緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍達の前哨戦 後半戦

「ちっ!」

 

キンジは走りながら台を飛び越えベレッタを撃つ。

 

「きひ……!」

 

だがそれを猴……いや、今は孫と言うらしいのだがそいつはあっさりと躱して手に持った青龍刀をキンジに振りかざす。

 

「しぃ!」

 

キンジはバタフライナイフを開いてそれを弾く。更にそこから回し蹴り……

 

「良いなぁやっぱり……」

「っ!」

 

だが身軽な孫はキンジの蹴り足に乗って避けると言う離れ業と言うか曲芸みたいな技で躱すとキンジの首を狙った青龍刀の横凪ぎ一閃……

 

「う!」

 

それをキンジはギリギリで体をブリッジ出来そうな程そらして避けた。更に、

 

「ウォオオオ!!!!!」

「っ!」

 

その崩した体勢から敢えて蹴りを放つことで孫は反応を遅らせてしまいキンジの蹴りで吹っ飛んだ。

 

「流石だな……」

 

だがあっさりと孫は立ち上がる。ならば、

 

「ウォッシャア!」

 

キンジは一気に間合いを詰めた。そして一気に孫を空中へ蹴りあげる。

 

「キキ!」

 

だが孫は空中で普通に体勢を戻す。これではキンジの必殺のエアストライクは行えない……だがこの体勢に持っていけば使える技もある。

 

エアストライクの派生技その1……

 

「アルファドライブ!」

 

相手を地面に叩きつける強烈な打ち落とし蹴り……

 

「くひ!」

 

それを防御するが孫は地面に落ちる。

 

今度は派生技その2。

 

「ベータドライブ!」

 

今度は相手を打ち上げる強烈な跳び蹴りあげ……それもガードされるが打ち上げる。

 

最後は派生技その3、

 

「ガンマドライブ!!!!!」

 

トドメとばかりに強烈なドロップキックが決まり孫は辺りのものを撒き散らし転がる。

 

「いてて……」

 

だが孫は手を振りながら立ち上がる。

 

「すごい蹴り技だ……やっぱ遠山侍は面白い技を使うなぁ」

「……?」

 

キンジは内心首をかしげた……まるで昔から知ってるような口ぶりだ。

 

「じゃあ今度は私だな!!!!!」

孫はその小さな体からは想像もつかない脚力で一気に飛び込むとキンジの顎を狙った掌打を放つ。

 

「っ!」

 

それをヒステリアモードの反射神経でなんとか躱しながら蹴りあげる。

 

「甘いよ」

 

だが孫はそれをなんなく躱して青龍刀を振り下ろす。

 

「この!」

 

だがそれをスウェイで躱しながらハイキックをキンジは放つ。

 

「スウェイアタック!」

「クヒヒ!」

 

しかし孫はそれを伏せて躱すと飛び上がって胴回し回転蹴りを放った。

 

「がっ!」

 

咄嗟に腕を交差させて受けたが地面に足がめり込むんじゃないかと思うほどの重力が全身に掛かる。

 

「終わりだ」

「っ!」

 

そこから放たれる青龍刀……通常であればこのまま胴を寸断されただろう……だが、

 

「しゃ!」

 

指で挟んで行う真剣白羽取り……二指真剣白羽取り(エッジキャッチングピーク)……

 

「残念ながら……見えていた」

 

目の奥がバチバチと明暗するような感覚……【万象の眼】の感覚だ。

 

「やっぱ面白いな」

「そうかい?だけどいくら面白くても少しはスカートに気を使いなよ。さっきからチラチラ処かガッツリ見えてるしね……俺はそう言うのを見ると強くなるんだ」

「何だそう言うのを気にするのか?私を女だって言うのか?こんな10歳児と変わらないんだぞ?」

 

そう言って孫は距離をとるとスカートの裾を少し持ち上げたりする。だが何となく勘づいた……まるでこれは年上の女性が年下の男をからかうような雰囲気だと言うことに……それならば、

 

「ふふ……ああそうだ。君は素敵な女性だよ。何故なら、女性は生まれたときから女性なんだからね。皆等しく素敵な女性だよ。もちろん君だって同じさ」

「そ、そうか?」

 

そう言って孫はモジモジ頬を染めて俯く。

 

「ほ、本当にそう思ってるのか?た、例えば一緒に手を繋いで外を歩いたりキスしたり……そ、その先とかできるのか?」

「無論お互いをしっかりと知って仲を深めればね。安易な行為はお互いを傷つける。君のように素敵な女性なら尚更そう思うよ」

「……」

 

孫は凄まじく嬉しそうな表情を浮かべる。

 

しかし一見幼い幼女だがその実中身は成熟しているらしい。いや、肉体と精神の成長が違いすぎる。

 

本当に孫悟空だとしたらそりゃそうかとキンジは納得するが……

 

「そ、そうか……」

 

孫がニヤつくがそこに微かに何かが来る気配を感じた。

 

(このどす黒いオーラは……まさか!)

 

次の瞬間バリバリ音を経てて孫に銃弾が炸裂する。

 

「ミィツケタァ……クソアマァ」

 

漆黒の黒雪の凱旋である。恐ろしい……キンジとギリギリで銃弾を躱した孫がドンびく。

 

「キンちゃんとあんな不届きな真似……ユルサナイ……ユルサナイ……ユルサナイ……ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ!!!!!!!」

「お、おい遠山!何だあの女――って!」

 

バリバリ銃弾をばら蒔き孫を狙うが孫は持ち前の反射神経で逃げる。

 

「バイ菌は……熱消毒!!!!!」

 

シュポポポと何かが発射されたおとがした……

 

『げっ!』

 

発射されたのは炸裂弾(グレネード)……そう言えば白雪の持ち銃であるM60は平賀さんが魔改造して中折れ式にした上にグレネードランチャーも取り付けたといっていたのを思い出した……

 

「死にさらせぇ!」

(キャラが壊れてる……)

 

キンジは内心そんなことを粒やきながら爆炎に包まれた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけでキー君を助けに来たんだけど途中で雪ちゃんが【キンちゃん電波受信!!!!!】とかいって窓から飛び出していったんだよ」

「キンちゃん電波は常にバリ3で高速データ通信にも対応してるからね」

「そ、そうかい」

 

キンジは頷くが少しひきつった。ヒステリアモードでも何故か白雪の電波がバリ3の下りは何かいろんな意味で怖かった。

 

 

さて先程の爆炎も咄嗟に近くの店に飛び込んで回避してそこにバスで迎えに来た理子達に助けてもらった後今度は一毅を探しながら走っている。

 

だがそこに上からドン!っという音が響いた……

 

「何かぶつかったのかな?」

 

あかりが呟くと後ろの窓が割られた……

 

『っ!』

 

全員が驚愕するなか来たのは……孫だ。

 

「まだ終わってないぜ?」

 

そう言って孫は突っ込んできた。

 

「皆下がって!!!!!」

 

そう言った白雪は抜刀した……すると孫は嫌そうな顔をして戻っていった?

 

「ちっ!イロカネアヤメ……お前星伽巫女か……チラッと見たときもしやと思ったがまあ桐生も遠山も来ていればお前もいて当然か……」

 

ぶつぶつ何かをいっている……だがこれからどうするか……仕方ない。

 

「いや白雪も下がってくれ」

「え?」

 

キンジは白雪の前に出る。

 

「孫。一発だけ付き合おう。来なよ」

 

キンジは腰を落とす。それを見た孫は嬉しそうに笑う。

 

「そうか……なら行くぜ遠山!!!!!」

 

孫は青龍刀を捨てると2度目の疾走……先程より速く体当たりだろう。しかし孫は常人を遥かに凌駕する力を持っているのは先程の戦いで知っている。直撃したら恐らく全身の骨がバラバラにされるだろう……だがキンジは腕を交差させて重心を体の中心に持っていく……

 

(君の全てを受け止めて……俺の全てと一緒に君にあげるよ)

 

キンジが心の中でそう呟いた瞬間孫の体当たりがキンジにぶつかる。だが、

 

(橘花!)

 

まず桜花を逆ベクトルに放つ減速防御、橘花で受けて次に全身の関節を連動させその衝撃を足に集める。

 

(絶牢!)

 

更にそこから中心においた軸を利用してまるで回転扉のように回転……

 

(桜花!)

 

最後にそこから桜花による加速を加えて完成……孫の攻撃VSキンジの防御だった構図が瞬きの一瞬の間で気付けばキンジの攻撃VS孫の耐久力へと変貌した……この一連動作……例えば名付けるなら相手の攻撃によって自分の防御が崩されるという不利をもチャンスへと変えさせるカウンター技……その名も、

 

「逆転の極み」

「がっ!」

『っ!』

 

その場の全員が驚愕する中孫は自分の体当たり+キンジの攻撃力を喰らい吹っ飛ぶとそのまま侵入してきた窓から外に飛び出していった。

 

「さすがキンジ!」

 

アリアがキンジの背中を叩くがキンジの表情は曇ったままだ。

 

「キンジ?」

「理子!出来るだけこの場から急いで離れろ!孫は殆ど喰らってない!」

『っ!』

 

全員が冗談でしょという顔だ。だがキンジは分かっていた。蹴った瞬間孫は恐るべき反応速度で蹴っ飛ばされる方向に自分から飛んだのだ。

つまり……

 

 

 

 

 

「きひひ!」

 

そんなキンジの考えをよそに孫は笑いながら空中で体勢を戻す……

 

「やっぱ面白いな遠山……」

「おい!」

 

そこに藍幇の皆が装甲車に乗ってきた。

 

「追うんだろ?」

「当たり前だ」

 

孫が飛び乗ると走り出す……孫の目は怪しげに緋色の色を灯した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてキンジと孫が戦い始めた頃まで一度時間をもどそう。

 

別の場所では一毅と呂布が戦っていた。

 

『オラァ!』

 

武器がぶつかる度に凄まじい轟音と衝撃……ビリビリ大気が震えるが二人は気にも止めない。と言うか止める暇もない。

 

互いに才能と腕力に物を言わせた戦いかたをするためか一進一退の攻防が続く。

 

「おぉ!」

「がぁ!」

 

互いに武器を振り抜き一度距離をとる。

 

ツゥ……と二人の頬から血が垂れた……

 

「ふむ……流石だな。楽しいぜ」

「俺は楽しくないな」

 

一毅がいうと呂布は笑う。

 

「楽しくない?嘘をいうなよ。今お前の目は生き生きしているぞ?寧ろ戦い前の方が窮屈そうだったが?」

「っ!」

 

一毅は奥歯を噛む。

 

「俺もお前も同じさ……平穏なんて似合わない……平和なんて柄じゃない……皆で仲良く笑うより……戦いに身を置いている方がよっぽどだ……」

「…………」

「強いってのは残酷だ……苦戦できねぇってのはまさに苦行だ……戦っても心が踊らない。相手を上から見下ろしながら戦うほど萎える戦いもない……そうだろ?」

「どうだかな……」

 

言葉を濁すが一毅の言葉に力はない……

 

「そうさ……俺がそうだ。過ぎた強さは残酷だ……だがお前みたいに俺を苦戦させられるやつは良い。楽しい……そして俺を高められる」

「それ以上強くなってどうするんだ?もっと苦戦できなくなんだろ」

「そうだな……だが男なら……頂上を目指してみるもんだろ?」

「……」

「強くなって強くなって……その果てってやつを見てみれば少し俺の退屈さも消えるかもしれねぇ……何よりこんな無茶苦茶な才能持ったんだ……そうしてみたくなるだろ?」

「考えたことなかったんでな……自分の武才の使い道なんざよ」

「そんな難しく考えることじゃない。ただ戦い続けるだけだ。強さのはての世界……心踊るだろ?何より俺たちはそう言う生き方しか輝けない……」

 

呂布は一度息を吸う。

 

「人間にはそれぞれの生き方がある。例えばシャーロック・ホームズは探偵として名を残したがアレがそうだな……絵描きだったら?」

「想像がつかん」

「そうだな……じゃあレオナルドダヴィンチが兵士になりたいと思ったら?」

「死んでただろ」

「ピカソがナチスの軍隊に入っていて絵を描かなければ?」

「まあピカソの絵は出てなかったな」

「そうだな……じゃあボルトが陸上選手じゃなくてそこらのサラリーマンだったら?」

「大記録はない」

「ああ、その通りだ……人間は色んな才能がある。だがもしその才能とは違う生き方をすれば……歴史に名は残らない。いや、残せない」

「それが俺に何の意味がある?」

「鈍いやつだ。ダヴィンチがモナリザの微笑みを残したように……ピカソがゲルニカを描いたように……ウサイン・ボルトが陸上選手として名を売ったように……俺たちも武で名を残そうっていうことだ」

「……」

 

一毅は眉唾気味に聞いた。

 

「そんなことに何の意味がある」

「あるさ。楽しそうだろ?後々の人間が俺たちの名前を聞くたびに考えるのさ……どんな奴だったんだろうってな……心踊らないか?自分のやったことが伝説なんて呼ばれる。俺の夢さ……俺が叶えてやるって決めた……な」

 

そう言って呂布は懐に手を入れる。

 

「それに純粋に興味あるんだ……お前と俺……本気で殺り合ってどっちがつえぇか……さっきもいったように男なら最強目指すだろ?」

 

そう言って懐から引っ張り出したのは回転式拳銃……確かあれはうちの学校教師であるゴリラ――もとい、蘭豹も使うドデカイ拳銃……S&W M500……それを左手に……檄を右手に構える。

 

「行くぞ!」

「くっ!」

 

檄という武器は一見槍のような形状だが槍とは違い突くだけではなく斬る、凪ぎ払うと言った事も行える比較的攻撃の種類が豊富な武器だ。しかも間合いが広い……

 

「うぉおお!」

 

だが一毅はあえて懐にいった。逆に言えば懐は呂布にとって死角であり長獲物には共通する弱点……しかし、

 

「っ!」

 

呂布は慌てることなく銃を構えた。

 

(不味い!)

 

一毅は咄嗟に体を捻る。

 

「っ!」

 

なんとか避けて呂布が撃った銃弾は後ろに飛んでいったがそこに檄が襲う。

 

「この!」

 

咄嗟に殺神(さつがみ)神流し(かみながし)で受けたがそれでも一毅は体勢が悪く吹っ飛んだ。

 

「やべ!」

 

だが転がって衝撃を逃したのも束の間で呂布は遠慮なく銃を向けて発砲してくる。

 

「くっ!」

 

一毅は急いですぐそこの市場の飛び込むと台の上を転がって待避する。

 

「よく勘違いされるが初代の呂布が得意としたのは檄じゃねぇ……無論何でも使えたがそのなかでも得意としたのは弓術だ……俺は実は銃が結構得意なんだよ……」

「くそったれ……」

 

一毅は悪態を突くと近くのパイナップルを拾って空中に放り投げた……そして銃声が聞こえ落ちてきたのをキャッチすると芯が見事に撃ち抜かれて食べやすいようにバラバラにされたパイナップルが落ちてきた。食べる気にはならないが……

 

(マジかよ……全く……俺が一番外れの相手だぜ……)

 

純粋に戦闘を楽しむタイプとしては宍戸に少し似ているが実力は宍戸に悪いが雲泥の差だ……しかも戦うことに関して全く迷いがない。こういうタイプは面倒だ。

 

「来ないなら行くぞ!」

「っ!」

 

カウンターごと檄で切り裂きながら来る……それを一毅は刀で受けると飛び上がる……

 

「空中では動けないだろ!」

「ならすべて弾く!」

 

背中に電流が走ると至近距離から発射された銃弾を一毅は全て刀で弾き落とす……

 

「心眼だな……」

「ああ……」

 

一毅が頷くと呂布の持っていたオーラが変わる……呂布も心眼を発動させたのがわかる。

 

『………………ふぅ』

 

二人は一度緊張を解くと体から深紅のオーラ(レッドヒート)が出てくる……互いが持っている力全てを体の中心から末端に注ぎ込んでいく…………

 

『オオオオオォオオオオオオ!!!!!!!!!!』

 

再度激突……だが先程とは音も衝撃も比べ物にならない。

 

「うらぁ!」

 

檄で一毅を襲いその間に銃を撃つ……口径がでかいため当たれば制服の上からでもダメージは絶大だ。だが、

 

「当たるかぁあああああ!」

 

心眼とその肉体を深紅のオーラ(レッドヒート)が被い檄も銃弾も全て弾いていく。 常人なら緊張で体が動かないはずだが一毅は既にそう言った感情無くなっていた……完全に戦闘にのみしか考えがいっていない。

 

その周囲のものが無茶苦茶になっていくが見向きもしない。出来ない……

 

「ああそうだ……やはりお前は俺と同じだよ……戦いが大好きで血が好きで喧嘩が好きで相手の命も自分の命も闘いの中ではどうだって良い人間さ!勝利の果てが相手の死だろうと関係ない!だから面白いんだよなぁ!何でお前はそれを圧し殺してまでバス()カー()ビル()にいるんだ?」

「………………」

 

そう言えば何でいるんだろうか……キンジがいるから?レキがいるから?大切な人や仲間がいるから?そうなんだろうか?それだけなんだろうか?

 

「剣先が鈍ってんぞ!」

「っ!」

 

ダメだ考えが纏まらない……何かが違うような……いや、違うんじゃない。まだ何か気づいてないことがある……言葉がまとまっていない……だが今はそんな暇はない。

 

「おぉ!」

 

一毅は二刀を使って檄と銃を弾き開けると腹に蹴りを叩き込んだ。

 

「くく……次はこれだ!」

 

そう言って呂布は檄を振り上げた……

 

「避けられるか?」

「んなっ!」

 

次の瞬間振り下ろすのを後押しするように銃弾を撃って当てて檄の速度を跳ね上げた……無論普通であれば制御が効かなくなって当てづらくなるだけだ。だが無理矢理呂布は腕力を使って制御して一毅を狙う。

 

「くっ!」

 

心眼のお陰で避けるが今度は横凪ぎ一撃も銃弾で加速させて一毅を狙う。

 

「くそっ!」

 

なんとか距離を取るが銃弾が今度は檄にではなく一毅を狙って放たれる。

 

「邪魔だぁ!」

 

それも叩き斬るが呂布が密着してきた。

 

「中国拳法にはこういう考えがある……《人とは巨大な水袋だ》ってな」

「っ!」

 

次の瞬間檄を空中に放り投げると掌を一毅の胸に添える……

 

「がっ!」

 

そこから放たれた発勁……理子も使うが威力は比べ物にならない。一毅の体にある水分が余すところなく振動し体の外部ではなく内部を痛め付けた。

 

「ごはっ!」

 

ビチャ!っと口から血がでた……

 

「外は筋肉で覆える……だが内蔵はそうじゃない」

「ごほっ!がはっ!」

 

咳き込む度に血が競り上がってくる。

 

「くぅ……!」

 

だが一毅は若干フラつきながらも立つ。まだ終わらない。

 

「やっぱ立ってくれるよな?まだ終わらせたくねぇよな?」

 

呂布は嬉しそうに笑う。

 

一毅は目を細める……

 

 

 

二人はゆっくりと市場の奥に向かう……

 

「くらぁ!」

「くっ!」

 

一毅は横にとんで避けると階段を掛け上がった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

階段を上がりきると電話が鳴った。こんな忙しいときに誰だと電話に出るとキンジだ。

 

「どうした?」

【今こっちはバスで来たに向かってんだけど藍幇から攻撃が酷いんだ……一旦合流したいし加勢に来れないか?】

「ああ……分かった」

 

一毅が電話を切ると呂布も上がってきた。

 

「悪いがこの戦いはここまでだな……」

「おいおい……良いのか?それで……」

「…………」

 

一毅は一瞬体を止めたが……そのまま窓を突き破って一気に下まで降りていった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!」

 

キンジたちは銃で応戦してるが相手は装甲車の上に機銃まで使ってくる。はっきり言って装備に差がある。

 

「きひひ……」

「この!」

 

しかもさっきから孫の目が怪しげに光る。恐らくあれはGⅢを撃ち抜いたレーザーみたいなものだ。

それを白雪が撃って妨害するが限度というものがある。

 

「あーもう!しつこいってんだよ!」

 

ライカが文句を言いつつアサルトライフルを連射する。

 

「で?どこに向かってんですか?理子先輩!」

 

辰正が聞くと理子も叫んだ。

 

「とにかく逃げるの!詳しく説明してる余裕はないから!」

「…………」

「どうしたアリア?」

 

そんななか一人黙っているアリアにキンジは声を掛ける。

 

「え?あ、うん……何でもないわ!」

「?」

 

アリアの奇行にキンジは首をかしげる。ヒステリアモードだからわかるが何かを隠しているようだ……何かまではわからないが……

するとそこに別のエンジン音が聞こえてきた……

 

「敵か?」

 

キンジたちは同じ方向を見る……そこに現れたのは、

 

「だいじょーぶかー!」

 

途中でお借り(強奪)したデカイバイクを駆って一毅はやって来た。それから背中の断神(たちがみ)を抜く。

 

「バイクと大剣……クラ○ドさんだね」

「まあ見た目はどちらかっていうとバレッ○よねあいつ」

「ク○ウドでも○レットでもどっちでも良いだろ」

 

理子とアリアの呟きにキンジは嘆息しながら外を見る。

 

「うぉらあ!」

 

横から断神(たちがみ)で装甲車を叩く。

装甲車も負けじと一毅のぶつかる。

 

「あっぶねぇな!」

 

体勢を戻しながら見ると孫の片目の光が強くなる……するとドクン!と刀が脈を打つ……だけどこれは今まで何回かあったことだが今回はそれだけじゃない……刀が脈を打つのと共に体が熱い……燃えそうな感覚だ。

 

「く!」

 

だがそれどころじゃない。孫のレーザーが放たれそうなのだ。

 

「オォオオオオ!!!!!」

 

一毅は加速すると孫とキンジたちのバスの間に入る……そしてそれと共に孫からレーザーが放たれた……だが、

 

「がぁ!」

 

一毅の断神(たちがみ)はその銘の示すように断ちきった……

 

『…………』

 

キンジたちはその光景を見て呆然とする……文字通り目にもとまらぬ早さで打ち出されたレーザーを斬ると言うのは一毅の心眼を使えば可能かもしれない……GⅢの防具を撃ち抜くほどの破壊力を秘めたレーザーとぶつけても断神(たちがみ)は形状が全く変化していない……

 

(マジかよ……あいつ遂にレーザー斬るようになったのか……)

 

キンジがひきつっていると理子が声を掛けてきた。

 

「皆何かに捕まって!」

『っ!』

 

理子の声に反射的に反応した皆は急いで捕まる。次の瞬間急ブレーキがかかった……

 

「くぅ……」

 

だが結局凄まじい遠心力によって皆でゴロゴロ転がったが……

 

「大丈夫かい?二人とも」

「う、うん」

「はい……」

 

咄嗟にヒステリアモードのキンジはアリアと白雪をキャッチしてお二人は頬が真っ赤だ。

 

「あー!ずるーい」

「はいはい」

 

理子の頭のなでなでしてやると理子もご満悦だ。

 

「大丈夫ですか?」

「流石ライカさん。男前……いえ、女前ですね」

 

ライカに支えられながらレキがいうとライカは苦笑いした。

 

「な、なななな……」

 

すると志乃がふるふる震えていた……

何事かとライカとレキが見てみると、

 

「おやおや」

「うわぉ……」

 

辰正の頬とあかりの唇の距離が0㎝……つまりほっぺにチューと言う奴である。

 

「ししししし死刑!絶対死刑!」

「ちょっとまって!!!!!今の事故!咄嗟に支えて転がったらそうなっただけだら!」

 

ビュンビュン刀を振り回す志乃の斬撃を辰正は避けあかりは……

 

「…………」

 

硬直していた……

 

「で?何でここで止まったんだい?」

 

キンジが聞いた瞬間横を装甲車がスリップしながら通過していき……

 

「ああ~」

 

そのままこの橋はずっと後ろを見ていたため気づかなかったが作ってる途中で向こう岸まで出来上がっておらずそのまま装甲車は落下していった。

 

「ここに来る前にオイルを盗んでおいたんだ~」

「それでスリップしていったのか……」

 

すると一毅が入ってきた。

 

「大丈夫……だな」

「ちょっと一毅先輩!俺を無視しないで助けてください!って言うかこの状況のどこを見て大丈夫だと判断したんですか!」

「え?いつもの光景だけど?」

 

ガーンと辰正は志乃の斬撃を避けながら皆はバスの外にでた。

 

「さて……」

 

キンジは下を見てみると装甲車の中から敵も出てくるところだった。

 

「取り敢えずは何とかなったか?」

 

一毅がいうとパチパチと拍手された。

 

『っ!』

「いやはや凄いですねぇ皆さん。驚きでしたよ」

「お前は……」

 

キンジは口を開く。

 

「諸葛……静幻……」




な、長かった……今回なんと9056文字ですってよ……
こんなの初です……長すぎたかもしれません……が、戦闘シーンは書いててやっぱり楽しいですね。

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