もしもな世界のラウラさん   作:キラ

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IS学園編書こうとしてたら、いつの間にか違うものができあがっていました。
日記形式は初めてなので、なんちゃって日記形式になってしまっています。


織斑千冬の日記

4月15日(月) 晴れ

 

 今日から日記をつけることにした。

 特に大層な理由はなく、ただ同僚に薦められたのがきっかけだ。

 ……さて。早速だが、何を書けばいいものか。

 こうして机に向かっていても、特に内容が思い浮かばない。明日に備えてさっさと寝た方がいいのでは、と考えてしまう。

 しかし、それでは勢いで買ってしまった日記帳が丸々無駄になる。

 それはそれでもったいないので、やはりどうにかして続けてみることにしよう。

 とりあえずは明日、真耶にどんなことを書けばいいのか意見をもらうことにする。

 ……結構文字数が稼げたので、今日はこれで終わりにするか。

 

 

4月16日(火) 晴れ

 

 真耶によると、些細なことでもいいのでその日の出来事や感じたことを書きつければいいらしい。

 未来の自分が読み返して、『あー、あの時はこんなことがあったんだなあ』とか思い出にふけることができるような内容が望ましいとのこと。

 ……つまり、なんでもいいということだな。

 では早速、今日の出来事を振り返るとする。

 今日も生徒達が騒がしかった。私を慕ってくれているということ自体に悪い気はしないのだが、もう少しだけTPOをわきまえてもらいたいものだ。学園で千冬お姉様はないだろう、千冬お姉様は。

 あとは……そうだ。この学園の食堂は、いい。今日は昼に肉そばを食べたが、おいしかった。

 

 

4月17日(水) 雨

 

 相変わらず、一部の生徒がはしゃぎすぎているように思える。まだ1年生だからと黙認していたが、もう少し厳しい態度をとるべきなのかもしれない。

 それはそうとして、家に置いてきた2人はうまくやっているだろうか。

 意気消沈しているラウラの姿があまりに痛々しかったため、日本に連れ帰ってしまったのだが……考えるまでもなく、最も負担を強いられることになるのは私でなく一夏だ。

 ろくに家にも帰らない。突然見ず知らずの少女の世話を押しつける。まったくひどい姉だ。親の顔が見てみたい。

 すまないと思うが、私が留守の間は一夏にラウラを任せるしかない。罪滅ぼしにもならないが、今度の休日は先生方おすすめのレストランに連れて行ってやろうと考えている。

 ご飯と言えば、ここの食堂のラーメンはおいしい。今日は味噌を食べたが、今度はしょうゆに挑戦してみようと思う。

 

 

4月20日(土) 晴れ

 

 私がラウラを日本に連れてきて、ちょうど2週間が経った。

 わかっていたことだが、さすがにこの短期間であの子の心が回復することはなかった。

 何か尋ねれば答えてくれるが、それだけだ。一夏に対しても、心を開いている様子はない。

 気長にやるしかないのだろうな。私にできることと言えば、今日のように家にいる時は、積極的にラウラに語りかけることくらいだ。

 ……ああ、そうだ。おすすめされたレストランの料理は、とてもよかった。一夏も満足していたようだ。

 ラウラは無反応だったが……ほんの少しだけ、頬が緩んでいたような気がしないでもない。願望込みで。

 

 

5月3日(金) 曇り

 

 ラウラが来てから、もうじき1ヶ月。

 世間はゴールデンウィークに浮かれているが、私は今日も仕事に追われていた。

 デスクワークはあまり得意でないのに、先輩方は私に仕事を押しつけすぎではないだろうか。特に平坂先生、『ブリュンヒルデだからいけるいける』は理不尽だと思う。あれは決して雑務王の称号ではない。

 今日はやけ食い気味に食堂のデザートを堪能した。ストレスの溜まった体には、甘い物がよく効く。

 

 

5月11日(土) 雨

 

 今週末は仕事が忙しく、家に帰ることができない。

 一夏達は元気にやっているだろうか。先ほど電話はしたのだが、やはり直接顔を見ないと落ち着かない。

 ……なんだか、こうして文字にすると恥ずかしい。私は、世間一般で言うブラコンには当てはまらないはずだが。若い男女の2人暮らしを心配するのは当然だし、何もおかしなところはないな、うん。

 今日の夕食はカレー等を食堂で食べた。が、カレーに関しては一夏の味付けの方が好みだな。

 

 

5月18日(土) 晴れ

 

 久しぶりに家に戻ると、ラウラの部屋で一夏とその友人がひっくり返っている光景が目に入った。

 何事かと思えば、ラウラを外へ連れ出そうとしたとのこと。

 それでなぜこのような状況になっているのかは理解できなかったが、目は本気だったので行かせることにした。

 昔から、こういう時の一夏は何かをやらかしてくれるからだ。

 結果として、私の判断は正しかった。

 夜になって帰ってきたラウラの態度が、明らかに以前と異なっていたからだ。

 ぎこちないながらも、自らの感情を表に出すあの子の姿を見て、私もほっと胸をなで下ろしたものだ。

 『ただいま』なんて言ってもらった時は、頬が緩んでしまうのも仕方がないだろう。

 本当によかった。一夏にはお礼を言わなければな。

 ……やはり、私の弟には不思議な魅力があるのかもしれない。調子に乗るだろうから、本人の前では絶対に言わないが。

 それと、今日の夕食はカレーだった。やはり食堂のものよりも口に合った。

 

 

5月25日(土) 晴れ

 

 ラウラに姉さんと呼ばれた。うれしい。

 うれしくて日記に手がつかないので、今日はこれだけにする。

 夕食、サバの味噌煮。いつも通りおいしかった。

 

 

6月14日(金) 雨 今日の昼食:親子丼

 

 1年の更識に、『出席簿アタック』なるものを提案された。あまりに態度が悪い生徒に対しては、多少手荒な真似をしてもいいのではないか、とのことだ。

 仮にも年頃の女子に暴力で訴えるのはどうかと思うのだが……まあ、最終手段として考慮には入れておく。

 とにもかくにも、明日は土曜日。家に帰れる。弟と妹の顔を見て、癒されるとしよう。

 

 

6月23日(日) 曇り 今日の夕食:ハンバーグ

 

 本当に、あの兄妹は仲がいい。

 会った頃のぎこちないやりとりが嘘のように、一夏とラウラは楽しく笑いあっている。

 この前なんて、一夏がラウラの頭を撫でていい雰囲気になっていた。

 だからこそ、あの2人がもう一歩進んだ関係になる可能性を考えずにはいられない。

 あいつらもいい年だ。そういう気持ちを抱くことは十分ありうる。

 ……今頭を悩ましても仕方がないか。私としては、見守るしかないだろう。

 弟に先に恋人を作られる結果になった場合、思わないことがないわけではないが。

 

 

9月14日(土) 晴れ 今日の夕食:諸事情によりスーパーの惣菜

 

 日記を見返すと、ちょうど3ヶ月ほど前に、私はそのことについて考えていたらしい。

 一夏とラウラが、いずれ恋人同士という関係に落ち着くのではないのだろうか、と。

 かくして今日、それは現実のこととなった。

 家を飛び出したラウラを一夏が追いかけ、2人一緒に戻ってきた時。

 互いが相手を見る目が、どうにも熱っぽいと感じたのだ。

 その後すぐ、本人達の口から付き合うことになったという言葉を聞いた。

 私としては、なんだか妙に感慨深い。一夏はもちろん、ラウラのことも本当の家族のように考えていた身だから、だろうな。

 とにかく、素直におめでとうと言いたい。

 

 

9月21日(土) 今日の夕食:オムライス(評点4/5)

 

 ラウラから、IS学園を受験する意思を固めたと聞いた。

 あの子自身の人生、あの子自身の選んだ道だ。姉として応援する以外の選択肢はないだろう。

 一夏と別の学校に通うのはもちろん寂しいのだろうが、頑張ってほしい。

 無事合格したあかつきには、教師としてしっかりサポートしてやらねば。結構仕事にも自信が持てるようになってきたことだしな。

 ……ただ、ひとつ言いたいことがあるとすれば。

 あまり私が見ているところで、くっつきすぎないようにしてもらいたい。こちらがいたたまれなくなってくるのが辛い。

 

 

10月27日(日) 今日の夕食:おでん(評点3/5)

 

 最近、家に戻ると桃色の空気にあてられてしまう機会が非常に多い。

 除け者にされている、というわけではない。2人とも、私が帰ってくると喜んで出迎えてくれるし、ここ1週間の出来事を語ってくれたりもする。

 ただ、それでも……ほんの少しだけ、寂しい。

 それを紛らすために家の掃除を手伝ったのだが、開始15分で『姉さんはゆっくりしていてください』と言われてしまった。

 私と一夏で十分なので、と説明していたが、小声で『余計時間がかかるので』とつぶやいていたのもちゃんと聞こえていた。

 ……なんというか、悲しい。

 

 

11月9日(土) 今日の夕食:とんかつ(評点5/5)

 

 以前から、一夏は私に恋人ができないことを心配していた。

 それには慣れていたのだが、最近はラウラも加わっていろいろと言ってくるようになった。

 顔を赤らめながら恋人を持つことのメリットを語る妹の姿は可愛らしいのだが、正直私もお腹いっぱいだ。

 あいつらめ、自分達が付き合っているからと……いかん、これでは独り身の僻みそのものではないか。

 とにかく、今は教師という仕事に集中したいのだ。だから彼氏を作る余裕などない。

 よし、今度の言い訳はこれでいくとするか。

 

 

12月25日(水) 今日の夕食:クリスマス用にいろいろと豪華だった(評点5/5)

 

 平日だが、冬季休業中ということで家に帰ることができた。

 夜には3人でクリスマスパーティーを楽しんだ。私は邪魔かもしれないと思ったのだが、一夏いわく恋人同士の時間は昨日過ごしたとのこと。今日は家族で過ごす1日なのだそうだ。わが弟ながら格好のいいことを言うものである。

 暖かな空気に、思わず顔がほころんでしまうひとときだった。

 寝る前に携帯をチェックすると、束から『メリークリスマス!』というメールが来ていた。一応返信しておいた。

 

 

4月7日(月) 夕食:かつ丼(評点4/5)

 

 おそらく今年は、私達にとって激動の1年になるだろう。

 一夏がISを動かしたと聞いた時から、そういった確信に近い予感は抱いている。

 まさかあいつが、女子だらけのIS学園に入学することになるとは。

 しかも寮の部屋に都合がつかなかったために、女子と相部屋にせざるをえない。

 ラウラと同室にすることを選択したが……どうか、若さゆえの劣情に身を任せないことを祈っている。

 弟と妹の理性を信じる姉の期待に応えてほしいものだ。

 

 

4月23日(水) 夕食:からあげ定食(評点4/5)

 

 一夏とラウラの関係については、本人達が隠さないこともあって瞬く間に学園中に知れ渡った。

 たったひとりの男子が入学した時から彼女持ちだったという事実に落胆した生徒も多いらしい。

 だが、身近に存在するカップルに興味を抱く連中もかなりの数いたようで、あいつら2人は学園の人気者になっている。

 ただ、私にまで2人のことについて尋ねてくるのはやめてほしい。本人達に聞けばいいだろう。何が悲しくて弟と妹のいちゃいちゃぶりを語らなければならないのか。

 ……という思いも叶わず、今日も変わらず私のもとにやってくる生徒の数は多い。

 

 私も、恋人作った方がいいのだろうか……

 

 

 

 

 

 

「へえ。千冬姉こんなこと考えてたのか」

 

 家の掃除をしていたら、千冬姉の部屋にて懐かしい日付の日記が出てきたので読みふけってしまっていた。姉とはいえ他人の日記なので、本当はよくないことなのだが……残念ながら、欲望に逆らえなかったというわけだ。

 

「というか飯の記述がだんだん増えてるし。途中から天気省略して料理の採点始まってるし」

 

 いろいろと面白い内容だったので、ところどころで噴き出してしまった。

 

「でもまあ、俺達のこと大事にしてくれてるのは伝わってきたな」

「そうかそうか。それはよかったな」

「うん、本当に……ってうげえっ!? 千冬姉!?」

 

 いつの間にか背後に現れていた日記の持ち主。振り返ると、とても怖い顔でこちらを睨みつけている。

 

「どうやら私の弟はプライバシーという単語を知らないらしい。もう社会人だというのに嘆かわしいことだ」

「ご、ごめん。でも5年も前の日記なんだし、別にそこまで」

「何か言ったか?」

「いえ、何も」

 

 有無を言わさぬ迫力。やはり世界最強は格が違う。

 俺はへこへこ頭を下げることしかできなかった。

 

「一夏、ここにいたか。少し式場のことで話が……うん?」

 

 お叱りを受けていると、俺を探していたらしいラウラが部屋に入って来た。

 

「なんだ。また姉さんを怒らせたのか」

「またって、いつも怒らせてるみたいな言い方しないでくれよ」

「はは、すまない。それで? 何をやらかしたのだ」

「こいつが私の日記を無断で見たんだ」

 

 俺の手から取り上げた日記を掲げながら、千冬姉が状況を説明する。

 ……そういえば、あの日記が書かれてたころって、ラウラがまだ髪を伸ばしてたんだよな。

 

「なるほど。でも姉さんの日記なら、私も盗み見したいですね」

 

 肩にかかる程度の長さの髪を小さく揺らして、ラウラは悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 直後、日記を奪おうと伸ばされる右手。しかしさすが千冬姉、ラウラの不意打ちを難なくかわしていた。

 

「……お前、年々私に対する敬意がなくなってきていないか」

「夫の悪ガキ精神がうつったのでしょう。つまり一夏のせいです」

「おい、俺に全責任を押しつけるつもりか」

「さあな。私は下で夕飯の準備をしているから、叱られ終わったら降りてこい」

 

 ひらひらと手を振りながら、部屋を出て行こうとするラウラ。

 しかし、そんな彼女の肩を千冬姉ががしっとつかんだ。

 

「あの、姉さん?」

「いい機会だ。お前にも今一度姉の威厳というものを再確認させてやる」

「……は、はい」

 

 俺の隣に正座させられるラウラ。当然ながら、こいつも千冬姉の威圧感には逆らえないようだ。

 

「だいたいお前達はだな――」

 

 俺達を見下ろす形で始まる千冬姉の説教タイム。

 こうしてお叱りを受けていると、なんだか学生時代を思い出して懐かしくなる。

 ちらっと隣をうかがうと、ちょうどラウラも俺の顔を見ようとしていたところだった。

 あっちも俺と同じことを考えて、同じタイミングで横を向いたんだろうか。

 そう思うとなんだかおかしくなって、2人して噴き出してしまった。

 

「………」

 

 そんな俺達を見て、千冬姉は顔をしかめていたが……しまいには、俺達と同じように微笑みを浮かべていた。

 何が面白いのか、はっきり説明なんてできないけど。

 それでも俺達は、笑っていた。

 

「まあ、説教は続けるが」

「えー」

「夕飯の準備……」

 

 とにもかくにも、これからも3人仲良くってことで。

 




日記の日付が飛び飛びですが、千冬自身はちゃんと毎日つけています。一夏がざーっとめぼしいページに目を通していただけです。
日記だと若干はっちゃけ気味の千冬ですが、まあ自分しか読まないものに書く文章ならこのくらいはありではないかと。キャラ崩壊気味なのは認めます。

ラウラは将来髪を切るんじゃないかというのは、完全に僕の想像です。

感想や評価等あれば、気軽に送ってもらえるとうれしいです。
では、次回もよろしくお願いします。

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