緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍達の決戦 決着

「オォオオオオオオ!!!!!!!!!」

 

キンジの飛び蹴り……それを孫は躱すが先程とは比べ物にならない速度を持っていた。

 

「やればできるじゃないか!」

「今度は一毅を気にしなくていいからね……君だけを見て君を倒すことだけを考えればいい」

 

そう言ってキンジは更に蹴りあげる。

 

「シャア!」

「だが甘いぜ!」

 

孫はそれを正面から受けた。更にそこからキンジの腹へと拳を振るう……

 

「オォ!」

 

だがそれを橘花で受けて絶牢……更に桜花で加速させる。

 

「逆転の極み!」

「ぐっ!」

 

自らの攻撃力とキンジの桜花で加速させた蹴りが合わさった一撃に孫は吹っ飛ぶ……しかし孫は吹っ飛ぶ方向に自ら飛んで衝撃を軽減する。

 

本来であれば眼からのレーザー……正式名称は如意棒でさっさと終わらせたいが先程撃った際に一毅に打ち消されてしまったためもう使えない。だが元々身体能力が人間じゃないので素手でもキンジと戦える。それにキンジは少なくとも拳勁を既に二発喰らっている。普通の人間であれば末に死んでるし生きていても内蔵がボロボロだろう。なのにキンジは立ち上がる。そして拳を……いや、足を振るう。どこにそんな底力があったのだろうか……確かにキンジは人間をやめたような技を使うし身体能力も十分人間をやめている。だがそれでもキンジの根っこは人間なのだ。雷に当たれば痺れるし内蔵も壊れる。一毅とは違うのだ。孫はそれが謎であった。

 

「不思議そうな顔だね」

「まあな……どこにそんな力があるんだよ」

 

孫の呟きにキンジは笑った。

 

「いやね、もう本心としては倒れていたいんだよ……寝ていたいし……白旗あげたいよ?降参したい。フラフラするし明日はたぶん血尿がでるだろうしさっきから肺の辺りがズキズキ痛むし口が血の味一色なんだ……」

 

だけどさ……とキンジは言いながらネクタイを緩めた……

 

「俺はバスカービルのリーダーだ。何度でも言うけどね。だからかな……皆に応援してもらえるだけでさ……何処からともなく力が湧いてくるんだ。立ち上がらなきゃって思っちゃうんだ……そして立ち上がっちゃうんだよね……」

 

元々リーダーと言う立ち居ちはアリアが勘でキンジなら向いてると言って他の面子がそれで納得したためであり別に望んだ立ち居ちじゃなかった。だけど……気づけば自分なりにリーダーであろうとしていた。それは素でも変わらない。

 

何でだろう……いや、多分と言う感じは理解している。多分……皆が色んな戦いの中で自分なりのプライドをもって命を賭けているからだ……皆自分より凄いところを沢山持ってる。弱かったり強かったり才能なかったりあったり……色んな人間が踏ん張って……時にはそんな凄い皆が自分に力と命を預けてくれる……ならそんな皆がいるなら……自分も命を懸けようと想ったんだ。皆のために戦おうって……皆が命を賭けるなら自分も命を懸けようって……そしてもうひとつある……それはアリアの隣にいても変じゃないように……

 

(素の俺が好きってことは……ヒスってたって同じなんだよ……)

 

良く素の自分はヒステリアモードの自分とは人格が違うと言う。それは外れてない。でも一つだけ言っておきたい。ヒスって居ようと居まいと心は同じだ。好きになる相手も同じだし嫌悪する相手も同じだ。だからよくヒスってる時の好意は違うと言い分からなくなっている。だがヒスっている自分が好きな相手と言うのは素でもそうなんだ。そこを間違えないでほしい。

 

だって何時だってアリアの言葉は一番力になったんだ……アリアがいるだけで大丈夫な気がしたんだ……アリアに対して明らかに他の皆とは違う感情を持っていたじゃないか……だけどその感情に名前をつけてしまったらもう避けられない。その感情に眼を向けなければならない。背いてはならなくなるし出来なくなる。

 

(俺だって……アリアが好きなんだ……)

 

少し甲高いアニメ声も……ちっちゃな背丈も……すぐ怒るところも……照れ屋な所も……一生懸命なところも……全部好きだ。確かに女性的な美しさはない……胸も平坦で幼児体型かもしれない……だけどそんなことはどうでもいいくらいアリアが好きなんだ……

 

今まで色んな理由をつけて思おうともしなかったけど……釣りのあとに自覚させられて……そうしたらもうどうしようもない。自覚したら止められない……逃げられない……

 

思えば普通の武偵に拘ったのはそのせいかもしれない。アリアの隣に本気でいようと思ったら普通じゃダメだ。だけどアリアと自分は釣り合わない。普通じゃなくなって、好意に向き合ったとき……それが怖かったから普通の武偵と言ったのだろう。結局いつも自分は逃げてばかりだ……

 

(でももう逃げない……)

 

キンジはボタンを2、3と外す……キンジの本気モードである。

 

「皆の期待のためにも……俺自身の為にも……もう逃げるのをやめたんだ。バックギアを壊してきてるんだ」

 

一層キンジの深紅のオーラ(レッドヒート)が強くなった。これは感情がトリガーだ……キンジの覚悟に同調するようにその力は増大する。

 

「やっぱお前は良い男だぜ……遠山」

「ありがとう。だけど手加減はないよ」

「かまわない」

 

そう言って孫はキンジに肉薄する。

 

「オォ!」

 

孫の拳をキンジは橘花で受ける。だが今度は絶牢からの返しをできないように孫は攻めてくる。だがキンジの万象の眼が孫の動きを読む……それにより全ての攻撃が決定打にならない。

 

「ウッシャア!」

「っ!」

 

キンジは孫の一撃を回避するとその隙を使って後ろ回し蹴り……それを孫はガードしたがそのままキンジは回転しキンジの渾身の蹴り……

 

「ぐぅ!」

 

なんとか孫は防ぐとお返しとばかりに蹴り返す。

 

「くっ!」

 

それをキンジは蹴りで迎撃する……

 

『オォオオオオオオ!!!!!!』

 

そこから次々と蹴りを放ち合う。キンジの深紅のオーラ(レッドヒート)による肉体を強化した蹴りと孫の元から常人を越えている脚力から放たれる蹴り……どちらも一歩も引かない。

 

『ウラァ!』

 

既に数えるのも難しいほど蹴りがぶつかり合い交差した……だが孫がその均衡を破る……

 

「ガァ!」

「っ!」

 

キンジの蹴りをギリギリで回避しつつ密着する孫……そして両拳が添えられた。

 

「憤!!!」

「がっ!」

 

本日3度めの拳勁……何度食らっても慣れることのない衝撃がキンジの体を襲う……

 

「もう終わりだ……」

 

幾らキンジでも三発もこれを喰らったら立ち上がれるわけがなかった……と言うか死んでもおかしくない。

 

そう思いながら孫は背を向けた。キンジの体がゆっくり沈んでいく……だが、

 

「この桜吹雪……」

「っ!」

 

キンジは口から血を吐き捨てながら恐らく最初で最後のチャンスに動き出した。

 

「散らせるもんならぁ!!!!!!!!!」

「ぐぁ!」

 

キンジの渾身の蹴り上げ……それにより孫の体が空中に吹っ飛んだ……そして、キンジも飛び上がる。

 

この体制はエアストライク?それとも派生技?狙いは後者だ。何故なら通常のエアストライクでは孫に返されるから……なら派生技の方だ。だが三発もいれる体力はない。一発で決めよう……

 

そう覚悟を決めてキンジはオーバーヘッドキックの体制に入った。そしてその表情は……笑っていた。

 

何処までも苛烈に……熱く……燃え上がりそうな炎……そんな笑顔であった。楽しそうに……嬉しそうに……最後の一撃を放つ。

 

「散らしてみやがれぇええええええええ!!!!!!!!!!!!」

 

アルファドライブ、ベータドライブ、ガンマドライブと3種の蹴りを叩き込んで相手を倒すエアストライクの派生技……それから更に研ぎ澄まして作り出したのがこの技である……相手を必ず倒すと言う覚悟と意味を込めてこう名付けた。

 

「ファイナルドライブ!!!!!!!!!」

 

キンジは重力と遠心力と深紅のオーラ(レッドヒート)……そして脚力……全ての要因を味方に着け孫を空から地面へと蹴り落とす。

 

その衝撃はたった一発の決定打でありながら孫の体力を一気に持っていくほどの圧倒的な破壊力……キンジに欠けていた破壊力を体現した必殺の蹴り技に孫は地面に叩きつけられた……

 

「がは……」

 

そしてそのまま孫は地面にめり込む……孫は……立ち上がらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!」

 

一毅はトンっと軽く地面を蹴ると呂布の視界から消えた……

 

「ちぃ!」

 

だがどんな動きをしようと呂布に一毅同様心眼がある。それにより呂布は咄嗟に防御した。だが呂布は冷や汗が垂れた。

 

およそ十メートルあったはずの距離を一毅は一瞬で詰めてきた……身軽とか足が速いとかそういう領域の速度ではない……しかも、

 

「オォ……」

「っ!」

 

一毅が少し力を込めただけで呂布が押される。

 

「オラァ!」

 

だが呂布も深紅のオーラ(レッドヒート)をだして押し返す……だが一毅はそれでも微動だにしない。

 

まるで巨大な氷山を押してるような錯覚……しかも一毅はこれまでずっと右手の殺神(さつがみ)だけしか押してない……つまり両腕の呂布に対して一毅は片腕……

 

明らかに普通じゃない。速度も腕力も……だがそこで終わる呂布ではない。

 

「喰らえ!」

「…………」

 

呂布はS&W M500を抜くと一毅に至近距離で発射した……これだけの口径だ……カスるどころか近くを通っただけでも凄まじい衝撃になる……だが一毅は最低限回避しただけだった……

 

「なっ……」

 

衝撃はあったはず……だが一毅には衝撃の効果がない。つまり……常軌を逸していまの一毅は頑丈でもあると言うことだ。幾らヒートが肉体を強化して頑丈さも上げるとはいえ可笑しい。人間じゃない!!!

 

「何故だ!」

 

呂布は距離をとって檄を銃で撃って加速させると一毅に降り下ろした。

 

「お前は俺と同じのはずだ!戦いでしか自分を表現する場所がない!強さが全てでそれ以外に手にするべきものはない。その筈だろう!」

「そうだな……お前のいってることは正しいよ……」

 

一毅はフッ笑った。その笑みは何処までも静かで…… 清流のように……穏やかな笑みだった。余りにも戦いの場には似合わない。

 

「確かに俺たちは戦いに全てを捧げるのが王道なんだろうな……」

 

だけどな……と一毅は続けた。

 

「王道が全てなのか?」

「え?」

 

呂布は疑問符を浮かべた。

 

「俺はまだガキだ。だから色んな道を模索したいって思う。王道だけじゃない。時には邪道だって試したいと思うんだ……」

 

一毅の言葉に呂布は呆然として聞いた。

 

「それにさぁ……俺はやっぱり戦いが好きでも……平穏も好きなんだよ……だから……今のままで良い。俺は表舞台にいなくて良い人間だ。いや、いたら迷惑をかけるんだ。だから俺はキンジの下にいる。キンジの邪魔するやつぶっとばして序でに戦闘欲求満たしながらその後に皆でバカ騒ぎするんだ……楽しいだろうぜ」

「ばかな……それでは俺たちにスポットは当たらないんだぞ!例え遠山キンジが英雄やヒーローと呼ばれるようになったとしても!お前はその部下のなかで一番強かった奴、で終わるんだぞ!」

 

一毅は頷いた。その通りだ。でも……

 

「それで良いよ……俺はそれで良いよ」

 

どんなに戦いが好きでも勝った後に皆で讃え合えないのは寂しすぎるんだ。終わった後にお疲れてって言い合えないのは静かすぎるんだ。自分に称賛をくれるのは……仲間だけで良い。

 

「それに俺はさ……別に世界に見られなくて良いんだ。世界最強にならなくて良いんだ。俺は仲間の行きたい道を邪魔する壁を壊す役割で良いんだ。だからもしお前が世界で一番弱かったら……俺は世界で二番目に弱い男の程度の強さで良い。でももしお前が世界で一番強かったら……俺はそれを越えていく。俺にとっての強さなんてその程度でよかったんだよ……」

「………………」

 

呂布はなにも言えなかった。そんな程度の志でありながら……今の一毅の実力は自分を大きく上回る。

 

「そして戦い続けて怪我もして苦しみもして……負けたり勝ったりして……最後に俺は惚れた女たちを侍らせて……孫達でも膝にのせて……桜でも見ながら酒を飲んで……笑うだけ笑って……そして笑顔で死んでいけたら良いと思うんだ……そして死ぬときに言うんだ。《苦しかったし、もう嫌だと思ったこともある。膝をつきたいこともあったし間違いもして馬鹿もやった。だけど……生まれ変われるなら同じ人生を歩みたい。悔いなんてない……そんな最高の人生だった》……てな」

 

戦いの中でしか輝けず……戦いの中でこそ生きる……そんな男であるのに一毅はそれでも平穏の中で死ぬことを望む。それは明らかに歪で異形で異常……変異だ。

 

戦いでしか満たされぬ欲求をたまに満たせれば良い。そんな程度で良い。そんな自分の我が儘……高名……名声……光り……そんなものより皆と一緒に歩ける暗闇を望む。一緒なら……先の見えない暗闇も歩ける仲間達がいれば一毅は満足で……暗闇に迷っても自分を見つけてくれる少女に自分のあとを追いかけてくれる少女がいれば良い……それが一毅の本心……一毅の答えであった。

 

一毅の強さは……繋がりである。繋がるからこそ……仲間の期待を背負うからこそ一毅は力を発揮する。

 

いや、一毅に限らず誰しもそうなんだろう。背負ってしまったものを強さに変えて戦えるものこそが真の強者となり戦える。

 

「言っただろ?お前と俺は同じだ。でもそれでも限りなく別物だ。俺にはいざってときに声を出す仲間がいる。俺が勝つのを信じて《立って戦え》っていってくれる奴等がいる。俺はそれこそが堪らなく嬉しくて……力になるのさ」

 

呂布は意味がわからなかった。呂布には……いや(ルウ)には理解不能……

 

「さあ来いよ!」

 

一毅は叫ぶ。とは言え一毅の肉体は限界に近い。新たな力である極めし者のオーラ(クライマックスヒート)は力が半ば無制限に上がっていく。しかも深紅のオーラ(レッドヒート)より遥かに早く、しかも感情などの高揚がないのにだ……しかも先程人知を越える速度で走ったがそれは一毅も少し予想外なほど速度が出ておりそのためか足の筋肉がかなりブチブチとやってしまった。だが痛みはない。同時に後で凄まじい激痛に襲われるだろう。まあ良い事だ。

 

今は呂布のことだけを考えれば良い。勝って……皆で帰るのだから……

 

「く……オォオオオオオオ!!!!!!」

 

呂布の銃で檄を弾き加速させた一撃……だが一毅の心眼が捉えあり得ない速度で止めて弾く。

 

「オラァ!」

 

一毅は呂布をぶん殴った……

 

(重い……)

 

呂布は素直に思った……そして思い出すのは静幻だった……そう、静幻と同じだ。静幻は藍幇を背負い戦っていた……呂布にとって静幻とは衣食住を提供してくれたものである。故に藍幇には恩義は感じぬが静幻にはある。だからか静幻がいなくなったあとは藍幇を抜けて世界中旅をしても良いと考えていた。いや、別に藍幇に愛着がないわけじゃない。だがここに自分の居場所がない……とそう考えていた。呂布は素直にここに居ても良いかと聞く気概も素直さも持ち合わせていない。腕力でしか自分を示す術を知らない呂布はどうすれば良いのか知らない。

 

だが呂布は実際最も自分の居場所に対して執着しているのかもしれない。それ故に一毅に妄執にも近い感情抱いたのだろう。

 

隣の芝生は青い……と言うように自分にないものを一毅は持っている。羨ましいなんてもんじゃなかったのだろう。嫉妬なんて生易しいものじゃなかったのだろう……憎しみにも近い……言わば逆恨みでもあるのだが……一毅はそんな呂布の心も受け入れる。

 

「ウルァアアアアアア!!!!!!」

 

一毅は呂布の檄を全て弾く。まだまだ弾く。もっと弾く……避ける?そんなわけなかった。全て呂布の感情の結晶……ならば受けるのが礼儀だ……男として……

 

『ウラァアアアアアアア!!!!!!!!!』

 

爆音にも近い二人の大気を揺るがす声と武器がぶつかる音……だが、どこかその音は悲しげだった……まるで呂布の攻撃は子供が人の楽しそうな玩具を羨ましがって駄々を捏ねてるみたいで……一毅はそれを受け止めてるみたいだった。いや、事実呂布は恐らく心をあのゴミ山に置いてきたままなのだろう……名無しのバラガキだった頃のまま……呂布は強くなってしまったのだろう……それに対し一毅は同情もなにもない。ただひたすらその全てを受け止めた……一毅だって一歩間違えればそうなったから……だがそれでも一毅は気づいたのだ。

 

「オォオオオオオオ!!!」

 

呂布と一毅が押し合う……

 

「はぁ……はぁ……」

「考え直してみな……」

 

一毅は頭をそらした。

 

「テメェのことを見てる奴だっているんだよ!俺と同じで!お前が気づいてないだけだ!」

 

ガツ!っと一毅の頭突き……

 

「ぐぁ……」

 

無論キンジほどの石頭ではない。だが一毅だって大概だ。その頭突きが呂布を後ずらせた。そして一毅が走り出す……これが最後……

 

「二天一流!!!!!!!!!」

 

呂布は一毅に檄を突き出した……が、一毅が視界から一瞬消え……そして、

 

『んなっ!』

 

呂布だけじゃない。それを見た全員が驚愕した。何と一毅が四人に分裂した。いや、正確に言うとあまりの速度に残像ができておりそれが一毅を四人になっているように見せているだけなのだがそれでも普通あり得ない速度が出ている。そして四人の一毅は呂布の四方を囲む……その時点で呂布の心眼が発動しなくなった。

 

何故か?それは心眼とは本能が体を動かす。だが逆に言えば本能が不可能と思ってしまえば……心眼は使えなくなる。つまり呂布は心の底で敗北を感じ取ってしまったのだ。

 

「オォオオオオオオ!!!!!!」

 

そこから一毅は四体の残像のうち正面に陣取った一体から空中に飛び上がりそこから呂布に襲いかかった。まるでそれは四方を守護する四神のうち東を守護し天空から外敵に鋭い牙を剥く青き龍……【青龍】を思わせた。

 

「ラァアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」

 

最初に叩き込むは凄まじき速さの連斬撃……一斬一斬に威力はない。だが回数が重なればダメージになるしなによりこの斬撃によって反撃の隙はない。故にこれで良い。一手目はただひたすらに速く速く速く!!!その速度のみを追求したその斬撃を放つ姿はまさに……【疾如風】(疾きこと風の如く)

 

「フウウウウゥゥゥゥ…………」

 

静かに……余りにも静かで同時に基礎を忠実に守った斬撃……冷静に厳かにだが余りにも美しい……その姿はまさに……【徐如林】(徐かなること林の如く)

 

「ウォオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

攻める……とにかく攻めて攻めて攻めて攻めて攻めて攻めて攻めて攻めまくる!!!!!!防御など考えない。自分のも相手のも……攻撃こそ最大の防御と言わんばかりに相手を攻めまくる……切って殴って蹴っ飛ばす!その怒濤の攻めの姿はまさしく……【侵掠徐如火】(侵掠すること火の如く)

 

「……………………」

 

呂布の体は完全に無防備となった……完全に体をさらけ出していた……そしてすでに一毅は最後の攻撃体制……呂布は既に受けると言う現実を受け入れることしかできなかった。

 

一毅は腰を落とし力を込めて地面を踏み込んで大きく二刀を振り上げる……その出で立ちは不動。そして放たれるは機動力は皆無に等しい……だが今の呂布に受ける以外の道はなかった。重く……力強い一毅の放った斬撃はまさに……【不動如山】(動かざること山の如し)

 

「……………………」

 

最後の一撃を一毅が放った瞬間不気味なほど静まり返った……余りにも鮮烈で激しい攻撃に対してその直後の静けさは不気味だ……だが一毅は自然に刀を鞘に納めていく……

 

「極技……」

 

一毅が見せた連続斬撃……この技は二天一流にはない。いや、今のような形態がない。言わば一毅が作り出した別の二天一流……

 

そして極めし者のオーラ(クライマックスヒート)を使ってるときに使う数多くの戦いと絆を作り出した一毅の進化途中でありながら極まりしといっても過言じゃない領域の剣撃を放つのが【極技】である。

 

最上級にして現段階では一毅の全力の技……それを呂布に叩きつけた。自分のありったけをぶつけた……自分の全てをぶつけれた……

 

「――風林火山――」

「がっ……」

 

呂布はそのまま倒れ一毅は刀を天に掲げた……

 

「俺の……いや」

 

一毅が首を振るとキンジが隣に来た。

 

「ああ……俺達の」

 

二人はパァンっと手を叩きあった。

 

『完全勝利だ!』

 

 

 

――――勝者・遠山キンジ及び桐生一毅……よってこの戦い、チームバスカービル及び一年生達の完全勝利。更にこの勝利によってアジア方面は師団(ディーン)優勢となった――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃とある海の上では巨大な石油タンカーがあった……別に海上に石油タンカーがあるのは普通だ。科学が進歩した現在においても会場での輸送が多い。だが、その船には逆卍……つまりナチスの文字だ。しかしその中は異様な空気になっていた。

 

「なぜお前がここにおる……」

 

船にいたのは眷族(クレナダ)のパトラと同じく眷族(クレナダ)のカツェ・グラッセと言うものだった。そしてその二人の前には一人の男がいた。

 

身長は凡そ180後半……体格は一見細身に見えるがその実一切の無駄がない完璧なまでの筋力が内包された実践的な肉体であった。更に腰には太刀と小太刀……恐らく日本人だともわかる。だがもっともその男を形容しているのは全身黒一色の服装だった。

 

黒い帽子、サングラス、黒のロングコートに黒のスーツ……何れ一つをとっても黒ばかり……しかし同時にそれが異様に似合っていた。

 

「何故ってなぁ……ちょいと中国でお粥が食べながら戦いを観戦したらいきなし霧が出てきてそしたらこのデカイ船が来たからな……なんか怪しいと思って乗り込んできたんだよ。あ、爆弾は既に解除済だからな」

 

そう言って男は二人の足元に爆弾を捨てた。

 

「一体どういう事かな?あ、極東戦役とか言う子犬がじゃれあってるみたいな戦いの奴かな?そう言えば今桐生も戦ってたよな……いやぁあいつもすげぇな、あそこまで一気に強くなるとは思わなかったよ」

 

男は軽快な口調で話す。

 

「もしかして……ああそうか。ここであいつらに勝たれちゃうと賭けが成り立たなくなったどっかの国のお偉いさんがお前らに指示飛ばしたんだろ?いや~汚い事情ってやつか?それとも香港藍幇がこのままだと遠山キンジに着きそうな気がして怖くなった?恐ろしくなっちゃった?出る杭打っとかないと歩けなくなっちゃった?実は魔女連隊ってビビりの集まり?」

 

すると男の周りに砂の人形が現れて取り囲み同時に銃弾が放たれた……

 

「テメェ……」

 

だが男は銃弾を刀の柄で弾いた。

 

「だけど態々あんなボロボロのあいつらに手を出すなんて野暮はやんなよ……KYは嫌われるぜ?だから今すぐ引き返しな。出ないとおじちゃん暴れちゃうよ?少なくとも……そんな泥団子じゃ俺には……まあ勝てないだろ?」

『舐めるな!』

 

パトラとカツェが男に攻撃を放った……それを男はみて笑う。

 

「お前ら倒す前に一つ聞こう……お前らをボロボロにしたら泣く奴はいるか?」

 

そう言って男も駆け出した……

 

 

 

 

 

 

 

数分後……タンカーは見た目は綺麗なままだが誰も乗っていない幽霊船になってしまった……




次回少し後日談やって終わりです。因みに最後の奴の性でカツェはヨーロッパ編まで退場。因みに二人とも元気です。ピンピンしてます。傷一つ負わされること無く優しく優しく倒されました。

更に今回名前は出してまない男は次回に名前と少しは出します。登場事態は初めてのキャラです。名前だけは一度だけ出ました。

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