「くっ!」
「お姉ちゃん!」
レキとロキは遮蔽物に身を隠す。
「凄腕のスナイパーです……距離は凡そ2000と少し……ですが狙いはえげつない位上手いですね……しかも……」
レキが一瞬身を乗り出して発砲する。
「え?」
だが銃弾は弾かれた。
「
「勝てそう?」
「どうでしょうね……自分と同程度の狙撃主なんて相手取ったことの方が少ないですし……」
(どちらにしても一毅さんたちは大丈夫でしょうか……)
「おら桐生!」
「ちぃ!」
一毅の二刀とルゥ……いや、呂布の檄がぶつかり火花と轟音を辺り一帯に撒き散らす。
「くははは……良いなぁ!俺の檄を正面から受け止めた奴は殆どいねぇ!誇って良いぜぇ!」
そう言いながら呂布は拳を突き出す。
「くっ!」
その拳を一毅は躱しながら斬り上げる……相手の意識から僅かにだが外れた斬撃だ。しかし呂布は意図も簡単に躱した。掠りもしない。
「あぶねぇなぁ!そっから来てたのは気づかなかったぜ」
『っ!』
反応の仕方がおかしいのに周りは気付いた……そしてこの避けてから相手の攻撃に気付く回避……それを皆は知っていた。
「お前まさか……」
「ああ……お前も心眼使えるんだろう?桐生!」
檄での突き……ただそれだけだが呂布が放てば音を置き去りにする音速の突きだ。
「この!」
だが一毅も体に走る電流と共にギリギリで回避した……
「やっぱまだ使いこなしてないんだな……お前」
「残念ながら……なぁ!」
体制を崩しながらも一毅はそこから回避と共に斬撃を放つ技、二天一流 秘剣・霞ノ太刀を放つ。
「くはっ!」
呂布は笑いながらそれを歯で噛んで止める。まさかこの間清寡に使った防御技がこんな場面で相手に使われるとは思わなかった一毅は驚愕した。
「おっらぁ!」
「がっ!」
一毅の腹部に呂布の拳が刺さる。
「一毅先輩!!!!!」
ライカが呂布の脇腹に拳を叩き込む。だが……
「かた……」
腹筋が固すぎてダメージにならない……
「お前はたしか火野 ライカだったな……関羅から聞いてるぜ!!!!!」
「この!」
そこに辰正が首を後ろから締める。
「おぉ?」
「は!」
更に、陽菜が檄を持ってる方の腕関節を極める。
「これで……」
「どうでござるか!」
だが呂布はニタァっと愉悦の表情だ。
「こいつは良いなぁ……いいダイヤの原石があるじゃねぇか……だけどよぉ……」
お前らじゃ俺の相手にならねぇよ……そう言って呂布は陽菜の着いた腕を振ってライカにぶつける。
『がっ!』
「もういっちょ!」
陽菜が離れたのを確認した呂布はそこから後方宙返り……辰正の頭を地面に叩きつける。
「お前ら……っ!」
一毅が駆け寄ろうとした瞬間ドクン!と体が脈を打つ……
(これは……)
一毅は無意識にその方向を見た……その先には猿の尻尾のようなものをちらつかせた黒髪の少女が立ち上がったところだった。
(なんだあれ……)
一毅は知っている……彼女が何者なのかを……知識としてじゃない。一毅の内にいる何かが言っているのだ。彼女は……
「おいよそ見してる暇はないぜ!!!!!」
「なっ!」
呂布が叫ぶと次の瞬間その体から
(あいつもヒートが使えるのか!?)
とっさに一毅も
一毅と呂布が振りかぶる……そして、
「二天一流 必殺剣!二刀瞬斬!!!!!!!!!!」
「ルゥオアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
二人が一瞬交差する……そして、
「がはっ!」
一毅が鮮血を撒き散らしながら膝をつく。
「か……は……」
「惜しかったなぁ……く……」
呂布も脇腹から走った痛みに眉を寄せる。痛み分け……と言ったところだった。
だが一毅はそうは思えない。呂布はまだ余力を残している。まだ本気じゃない……
(くそ……)
引き分け……と言うには一毅自信は思えない引き分けとなった。
(不味い……)
呂布と一毅が戦っている最中にさっきまで黙りだった少女まで動き出した。
「猴さん……まだダメですよ……」
それを口で制するのは静幻の隣にいた少年だった。
「お前は……」
「あ、初めまして。俺は
たしか姜維は孔明の弟子だった男のはずだ。
「よくわかんねぇが……やっちまえば同じだな」
そう言ったGⅢがキンジで言う桜花……名は
するとそこに、
「止めるんじゃGⅢ!」
「玉藻!?」
キンジが驚く。
「お主もじゃ孫!ここで暴れれば問題となる!」
だが孫と呼ばれた少女は聞いていないようだ。だがあの少女は猴と言う名前じゃないのか?
「へ……何もんだか興味ねぇな!」
「GⅢ!あれの名は斉天大聖 孫悟空!!!!!神じゃ!人の身では勝てん!」
『っ!』
キンジ達は驚愕した。今まで本当にいろんなやつに出会ってきたがまさか孫悟空本人とは……通りで何か人間とは違う気がしたが……
「何をしている星伽巫女!今すぐ抑えろ!」
「あ、はい」
そう言って白雪が腰のイロカネアヤメに手を掛けようとした瞬間、
「っ!」
白雪を狙った銃弾が飛んできた。
「スナイパーだ!」
恐らくレキ達と戦ってた奴だろう。しかしレキ達と対峙しながらこっちにまで狙いをつけるとは……かなりの手練れだろう。
「ああめんどくせぇな……待ってらんんねぇぜ!」
そう言ってGⅢが流星の構えから走り出し加速する……
「やめ……」
ろと玉藻が言おうとした……だが言い切ることはなかった……何故ならば……
「が……」
『え?』
全員が呆然とした……次の瞬間一瞬猴とか孫とか色々な呼び方で呼ばれた少女の目が緋色に光った瞬間……GⅢの胸に風穴が空いたのだ。
「GⅢ!」
キンジが叫ぶ。不味い……ここで戦力が一人削られた……このままでは……
(何か……ん?)
キンジはポケットに入っていたやつを引っ張り出す……
「お前ら!逃げるぞ!!!!!」
キンジがそう叫んだ瞬間何かを地面に叩きつけた……そしてそれは多量の煙を撒き散らす。
「一毅先輩行きますよ!」
「……あ、ああ!分かってる!」
ライカに正気に戻され一毅も走り出す……
「静幻先生……逃げられちゃいますよ?」
「今回はこれでいいでしょう。猴は眠そうですしね……あちら一人戦闘不能にできただけでもいいでしょう。どうでしたかルゥくん……桐生一毅は……」
「悪くない……いや、最高だ。俺に傷を負わせるなんて全盛期のあんた以外にはその猿女位だからな。俺はまだまだあいつとなら強くなれる」
「全く……まだ強さが成長過程とは……」
姜煌はため息をつく。
(しかも桐生一毅と戦う中でまた強くなったし……まああっちも同じか)
姜煌は相手が逃げた方向を見ていると静幻が電話を掛けた。
「あ、貂蘭さん。こっちに戻ってください。戦闘は終了です」
電話の相手が同意したのを確認すると静幻は電話を切った。
「はぁ……はぁ……追っ手はないか?」
「大丈夫みたいよ」
キンジ達が一息つく。
「大丈夫かGⅢ……」
「このくらい屁でもないぜ」
キンジが聞くとGⅢは笑った。
そう、GⅢは生きていた。何と途中でヤバイと思ったGⅢは咄嗟に体を傾け内蔵に傷をつけられないようにしたらしい。撃たれるときの対処法があるとは流石アメリカだ。因みに
「つうか慌てすぎなんだよ」
「そんな人間がやらねぇような技で生きてるとは思わねぇよ」
「兄貴にだけは言われたくねぇよ」
『確かに……』
他の面々は同意した。
「お前ら……」
キンジはこめかみをヒクヒクさせる。
するとそこにヘリが来た。
「サード様!?」
中から出てきたのは狐耳の少女だ……この間も見た。
「久しぶりじゃの九十九」
「え?」
コニャーンと言う効果音が流れたかと思うとキンジの懐から玉藻がドロンと出てきた。いつの間に……
「てゃ、てゃみゃもみゃみゃ!」
「落ち着け。今はこやつの治療を急ぐんじゃ。あと、姉たちにも騒がぬように伝えておけ」
「は、はい!」
そう言ってGⅢを運び込むと九十九はキンジにアッカンベーしてから入り一応付き添うとかなめもヘリに乗った後そのまま飛び立っていった……
「玉藻……あいつは一体何者なんだ?」
「言ったじゃろ……孫悟空本人……神じゃよ」
「……」
何となくそれだけじゃないのは今のキンジにはわかったが聞いても教えてもらえまい。諦めよう。問い詰めるには情報が足りない。
「後桐生。お主は気分が優れぬとかないか?」
「んにゃ……斬られたところは痛いけど特に他にはないかな」
「そうか……」
玉藻はどこか複雑な表情をした。
「お主は孫には近づくなよ」
「は?何で?」
「何でもじゃ……」
そう言って玉藻は白雪に一瞬アイコンタクトをとってからまた消えていった……
「突然だが……遠山と桐生は転校することになった」
事件から三日後……いろいろな後始末を終えてキンジと一毅は転校というか元の住処に変えることになる。
それでクラスは騒ぎになるが望月だけは知っていたのでまだ落ち着いているがそれでもつらそうだ。
「まあ世話になったな」
「元気でな」
二人がそういうとクラスの皆は一度顔を見合わせて……
『せーの……遠山!桐生!駆け落ち先でもお幸せに!!!!!』
『駆け落ちじゃねぇよ!』
完全にオホモダチ認定されてたことに二人は驚愕しつつ突っ込みをいれた……
その後電車に二人は乗った。学校は残念だが半分しか受けていない。まああんまり長くいると里心着いちゃうし良いだろう。すると、
「遠山くん!」
「え?」
ドアが閉まる前に望月が来た。
「学校はどうした?」
「抜けてきちゃった」
「おいおい」
キンジが呆れた。一毅も肩を竦める。
「何か用か?」
「う、うん……あのね……帰っちゃう前に……それくれない?」
キンジの第2ボタンを指差しながら望月は言った。それを見て一毅はため息をつく。着実にハーレムランドの住人増やしてる幼馴染みはその意味が分かってないがまあ良いだろう。
「別にいいが」
どうせもう着ないしとボタンを千切って渡す。
「あ、ありがと!」
望月は小躍りしそうだ。そんな良いもんじゃないけどなぁとキンジは頬を掻く。
「じゃあさよならだな」
「……」
キンジがそう言うと望月は黙る……そして、
「私……遠山くんに言っておきたいことがあるの……」
「え?」
「私ね……」
そこにドアが閉まる……
《遠山くんのことが……》
読心術で読めるが……キンジは読まなかった。何となく……望月の言葉は聞いちゃいけない気がした。
彼女と自分は違う場所にいる。今の言葉を聞いてしまったらその意味がなくなってしまう気がした。
「で?何かいってたのか?」
「さあな……ドアが閉じて発進しちまったから分からん」
キンジがそう言うと一毅もそうかと頷いた。
「傷はいいのか?」
「セツさんのお握り腹一杯くって唾着けて治した。まだ痛いけど戦いには支障はない」
「だからどういう回復能力だっつうの」
キンジは肩を落とす。
「で?これからどうするんだ?」
「決まってるだろ……」
キンジが一毅を見る。だよなぁと一毅も見た。
『反撃開始だ』
コツンと拳を軽くぶつけて二人は笑いあった。