緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍の仮面舞踏会

「うーん……」

 

ロキからの告白の次の日……一毅はロキと一緒にキンジとジャンヌの二人と合流していきなりスーツとかドレスとか売ってる店に連れ込まれ白スーツを着せられた……無論キンジもサイズ以外は全部同じのやつを着用済みである。

 

「こう言うかたっくるしいのは嫌いだ」

「仕方ないだろ……一応舞踏会なんだしよ」

 

と一毅の呟きにキンジは突っ込んだ。

 

「そういえばお前ロキとなんかあったのか?」

「え?何でそう思うんだ?」

「機嫌がよかったから何となくだよ」

 

この親友は自分の色恋は儘ならぬ癖に他人のには聡い……まあそこが遠山キンジクオリティーなんだがな……

 

「まあ色々っつうか……まあ察してくれ」

「……取り合えず察したよ……お前も大変だな」

「お前だってアリアと離れて寂しくなってないか?」

「んな訳ねぇだろ。フランスにきてまだ二日目だぞ。麻薬じゃあるまいし」

「でもオランダは平気だったはずだぜ?」

「あぁ……武藤が言ってたな。他にも売春とか日本じゃ違法行為なのだ殆ど合法だって」

「いつか行ったら見れるぜ?」

「その前にオランダには行くことないだろ……ちゃちゃっと欧州を優勢にして日本に帰りたいんだ」

 

アリアに会いたいからな……と一毅がキンジの声真似をしてからかうとキンジの額に青筋が走ってベレッタをちらつかせてきた……流石に抜いてくる真似はしなかったが一毅は素直に謝っておく……何てことをしてるとジャンヌとロキが出てきた……

 

二人とも綺麗だった……一毅とキンジも突然の登場……と言うか降臨した二人に唖然としてしまった。

 

女は化ける……化粧、服装、成長……様々な要因で生まれ変わったかのようになる……と昔金一が言ったのを二人は思い出していた。

 

「ど、どうかな?」

「似合うか?」

 

と聞いてくるロキとジャンヌに一毅とキンジは頷きしか返せない。反則級の変貌……女って怖いね。

 

「で?どこにいけば良いんだ?」

「ガルニエ宮殿だ」

 

キンジが聞くとジャンヌが答える。何でもそこで師団(ディーン)の戦士であるメーヤと合流するらしい。

 

メーヤか……確かバチカンのシスターででっかい剣をぶん回す人だ。少し前に話していたこともある。

 

「メーヤはとにかく運が良いからな」

「運って……幸運とかの?」

「ああ、そう言う魔女でな。武運に恵まれてると言うやつなんだ。相手取るととにかく不幸が降りかかってメーヤ有利に運ぶようになる」

「何か眉唾な話だぜ」

 

とキンジが言うとロキが口を開いた。

 

「でも昔から運とかは研究されてきたもっとも原始的な魔術なんだよ遠山キンジ先輩。それに二人の存在よりよっぽど現実的な気がするよ?」

『おい……』

 

ロキの言葉にキンジと一毅は眉を寄せた。自分達の存在は超常現象より摩訶不思議かい。

 

「ま、何にせよまずはメーヤと合流してからでないと話は進まない。行くぞ」

 

と、ジャンヌが店の前に停めておいたタクシーに一毅たちは乗り込んだのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ……」

 

店からタクシーにのって暫くすると見えてきた建物に一毅は唖然とした。

 

「でっけ……」

 

当然外見の華やかさもあるがそれを含め一毅は初めて見るものに眼を奪われた。キンジも随分金を掛けてると俗物的な感想を漏らす。

 

「さて、お前たち」

 

とタクシーを降りるとジャンヌが突然仮面を渡してきた。

 

「何じゃこれは」

「言ってなかったか?これは仮面舞踏会だ」

『……聞いてねぇよ』

 

とジャンヌが首を可愛らしくかしげたが一毅とキンジは首を横に降る。

 

「まあ良い、中ではつけていろ。後はこれだな」

 

とジャンヌは馬のぬいぐるみを渡してきた。

 

「メーヤは牛のぬいぐるみを持っている。言わば目印だ」

「ふーん」

 

一毅は仮面を着けながら馬のぬいぐるみを手でポンポンやって遊ぶ。

 

「それじゃあ行くか」

 

キンジが言うと四人はバラバラに行動を開始した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけで欧州に来て初めて放し飼い……もとい、一人行動の一毅だが人の間をすり抜けつつメーヤを探す。牛か……牛……牛乳……乳……そう言えばメーヤって胸でかかったよなぁ……

 

(って何を考えてんだ俺は……)

 

一毅は首を横に振って頭に浮かんだ意識を追い出す。それにしても人が多い……この中からメーヤだけ探せと言うのは無茶なんじゃなかろうかと考えてしまう。

 

「はぁ……」

 

とは言えこのパーティの中で景気悪いオーラを出していては浮いてしまう。さてどうするか……

 

「ん?」

 

ふと一毅が顔を動かすとその先にはバーが見えた。ふむ……フランスは確か飲酒年齢はワインやビールは16以上……蒸留酒等は18以上で飲める……一毅はまだ17才なのでまだワインやビールしか飲めないが飲んでも問題はない……

 

「飲んじまうか」

 

一毅は軽やかな足取りでバーに向かう。どうも中国以降この男は酒の味を占めてしまい日本では我慢しているがまた飲みたいと言う気持ちがあった……外国と言うことでここはひとつ飲ませて頂きましょう。

 

だが一毅は無料で種類を提供してくれるバーに向かって足を動かそうとして思い至った……

 

(俺フランス語喋れないから注文できないじゃん)

 

こっちに来てからの会話は全てロキに任せてたので一毅はフランス語を話せない……「こんにちわ」ですら未だに「ハロー」と思っており英語とフランス語の区別がつかない一毅では酒一杯の注文すら【フェルマーの最終定理】を解くのに匹敵しかねないほどの難問である。

 

因みに【フェルマーの最終定理】とはフェルマーと言う数学好きの男が死ぬ前に残した問題で数学界の最大難問と呼ばれその問題の内容は《3 以上の自然数 n について、xⁿ + yⁿ = zⁿ となる 0 でない自然数 の組が存在しない》と言うのを証明せよと言うものだ。一見簡単に見えて何とそれが発表されてから360年間誰にも証明、反論出来なかった恐るべき問題であり詳しくはグーグル大先生に聞いてほしい。

 

まあともかく日本人の意思疏通ですら言葉を間違えて覚えていて怪しい一毅が外国人の意思疏通なんてものは宇宙人との交信をするようなものだ。ムリムリ絶対無理。と一毅は諦めた。だがよく見るとバーの近くに人だかりができていた。何事?

 

「え?」

 

なんの騒ぎかと一毅は見てみると体が固まった……何せその視線の先には……

 

「プハァ……」

 

牛を小脇においてホルスタインのような胸を揺らしドデカイ剣をポイっと無造作においている女性がいた……いや、この女性は恐らく間違いないのだが……

 

「メーヤ?」

 

人混みを掻き分け近くにいくと小さな声で呟いて(勿論日本語)みた……そして、

 

「はい?」

 

とその女性は振り返った……ああ、やっぱり……

 

「よう……メーヤ」

「その声は……一毅さんですか?」

「ああ……」

 

一毅は頷くとメーヤはパァっと仮面越しでもわかる笑みを浮かべた。

 

「なんと無くここで待っていれば見つけていただける予感がしたんです」

「さいですか……」

 

そりゃあこれだけ目立てば嫌でも見つかるだろう。

 

「あ、ではこれどうぞ」

「は?」

 

いきなり渡されたのは酒の瓶だった。

 

「ほら、こういうのって確か駆け付け一杯って言いますよね?」

「ああ~」

 

使いどころを間違えているのだが外国育ちのメーヤと日本語があやふやな日本人の一毅では突っ込むものはおらず一毅は念願の酒を飲んだ。喉を通っていく独特の熱……胃袋にズシンとくる後味……結構強い酒じゃないか?

 

「どうですか?」

「やっぱり美味しいですけど俺17なんで多分蒸留酒は違法……」

「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ」

 

おい、シスター……良いのかそれで……

 

「それにそんなこと気にするような方はこのような仮面舞踏会に参加しませんよ」

「どう言うことだ?」

 

諦めて貰った酒を一毅は飲みつつ解散していくギャラリーを見送りメーヤに聞く。

 

「素顔を隠しながらこのような場所にこられるのです。ここは秘密の会合や密かな蜜月を過ごすために仮面をつけ、そして楽しむ場所です」

「そう言うことか……」

 

どおりでキナ臭いオーラの人が時々いたわけだと一毅は思う。

 

「おい一毅」

 

と、突然呼ばれ振り替えると他の面子が丁度来た。

 

「おぉ、メーヤここにいたのか」

「あらジャンヌさん、それに遠山さんと……ええと」

「開幕の時にウルスの使者がいただろ?その子だよ」

「ロキです……」

 

ロキは自己紹介しながらもその視線はメーヤの胸にロックオンしていた……そして自分の胸をみて……

 

「世界って広いねお兄ちゃん」

「は?」

「私スタイルでは負けって思ったことなかったんだけどやっぱりヨーロッパはボインと言うかバインと言うか……とにかく凄いよね」

「はぁ……」

 

一毅は曖昧に頷いた……だって他にどう言えと?

 

「ま、お姉ちゃんとライカには勝ってるけどね!」

「二人に激怒されるぞ……」

 

一毅は苦笑いしつつそう言う。

 

「よし、メーヤと合流できたことだし移動するぞ」

「え?」

 

ジャンヌの言葉に一毅が嘘でしょ?みたいな顔をした。

 

「何かあるのか?」

「いやお酒をもう少し飲みたいと……」

「よしお前らこの馬鹿運ぶの手伝え」

 

と、仮面越しでも分かるほどの怒りを放出したキンジが一毅の首根っこをつかんで引きずる。

 

「いやだぁ!もうちょっと飲むー!」

「駄々をこねるなガキかお前は!つうか未成年だろ!」

「フランスでは合法だぞコンチクショウ!」

「だぁー!うっさい!行くったら行くんだよこの大馬鹿!」

「嫌じゃぁああああ!!!!!」

「嫌でも行くんだよ!」

 

と、幼馴染み二人は仲良く?その場を後にしていく。それをみたメーヤが、

 

「仲がよろしいんですね」

「うむ……時々あの二人が付き合ってるのかと思うときもある」

「いやいやお兄ちゃんも遠山キンジ先輩もノンケのノーマルだからね?」

 

何て言う女性陣のやり取りがあったことはキンジと一毅は知らない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みにその頃日本では……

 

『っ!』

「ど、どうしたの二人とも?」

 

キンジ達の身を案じつつバスカービルと一年の面子は桃鉄大会を開催していたがいきなりレキとライカが立ち上がり驚愕する……突然の行動にアリアが聞くと……

 

『今喧嘩を売られました……』

『はい?』

 

二人の言葉に他の皆は首をかしげることしか出来なかった……




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