妖精の翼 ~新たなる空で彼は舞う~   作:SSQ

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第13話 強行偵察

0555

目が覚める。アラームが鳴る5分前だ。

ロンドンの天気は雨か、こういう日はあまり外を出たくないのだが仕方ないな。

さて、ウィルマも起こそうかな。早めに全部済ませてチェックアウトしたいし。

体を起こして腕を伸ばす。んー、ふう。

横をみると、まだ口を開けて寝ていた。

こいつ、なんて寝相なんだ?冬だってのに服がはだけてる。寒くないのか?

「おい、ウィルマ。起きろ、朝だぞ。」

肩を揺すって起こそうとしたそのとき、腕を捕まれて抱き締められた。抱き枕を抱かれる感じに。

は?なに、何が起きてんの?

頭が真っ白になるがすぐ思考が働く。

こいつ確信犯?てか柔らかいな、意外と大きい……はっ!

無意識の犯行だとしたらすぐに離れないと!

てか、力強い!

「んーむにゃむにゃ。」

慌てて時計をみると

05:59:51

終わった

そして無慈悲にも

06:00:00

ジリジリジリ!開いている右手で時計を黙らせる。

ガチャン。止まった。

ふぅ

「ふぁ、んー?」

顔を見るとウィルマと目があった。

まずい、ここはクールに確実にだ!

「おはよう、ウィルマ。悪いんだけどさ、腕を放してくれないか?」

「?うで?……………あっ!」

はっきりとわかるくらいの速度で顔を赤くしたウィルマは俺を枕投げみたいに投げ飛ばして走って洗面所まで走っていく。

3分くらいしただろうか。ウィルマが顔だけをひょこっと出して

「……………ごめん。」

謝ってきた。

「何で謝る?」

「私、寝てるとき何かに抱きついちゃう癖があるから。嫌だった?」

「まさか。むしろ役得だと思った。」

また真っ赤になる。かわいいな。それに分かりやすい。

「着替え、取ってもらえる?」

「ほらよ。」

かばんを渡す。

10分後。最高に素敵な笑顔で

「無かったことにしよう!いいね?」

と言ってきた。あぁ、これは拒否するとヤバイやつや。

「わかったよ。それじゃあ、朝ごはん食べに行くか。」

「そうしよっか。」

そうして、いつも通り朝ごはんを食べて早めにチェックアウトし、司令部に向かう。

司令部に着くなりすぐジャックにつれていかれた。何でも、王族の方が急遽出席されることになっていつも通りの服装じゃ不味いと言うことになったのだ。

少し大きいがまぁいいか。

1000

国防大臣からヒューゴ・ダウディング空軍大将に対し部隊賞旗と正式な辞令書が渡された。そして、軍の偉い人や知らない王族の方から長い話を終えてようやく終わった。

1230

さてと、これで終わりか。ようやく帰れる、と思ったらジャックに呼び止められた。

「なんだジャック?世間話ならまた今度にしてくれないか?」

「残念だが、作戦だ。すまないがこれはバーフォード大尉のみの作戦だ。ビショップ軍曹は今回は不参加となる。」

「はぁ、了解しました。」

「よし、大尉。ついてこい。」

部屋に入ると説明が入る。

「まず聞きたいのだが、メイブの航続距離はどれくらいだ?」

「巡航速度M1.75でおよそ6000km。」

「結構。今回行ってもらうのは欧州にあるネウロイの巣の強行偵察だ。これが飛んでもらう飛行ルートだ。」

「ガリアまで飛んでベネチア、ミュンヘン、ベルリン、ノヴゴロドまで行って帰ってくる。総飛行距離5650km?まじで言ってるのか?」

「あぁ、昨日言っただろ?STAFに回ってくる仕事は他の部隊が実行不可能だと判断されたものだって。それに、メイブの偵察能力なら今まで得られなかった情報も得られるはずだ。」

「はぁ、万が一交戦しなきゃいけない場合はどうすればいい?」

「すまないが、武器の携行は認められない。」

「おい、ジャック。冗談はほどほどにしてくれないか?」

「大真面目だ。ネウロイが敵探査になにを使っているのかを探るためだ。お前の体やユニットはステルスだから俺たちが使っている電波ならまず写らない。だが、銃を持っていくとそれで気づかれる恐れがある。」

「それじゃあ、もしネウロイが俺に気づかなかったらネウロイは普通の電波で探査していることがわかるってことで気づかれたら未知のなにかで探っているってことがわかるってことか?」

「あぁそうだ。本当は俺だって行きなりこんなのやらせたくないんだが、今は情報が必要なんでな。済まない。出発は明日の1700。必ず生きて帰ってこい。これは、命令だ。」

「了解、必ず成功させます。」

書類を鞄にしまい、部屋を出る。

部屋の前で待っていたウィルマが走ってくる。

「何だって?」

「極秘作戦だってよ。ウィルマはお留守番よろしくね。」

「はぁ、私もいきたかったな。」

ごめんな、ウィルマ。これだけはお前と一緒にすることは出来ないんだ。

「そう言うな。また機会があるさ。それより帰ろう。」

「だね、それよりお昼食べようよ。」

「そうだな。…………」

結局手軽に食べられるのにして、司令部の車で帰路についた。

 

 

1600

ワイト島基地帰投。

「あら、お帰りなさい。式典、どうだった?」

「もう疲れたよ。クタクタ。」

「それにしても、特殊戦術飛行隊だっけ?すごいのに入っちゃったのね2人とも。」

「まぁな、隊長。俺は明日作戦があるから格納庫にむかうから。これが書類。よろしくな。」

「あっちょっと!はぁ。ウィルマさん説明よろしく。」

「ええっとね……」

こうして時間は過ぎていく。

 

次の日 1700

「ガルーダ1、離陸する。」

《了解、離陸を許可する。》

長距離強行偵察作戦が始まった。

誰もいないため、制限なしの100%の出力が出せる。

どんどん上昇し、巡航高度まで上昇し巡航速度でまずガリアの、ネウロイの巣まで向かう。

なぜこんな時間にしたのかとさっき聞いたら

「ついでに、ナイトウィッチも騙せるのか試してみたくて」

らしい。まぁ確かに俺しか試せる人はいないだろうけど、他の部隊に迷惑かけるのはどうなのよさ?

まぁ情報収集事態は昼も夜もほとんど変わらない精度で行うことができるのでかまわないが。

距離423km。

12分後、到着。情報収集行動開始。

10分で完了。途中、ネウロイが気づいてこっちに来ようとしたが、11000辺りで1回レーザーをこちらに放って引き返した。どうやら、接近してきたことには気づかなかったみたいだな。

収集終了。

次はベネチアか。距離827km

23分後、到着。収集開始。

それにしても、水の都か。

ネウロイは水が苦手って話じゃなかったのか?

なぜこんなところに拠点を作ったのだろうか?アフリカ侵攻?別にいいところがあるだろうに。

ここでの収集を終えて次に向かう。

ミュンヘン(278km)、ベルリン(500km)を終え、最後のノヴゴロドへ向かう。距離1348km。めっちゃ遠いな。

時間にして40分後。

ようやく到着。

現在時刻1620

これが終われば帰れるぞー。

Contact! Unknown!

やはり、順調にはいかないか。

3時方向。おでましか?ナイトウィッチ?

来た方向、速度、大きさからいって恐らく502JFW所属か?

まだ気づいていないみたいだな。かなり距離もあるしな。

収集終了。帰投開始。

だが、恐ろしいことにやつらついてきた。

俺の進路を先回りしようとしている。

まじかよ、速度ではこちらが上回っているからいいが、他のやつらに連絡されると面倒だ。どうする?

ここは全力で逃げるか。

スーパークルーズ状態で一気にワイト島(2275km)をめざす。

しかし、その時すっかり忘れていた。本島には501があるのを。そして、そこにもナイトウィッチがいることを。

 

なんとか振り切ったはずだ。こっちの探査範囲外ということはあっちもそうだろう。

Caution! contact!

冗談じゃない。普通についてくるとは。

Head on.

機数1

回避する。

ヨーロッパ本土方面へ向かう。

くそ、来やがった、やる気か?

まてよ、もうジャックの言っていたナイトウィッチの探査能力についての任務は完了しているはずだ。

やつらにはわかる。メイブのステルスでさえも見抜けるのか。人間恐るべしだな。

しかもこの空域ならワイト島の哨戒空域だ。

誤魔化せるだろう。

さっそくコンタクトをとろうとして、思い返す。よく考えたら、先にコンタクトをしたらなぜナイトウィッチがいたことがわかったと言う話になるから来るのを待つか。

しかし、無線による呼び掛けより先にフリーガーハマーが飛んできた。

まぁ、当たらないがな。

遥か後ろを通りすぎていく。それならまだいいがあいつその後4発もぶっぱなしてきやがった。さすがにこれは遺憾のEを発動せずにはいられない。

「こちらはブリタニア空軍STAF、SSQ、VFA-21所属のフレデリック・T・バーフォード大尉だ。そこの味方に向けて攻撃をぶっぱなしている奴は誰だ?」

「私は501JFW所属のサーニャ・V・リトビャク中尉です。友軍機ですか?申し訳ありませんでした。」

「まったくだ、当たっていたらどういうつもりだったんだ?」

「当てるつもりは有りませんでしたから。それより、今日はこの空域は誰も飛んでいないはずでは?」

こいつ!まったくジャックのやつ。チョー許さん!ちゃんと伝えとけよ、ってこれ極秘任務か。ジャックが伝えてないと言うことは、あれ、やばくね?通信したら記録残るし。そこでとっさに思い付いたのが

「飛行中にトラブルに見回れてな、海岸に不時着して修理していた。終わったのがついさっきでいま帰投中だったんだ。」

「そうでしたか、失礼しました。」

「それじゃあ。」

「待ってください、バーフォード大尉ってあのバーフォード大尉ですか?」

「どれかわからないのだが?」

「特殊戦術飛行隊の男のウィッチ。」

「そうだがそれが?」

「特殊戦術であるあなたの機体に不具合が起こるとは思えないのですが。」

「ようは、最高のスタッフがいるであろう特殊部隊の隊員がミスを犯すはずがないと?」

「はい。」

くそ、勘がいいやつは嫌いだ。

「俺の使っているユニットはジェットストライカーユニットだ。部品や仕組みが複雑な分故障が起きやすい。しかもまだあくまで試作機だ。仕方ないと思ってもらうしかないが。いまもいつ壊れるかひやひやしているんだ。早く帰りたいんでな。」

いくらか時間をおいたあと。

「わかりました、お時間をとらせてもらって申し訳ありませんでした。では。」

こうして離れていく。

まぁようやく終わった。帰ろう。

ワイト島についたのは21時だった。

 

数日後、すべての情報を端末に入れて俺は再び司令部にいた。今は地下にある大型演算機の部屋にいる。

収集した情報をタイプライターに繋いで高速で打ち出そうと言う寸法だ。

ちなみにこれを作ったのはジャック本人らしい。

高速でgarudaによって収集した情報が文字として変換され印字されていく。

「悲しいことにこの40㎡にぎっしりとおいてある高速演算機よりこの端末の方が処理能力は数倍も上なんだよな。時代の変化を実感するよ。」

「そうだな、それとリョウ。よく作戦を成功させてくれた。お陰でかなりの情報が入った。」

「それなんだがジャック、ネウロイには見つかんなかったがナイトウィッチには見つかったぞ。」

「ほう、興味深いな。何故ナイトウィッチだけ?」

「さぁ?人類の神秘ってやつじゃないか?」

「納得できるのがくやしいな。まぁ冗談は置いておいて、実際はナイトウィッチは俺たちが知らないまったく別のなにかで探知しているのかもな。」

「知らないなにか、か。」

「システム軍団の、やつらが聞いたら泣くな。」

「だろうね。っと終わったみたいだ。」

「ありがとう、ゆっくり読まさせて貰うよ。」

「ジャック、その情報、ばら蒔くなよ?」

「当たり前だ、不信に思われない程度に発表するさ。じゃあな。」

そう願うよ、ジャック。

まぁSTAF初の任務は無事成功か。

ようやく肩の荷がおりた、がよく考えたらまだ始まったばかりか。

頑張らないとな。

端末を外し、タイプライターを分解、印字した情報が記録されていないことを確認して組み立てて部屋を出る。

さて、帰ろう。




航続距離は妄想です。
距離はグーグル地球で測ったから精度は普通かな。
次回はワイト島に舞台は戻ります。久しぶりのアメリー、フラン。

いまいち強行偵察らしさが出せなかったな

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