嫁を育てて世界を救え!~異世界転移物語~   作:妖怪せんべえ

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63話 制服のマネキン

勝負開始の合図と共に、やはり竜人達は竜へとその身を変えた。変身の瞬間なんて始めてみたけど、まあ予想通りというかなんというか。ペカーと光って竜へドーンって感じで、特に面白みはなかった。面白みがないのはいいんだけどさ……。

 

「行くぞ人間!」

 

 いや来ないでください。

 

 人型でも俺の倍近くあったのに、もうそういうレベルじゃない。普通に家サイズだ。しかも3階建てレベルだよ。喋るたびに口からボッボッボッボ火吹いてるしさ。おまけに爪は鋭い鱗で表面は堅そうときた。あんなんにどうやって勝てというんだ。

 

「やあああああああああ!」

 

 ああ、始まってしまった。とりあえずパンピーの俺はカンナの作ってくれた結界の中に避難するが、仕事をしないという訳ではない。軍師は軍師らしく頭を使うんだ。

 

 まずは情報収集だ。こればかりはハウトゥーファンタジーに頼っても意味が無い。本で読む知識と目で見て体で感じる知識とでは雲泥の差がある。机上の空論とはよくいったものだ。俺はこの言葉嫌いだけどな!

 

 12体いる竜の内3体が俺の嫁と、8体が残りの兵とで戦っている。嫁対竜はなかなかいい戦いをしている。互角か少しこちらが有利といったところか。問題は一般兵の方だな。相当レベル上げをしたというのにかなり苦戦している。大体1対27だというのに勝ちが見えないってのが終わってる。竜に翻弄されているのが手に取るようにわかる。

 

 そして怖いのは天竜人だ。何を思ってか、奴はさっきから奥に座しているだけで一向に戦闘に参加してこない。かなり怖いが、正直ありがたい。この状況で天竜人まで加わってこられたらこっちの負けは必至だ。

 

「こーへー。これひょっとしてやばいんじゃない?」

 

 定位置である俺の右肩に座っていたメアリーが言った。妖精という事で普段は割と朗らかな表情が目立つメアリーだが、流石に今は緊張感に満ちていた。

 

「ひょっとしなくてもやばい」

 

 道中がアレだったからまさかこんなに強いとは思わなかった。何より予想外なのは俺の嫁ですら苦戦しているという事だ。彼女達は度重なる成長で、もう強さの基準がだいぶ前からおかしい事になっているというのに、それと互角に戦っているという事は竜人も竜というだけあって人の基準で考えてはいけないという事なのだろう。

 

「このままじゃジリ貧だ」

 

 しかもこっちが微妙に不利。いや、あっちには天竜人という切り札がある分こっちが圧倒的に不利か。更に言うとあっちはまだ空を飛んでもいないし火も大して吹いていない。あれ? これかなりやばいんじゃね?

 

「メアリーいやよー? 焦げちゃうなんて絶対にいや!」

 

「俺だっていやよー?」

 

 しかし、これではホントに焦げるか一生小間使いだ。どうすればいい。まだ戦闘は膠着状態だ。皆踏ん張ってくれてるが、何かないか……。

 

「苦戦してるみたいねー」

 

 突如として頭上から聞こえた声。この声、忘れようもない。俺に度重なる嫌がらせ、食い物を奪うなどの暴挙を働いてくれたホーリーのものだ。

 

「あ、天使さま」

 

「はあいメアリー。今日もちゃんと妖精してるわね」

 

「ホーリー、お前の言う通り、竜を仲間にしようと張り切ったらこのザマだ」

 

「これも経験よ。経験。わかる? まあでも私としても負けてもらっちゃ困るから、一つスキルをあげましょう。ハウトゥーファンタジーの198ページを開きなさい」

 

 言われた通り198ページを開く。198ページが金色に光り輝いていた。ハウトゥーファンタジーがこんな風になっている時は大抵重要な何かがある時だ。

 

「ん? なんじゃこりゃ。ルール、オブブック?」

 

「可愛い可愛いホーリーちゃんからのプレゼント。少しトリッキーなスキルだけど、あんたなら使いこなせるはずよ」

 

「どーやって使うんだ?」

 

「叫べばいいのよ」

 

「マジか」

 

「マジよ。何、恥ずかしいの? 私も一緒に叫んであげるから早くしなさい」

 

「くそう……。ちょい恥ずかしい。が、やるしかないか」

 

「「ルールオブブック!」」


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