妖精の翼 ~新たなる空で彼は舞う~   作:SSQ

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人物紹介更新しますた


第4話 会合

「フェアリィ空軍特殊戦第5飛行隊14番機。B-14ガルーダ。パイロット、フレデリック・T・バーフォード大尉だ。助けてくれたことに感謝する。」

 

角丸は、一瞬何と返せばいいのか解らなかった。

本当に男なのにストライカーユニットを動かせてる…。

でも、尻尾や耳が見えないってことは使い魔はいったい何なのだろうか。

それに、やっぱりどう見ても30代には見えないわよね。

等々色々考えていると私たちがなかなか反応しないのに対して彼が首をかしげたので慌てて敬礼して返答する。

「私はワイト島分遣隊の隊長を勤めています角丸美佐中尉です。失礼ですが、大尉にはいくつか聞きたいことがあるのですがよろしいですか?」

私がそう言うと彼はあたりを見渡すとこちらに少し困ったような顔を向けてきた。

「ここでか?出来れば落ち着いた場所の方がいいと思うのだが。」

そこで彼が言いたいことが分かった。

あっ、しまった。迂闊だったわ。確かに、こんなところで話すような内容じゃない。

もっと落ち着いたところで話したいし。

「そうですね、では一旦基地に戻りましょうか。みんな、帰るわよ。」

ワイト島まで戻る間彼は私たちの左後ろをすこし離れて飛んでいた。

本当はいまここで聞きたいことが山々あったのだけれど、どうにも 聞けない雰囲気だったのでここでは聞かないことにした。

それにしても、本当にジェットストライカーユニットなのね。プロペラが回ってないみたいだし。けど、ちょっとうるさいわね。

いったいどこの国の試作機なのかしら、同じウィッチとして気にならないと言ったらうそになる。

だけれど聞くに聞けない何かがここを支配しているのも同時に気が付いていた。

こうして無線封鎖しているわけでもないのに静かな時間が過ぎていく。

 

-Side barford-

わからん、さっぱりわからん。

なぜ、パンツ1枚で平気なんだ?

そんな彼女たちの複雑な感情をよそに俺は残念ながら自分で考えておいてなんだが低レベルな考え事しかしていなかった。

Garudaの報告と自分が経験した事を踏まえて総合的に考えて、ここは別世界と考えるべきだろう。ジャムがいた世界だっていわば別世界だ。こんなものがあってもおかしくはないだろう。まぁ、いろいろいいたことは山ほどあるがそれは個人でわかる範囲をはるかに超えている。

わかっている情報をもとに軽く整理してみるとしよう。

最初は彼女らが言うネウロイと自分達が知っているジャムが同一のものではないかと考えた。しかし、先程の戦闘でネウロイがビーム攻撃を行っていることを確認したので残念ながら違うとわかった。

それに、今自分がはいているストライカーユニットやらは自分達の世界にはなかった。それにいまは1944年らしい。複数のラジオ放送から確認できたことだからまず間違いない。自分が知っている世界では人間同士で血みどろで無益といっても等しいような戦いが本来ならば眼下で繰り広げられていたはずだ。しかし、ここでは人間同士ではなく人間対ネウロイという構図になっている。兵士が向ける銃口の先には人の代わりにネウロイがいる。もしかしたらこっちの方が幸せだったのかもしれない。

ある意味、きれいな世界とでもいうべきであるか。

しかし、先ほどから言っているがこの惑星の住人、特に女性はパンツで過ごすことが普通となっているらしい。今、自分はここの部隊しか知らなないため何とも言えないがここだけねじが外れているとは思えない。多国籍部隊のようだしまずありえないだろう。

変人ばかり集めた、という可能性も否定できないわけではないがそんなことを言ったらきりがないのでそこで切り上げる。

この世界の住人はいったいどこで間違えてしまったのだろうか?

そしてそれを置いておいて、彼女の見た目も問題だ。どう見ても10代の勉強にいそしんでいるはずの年代の少女にしか見えない。

なぜ彼女たちがその姿からは似つかわしくない銃を持ち、空を飛び、敵とその身をかけて戦っているのか、全く理解できなかった。軍というものに所属しているのであるから国のため、と言うのだろうか?俺自身が自分のためにしか戦っていないから見えにくいもののために戦うというのはいまいち理解できなかった。そのことを含めて、到着したら聞いてみるとしよう。

 

海岸線を右手に飛んでいるとやがて小さな島が見えてきた。それに合わせて高度を下げているのを見るとおそらくあの島が彼女たちの基地なのだろう。

どんどんと高度を下げて、やがて滑走路を完全に視認できるようになった。

Run way insight.

Gear down.

Approaching minimum.

Check.

Minimum.

Landing

《100》

《50》

《30》

《20》

《10》

Touch down.

Reverse push.

アイドル状態にして格納庫へ向かう。

たまたま空いていたらしいユニット搭載器にストライカーユニットを置いてエンジンカット。

出撃の際に持って行った武器の類をユニットに置き腰をついて足を引き抜く。

借り物の靴を履きコンクリート製の床に足をつけると周りからの鋭い視線が突き刺さってくるのを感じた。

 

さて、これから尋問が始まるわけか。

始まる前から疲れているのだが、この世界の情報を一気に入手出来る機会なので心して当たらなければならない。下手をしたらここで銃殺されてしまう可能性だってある。

先ほど、隊長を名乗っていた黒髪の女性が皆の前出でて、俺と正対する。

 

「ようこそワイト島分遣隊基地へ。あなたの来訪を歓迎するわ。」

「え?」

 

俺としては銃を突きつけられて話されることを想定していたため、その予想外の言葉に思わず驚いてしまった。

「?どうされました?」

「銃を突き付けられることも想定していたからな。まさか社交辞令とはいえ歓迎の言葉をかけてくれるとは思ってもみなかった。」

「まさか、そんなことはしませんよ。あなたは今、ゲスト。それに助けれてもらったのだから歓迎こそすれど拒否はしません。」

そういって手を差し出してきた彼女の手を俺もとって握手をする。

「それでは、行きましょうか。」

「あぁ、案内を頼む。」

「もちろんです。」

 

彼女の先行の元、食堂に案内された。

あまり広くはないが全員が座れるには十分な広さがあり、それぞれか自分の場所に座る。

俺の席も用意されていたようで指示されるままに着席する。

 

「まず、自己紹介から。」

そういって手を挙げたのは黒髪の少女。見た目は日本人といったところか。

「私は扶桑皇国陸軍、角丸美佐中尉、隣にいるのがブリタニア空軍、ウィルマビショップ軍曹。」

「よろしくね。」

そういって銀髪を揺らすビショップ軍曹。俺も改めて姿勢を正して自己紹介をする。

「フェアリィ空軍、フレデリック・T・バーフォード大尉だ。階級のことは気にせずに普通に話してくれていい。その方が楽だ。」

「わかりました。では、早速ですがフェアリィ空軍とはなんなのですか?」

「質問を質問で返すようで悪いがジャムという言葉に聞き覚えは?もちろんパンに塗る方ではないからな?」

2人は顔を見合せ首を横に振った。その様子だと全く知らないのだろう。

自分の感覚だとほんの数日前まで戦っていたその存在を全く知らないというのは逆にショックだった。だが以前ジャックが言っていた”地球の連中はジャムの存在を疑っている。”というその言葉を思い出す。もしかしたらそうなのかもしれないというわずかな希望を抱きながら。

「そう…か。ジャムはな、ネウロイとはまた違ったタイプの宇宙人だ。」

「は?」

そこで、俺はジャムが30年前に侵攻してきたこと、人類が必死になって奴等の母星まで送り返したこと、奴等の母星にこっちが基地を作ったこと、それがフェアリィ空軍だということついでに、この世界にくる直前に起こったことを詳細に話した。

「………というわけだ。これだけ話してもやはりジャムという敵については聞き覚えがないか?」

「はい。軍に所属している以上、もしそんな敵がいるのならば絶対にしらされているはずですからね。」

「私も隊長さんと同意見。だからごめんなさい、バーフォード大尉。あなたのそのジャムという敵については今教えてもらったこと以上のことは全くわからない。」

「そう、か。」

やはり俺はきっとあの爆発で全く俺の知らないどこかに飛ばされてしまったんだな。

「自分の知らないところに迷い込むことがこんなにも大変だったとはな。」

「大尉?」

自分の世界に浸っていたことを角丸中尉に話しかけられてようやく気が付く。

「あぁ、すまない。少し混乱していてな。」

「大丈夫ですか?少し休みます?」

「いや、問題ない。話を続けよう。」

「それじゃあ、私何か入れてきますね。」

「ありがとう、ウィルマさん。お願いね。」

軍曹はそういって立ち上がり台所へと行ってしまった。

「大尉、あなたは何者なんです?一体ジャムはどこに?」

中尉の疑問はもっともだ。というかこたえたいが俺だっていまいちよくわかっていないんだ。

「確信は持てないがおそらく、俺はここの世界とは別の世界の人間だと思う。」

「え?」

「俺の生きていた年代、装備、常識、多少は似ているものがあるが食い違っているところもある。そんなのを説明しようなんて言ったらそれしかわからない。」

ジャムが時空を操る力を持っているのでは?という噂は昔からあった。どこからそういうのが出てきたのかは不明だがすくなくとも零が似たような経験をしている。だからだろうか、こんなことが起きてもすんなりと受け入れられるのは。

「俺の常識からしたらアメリカ人とイングランド人、日本人が1944年に肩を並べて戦争やっているのが信じられないんだよ。」

「アメリカ?日本?」

「あぁ、そうだ。とにかく、信じられない事ばかり起きているが考えられる余裕ができてきた、と考えてくれ。」

「そうですか。解りました。」

そういってうなずく中尉。そのタイミングで軍曹がコーヒーを入れてきてくれた。皆で一口飲んだ後で話を再開する。

「さて、次はあんたらにこの世界のこと、ネウロイとはどんなものか話してもらえるか?この世界の常識も含めて頼む。俺自身についての話はそのあとにしよう。」

「わかりました。」

…………………

どうやらこの世界は思っていたよりも深刻らしい。ヨーロッパの大半はネウロイに侵略されており今も必死の攻防戦が続いていること。ここは比較的穏やかだが最前線はヤバイらしい。

フムン、ネウロイの弱点はコアでそこを破壊すればいいのか、逆に破壊するまで再生を続けるとかずるくない?まぁ、うちのgarudaは簡単に見つけてくれるのでそこは、安心しても問題ないかな。

「以上が私たちが知っているこの世界の常識と情勢ね。何か質問は?」

「一ついいか?」

「何でしょうか?」

「君達はその、なぜ下着のみで空を飛ぶのか?」

「?」

何故かこいつ何言っているのみたいな顔さを中尉と軍曹はする。逆に傷つく。

「ズボンをはかないで平気なのか?その、なんというか目のやり場に困る。」

「?ズボンですよ?」

「?」

ダメだ、お互い話がかみ合わない。

「いや、今のは聞かなかった事にしてくれ。」

もうこれ以上この事に首を突っ込むのはやめよう。俺はは無理だとあきらめた。

「そうですか、ウィルマさんは何かある?」

「あります。えっと国籍にUKとあったのですがどこですか?」

「UKといったらUnited Kingdom、まぁイギリスといってもいいか。それ以外何がある?というか、ワイト島自体が英国領じゃないのか?」

今度は俺がこいつ何いってるんだって顔になった。

「?ここはブリタニアよ?」

俺の返答がよくわからないような顔をしながら中尉はそう答える。

「まて、ブリタニアとは、どこだ?」

「「「?」」」

そうして再び話がかみ合わなくなる3人。

「まず、世界地図を見せてくれないか。」

「あなたの後ろに張ってあるわよ」

 

…………1ヵ国も知っている名前がない、というか知っている地図と国境が違うところがある。

「もしかして、世界が変わったから自分の知っている国とは異なっているのかも知れないわね。」

「言われてみれば、その可能性があったな。有り難う。ということは俺はビショップ軍曹と同国人という事になるのか。」

「大尉もブリタニア出身?」

「まぁ、そうだな。」

「どこ生まれなの?」

「ノース・ヴァーウィックだ。フォース湾に面した町だ。」

「うーん、名前だけ聞いたことはあるかも。」

そうか。まぁ、同郷の者がいるというのはそれはそれでいいことだしな。

「それじゃあ、詳しくはあとでね。では、フレデリック・T・バーフォード大尉。あなたに提案があります。」

少し穏やかになった空気を中尉が再び引き締める。きっとこれから彼女の口から言われる言葉はきっと俺のこの世界での人生を左右することになるはずだ。

「聞きましょう。」

だから心して聞かなければ。

「あなたはさっき実戦経験者と言っていました。ですが、ストライカーユニットでの実戦は今日がはじめてだった。そうですね?」

「そうだ。」

「ですがあなたは先ほど、ネウロイを撃墜した。」

「あぁ。」

「つまり実戦で通用するほどの腕を持っているということですね。」

「まだわからないが、数をこなせばきっとうまく操れると思う。」

「なるほど、わかりました。」

そういうと中尉は目を閉じて何かを考え始めた。

時間にして1分ほどだろう。秒針が進む音のみが響き渡るこの食堂で沈黙が続いた。

そしてようやく、中尉が目を開いた。

「なら、ここにしばらくいませんか?幸い人数には余裕がありますし、実戦経験者となれば1人でも多い方がいいですし。元の世界に戻るためにも生き延びる方法をたくさん知る必要があると思いますし。」

角丸中尉からの提案はまさに俺にとって救いだった。今の俺はどこにも行く場所がなくこのままでは死ぬのは目に見えていた。住所、戸籍がない俺を雇ってくれる軍などいくら状況が切迫しているとはいえ存在しないだろう。

だから少しでもながく時間を稼いで今後の方針を決めるためにもどうしても住める場所が必要だった。そこの角丸中尉の提案。きっと彼女自身もそれなりのリスクを背負うだろうがきっとそれも覚悟しているのだろう。なら俺がすべきことはただ一つ。そのリスクを容認できるほどの結果を残さなければならない。

「いいのか?俺としてはそれが理想だとおもっている。叶うならそれが望ましい。」

だからもう一度中尉に確認をとる。これでいいのか、と。

「ならそれでいきましょう。よろしくお願いいたします。大尉。」

だがあっさりとそれを受け入れた中尉。まったく、この年でそんな博打みたいなことを決められるその判断力がうらやましいよ。お互い、再び握手をして俺はその提案を受け入れた。

「あぁ、よろしく。それとバーフォードでいい。」

「ならバーフォード。これからよろしくね。」

「もちろんだ。ところであなたたちはなんと呼べばいい?隊長、ビショップで構わないか?」

「まぁ、それでいいですよ。」

「よろしく、隊長、ビショップ。」

「よろしくね、バーフォード。他のメンバーは晩御飯の時に顔合わせしましょう。」

3人で握手をした。

 

こうして彼のウィッチとしての戦いが幕を開ける。

 

 

 

 

 

「あ、あと身分証を返してもらいたいのだが。あれは俺の身分を証明出来る数少ないものだからな。」

「そうだったわね。はい、有り難う。勝手にとってしまってごめんなさいね。」

荷物を確認した際、唯一なくなっていた身分証を隊長から返してもらう。

「仕方ないさ、隊長も情報が欲しかったんだろう?」

「そういってもらって助かるわ。ところでその写真とあなたの見た目がかなり違うようだけど身分証として平気なの?」

「?写真を撮ったのは4か月前だ。そんなに変わっているのか?」

「ほら、鏡」

覗き込むと、別人がいた。否、それは過去の、恐らく18歳くらいの頃の顔立ちだった。

「なっ!?」

そこにいたのは数日前にひげを剃ったときに見た自分とはかけ離れ、随分と若々しくなった誰かがいた。いや、誰かではなく間違いなく俺なのだろう。

「大丈夫、ですか?」

不安そうな表情をした隊長とビショップ。

「いや、平気だ。少しショックだがな。」

 

そういって少し落ち込んでいる俺を不思議そうな顔をして見守る2人。

あとでビショップだけには話しておくか。隊長に話すと面倒くさくなりそうだし。そう心に決める俺だった。




ようやく合流しました。
1000越えました。
ありがとう、そしてありがとう!
あとごめんなさい。
ウィルマビショップは本来、ファラウェイランド空軍所属ですが、ブリタニア空軍一部変更しています。
そっちの方が後で展開が楽になるので。
あと、ウィルマが生まれたのは1924年でした。

ご指摘、ご感想、誤字報告があればよろしくお願いします。

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