優しき闇の使い魔   作:孝&誠

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既にストックも半分を切ってしまったか・・・


第四話

 闇ヶ谷・・・それがどこにあるのかと聞かれて、申し訳なさそうな顔になるヴィストリア。

 

「えっと、日本じゃなくて魔界(まかい)なんだけど?」

「・・・はい?」

 

 ヴィストリアの突然の暴露に頭の上に大量の?を浮かべながら首を傾げ、茫然とした表情で固まるルイズ。

 

「ですから、魔界。」

「・・・・・・え?」

 

 ルイズのフリーズは続く。まぁそれも仕方のない事だろう・・・今の彼女は前世とは違い、ファンタジーの世界に住んでいるとはいえ、まさかその様な物まで出てくるとは思いもしなかったのだから。

 

「あ、あれ?魔界って伝わらない?おかしいな?魔界って方言なのかな?えっと・・・えーっと・・・標準語で魔界って何て言うんだっけ?」

 

 ルイズがいつまでも訳が判らないといった表情で固まるので、伝わらなかったと勘違いするヴィストリア。

 

「えっと、ヘル・・・は地獄だし、パンデモニウム?・・・も、違うな・・・えーっと。なんだったけ?」

 

 軽く混乱しているヴィストリア。 先に正常に戻ったのはルイズの方であった。

 

「えと、魔界?・・・背がちっちゃくて年齢が1300歳超えてて上半身裸で高笑いする触角の髪が特徴的な魔王が居るあの魔界?」

「もしかして、ラハールくんのこと・・・かな?」

 

「・・・・・・魔界戦記・・・ディスガイア?」

「・・・?何それ?」

 

 転生者であるルイズからラハールの特徴が出てきたのには驚いたが、それよりも疑問に思う単語があった為、そちらを聞く事にしたヴィストリア。

 

「私の世界にあった小説・ゲーム・アニメ・漫画になった最凶やり込みゲーム。」

「へぇ・・・僕の世界って、ゲームなんだ?ちょっと、複雑かも」

「でも、少なくとも私はヴィストリアなんてキャラクターは知らないよ?」

 

 一応そのゲームのプレイヤーでもあったが、流石に17年も前の記憶であった為、薄れてきてはいるが、彼の名前は精々がランダム入力で出てくる名という位しか思い出せない。

 

「ん~~~~もしかしたら、亜紀・・・ルイズさんが転生した弊害(へいがい)とか?」

「無理に言い直さなくてもいいよ?」

 

「う・・・ごめん。」

「あ、ううん。気にしてないよ。ところで、弊害って?」

 

 なんとなくだがヴィストリアの言に興味を持ったので聞き返すルイズ。

 

「うん。もしかしたら、僕もイレギュラーになるのかな?って。《大谷亜紀》という存在が、ルイズさんに憑依転生する事でゼロの使い魔本来の物語が並行世界(パラレルワールド)として世界が認識して、その為に《ルイズの使い魔=サイト》という式が成り立たなくなって《ルイズとなった亜紀の使い魔=誰々》という式が出たんじゃないかと・・・」

「・・・じゃぁ、ヴィスティは、私の使い魔になる為に生み出されたイレギュラーかもしれないって事?」

 

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。"世界"って言うのは、僕達の様な生きる者や、神ですら認識できない"真理"と言えるものだからね。世界がそう望んだのか、それとも、最初から決まっていたのか?・・・それは誰にもわからない事だからね」

「ううう・・・難しすぎてよくわかんない」

 

 元々この世界の人間ではないルイズは並行世界説はある程度知っている。しかし、理解できるかと言えば別問題なのだ。

 

「大丈夫だよ。僕も判ってないし。飽くまで今のは僕の憶測でしかないからね?」

「ふぅん。ねぇ、ヴィスティは魔界に住んでたって事は・・・”悪魔”なの?」

「え?ううん。僕は”魔族”だよ?」

「・・・?何か違うの?」

 

 悪魔と魔族の違いがまるで判らないというルイズ。

 

「悪魔って言うのは、魔族の中で”罪を犯した罪人につけられる称号”なんだ」

「そうなの?」

 

「うん。人間界では悪魔も魔族も一緒に考えられたりしてるけどね」

「私も同じだと思ってた・・・」

 

 元々からして人間であるルイズが、他の種族・・・この場合、人外の類を識別できよう筈も無い。

 

「意外と人間界には間違って伝えられてることが多いんだよね。たとえば、よく死神と悪魔を一括りで言われてたり」

「え?死神って悪魔じゃないの?」

 

 またしても認識の違いが出てきた事に驚くルイズ。

 

「うん。死神は神族だから魔族や悪魔とは別物。その点では堕天使に近いかもしれないね。人間界では死神が現れると死ぬって考えてるみたいだけど、それも間違い。"死神が現れるから死ぬ"んじゃなくて、"死ぬから死神が現れる"んだよ?」

 

 ヴィストリアは出来る限り判り易く噛み砕いて説明していく。

 

「それって、よくお年寄りが言う"お迎えが来た"みたいな?」

「うん。まさにその通り」

 

 すぐに理解してもらえたのが嬉しいのか、頷きながらニッコリと微笑む。

 

「へぇ・・・あ、じゃぁヴィスティはどんな称号なの?」

「僕の?」

 

「ええ。ちょっと興味あるし。」

「えと、その・・・う。」

 

 尻すぼみする様な小さな声で答えるヴィストリア。当然だが、そんな小さな声で聞きとれる人は早々居ない。

 

「え?ごめんなさい?よく聞き取れなかったんだけど?」

「えっと、ね・・・”魔王”。」

「・・・わ、わんもあぷり~ず?」

 

 何かの聞き間違いだろうと思いつつも、動揺し過ぎて下手な発音で聞き返すルイズ。

 

「魔王。・・・一応、ラハールくんと同じ・・・」

 

 恥ずかしそうに指をつんつんと突き合わせ、視線を逸らしながら寂しそうに答える。

 

「・・・・・・はい?ま、魔王?」

「・・・うん。」

「・・・え!ちょっ!?はぁっ!?全然見えない!?」

 

 またもやフリーズ。しかし、先程からちょくちょく思考が停止していたせいで復帰が早かった。

 

「う・・・よく、言われる・・・」

「どうみてもメイドじゃないの!?見た目、女の娘だし!?」

 

 言うに事欠いてメイド扱いされるヴィストリア。彼は言われなければ10人中8人に女の娘と間違われるのだ。

 

「う・・・それも、よく言われる」

「あぁ、やっぱり・・・」

 

 ヴィストリア本人にとっては納得できない事だが、ついつい納得してしまうルイズ。

 

「僕も、いつの間にか魔王になってて戸惑ったし・・・魔力構成とか魔法創造は得意だけど魔力量調整とかはかなり苦手なへっぽこなのに・・・別に部下とかもいないし、魔界を治めているわけでもないし・・・なんで僕、魔王になんてなってたんだろう?」

 

 魔王になったつもりもないのに魔王になっていた事を思い出してどんよりと暗いオーラを纏い始めるヴィストリア。そんなヴィストリアを見兼ねたルイズはとりあえず質問を続けた。

 

「ち、ちなみに、どのくらいの力を持ってるの?」

「えっと・・・さっきも言ったけど僕、実は魔力量の制御が苦手で・・・0か50か100かしか出せないというへっぽこ具合でして・・・」

 

 何も起こらないか、半分の力か、全力か。極端と言えば極端であるが、半分でも抑えられるだけまだ・・・いや、魔王としては致命的な気がしないでもない。

 

「ぜ、全力だと・・・どうなるの?」

「余裕で一国が地図から消えます。」

 

 戸惑いがちに全力解放の場合を聞くと、ルイズの想像よりも上だった。

 

「国単位!?核ミサイルが可愛く見えるわよ!」

「え?でも核ミサイルと違って放射能汚染とかないからむしろクリーンで・・・」

「破壊可能範囲を言ってるの!!」

 

 一国を消す時点でクリーンもクソもないだろうに。

 

「実は地球のアトランティスとムー大陸が無くなったのって僕が魔力全開放出しちゃったから・・・」

「まさかの幻の大陸消滅の原因が目の前に!?」

 

 アンタの仕業か!?と、目を剥くルイズ。だが・・・

 

「という冤罪をツヴァイにかけられた。僕、やってないのに・・・」

「やってないの!?紛らわしい言い方しないでよ!!」

 

 何とも紛らわしい発言のせいか、からかわれているのではないかと思い始めるルイズ。

 

「ちなみにアトランティスの住人はムー大陸の生き残りの人達の子孫だとか・・・」

「どうでも良いわよそんな雑学はっ!」

 

 こんなところでいきなりトリビア出されても反応に困るだけだ。

 

「参考までに言っておくけど、魔力量半分くらいなら・・・秋葉原を崩壊出来るよ?」

「なんで秋葉原限定なの!?なんでムー大陸破壊の半分の魔力を使いながら秋葉原限定!?ムー大陸って確か結構大きくなかった!?破壊可能範囲的には小国の日本くらいは余裕で消し飛ぶでしょう!?」

 

 何故に秋葉原が例えに出たのだろうか?そこが激しく疑問である。

 

「いや、まぁ・・・破壊可能範囲的にいえば確かに日本くらいは消せるんだけど・・・」

「そうでしょう!?」

 

 国で言えば下から数えた方が早い程小さい日本など、軽く消滅できる力で何故国より更に小さい街は壊滅程度なのだろうか?

 

「だけどきっと・・・その場合、"秋葉原だけ"は堪え切るんだろうなぁ・・・」

「秋葉原にどんな偏見持ってるの!?ただの電気街じゃない!」

 

 そう、電気街。たとえメイド喫茶やオタク共の聖地とか言われているが結局のところ、電気街でしかないのだ。それが何故に、魔王の魔力解放出力半分とはいえ耐えきるなどというのだろうか?

 

「忠告しておくよ。秋葉原を甘く見ないほうが良い・・・」

「いったい秋葉原でなにがあったの!?魔王ともあろう人がそこまで警戒する秋葉原ってなんなの!?」

 

 いわゆるゲンドウポーズを取って重い表情でルイズに忠告するヴィストリア。

既にルイズも何処から突っ込んでいいのか判らなくなってきている。

 

「秋葉原・・・あそこは、魔界だ。」

「魔界在住の人に魔界認定された!?」

 

 まさかの魔王本人に魔界認定をされた秋葉原。すでにルイズの思考はいっぱいいっぱいだ。

 

「それに秋葉原には様々な能力者がいるし・・・」

「いないからっ!秋葉原はそんな魔境じゃないからっ!」

 

 ただの電気街でしかない日本の町が魔境と誤認されている事に納得できないルイズ。

 

「そんなことないよ。だって僕、秋葉原で邪気眼っていう魔眼を持った人に会ったし・・・」

「ただの中二病患者だからっ!別に能力者じゃないからっ!!」

 

 まさか、ヴィストリアは人の言に真に受けやすい性格で、虚実の判断に疎いのだろうか?

 

「幸いその時はまだ使う時じゃなかったらしくて僕は助かったんだけど・・・」

「発動なんてしないからっ!ってなんで私たち秋葉原についてこんなに熱く語ってるの!?」

 

「まぁ熱くなってるのはルイズさんだけなんだけどね」

「誰のせいなのかな!?かな!?っていうか続きは!?」

 

 もう秋葉原を魔境とされたくないのか話題を戻すルイズ。

 

「あぁ、うん・・・あれ?なんの話だっけ?」

「魔力量の話よっ!」

 

「あぁそうだった。全力で国単位、半分で秋葉原・・・」

「秋葉原は譲る気ないのね・・・」

 

 どうしてそこまで秋葉原を引き合いに出したがるのだろうか?

 

「あ、秋葉原といえば・・・」

「もう秋葉原はいいからっ!!続きを話してよっ!」

 

「あぁ、うん。それで、危険すぎるから、"アイン"を作ったんだ」

「アイン?」

 

 一瞬、志〇けんのア〇~ンを思い浮かべたが、すぐにどこかの国で1という意味があったような気がすると思い直す。

 

「この子。僕の付けてる指輪。魔術補助機構兵器(デバイス)で、一応ストレージ型。」

「ちょっちょ!ちょっとまって!デバイス!?まさかリリカルで本気狩る(マジカル)な魔法で魔砲少女が出てくるデバイス!?」

 

 こんどは某魔砲少女で有名な彼のアニメのデバイスが出てきた事に驚くルイズ。

 

「うん。リリカルなアレに出てくるデバイス。と言っても、真似ているだけで中身は全くの別物だけどね?アインは補助目的だから防御と収納と仮想現実(ヴァーチャルリアリティ)を詰め込んだから、大がかりな思考回路(AI)は入ってないけど、ユニゾン機能があるよ。」

「ユニゾンできるの!?ストレージ型なのに!?」

 

 元ネタの設定はどこへ行ったとも思うが、所詮は真似ているだけだからどうにでもなるんだろう。と、ルイズは無理矢理に自分を納得させる事にした。

 

「うん。まぁ、つまり本気を出すと全部無くなっちゃうから、ツヴァイが居ないと本当の意味で本気は出せない、んだ・・・けど、ね・・・うぅぅ。ツヴァイ・・・どこ行っちゃったの・・・?もしかして、僕に愛想が尽きたの?」

「だ、大丈夫よ!きっと何かの手違いなんだよ!ツヴァイって娘のこと、私もなにか協力できることないか考えてみるから。だから今日はとりあえず休みましょう?ね?ね!?」

 

 これ以上はこっちの精神が持たないと思い、とりあえず、保健室から自室に戻って就寝する事にしたのだった。

 

 

 

???SIDE

 

 真っ暗な部屋。

 

 飾り気のない部屋の中心にキングサイズのベッドが置かれている。

そのベッドに眠るのは一人の少女。 ふと、寝苦しそうに眉をしかめる。

 

『・・・・・・』

 

 ぱちりと開くルビーを思わせる綺麗な双眼。

 

『・・・?』

 

 なにか違和感があるのか首を傾げる少女。

 

 ムクリとベッドから起き上がり、周りを確認するように見渡す。

その少女の手にはいつの間に手に取ったのか真っ白なスケッチブックが・・・。

 

『・・・・・・?』

 

 クンクン。可愛らしい鼻をひくひくさせるその様は子犬のよう。

 

『・・・いない?』

 

 サラサラとスケッチブックにサインペンが踊り、魔界の文字を記していく。

 

 それは筆談。

 

『・・・匂い、しない?』

 

 そしてなにかを確かめるように眼を閉じ、意識を集中させる。

 

『この世界にいない・・・・・・どこ?』

 

 眼を開き虚空を睨みつける。そしてフフ・・・と控えめな笑み。

 

『・・・見 つ け た』

 

 呟き(というか書き込み?)と共に、少女の姿はこの世界から掻き消えた。




こんな駄文に感想書いてくれる人は流石に居ないか・・・汗

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