがそのあまり似合いっぷりにロキは横隔膜を痙攣させ腹筋に絶大なダメージを受けていた……
「写メとってお姉ちゃんたちに送っていい?」
「やろうとした瞬間お前の携帯に風穴開けるぞ……」
キンジはわりとガチの怒り口調だった。だが喋るとキンジの声なので大きな声は出せない……兄の金一は女装の達人で声もカナの時は変わっていた……今度習うか、何て考えて自己嫌悪に陥るのを既に数十回やっている……こんな罪な才能はいらなかった……もうマジで泣きたいぜ……一毅がこの場にいたらその場を転げ回っていただろう。笑い死んでしまうこと請け合いだ。
「しかし遅いな……」
「キンジ様、よくあることですのであまりキョロキョロしないでくださいね」
「そうだよ、日本みたいなのが珍しいんだから」
キンジはマジかよと頭を抱えた。日本じゃ三分遅れたって謝罪のアナウンスが入るってのに……これが文化の違いってやつか?
「ん?」
すると、やっと電車が来た。見た目がなんか汚れてて犬の鼻みたいな形状の電車だがそれにリサを筆頭にキンジたちは乗る。
「ここです」
とリサに言われ個室に入る。
「なぁ、こんな高そうなの大丈夫なのか?」
「ヨーロッパの電車は個室が多いんだよ?」
それは初耳だ……全く、文化の違いってのは恐ろしいぜ……何て考えつつ外を見る。一毅は無事だろうか……あいつが死ぬとは思えないが怪我したり腹をスカせたりしてないだろうか……なんと言うか……ヨーロッパに来てからろくな目に遭ってない。普段のメンバーがいないと言うのも精神的にも負担をかけているのはキンジも理解していた。慣れない土地に慣れない人物たちとの会話……ロキはまだマシだがそれでも実際これだけ会話するのはヨーロッパに来てからだ。なんと言うか……一毅がいない状況と言うのは喋りなれた相手がいないと言うことだ。それだけでも気が滅入る。
「ん?」
すると、隣に部屋で何か声が聞こえた……
「切符の確認に来たようですね……キンジ様、寝た振りをなさってください」
「え?あ、ああ……」
キンジは慌てて寝た振りだ。そこに切符の確認にきた乗車員が入ってくる。数度言葉のキャッチボールが(外国語だから分からんが)交わされリサが声をかけてきた。
「もう大丈夫ですよ」
「何だったんだ?」
「あの車掌さん遠山キンジ先輩も起こしてくれないかって言ってきたんだけどリサさんがとある名家のご令嬢であるのに2等車に乗る倹約家の人がお疲れなのに起こすのか?って返したんだよ」
「
「触りくらいね」
触りくらいでそれだけわかれば上等な気がするが……
「だがなんで倹約家なんだ?」
「オランダは質素倹約し、その貯まったお金を募金するのが美徳とされているからです。あの車掌さんはオランダ訛りがありましたのでもしやと思いやったら成功しました」
「スゴいな……」
キンジは拍手したくなった。分かったってバレないために演技力は必要だ。あんなピンチの状況でもリサは相手の特徴から推理し切り抜けて見せた……簡単なことではない。
「そんな……これくらいなんでもありません。私なんか臆病者ですし……喧嘩だって強くありません」
「いや……喧嘩が弱くたってそんな恥じる必要ないだろ……寧ろ……うちの周りなんか女が強すぎるくらいだしな……」
「今の録音しとけばよかったなぁ~」
キンジはロキの呟きを流しつつ言葉を続ける。
「そ、そうでしょうか……」
「ああ、だから気にすんな」
リサはハニカミながら笑うとキンジも頷いて外を見直す。
「それで何処にむかってんだ?」
「オランダのブータンジェと言うところです」
オランダと言うと……風車が思い付くキンジだが前に武藤がオランダとかは日本で違法なのも規制が緩いとか言っていた気がする。
「じゃあ暫くゆっくりできるね。そう言えばリサさんって何で戦役なんかにいるの?」
確かにキンジもそれは気になった。数回言葉を交わして感じたがこのリサと言う少女は戦い向きではない。さっき体質で鉄砲玉紛いのことをさせられていたのは察する事はできたがそもそもまず戦役に参加してることからして可笑しい性格だった。
「…………勇者様を探しているんです」
『…………は?』
キンジとロキはポカーンとした。
「勇者って……魔王とか倒す?」
「正確には私が支えるべき主人を探しているんです。私の一族は代々メイドや従者をし、そう言った御方に仕え、その方と交わっていくことで続いてきた一族です。私の母や祖母もそうやって続いてきました。でも私はまだ……見つけてません」
「そんな焦んなくたって見つかんだろ……のんびり探して行けよ、仕える相手なんぞ焦ったっていいもの見つかりゃしねぇもんだろ、時間かけて見定めた方がいいだろうし」
「…………そうですね、見てみようと思います」
「……?……いや、俺を見るんじゃなくてお前が主人になってほしい相手を見ろって話だぞ?」
「はい」
にっこりリサは笑いキンジは首をかしげる……それを見てロキはやれやれまたかと肩をすくめたのであった……
【バスカービル日記】
某月某日……執筆者・キンジ
ある日アリアが突然チーム親睦のために全員で交換日記やるわよと広辞苑みたいな厚さの日記帳を買ってきた。今日からやるらしく取り合えずリーダーである自分かららしい……めんどくさいが書かないともっとめんどくさいので取り合えず書くことにする。
取り合えず今日はアリアから朝に40発、昼間に30発、夜に55発撃たれた……もしかしなくても犯人に撃つより俺に向けてる方が多いんじゃないだろうか?今度集計してみようと思う。以上……
次は一毅らしい。