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フェンリルの群れを後にした、といったところで鳥人族の群れはさほど離れていない場所にあったので、なんだか表現を間違えた気もするが、とにかく俺達は鳥人族の群れに着いた。
フェンリルと同じように大きな洞窟で彼らは生活をしていた。ここも洞窟の中だというのに、人の顏が判別出来る程に明るかった。が、そんな事はどうでもいい。問題なのは今の状況だ。
「ささ、もう一杯どうぞ。美味しいでしょう? 鳥人族特製の果実酒です」
なにゆえ俺達は鳥人族に歓迎パーティーを開いてもらっているのだろうか。おかしい。物事を順序立てて整理しよう。
まずはフェンリスちゃんをゲットするために息巻いて鳥人族の群れに殴りこみをした。が、鳥人族側はどういう訳か友好的な態度で俺達を迎えた。これは交渉でなんとかなるか、と思い鳥人族のなすがままにされて今この状況。
うーん。やはりおかしい。何故に急に訪れた相手を、百歩譲って歓迎するのはわかるが、歓迎パーティーまで開く? ともすれば食い物に毒でも仕込んでいるのかとも思ったが、俺達と同じものを鳥人族は平気な顏して食べていたからそれは考え難い。
「いや、もういい。酒はあまり好まないんだ。それよりも――」
「なんと! おい! 果実ジュースを持ってこい! 酒は好まんそうだ!」
といった具合に本題を切り出そうとすると強引に話しをなかった事にしようとしてくるのだ。全く、困ったものです。
「公平の話しを聞かない。やっぱり焼き鳥にしてやる……」
「いや、待てカンナ。早い、判断が早過ぎる! 焼き鳥にするのはちゃんと話しあってからにしよう」
これが騎士長あたりならば冗談で済むが、彼女の場合は本気でやってしまう。全く、恐ろしい子だ。すげえ可愛いのに暗いオーラとか、ホント、色々ともったいない。それがカンナの魅力でもあるんだけどさ。
「……わかったわ」
「しかし、彼らはあからさまに公平様の話しを無視してますね」
「……ふむ」
こういった場合可能性は大体2つに絞られる。単に面倒くさいか、話しを聞くと不都合が生じる場合だ。
恐らく今回のケースは後者だろう。と、なれば何が不都合なのか確かめる必要があるな。幸い、世間話程度ならちゃんと受け答えしてくれるから、そこからゆっくりと話しをずらしていくか。
「鳥人族って空飛べたりすんの?」
先程から俺に酒を進めたりと色々と便宜を図ってくれている鳥男に聞いてみた。なんとなくだけど、こいつ色々と物知りそう。
「ええ飛べますよ」
「へー。どんな感じに?」
「普通にこう、バサバサっと」
鳥男はわざわざ立ち上がり、羽の付いた腕をバサつかせた。ホコリはたつは羽は落ちるわでかなりイラッとしたが、努めて表情には出さないようにする。
「すげーな。それってさ、何人かの足に縄括りつけて馬車とかを空中移動させたり出来ないの?」
「出来ない事はないでしょうが……とてもじゃないですがやりたくないですね」
「ま、そりゃそうだ。ところでさ、女の子いないの?」
「あああ……女はちょっと狩りに行ってます」
「全員?」
「はい」
なんてわかりやすい。表情に思いっきり書いてますよ? その話題はやめてくださいってな。だが残念だったな。俺様は男には容赦しないのだ。
「ふーん。鳥人族って女の子が狩りするんだ。珍しいねえ」
「よく言われます……」
「やっぱりさ。鳥人族の女の子ってハーピーとかっていうの?」
「え、ええ。それよりもジュースのおかわりはいかがですか? もうグラスが空ですよ」
「いらん。可愛い子いる?」
「もちろんいますとも。私の娘はそれはもう可愛いです。ただ、人間の目から見て可愛いかどうかはわかりませんが」
「大丈夫だ。俺は部族が別だからといって差別はしないのだ。可愛ければ全てよし! で、いつまで待てば会えるの?」
「会えません。いかんせん彼女達は狩りに行ってますので」
「帰ってくるまで待つよ?」
「ここにはあなた達を泊める場所などありませんよ」
「それなら大丈夫だ。俺達はここまで馬車で来たからな、いつまででも待てる」
ニコニコ。そんな擬音が聞こえそうな程に俺達は乾いた笑みを顔に貼り付けて黙りこくった。
「おい、公平」
「なんだよ騎士長。今いいとこなのに」
俺は不満たらたらに後ろを振り返った。すると、どういう訳か後ろには槍を持ったトリさん達がニコニコ笑顔で俺達を見下ろしていた。
「ふむ。アンジェはこの鳥男を。カンナは殺さない程度にあいつらを焼き鳥に」
俺の嫁2人の行動は早かった。指示を出してすぐに状況を終了させていた。先程まで槍を持ってニコニコしていたトリさん達は羽から煙を出していたし、鳥男は後ろからアンジェに拘束されて首にハルバードの刃を押し当てられていた。
「ひいい! 勘弁してください!」
「人の話しを聞かないからこうなるのだ。もう一度聞くぞ。ハーピーちゃん達はどこにいるの?」
「奥にいます! いますから勘弁して……!」
「うむ。最初からそうしていれば誰も傷つかなかったのに。騎士長確認してきて」
「で、もう一個聞くよ。なんでこの辺の獲物狩り尽くす勢いで狩ってんの?」
「それは話せば長く――ひいい」
鳥男の話しをいつまでも聞いていたくなかったのでさっさと短く話せという意味合いを込めて俺は鳥男の眉間にレイジングブルを突きつけた。
「野盗です! 全部野盗のせいなんです! 彼らが私達の食料を奪って、狩りに行く男達を殺してしまったのが全ての始まりなんです!」
野盗。野盗ねえ。また話しがこじれる予感がする。こいつらが悪側だったらさっさと倒して終わらせるのに、どうもそうじゃないくさい。
落ち着いて話しをさせるために俺は眉間からレイジングブルを下げた。逃げられないように外しはしないが、アンジェに少しだけ拘束を緩めさせた。
「ふう……。それで続きですが、彼らはこれ以上殺されたくなかったらこの辺の獲物を狩りつくせと言ってきたのです。そして、狩りを有利に進められるようにと、武装も置いていきました」
「なんじゃそりゃ。意味がわからん」
「私達もわかりません。ですが、やらなければ次は女も殺すと」
俺は眉をひそめた。いつの時代も野盗というのはいるものだが、この野盗の考えている事はさっぱりわからん。俺個人の意見だが、野盗の3原則は、女、殺し、宝、だ。
今回はその三原則の何にも当てはまらん。一応殺しに当てはまらん事もないけど、皆殺しにしてないしなあ。
「おーい。連れてきたぞー」
俺が思考にふけっていると、騎士長がハーピーを連れて戻ってきた。ハーピーらしく皆腕に羽がついていたが、問題ない。人間の感覚で見ても可愛い。特にあの子。
「君、俺の国に来ない?」
「へ?」
「あああ……その子は私の娘です。勘弁してください」
「やだ」
なるほど。さっき言ってたけど、確かに可愛い。親バカという訳ではないようだ。この娘はなんとしても俺のものにしたい! ならばやることは1つ。
「その野盗だかいうのを倒したらお前の娘をくれ。そうしたらお前らを俺の国に連れてってやる。そこなら飯も沢山食わしてやる」
「あああ…そんな……」