妖精の翼 ~新たなる空で彼は舞う~   作:SSQ

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始まりましたよーワイト島。
今回はワイト島分遣隊をメインにしていきたいですな。


第2話 pay back(上)

「はぁ、どうしてこう私にこんな大変なことを押し付けるのかしら。」

ワイト島分遣隊、隊長角丸美佐中尉はため息をついた。

本日22回目のため息である。

現在時刻1853、ドクターの話じゃ彼の容態は安定しているとのこと。目が覚めるまでにはもうしばらくかかるらしい。全く、どうしたらいいものか。

「はぁ。というか上になんて報告すればいいのよ。人を空の上で拾いました?なんで空から人が降ってくるのよ。」

本日23回目のため息をついたところでまた昼間にあったことを思い出してみた。

こんな事きっと二度とないでしょうね、と思いながら。

 

~~~~~~~

1300

ウィルマ・ビショップらより通信が入った。彼女らは司令部からの命令で確か偵察に行っていたはずだ。駆逐艦が不審な光を発見したかだっけ?

そんなのウィッチじゃなくても近くの航空隊に任せてしまえばいいのに。

だけれども、命令は命令。軍に所属している限り、下されたものは実行しなければならない。だから大変だろうけど、彼女たちにお願いした。

予定よりも10分ほど遅れての報告。何かあったのかと心配になっていたのでひとまずはみんなの声が聴けて一安心。そうして私もそこで何が起きているのか気になっていたので早速その内容を聞いていみるとその返答は、”すごいものを拾った”とのことだった。

す、すごいもの?何かしら?

「どういう事?詳しく説明して?」

だがウィルマさんの報告の口調からしてどうやら困惑しているのはあちらも同じ様子だった。というか、一体何なのか余計に気になる。

「なんと言うかね、生まれて20年近くたつけどこんなの見たのはじめて。こんなのって言っちゃ失礼かもしれないけど。とにかく連れて帰るから待ってて、あとドクターを待たせておいてほしい。よろしくね」

「えっ?待って!誰か怪我をしたの!?」

「いや、そういうわけではないの。そういうわけでわね、大事なことだから2度いったの。まぁ楽しみにして待っててね。あと、司令部には問題なしと報告しておいたから~。」

「あっ、ちょっと!」

それっきり、通信は切れちゃった。

たしか上の話じゃ、この偵察の目的はネウロイかそれに準ずるなにかによる攻撃の可能性って話だったわよね。それにドクターが必要……

ここで角丸中尉の頭の中を1つの勘がよぎる。

まさか、あの子たち宇宙人でも拾ったんじゃ!

-今となってはよくこんなことが思いついたなと我ながら感心してしまう。嘘です、浅はかだと思います。-

人間と言うもの1つでも答えを見つけてしまうとそこからさらに、色々なものまで連想してしまうものである。

宇宙人ってことは、言葉が話せない事もあるわよね。

見境なく攻撃してきたらどうしよう?

指揮官としてみんなのことは私が守らなきゃ!

ドクターには、注意してって言っとかなきゃ。

基地にいる人には箝口令をひいてあとはあとは……

こうして3人いや4人が帰ってくるまで彼女の勘違いは続く。

 

1330

偵察隊が帰投。そこでウィルマたちを待っていた角丸中尉、ラウラ少尉、ドクターは緊張していた。なんせ、隊長が宇宙人が来ると言っていたからだ。まぁ隊長以外は半信半疑だったが。

「宇宙人っていったいどんな姿をしているんだろうね?」とドクター。

「興味ないや。」とラルラ少尉。

なんせ自分たちは宇宙人(?)そのものと常に戦っているのだからちょっとやそっとでは驚かない自身がある。肌の色はなにかしら青?灰色?触れるかしら?

 

そんなおどおどしている角丸中尉を変な目で見ているラウラ、ドクターは最初隊長が何を言っているのか解らなかった。しかし聞くところによると曰く、ウィルマがすごいものを拾った。曰く、3人とも怪我をしていないのにドクターが必要。曰く、生きてきた中で一番驚いたらしい。ここから導き出された結論が宇宙人らしい。

彼女に聞こえないように2人で話し合う。

(きっといつもの疲れだろうね。)

(そうだと思いたいです。これが素だったら私、本気で困ります。)

(きれいな顔していうことはきついね、君って。)

(これが私の素ですから。)

と角丸隊長の悪口(これでも心配している)を言い終えて、じっと空を見る3人。

よくわかったようなわからないような状態のまま待っていると3人が見えてきた。

双眼鏡でみてみるとウィルマが何かを背負っていて残りの2人が何かを担いでいる。

「アメリーとフランシーが持っているの、あれストライカーユニットじゃないか?」

「ストライカーユニットを履く宇宙人?」

「そんなのわからないわよ。とにかくもう着陸しそうだし行ってみましょう。ドクター、くれぐれも注意してね。」

「了解。」

 

こうして演習に出ていた3人がようやく基地に帰ってきた。

「お帰りなさい。お疲れ様です。」

こうして3人はようやくウィルマたちが拾った”もの”と対面した。

「「「え?」」」

しかし目の前にある、いやいるのはどう見ても宇宙人なんかではなく。

「人?しかも男?ウィルマさんどういう事?」

どう見てとすぐ市街地に出ればいそうな青年だった。

「この人を拾ったの。というかドクター、この人怪我しているみたいなの。急いで治療してあげて。」

「ちなみに聞くけど宇宙人なんかじゃいよね?」

「?少なくともここに連れてくるまでそんなことは一度もなかったわよ?」

「よろしい。ならば私の管轄内だ。一つ、働くとしよう。」

こうして、彼はドクターと担架を持ってきた看護師たちに連れていかれた。

アメリーとフランシーは疲れたので休ませてくださいと言って寄宿舎に入っていった。確かに、きっとあっちでいろいろなことがあったんでしょうね。

ラウラはドクターに何かあったときのために付き添うという形でついていった。

残された2人がは状況を整理し始めた。

「それじゃあまず、どういう経緯でこうなったのか教えてくれる?」

「うん、わかったわ。それじゃあ、まずは司令部から命令を受け取ったところからね。」

私はウィルマさんから今回のことの大まかな概要を報告してもらいようやく事の全貌を把握することができたのであった。

かくかくしかじか・・・

 

 

向かっている途中救援要請があったこと、そしてその救援要請は周りにいる味方は誰一人としてその信号を受け取っていなく私たちだけしかとらえることができなかったこと、そしてその信号をたどっていった先で偵察空域で彼を拾ったこと、司令部に何て報告すればいいのか解らなかったから取り敢えず異常なしと報告したことを話してもらった。

「話はだいたいわかったわ。私の早とちりだったみたいね。ごめんなさいね。」

「いやー最初は話が呑み込めなかったけれどようやく隊長がなんか変な感じに誤解しているってことが私もわかったよ。」

そう笑顔で笑ってくる。本当になんであんなこと考えちゃったのかしら、と顔が赤くなっていくのが自分でもはっきりとわかった。

「それで、あの2人が持っていたものは?」

「彼が履いていたストライカーユニットと持っていた武器ね。どれも初めて見るようなものばかり。」

大きな机の上に置かれた一対のストライカーユニット。それと私がみたことのあるものより一回り小さなライフル。エンブレムもその持ち物も私が知っているものと一致する物は一つもない。

「これは?対物ライフルかしら?武器に弾は入ってる?」

カチャ、ジャキン!

チェーンバーを引いて薬室に弾丸を入れる。すでに装填されていたらしく床に1発落下していった。

「入ってるみたい。試し撃ちしてみようか。」

「まぁ助けてあげたんだしいいかしらね。ウィルマさん、ライフルをお願いね。」

「りょーかい。」

肩にそのライフルを背負い私たちは射撃場に移動する。

 

「ウィルマさん、射撃用意お願い。」

「はーい。」

ウィルマがうつ伏せになって射撃準備にはいった。

目標は300m。

射撃場の端っこにあるポールに赤い旗を掲げて実弾射撃練習中であることを示す。

「よし、これで準備よしと。ウィルマさん準備は?」

「いつでも。」

周りの安全を確認したうえで笛をピーを吹く。こんなところに入ってくるような人はここにはいないだろうが一応決まりだ。

「よーい。」

そして的の上にある吹き流しが完全に垂れ下がったのを見計らって

「撃て!」

射撃命令を下す。

ガン!ガン!

それに従いウィルマさんは続けざまに2発、発砲していった。

あまり聞いたことのない音に不思議がりながらもスコープを使って射撃成果を確認する。

 

倍率をあげて確認すると弾丸は見事に的の中心に吸い込まれていった。

「さすがね、ウィルマさん。」

「ううん、違うの。あれは私の腕じゃない。すごいのよ?零点調整してないのにあんな当たるの。これなら隊長でもたぶん行けると思う。」

うつぶせになりながらもへーほーはーと言いながらその銃のいろんなところを触る彼女。

「撃ってみる?」

一通り見終わったウィルマさんが私にそんな提案をしてきた。

「え、私?私はいいわよ、遠慮しておくわ。」

「そんなー、せっかくなんだし使わせてもらえばいいのに。」

「いいの。」

私はそう言いながらウィルマさんから目をそらす。

だって、私狙撃は苦手だもの。部下の前でそんな恥はさらしたくなかった。

「ま、隊長さんがそういうのならいっか。」

「そうよ。さてと、詳しく見てみましょうか。」

彼女が射撃した後に残った2つのから薬きょう。確認してみると使用している弾薬は12.7mm。この弾薬を使用しているライフルなんて珍しい。とはいうものの、対装甲ライフルなんてあまり見たことも使ったこともないから一概にはなんともいえないのだけれど。

「ねね、うちにまだ12.7mmの在庫ってあるよね?誰も使わないからもうちょっといい?」

「ダメです。これは遊びじゃないのよ?」

「ぶー。ケチ。」

「はいはい。」

ウィルマさんは口をとがらせながらそう反抗する。一応、借りものなのよ?そこの所、忘れてないかしら。彼女はそう言った後も銃のいろんなところを触っていた。

まるで新しいおもちゃをもらってうれしそうな子供みたい。

「ちょっと彼のストライカーユニット見てくるわね。ウィルマさんはここにいる?」

「あ、私も行きます。少しあのユニットの形も気になっていたので。」

「なら行きましょうか。」

先ほどと同じようにから薬きょうを箱に入れ、旗を降ろす。

片付けが終わったことを確認したうえで私たちはユニットを置いた格納庫に向かう。

 

「それにしても見たことのないストライカーユニットね。少なくとも扶桑では一度も見たことはないわね。」

「私も見たことはないなー。私達が使うものと大きさも一回りくらい違うし、それに変な形ね。」

「取り敢えず、触るのは彼が目を覚ましてからで、いまは回りから見てわかるところだけにしておきましょうか。」

普通のストライカーユニットとくらべてかなり大きい、全体がグレーの塗装に覆われている。前につき出している翼、翼の途中には8個の見慣れない突起物(彼女らにわからないのも無理はないが元々ミサイルなどを吊り下げていた名残でここから魔力弾を発射する。)、そして下は3つの板が三角形を作っている(推力偏向ノズル)不思議なものだった。

極めつけは所属を表すエンブレムには"フェアリィ空軍(Fairy Air Force) "、"ブーメラン飛行隊(Boomerang SQ)"、"SAF 514" と書いてあった。

「隊長さんなら何かわかるんじゃないの?」

「さっぱり、ブーメラン飛行隊ならともかくフェアリィ空軍何て聞いたことないし。SAFはなんの略かもわからないし。514ってことは、14番目の統合戦闘航空団ってこと?でもそんなにできたなんて聞いたこともないし。

それにこれレシプロユニットじゃないのかな?

まったくわからないね。」

「だよね、これも彼が起きるのを待った方がいいかもね。」

さすがにユニットを使って見よう、という話にはならなかった。みんな自分の機体には思い入れがあるし他人が自分のユニットを使うどころか触るだけで怒る、という人も意外と多い。だからこれは眺めるだけにしておいた。

 

こうして30分程話していると、ドクターがやって来た。

「一応、一通りの手当ては終わりましたよ。かなりの傷だけれど命には問題なし。だけれど安静が望ましいですね。まだ目は覚めていませんが所持品などがありましたので面会しますか?」

「それじゃあ、会いましょうか。」

「えぇ。せっかく助けたその人だもの。話せなくても何かわかるかもね。」

「そうだといいのだけれど。」

こうして格納庫を後にする3人。全く静かになったこの格納庫。

その一連の会話、行動を情報収集行動として監視している"目"にはまだ誰も気がつかなかった。

 

病室まで行く途中一番気になっていたことを角丸はドクターに聞いた。

「彼は本当に男なんですか?男に限りなくにていて実は女でしたとか、ないんですか?」

私がそう聞くと、ドクターは笑いながらまさか、といい否定した。

「彼は間違いなく生物学上男ですよ。間違いありません。」

「ドクターがそういうなら、そうなんでしょうね。それで、所持品というのは?」

「ドッグタグに、拳銃、それと身分証などが入った革のケースです。それ以外は特には見当たりませんでした。」

私たちはカルテを手にしながら歩くドクターの話を聞きながらその廊下を歩く。

骨折など飛べなくなるほどの傷はないが何かの破片で切ったようなものや打ち身などが全身に。原因は不明だけれど、何かしらの先頭に巻き込まれたものと思われる。

というのがドクターの判断だった。

こうしている間に診療室の目の前についた。

「さて、この部屋に彼は眠っています。私は外で待っているので終わったら声をかけてください。それと何かあったときも同様に。」

「ありがとう、ドクター。さて、入りましょうか。」

 

ドアを開けるとベッドで彼は寝ていた。隣のテーブルには彼の所持品と思わしきものが載っていた。少し血の匂いがするのだが汚れてはいない。おそらく看護師が綺麗に拭いてあげたのでしょう。

とにかく彼の情報が知りたい。ケースを開けて中身を確認してみるとそこには3つのものが入っていた。1つはさわったこともないような素材で出来た身分証、残りは写真で片方は3人で写っていた。1人は髭を生やしたいかにもブリタニア人って格好の中年?、もう一人はいかにも暗そうな扶桑人、端で少し笑いながら、ブリタニア人と肩を組んでいるのが恐らく彼だろう。目も蒼いし。少し扶桑系の血が入っているのかな?

最後の写真は家族写真のようなものだった。どれが彼かわからない。裏を返してみるとこう書かれていた。

"Remember 315"と。

2人は少し顔を見合わせたあと、写真はしまった。

「取り敢えず、写真は後でにしない?」

「そうね。それじゃあ、身分証でも見ましょうか。」

パラッと見てみると

 

 

名前 フレデリック・T・バーフォード

所属 フェアリィ空軍特殊戦第5飛行隊

階級 大尉

年齢 35

生年月日 7/2/1990

国籍 UK

性別 男

血液型 A型(Rh+)

…………

 

と色々書いてあった。

「SAFは特殊戦の略だったのね。どうやらフェアリィ空軍所属というのは間違ってないみたいだわ。」

「結局わかったのはあのストライカーユニットに書かれていたことが間違ってはいないってことだけか。どうします?隊長さん?」

「はぁ、結局は彼が起きるのを待つしかないのね。取り敢えず今後のことはみんなで晩御飯を食べたあとに話し合いましょうか。それまで一旦解散ということで。」

「そうですね、了解です。」

こうして、ウィルマと別れて誰もいなくなったことを確認して本日1回目のため息をついた。

彼女らにこんな姿は見せたくないからね・・・。さて、どうしたらいいものか。

~~~~~~~~

 

 

 

 

 

こうして時は1853まで巻き戻る。

時計を見て、もう間のなく19時を指そうとしていた。もうそろそろ晩御飯ね。

取り敢えず私としては

・彼が目を覚まし次第話を聞く。

・指令部には報告しない。

・出来れば戦力になってもらいたい。状況によっては上層部に掛け合うことも選択肢に入れておく。

この3つていきますか。

さて、みんなはどんな反応をするのかな?

納得してくれればそれでいいんだけれど、なんせ男のウィッチだもんね。もめるだろうな。

………どうでもいいけど男のウィッチって変じゃない?

マジシャン?んー?なんかしっくりかないな~。

”隊長ー。御飯ですよ!”

あっ、アメリーが呼んでる。

晩御飯の時間だ。今日は誰が担当だっけな?御飯の時くらい、忘れてもいいわよね。

そんなことを思いながら隊長室を後にするのだった。

 




第弐話にしていきなり上下話という前代未聞の結果になってしまった
隊長さんは憂鬱すぎて生年月日に気づいていません。
重要イベントなので後で面白くなりそうな予感。
主人公の生年月日ですが、お姉ちゃんこと園崎さんの誕生日から、年はウィルマが1920年らしいので70足しました。
それと、お気に入り登録ありがとうございました。
投稿してまだ数日仕方ってないのに。
自分の予想だと、8話位まで書いてようやく100UA位で初めてのお気に入り登録だったらいいなと思っていました。
me嬉しい。
これからもよろしくお願いします。

ご指摘、ご感想、誤字報告があればよろしくお願いします。

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