妖精の翼 ~新たなる空で彼は舞う~   作:SSQ

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この話に出てくる料理は作者の今日の晩御飯。



502JFW編
第27話 着任


502到着まで残り30分といったところでコンタクト。

「お客さんだぞ。」

「なんのコトダ?」

「エイラ、ネウロイ。2時の方向。」

やはり、気づいたか。

索敵範囲は本当にどれくらいなんだろうな。

「機数15、大型3、中型4、小型8。歓迎にしては数が多いな。ウィルマ、行くぞ。」

「了解。502に報告しておくね。」

「サーニャ、502から味方が出撃したか解るか?」

「反応はない。まだみたい。」

「よし、距離的に考えてもこちらが早く着く。先に片付けてしまおう。」

「お前、サーニャに何命令……」

「わかりました。エイラ、いこ。」

「サーニャー!待ッテ!」

はぁ、あんなやつがスオムスで一番のエースなんて信じられん。人は見かけによらず、か。

 

まもなく、攻撃圏内。

初弾装填、セーフティー解除。

「敵機多数だ。みんなこんなところで落ちるなよ?」

「わかってる。」

「了解です。」

「だから、なんで……」

「Garuda engage」

まずは、大型を落とす。ウィルマには護衛の小型を任せる。

急降下開始。

コア確認、弾丸を相手のコアに射撃。

 

そのまま旋回、一直線上に小型、中型が並ぶ位置にいたのでタイミングを合わせて発射。

小型は撃墜、中型は少しずれたがコアを露出させた。

すかさずウィルマがコアを攻撃。

撃墜。

「ナイスアシスト。」

「いやいや。」

それにしても、ユーティライネンのやつ、凄いな。

レーザーを見ないで回避してやがる。後ろにでも目がついてんのか?

後で聞いてみるか。

それにしてもフリーガーハマーって9発しか打てないんじゃ、どうなの?予備を持ってきているようには見えないし。増援とか来たらどうするんだろうな。

まぁ、いい。今は自分の事に集中する。

ウィルマが後ろについてきているのを確認して残りを落とす。

小型と中型5が逃走を開始。

「ウィルマ、俺が前に出るから君が後ろから追撃してくれ。」

「わかった。」

出力を上げて放物線を描くようにして敵の前に出る。

「逃げれるとおもってんのか?」

能力と射撃を交互に繰り返す最近編み出した名付けて"速射"で3機落とす。残りはウィルマが処分してくれた。

「終わったか。そっちはどうだ?」

「全部落としました。」

「了解、502に向かうぞ。」

まさか、こんなところで時間を喰うとはな。

まぁ10分程で15機落としたのだからいい方だな。

 

そして、25分程でオラーシャ帝国、ペテロブルグ上空に到達。

着陸許可を得て、滑走路進入する。ワイト島とはまた異なる別の景色に、目を奪われながらも着陸を行う。

地面に接地したと同時に少し、タイヤが滑る感じがした。今まで経験したことがなかったことなので、一瞬あせったがすぐに微調整を行い進路を再びまっすぐにする。

思ったがかなり雪が多いな。さすが、北に位置しているだけある。だが、この調子だと雪が降ったときのランディングはかなり厳しいものになりそうだ。

いくら魔法で体が守られ、強化されているとはいえ限度がある。この地域でウィッチが活動できるということは問題ないのだろうが、不安が頭をよぎっていた。

格納庫のユニット置き場に武器一式を置いて一息着くとだれか2人がきた。

一人は茶髪で明らかに司令やっていますという雰囲気の女性でもう一人は小柄の銀髪だ。おそらくこの人は副官だろうな。

そして俺と目を合わせる何かを吟味するかのように上から下へと視線を動かす彼女。

「あの、何か?」

だが、俺の質問に答えることなく彼女は観察を続けるとふと、隣の小さな女性と何かアイコンタクトをした。何かの合図だろうがあんなわずかなものでは俺も内容を推測することはできなかった。そしてようやくその茶髪の女性は口を開いた。

「君が噂の男のウィッチか?」

「そうです。マム。あなたはここの司令官のグンデュラ・ラル少佐でありますか?」

俺は敬礼しながら、彼女を見る。そう、目の前の茶髪の女性こそ俺のここでの上司となるラグンデュラ・ラル少佐だ。撃墜数人類第3位という化け物だが思っていたほど威圧感はない。

むしろ感情をそこまで表に出すような人物には思えない。初めて見たときに感じたイメージは常に冷静で適切な判断をくだせそう、だった。

「ほう、自己紹介をしなくても既に私のことは知っていると?」

「事前に自分の配属先の上官の顔と名前を覚えておくのは常識かと。ましてや、それが世界最高峰レベルにあるウィッチとなればなおさらです。」

「スコアは?」

「50は越えているかと。先程5機落としてきましたから。」

「なるほど。田舎空軍にも使える奴はいるということか。」

「そこら辺の雑魚よりは使えると自負しているので男女差別なく使っていただけたらと思っています。なんなら後で模擬戦を行ってみたらいかがですか?ご自慢の兵隊を全部落としてやりますよ。」

殺気を交えて言うと副官が指令の顔を見ながら何か小声で話している。

(ここで騒ぎを起こすのはやめといたほうがいと思います。)か。

「まったく、随分と嫌われているものだな。」

一瞬、俺の言葉に驚いた顔をするがすぐ元の表情に戻る。

「なら嫌われたままでいるか、それを改善するか。それは君次第だ。」

「あの、バーフォードさん。どうされたんですか?」

サーニャ達が入ってきた。ユニットを起きながら話しかけてくれた。

すると、司令はいきなり笑いだした。何こいつ。

「いや、失礼した。男のウィッチがどんなやつか気になってしょうがなかったから話してみたかっただけだよ。すまなかったね。さて、私が知っての通りグンデュラ・ラル少佐だ。そして、彼女が私の副官のエディータ・ロスマン曹長だ。見た目と階級によらず凄腕だ。」

「よろしくお願いします。」

「ブリタニア空軍、STAF、SSQ、VFA-21、フレデリック・T・バーフォード大尉と」

「同所属のウィルマ・ビショップ軍曹です。」

「サーニャ・V・リトビャク中尉です。」

「エイラ・イルマタル・ユーティライネン少尉ダ。」

「以上4名、着任許可を願います。」

「着任を許可します。ようこそ502JFWへ。歓迎するよ。さて、他の子達は後で食事の時に紹介しよう。部屋は曹長が案内する。頼んだ。あと、大尉。少し残ってくれ。」

「わかりました。」

「なんかやらかしたの?」

「来てまだ5分しかたってないんだぞ?」

「後で教えてねー。」

そういって3人はいなくなる。

「さて、君に話すことは……」

「大体言いたいことはわかってる。あんたらのウィッチに手を出すつもりはない。俺は生涯で一人の女しか愛さないって決めてるんでな。それに、外交問題なんて起こしたくないしな。」

「なら結構。ローテーションなどは後で決めようか。それと、もうひとつある。統合司令部より、ひとつの命令が来ていてね、ネウロイに関する同基地で所有する情報を全て君に渡せと来ているんだ。君は私の城で何をするつもりだ?」

「俺は何も言ってない。ただ、俺に一つの命令を下した。半年以内にノヴゴロドのネウロイの巣を破壊しろ、だ。俺はそのためにここに送られてきた。その為ならなんだってするってことだ。聞いてないのか?」

「いいや、まったく。それにしても、ねぇ。ネウロイの巣を破壊?勝算は?」

「まだ、まぁあと5ヶ月以内に作戦をたてるさ。承認されれば実行、拒否されれば別の作戦を立案する。それだけだ。」

「なるほどね。私たちとしても是非ネウロイの巣を破壊してもらいたいからね。ガリアの巣を破壊したことは皆知っている。期待しているよ。」

あれは今でも何で破壊されたのかわからないんだがな。

「あと、君たちには今日の晩御飯を作ってもらいたいんだが出来るか?」

「できるさ。男だからってなめんなよ。12人分か?」

「そうだ、楽しみにしてる、1900に間に合わせてくれ。食材は自由に使ってくれ。それじゃあ。」

「おい。」

「……まだ何か?私も忙しいんだが。」

「俺の部屋は?」

あっという顔になってる。忘れてたのか?

「すまないね、案内するよ。」

 

 

部屋は普通だった。生活するのに問題はなさそうだ。

荷物を置いて端末を弄る。

Garudaにできる範囲で情報収集するよう命令。

疲れたのでベットで少し仮眠する。

ドアがノックされた。

今は1700か。

ドアを開けると金髪の女の子がいた。後ろにはウィルマもいる。

「何用だ?」

「晩御飯を作る時間だってさ。」

ウィルマに聞いたんじゃないんだがな……

「君は?」

「アレクサンドラ・I・ボクルイーキシン大尉です。少佐に晩御飯の準備の手伝いをするように言われました。」

「ウィルマ、お前も呼ばれたのか?」

「うん、でも熊さんも手伝ってくれるんだって。」

「く、熊さん?」

「あの、そ、それ私です。」

ボクルイーキシン大尉が手をあげる。

「なぜ熊なんだ?」

「使い魔が熊なので。」

「なるほと。では熊さん。俺はフレデリック・T・バーフォード大尉だ。同じ階級だしバーフォードで頼む。ウィルマ、行こう。」

「はーい。」

2人で歩き始まると熊さんも追ってきた。ウィルマは食堂の位置はわかっているらしい。

「あの、バーフォードさん。」

「なんだ、熊さん。」

「もう、それで決まりなんですね…。ところでお二人の関係ってどんな感じなんですか。」

「相棒」

「夫婦」

「へ?ふ、夫婦?」

「そうなの!もう誓いあったしね!」

ウィルマが熊さんと嬉しそうに話始める。

さて、何にしようかな?

中華にしようか。

豆腐が有れば麻婆豆腐にしよう。

米あるのかな。

と現実逃避していると熊さんとウィルマが最高の盛り上がりを見せていたり

「お二人は切っても切れない関係ってことですか!羨ましいです。」

「えへーそうでしょ。」

話に熱が入っているのか二人は厨房を通り過ぎていってしまった。

おーい。こっちじゃないのか?

まぁ俺1人でも問題なく作れるし、ウィルマが基地の仲間と信頼関係が気づけるのなら越したことはないかな。

食料が入っている倉庫を漁った結果、材料や調味料が全部揃っていたので麻婆豆腐にした。

最初は鰻ゼリー攻撃にしようと思ったが後で差し支えるのでやめた。

てか、ご飯を炊くのどうしようかと悩んでいたらだれか入ってきた。扶桑人か?

「あなたは?」

「本日配属になったフレデリック・T・バーフォード大尉だ。今は晩御飯の準備をしている。ご飯の炊き方に困っていたんだが教えてもらえるか?」

「わかりました。ところで、何をお作りになるんですか?」

「麻婆豆腐とあと一品何にしようか悩んでいたんだ。何がいいと思う?」

「麻婆豆腐とは?」

「知らないの?」

「はい。」

そういえば、なんかあそこだけぽっかりなかったもんな。調味料はあるのに。

「辛い豆腐料理と思ってもらえればいい。なにか、ない?」

「春雨を使った料理はどうでしょうか?」

春雨の入った袋を見せてくれた。

「なら麻婆春雨でいっか。」

「?」

「まぁ、俺の(いた世界での)オリジナル料理だと思ってもらえればいいよ。もしかしたら名前が違うだけかもしれないし。」

「わかりました。ではあと少ししたらご飯炊きますね。」

「助かる。そういえば、君は?」

「下原定子少尉です。夜間哨戒を行っています。」

その後扶桑語で話すと少し驚かれたがそれ以降はトラブルもなく無事できた。

ウィルマの奴は結局来なかったがな。熊さんとどこまで行ったんだ?

麻婆豆腐も麻婆春雨もいい味に仕上がった。

大皿に盛り付けて、テーブルに置いて小皿を準備していたら少佐が来た。

「ほう、本当に作れるのか。」

「あたぼうよ。」

他の連中が続々と来て、全員が席につく。

「とりあえず、簡単に説明してもらおうか。今日作ってくれたのは本日配属になったフレデリック・T・バーフォード大尉だ。」

「どうも、よろしくお願いします。料理は食えばわかります。悪くない出来だと思うので。」

みんな食べ始めると反応は上場だった。

てか、ウィルマさん、熊さんと仲良くしてるな。

食べ終わると、自己紹介を行った。

 

よかったことはこの基地の奴等がすぐ俺を受け入れてくれたことだ。

一つは飯が美味しかったからだそうだ。料理は国境を越えるとはよくいったものだな。

次に戦果を上げられるからだそう。少なからずガリア解放が役に立っているらしい。

最後に隊長が会ったときに言ったことをばらしやがった。熊さんもそれに乗じてベラベラ話すからもう大変。

ウィッチ同士のカップルなんて殆どいないからということで大量に質問を受けた。2時間くらい付き合わされたがお陰で評価は悪くない。

その点は感謝している。

まぁ変な目でやっていくよりはましだしな。

上手くやっていけそうだ。

こうして、夜は更けていく。

 

 

 





追記
もう少し長引きそうです。
3月5日までには更新します。
さらに延期してしまいそうで、申し訳ないです。

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