緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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本日9月23日はアリアの誕生日ですね。おめでとう永遠のロリータヒロインアリアさん……ん?誰か着たようだ。


龍と厄水の受難 前編

「っ!」

 

一毅は飛んできたエドガーと言うカラスの爪を躱す。こいつが意外と鬱陶しい。他にもカツェ達を相手してると言うのに死角からちょいちょい攻撃してくる。心眼があるから回避は可能だがそれでも意識が割かれるため面倒である。

 

「この野郎!」

 

と一番自分に殺意をぶつけてくるカツェが来た……相当覗かれたのに腹を立ててるらしい。不可抗力なんだがなぁ……ってこういうのって何時もならキンジの仕事だよな。何だって俺がこんな目に……と一毅はぶつぶつ言いながら躱す。そうしながら、

 

「お前も女ならちったぁ言葉遣いに気を使ったらどうだよ」

「覗き魔やろうには言われたくねぇ!」

「だから不可抗力だって!」

 

と言い訳をしつつカツェのナイフを回避して一毅は距離をとる。

 

カツェの戦闘能力は高くない。勿論彼女は魔女である。近接戦闘より魔術系統が得意なんだろう。お陰で怪我した体にも優しい。だが……

 

「なら今度はこれだ!」

「っ!」

 

カツェは突然水筒を取り出すと中身をぶちまけた……するとそれが弾丸のように襲いかかる。

 

「おぉっと!」

 

一毅はその光景に少し驚きつつ回避できるのはして、できないものは刀で弾く。因みにその水弾は後ろにあった木箱を簡単に貫通しているのを考えると直撃したら結構危なそうだ。

 

「そっちは大丈夫か?」

「勿論だよ」

 

一毅はキンジの方に声をかけるとキンジは相手を優しく捌いてやりながら床に座らせる。ヒステリアモードなので極力女性には優しくだ。孫みたいなのは例外として……

 

「この!」

 

イヴィリアが銃を撃つ……

 

「ん?」

 

が、銃弾はパシッとキンジがキャッチして止める。

 

「あづづ!」

 

無論オロチをしていないので手を軽く火傷したが……

 

「あり得ないわ……銃弾を刀で弾いたりキャッチするのを普通のスキルとして使うって……」

 

イヴィリアはジトォっと言う目で見る。他の面子も同じような表情だ。失礼しちゃうぜ。

 

「さて……どうする?」

「一気にいくしかないだろ……こんな場所じゃ……」

「だよなぁ」

 

そう言って二人は意思疏通を終えると一気に足に力を込めて二手に別れる。

 

「来るわよ!」

 

イヴィリアが命令して隊列を組んだ相手が銃をぶっぱなす……

 

「おぉ!」

 

それをキンジは壁を蹴って飛び上がって回避するとベレッタをぬいて相手の銃をフルオートで全て撃ち落とす……

 

『なっ!』

「オッラァ!」

 

反対に一毅も放たれる銃弾を刀で弾いたり回避したりと心眼をフル稼働させ一気に間合いを詰めると銃を全て叩ききる……

 

「いただき!」

 

しかもそのまま相手の脇をすり抜けパラシュートを奪うと一つキンジに投げる。

 

「ありがとよ!」

 

キンジはそれをキャッチして下に着地すると二人は一気に解放されたハッチの方に走り出す……が、そこは問屋が卸してはくれなかった。

 

「やべっ!」

 

一毅たちの死角から襲いかかるエドガー……一毅は咄嗟に心眼でキンジを突き飛ばし回避したがそこを狙ってカツェが銃を撃つ。

 

「くぅ!」

 

刀で弾くがなんと無理な体勢が不幸を呼んで手を滑らしてパラシュートを落とす。

 

「あぁ!」

 

無論パラシュートはそのままハッチの上を転がりそのまま落下していった……

 

「ぜってぇ逃がすかぁ……」

 

カツェは正に死に物狂い……覗かれたのがここまで人を変えるとは……と思いたくなるほどだった……と一毅は思ってしまうほどカツェがしつこい。

 

「ナイスよカツェ」

 

こっちは全然ナイスじゃねぇよとイヴィリアの言葉にたいしてキンジと一毅は思う。さてどうしよう……もう脱出するつもりだったため開閉したハッチの上に二人はいる……もう一度パラシュートを取りに行くとなると中々面倒だ。相手は武装してる……撃ち落とされたり切られたりした相手も既に積んであった銃器で武装し直している……パラシュート一つで一毅とキンジは降りれるだろうか……どっちかがアリアやレキくらい軽かったりすれば別だが残念ながらどっちも体重はある程度はある。下手すると地面と激突だ……

 

「一毅……NOロープバンジーは平気か?」

「この高さからやったら流石に死ぬと思うんだが……」

 

だよなぁ……とキンジが苦笑いすると相手が距離を詰めてくる。

 

「どうするよ……」

「あぁ……天にでも願ってみるか?あぁ神様……どうか私たちをお助けください……何てな」

 

キンジがふざけて祈った瞬間……

 

『え?』

 

なんと突然飛行船が激しい揺れを生じた……

 

「うわわ!」

「おっとと!」

 

恐らく気流が激しいところにはいったんだろう。突然の揺れにその場の全員が踏ん張って耐えていた……

 

「おいキンジ!お前何時から祈祷師にでもなったんだよ!天候までお前は誑かしたのか!」

「知るか!……いや、もしかして……」

 

キンジはなにか心当たりがあるようだ。

 

「俺たち昨日今日とメーヤと行動しただろ?ジャンヌに聞いたんだがメーヤの幸運は多少伝染するらしい……何かしらの形で武運に影響を与えたんじゃないか?ほら……窮地を改善してくれる的ななにかをさ」

「マジかよ……ならさっさと消せ!俺たちも危ないわ!」

「出来てたらしてるっつうの!」

 

何て二人が言い合ってると激しい揺れがまたきた……

 

「くっ!」

 

一毅とキンジは素早く伏せて耐えた……だが小柄なカツェが宙を舞う。

 

「カツェ!」

 

それを見た一毅は素早く立ち上がり疾走……カツェの体を掴もうとするが揺れが激しく素早い移動は無理だ……その間にカツェの体はハッチの外に出てしまう……

 

「クソ!一毅!」

 

それを見たキンジは素早くパラシュートを一毅にパスする。

 

「助かる!」

 

一毅はそれをキャッチするとそれを身に付けながらカツェを追ってハッチから飛び降りる。

 

「くっ!」

 

気流が激しい中を飛んだため目を開けているのが辛い……だがカツェを見失わないように一毅は空気に抵抗しない体勢で一気に落下していった。

 

「さてと……」

 

一方キンジはすぐに止んだ揺れの中パラシュートも失い敵に囲まれている……一毅を追いかけるのは流石に死ぬだろうし無理だろう……そうなるとだ……

 

「はぁ……降参だ」

 

投降……しかない。幾らなんでもこの状況を打破する術はない。ならせめて敵地くらい見ていこう。

 

そう思い銃等の武器を向こうに転がす。一応銃は相手が持っていくらしいが弾は勿論捨てられた。

 

「捕らえなさい」

『はっ!』

 

向こうは警戒しながらキンジをとらえる……流石に油断はしてくれないようだ。まぁ……当たり前だろうな。

 

「カツェ……」

「大丈夫だよ」

 

カツェが落ちていった方を見るイヴィリアに手錠(滅茶苦茶頑丈だ)を付けられるキンジは言う。

 

「え?」

一毅(あいつ)がそう簡単に死ぬとは思えない。それに俺たちは武偵だからね。武偵法9条を破るような真似はしない。カツェも自分もどっちの命も守るさ」

 

キンジは一毅が落ちていった方を見ながらそう言った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カツェ!!!!!」

 

その頃一毅は急速落下しながらカツェになんとか追い付く……

 

「ち!それ寄越せ!」

「てめぇは助けに来た恩人にたいしてそう言う恩の返し方すんのか!」

 

と、追い付いたカツェからパラシュートを奪われそうになり一毅は慌ててカツェをがっちりホールドしてパラシュートを開く……

 

『っ!』

 

急激な減速……だがそれでもまだかなりの速度が出ているのにもう地面が見えてきた……これは……最悪だ、雪山である。だがもう動けない。速度は出ているが……仕方ない!

 

「カツェ!喋るなよ!」

 

と一毅は自分がカツェと地面の間に入るようにカツェを動かし地面に着地……と言うか叩きつけられる……

 

「かはぁ……」

 

そしてそのまま地面をしばらく滑り遂に止まった……

 

「イッテェ……」

「クソ!」

 

カツェは慌てて立ち上がり一毅もパラシュートを外しながら立ち上がる。

 

「窮地に一生……ってやつかね」

 

正しくは九死に一生だがここには突っ込むものはいない。だがここが斜面で助かった……平面だったら危なかったが斜面だと地面に当たっても滑って衝撃を逃がしてくれるからだ……これもメーヤのお陰か?するとカツェが銃を向けてきた。

 

「おいおい……俺に銃弾は意味ないの学んだだろ……それに雪山で銃何ざぶっぱなそうもんなら雪崩が起きる……と教科書に乗ってた気がする」

 

一毅がそう言うとカツェは舌打ちして銃をしまう。

 

「しかしここはどこの雪山だ?」

「多分道のり的にフランスとイタリアの真ん中辺りに位置するモンブランだよ」

 

へぇ、そんな美味しそうな名前の山もあるのか……さて、

 

「で?どっちがフランスだ」

「知るか!」

 

カツェがガウっと吠えてくる。触らぬ神に祟りなし……クワバラクワバラ……だな。

 

「仕方ねぇ……もう空も暗いし……ここで野宿だな」

 

雪山を暗い中歩くのは自殺行為だ。龍桜のお陰で暖かいがそれでも寒い……その中体力を無駄に消費できない。

 

「よっと」

 

なので刀を鞘ごと地面に刺してその上にパラシュートを被せる……これで即席テントだ。少し吹雪いてきたしさっさとこの中に入ろう。

 

「おいカツェ。お前も入ったらどうだ」

「お前と同じテント擬きの中だと!?ふざけんな覗き魔と一緒とか操の危機しかねぇよ!」

「誤解だっつうの!俺は好き好んでロッカーにいたんじゃないんだよ!あそこしか隠れる場所がなかったんだ!それに言ってるだろ!お前じゃ唆るもんないわ!」

「あんだとぉ!」

「あんだよぉ!」

 

グギギギ……と睨むがフンっと一毅は鼻を鳴らす。

 

「じゃあどうすんだ?お前段々吹雪いてきた中で立ち往生でもするきか?」

「お前がテントの外にいればいい!」

「俺が死ぬわ!」

 

そう言うと一毅は一人でテントの中に入っていく。だが、

 

「おらよ!」

「わぷっ!」

 

突然顔になにかがぶつかった……

 

「それ着てろ」

 

そう言われカツェはみてみると龍桜だった。

 

「お前その格好じゃ寒いだろ」

 

一毅は一応冬用の制服だ。だがカツェはタイトスカートにお世辞にも防寒性能があるとは思えない服装だ。

 

「こ、これくらいへへへへへいきききききき」

 

カツェは強がるが全然強がれてない……

 

「お前滅茶苦茶歯をカチカチ鳴らしてるぞ……」

 

カツェは一毅を睨むがこのままでは凍え死んでしまうのでバッと龍桜を着た……一毅の体格に合わせてるので裾を引き摺ってるのはご愛敬だ。

 

「おら入れ、ほんとに吹雪いてきたし死ぬぞ。安心しろって、なにもしない」

 

そう言って一毅はテント擬きに入る。

 

「……ちっ!」

 

カツェは渋々とテントに入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本格的に吹雪いてきたな……」

 

一毅は外の様子をうかがう。如何せんパラシュートをテントに見立てただけなので防寒性能は皆無だし服装が服装だし……カツェも結局寒さには耐えられず龍桜をがっちり着込んで寒さをしのぐ……くそ眠いぞ……

 

「寝たら死ぬぞ……」

「お前だって瞼が重そうだが……」

 

二人とも寝そうになりながらも必死に耐える。こんな寒さの中寝たら明日には氷付けだ。こんなところで死んだらレキたちが悲しむ。

 

「……何か話すか……」

「……覗き魔と話すのは不本意だが良いぜ……」

「だから違うって……まぁいい、お前普段は学生なんだな」

「ちっ!」

 

見られたくないもんを見られたと言う顔をカツェはする。

 

「見てたのか……美術館で」

「ああ……お前完全にボッチだもんな」

「嫌われ者だからな……魔女ってのはいつだって」

「そんなもんか?」

「ああ、それの私がナチスの関係者の血筋ってのは何処かで噂程度にはバレてるみたいでな……学校じゃ先生だって私を避けるのさ」

「……そうか」

「……何だよ、普通そう言うときって何か別の言い方あるだろ」

「お前可哀想だな……とか辛いな……とか言われて嬉しいのか?俺はお前はそう言う性格じゃないと思ってたんだが……」

「ケケケ……結構見てるじゃねぇか、魔女なんて恐れられてなんぼ、嫌われてなんぼさ……それに私には魔女連隊があるしな。私はそこの皆に理解されてればそれでいい」

「……それはわかるよ」

「お前も友達いなさそうだもんな」

「嘗めんな、俺は学校にいれば四方八方からもう皆が集まって……ごめんなさい見栄張りました」

「分かりやすい嘘過ぎて見栄にもなってねぇけどな」

 

カツェの半眼を一毅は遠い目で躱す。別に人見知りではないが話すことがある人間はいても友人と呼べるのはバスカービルの皆や一年ズだけだと一毅は思っている……キンジは親友と呼べるからある意味別枠だが……

 

「まぁ実際は俺もハブラれ気味だよ、何せこの見た目だ……一応いっとくが俺今睨んでねぇからな」

「え?そうなのか?」

「ああ、俺は普通の顔してても睨んでるみたいな顔になってしまうからうちの体育教師になんか日常的にボコボコだぜ……」

 

一毅がそう言うとカツェが苦笑いした。

 

「そういやお前と(エネイブル)は長い付き合いなんだろ」

「まぁ、物心ついたときからはな……」

 

すんでる場所が小学校まで違ったのでその間は長期休業とかに限られたがそれでもキンジとは不思議と馬があって仲がよかった……今思うと沖縄では友達ができない自分に父がお節介を焼いたのだと思うが……

 

「俺小学校の頃は避けられててな……学校の皆に」

「………………」

 

その頃から目付きが悪くガタイもよかった……無論商店街等の顔見知りも多いが同世代の友人と言うのは一毅にはいない。

 

「だから俺は結構キンジには感謝してるんだ。最近自覚したんだ。あいつのお陰で俺の世界は広がってる。あいつの出会いが俺の世界を広げる……」

 

キンジと一緒だったから……アリアに出会い……白雪とも再開し……理子とバカやったり……一年生たちとも深く付き合うようになって……

 

「あいつが武偵になるって言わなかったら……多分俺は武偵目指さなかったし……そしたらレキやライカ……ロキともで会わなかったと思うんだ」

「……恵まれてんな」

「まぁな……」

 

コックリコックリ船をこぎそうになるが首を降って意識を覚醒させながらながら二人は話す。

 

「俺は友人とか恋人には恵まれてるんだ。数より質って言うのか……まぁ俺は恵まれてる……それは自覚してるよ」

「けっ……私だって負けてねぇよ……周りは魔女だの悪魔だのと言うがそんなもん関係ない……私のとってあそこは大切な居場所だ……」

「…………お前さ」

「あん?何だよ」

「いや……意外とかわいいところあんだな」

「んなっ!ちっげぇよ!」

「ついでに結構良い奴だな。お前」

「チゲぇってつってんだろ」

 

ドゴッ!っとカツェの座ったまま放たれた足をつき出すような蹴り……それが一毅の胸にクリティカルヒットした……

 

「ぐほぅ……」

 

呂布につけられた傷がある場所への蹴りに一毅は割りとマジに顔をしかめた。

 

「お、おいどうした」

 

いきなり一毅の顔が青くなったためかカツェが気にしてきたが一毅は大丈夫だと手を振る。

 

「ほら、日が上がり始めたぞ」

「風も収まってきたし動けそうだな」

「じゃ、動くか」

「……お前ほんとに寒くないのか?」

 

一応龍桜を借りっぱなしだったのは少しカツェは気にしてたらしく聞くが……

 

「俺は筋肉量が多いからな……体温がいつも高めなんだ」

「ふぅん……」

 

そんなやり取りをしつつ外に出た……日がゆっくり上がっていき雪山がキラキラ光る。

 

「で?どうやって下山するんだ?」

「歩いてだよ」

「だよね」

 

一毅が苦笑いするとカツェは背を向ける。

 

「ほら行くぞ」

「なんだ連れてってくれるのか?」

「一応助けてもらったし龍桜(これ)を借りてるんだ。梺までの案内くらいしてやるぜ」

「そいつは助かった」

 

そう言って二人は山を降りるべくあるきだした……




レキ「残り日数も少なくなって着た人気投票ですがまだ間に合います。ご協力していただけたら嬉しいです(上目遣い)」








と言うことで今回は一毅の呂布戦を経てたどり着いた思い……と言うかあまり語らなかったキンジへの思いですね。腐的な奴ではなくですよ?

呂布との戦いを経て一毅は改めてキンジに限らず仲間内の繋がりや覚悟を決めてましたからそれを少しだけ話させたって感じです。

欧州ではそう言った一毅の精神的な変化を書いていけたら良いなぁ……とか思ってます。

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