緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍達の決戦 龍達の危機

レキとアリアと別れ一毅とキンジは屋上に出た……

 

そこにいたのはココ四姉妹と縛られた静幻……そして武神・呂布奉先と戦神・孫……既に猴から孫に入れ替わってる。

 

「さぁて……いっちょ気張るか!」

 

一毅はバッと翻すと背中に王龍の刺繍が入った龍桜を着て殺神(さつがみ)神流し(かみながし)を抜いて二刀流となる。

 

「一毅」

「ん?」

「……いや、なんでもない」

 

キンジも翻すと桜吹雪の刺繍が入った龍桜を着てオロチを手に着ける。

 

「さて……決着と行こうか……」

「そうだな……」

 

孫は笑う。愛しきキンジを見て……

 

呂布は戦闘体制に入っていく……既に呂布は静幻の声は届かない……同種の一毅を前に何があっても止まらない。

 

『いくぞぉおおおおおお!!!』

 

四人はそれぞれの相手に向かって飛び掛かった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラァ!」

「ふん!」

 

一毅の二刀と呂布の檄は火花を爆音を撒き散らしてぶつかり合う。初手から既に手加減なし……遠慮もないし本気だ。

 

「オォ!」

「ドォラア!」

 

二人の体から深紅のオーラ(レッドヒート)が出る。次の瞬間には常人には視認することすら許さない。だがその領域の速度と破壊力がありながら反応しているのは心眼の力……意識せずとも……脳が関知せずとも二人は互いの攻撃に反応ができる。

 

「そうだ……それでいいんだよ桐生 一毅!お前も俺もこうやって死力尽くして戦いあってる方がいいのさ!自分の顔を見てみろよ!今のお前……笑ってるんだぜ!」

「っ!」

 

一毅は刀の刀身に反射した自分の顔を見た……確かに……笑っている……楽しそうに愉悦の表情を浮かべている……これが……自分の顔?

 

「は、はは……」

 

そうか……これが自分なのだ……自分の本心だ……自分の中に居た本当の自分……

 

「ハハハハハハハハ!!!!!!」

 

声をあげて笑った……そうだ。何を躊躇う。気付いていただろう?気付きたくないから気付かない振りをして居たのだろう?本当はブラドの時に感じたのは……仲間を傷つけられた怒りではない。もしかしら自分より強いかもしれないという感情だったかもしれない。自分は戦いが大好きである。

 

強そうなやつを見ると戦いたくなる。どちらかの命尽きるまで戦いたくなる。キンジと一緒に居たのはきっと強いやつに出会いやすいからだ……そしていずれ強くなるであろうキンジと命を掛けて戦いたかったからだ。きっとそうに違いない。間違いない。

 

「カハハ……」

 

一毅は刀の握り直すと呂布の額に向かって突きを放った……当てる気で放った……殺すつもりで放った……武偵法9条?知ったことではない。相手の息の根を止めてこそ本当の勝利だ。殺すまで相手との戦いは終わらない。情や情けは不要。必要ない。寧ろ浴びた返り血は自分の力になると言わんばかりに刀を振るう。

 

「そうだなぁ……お前のいう通りだぁ……」

 

一毅は悦に浸った笑みを浮かべた……呂布もそれを見て自分の感情が高まるのを感じた。

 

それと共に銃も抜いて構える。呂布の本気スタイルだ……

 

「そうだ……殺りやぉうぜぇ!桐生 一毅ぃ!」

「オォオオオオオオオオ!!!!!!!!!」

 

斬って弾いて切り返す……叩いて殴って蹴り返す……撃って撃たれて弾いて弾かれて……その時その時でもっとも最善の攻撃を繰り出す……心眼は相手の攻撃に発する殺気や気配感じる力……逆に言えば相手の意識が集中していない部分も判断できるということだ。その力はこれまでにない領域で発動している。

 

だが呂布も同様だ。元々桁外れだった膂力も判断力も速さも既に人間である者が何れ到達するであろう領域に入っていた。その領域の扉は通常開けられるはずもない。だが深紅のオーラ(レッドヒート)に心眼……更に生まれつきの才能……全てが揃っている呂布に今は一毅との戦いという今生に類をみないほどの楽しみがあるのだ。後の筋肉断裂の危険があろうと何の関係もない。

 

一毅もそうだ。今この瞬間の楽しみに心が支配されていく。喜怒哀楽のうち喜びと楽しいの感情以外が消えていく。それと共に脳裏から記憶が流れていく……記憶を喪失しているのではない。だが今まで感じていた仲間への情や友情……レキやライカへの愛情……キンジへの友好心……他にも大切な感情や思い出が色褪せ一毅の中で思い出されなくなっていく。

 

「ああ……そうだよ……」

 

こんなものはいらない……今必要なのはこの瞬間を楽しむ心……所詮は自分に似合わない過去の遺産……

 

呂布のいう通りだ。自分に平穏なんて似合わない。柄じゃない。戦いの中でこそ自分は輝ける。なら戦いの中にいることこそが王道なんだろう。

 

「さぁ殺りあおう……死が二人を別つまで……なぁ」

「ああ来いよ呂布……死こそが俺達の戦いの終わりの合図だ……」

 

再度二人の武器がぶつかり合った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!」

「どうした遠山ぁ!」

 

キンジと孫の戦いは孫の攻勢だだった。無論キンジの万象の眼は既に発動していて孫の猛攻を凌いでいる。だがそれでも明らかに人知を越えた膂力から放たれる拳打は一撃でも喰らったら危険だ。流石そこは神様と言ったところだろう。

 

故に直撃だけは喰らわないように時々絶牢の応用で蹴り返しながら応戦する。だがそれよりもどうしても気になってしまう……一毅の変化……

 

元々勘づいていた……心配だった……だがその心配が的中してしまった……

 

(行くな一毅……)

 

キンジは心の中で手を伸ばす。実際に伸ばすのは孫がいて不可能だ。

 

一毅は自分達とは別の存在……分かっていた。本当は分かっていた。自分達と一緒にいるというには本来野生で過ごすべき動物に狭い檻の中で過ごさせるのに等しいのも分かっていた。

 

でも一毅……とキンジの心は叫ぶ。

 

確かに一毅は化け物なのかもしれない。それこそ身も心も……でもそれでキンジは信じてる。桐生 一毅という男はそれでも人間である。自分にとって唯一無二の親友であり背中を預けられる位信用してる。だが一毅の中で回る歯車が狂ってしまった。同種の呂布と出会いなのはいうまでもない。故に一毅は自分というものが分からなくなってるだけだ。

 

例えどんなに武力をあげても一毅は17歳の少年だ……精神まで成熟してるとは言いがたい。いや、寧ろ一毅は頼られることに関したは実家のお陰で慣れてる。だがそのために甘え慣れてないのだ。不器用で馬鹿でアホンダラで脳足りんで……誰よりも優しいのが桐生一毅と言う奴だ。それを忘れて今の状態……笑えない。今例え勝ったとしても所詮一毅は中身を失った肉の固まりになってしまうだけだ。

 

「そっちはだめだ……」

「よそ見してる場合じゃないぞ!」

「くっ!」

 

孫の足払い……それに対してキンジはバックステップで躱すと銃を発砲……だが、

 

「がぅ!」

「っ!」

 

噛んで止めた……キンジでいう銃弾噛み(バリツ)……だがキンジと違い意識は飛ばない。

 

「これで終わりか遠山!」

 

そこに孫が間合いを一気に詰めてくる。

 

「っ!」

 

孫はそのまま両の拳をキンジの腹につけた。

 

「がっ!」

 

次の瞬間体を襲う波のような衝撃……

 

「拳勁と呼ばれる技術さ……」

 

中国憲法には発勁と言う技術がある。力をためて一気に放つことで自分も腕力と自重を味方につけ相手に叩き込むがこれはそれだけじゃない。

 

地面を踏み込んだ際に地面から自らの体重が跳ね返ってくる。孫は凡そ30㎏少しだろう。だがその帰って来た体重と持っている体重……更に腕力発勁で行われる掌と言う面ではなく拳と言う点で打ち込まれる……するとどうなるか……30+30=60の衝撃が拳と言う点で圧倒的な膂力を持って叩き込まれるなんてもんじゃない。何故なら計算式が違う。

 

ココまでの要因が完全に合致したら30+30ではない……30×30だ。そんな衝撃がキンジを襲ったのだ……

 

「ごぶっ……」

とんでもない衝撃……何て生易しいものじゃない……全身がバラバラになるような感覚……瞬間的に走馬灯が見えた……

 

「がふ……ごは……」

 

死と言う言葉が頭にはっきりと出た……死神がキンジの命を狩りに来る……だが、

 

「しね……るかぁ……」

 

キンジは倒れなかった。まだ死ねない。一毅をこのままで死ねない……そして……アリアが下にいる。このままでは終われない。

 

「ウォオオオ!」

 

キンジの体から深紅のオーラ(レッドヒート)出る。

「孫!」

 

キンジの回し蹴りに孫は反応した……ギリギリではあったが外す……

 

「いい加減にしろよ一毅ぃ!」

 

キンジは叫ぶ。だが一毅には聞こえてるのか無視してるのか……いや、耳がいいあのバカが聞こえないわけなかった。

 

「無視してんじゃねぇよ……何様だお前はぁ!」

 

それでも孫と戦いながらキンジは叫んだ。

 

「自分一人で何でもやれるつもりかよ!自分一人で抱えて塞ぎこんでよ!その方が迷惑なんだよ!てめぇは桐生一毅だろうがよ!少し自分に似た奴に会ったからってなぁ!!!転んでんじゃねぇよ!お前本当にそれでいいのかよ!それが桐生一毅って男の生き様なのかよ!そんなの死にたがってるだけじゃねぇか!死に場所探してるだけだろうがよ!ただの死に様なんざなぁ、演劇だけで充分なんだよ!」

 

キンジは孫を蹴っ飛ばす……だが孫はそれを防御してキンジに詰め寄った……

 

「っ!」

「だからいっただろ……よそ見してる暇はないってな」

「くっ!」

 

キンジは躱そうと足を動かし……何かに引っ掛かった。

 

「なっ!」

 

キンジの足に巻き付くのは孫の尻尾……そして体勢を崩したキンジに孫の両拳が添えられた。

 

「あばよ、遠山」

「っ!」

 

全身に走る衝撃……先程と同じ拳勁だ……キンジは口から血をはいた……いや、口だけじゃない……鼻や眼からも血が出てきた……ヒステリアモード感覚が告げる……内蔵もボロボロになったのだと……

 

「あ……ぐぅ……」

 

そのままキンジは倒れる……だがそれでも……

 

「戻れよ兄弟(一毅)……お前は……そんな自分の(さが)何ざに左右されるやつじゃねぇだろ……」

 

キンジはそう言いながら立ち上がろうと力を込める……すると孫の眼が怪しく光った……間違いない。如意棒と呼ばれる文字通り必殺技……

 

(死ぬのかなぁ……俺……)

 

今回ばかりはお手上げだ……何の手もない。あってもこの体では無理だ。

 

(一毅……)

 

自分が死んでも一毅はどうなのだろうか……きっとどこかに消える……そうはさせたくない……だから動け体……

 

(アリア……)

 

アリアに自分の死に顔何て見せたくない……だから動いてくれ体……

 

 

だが体は正直で……残酷で……動かない。動いちゃくれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時ちょうど一毅の手から呂布の檄によって刀を弾き飛ばされた……だがそれを行うために呂布はかなり大きく振ってしまった……無論弾き飛ばされたのは一毅の誘いである……それ故に攻撃後返してきたとはいえ僅かな隙があった……だからこそその隙を一毅は背中から断神(たちがみ)を抜いて斬れば良かった……体をまっぷたつにすれば良かった……だがその時視界に入った倒れたキンジと如意棒を溜める孫……キンジの声は聞こえていた……だが心に響かなかった……その為一毅は反応できなかった。だが視界に入ったものに対して一毅の本能は二つの選択を強いられた。その選択は【呂布を殺す】か【キンジを助けるか】……無論キンジを助ければ呂布の攻撃を受ける。最善手は呂布への止めだ。それしかないそれがいい……そう一毅は判断した……そして一毅の手から断神(たちがみ)が消えた……

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故だ……」

 

呂布は銃を発砲し檄を弾いて加速させて降り下ろした……断神(たちがみ)をキンジと孫の間に投げてそれで如意棒を打ち消した一毅に向けて……

 

「何で……」

 

一毅にもわからなかった……だが17年生きてくれば体に染み付いてしまっていた……自分より親友を……どんなに心が捨てても肉体がそれを離さなかった……どんな心境でも……一毅は今までの人生を捨てられなかった……故に一毅は……

 

「がは……」

 

血溜まりの中に体を沈める……

 

『っ!』

 

背後から息を飲む声が聞こえた……多分他の皆だ……丁度来たんだろう……

 

(悪い……負けちまったよ……)

 

そう内心呟いて……一毅は意識を手放した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………ん?」

 

気がつくと一毅は辺りが真っ白な世界にいた。何もない……呂布もキンジも静幻もさっき来た皆も……誰もいない。

 

「………………ここは……」

《よう。どこ見てんだよ》

「っ!」

 

一毅が振り替えるとそこにいたのは白髪頭が目立つ男性だった。和装に身を包み何処か自由なオーラを滲ませながらも何処にも隙がなく右目を縦に走る古傷が特徴的……

 

体つきは歳からは考えられないほどがっしりしていて眼光も片目だけだが鋭い……一毅はこの人間を知っていた……会ったのは初めてと言っても過言じゃないほどだ。記憶にはないのだから……だが写真でみたことがある。自分を抱き上げている写真を何度もみた。その時の顔のままだ。故に一毅は口を開いた……

 

「爺ちゃん……」

《おう、おめぇの爺だぜ》

 

手に持ったキセルをペン回しのようにクルクル回転させてニカッと笑った男……桐生 一心はマジマジと一毅をみた……




次回予告

呂布の強烈な一撃を受け意識を失った一毅……だが目を覚ますとそこに居たには今は亡き祖父……

そしてまだ死んではないが危険であると言った一心は一毅に大切なことを教える。

桐生であり……一毅と言う一人の男へ………一心は何を伝えるのか。

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