黒子のバスケ ―太陽のColor Creation― 作:縦横夢人
ダムッダムッ
朝早くから聞こえるその音は、鳥の囀りよりも早くから辺りに響き渡っていた。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハハハッ!」
そこにもう一つ聞こえる声。いや、声と言うよりも息継ぎによる酸素と二酸化酸素の応酬。時折その中に乾いた笑い声が混じる。
(ハハッ、ヤベー!! ウズウズしてジッとしてらんねぇっ!!)
マンションの近くにある公園。その横にあるバスケットコートで朝早くから火神は一人バスケットゴールに向かい合っていた。その身体を尋常ではないほどの汗で濡らしながら、しかしその瞳には獲物を狙う獣の様にギラギラと輝いていた。彼そこまでさせるのは、昨日黒子と話した内容が原因だろう。
『ただでさえ天才の五人が今年それぞれ違う強豪高に進学しました。まず間違いなくその中のどれかが頂点に立ちます。一人では彼らには勝てません』
それは火神のことか、それとも自身のことか。しかし彼の瞳に絶望の色は見えない。あるのは決意と安堵、そして希望。その瞳が映す視線の先には笑顔で走り回る太陽。黒子は太陽と火神を交互に見ながら言う。
『でもキミと、キミ達と一緒なら――』
先日出会ったばかりだが、普段無表情の彼から考えられないほどの覚悟の顔を見た気がした。
(あいつがあれほど言うってことはそれほどのことみたいだな。……面白ぇ!! どれほどのもんか試してみてぇ!! 公式戦じゃなくてもなんでもいいから早く戦いてぇなぁ!!)
自身の中で相手を強さをイメージしながらつく。右へ左へとフェイントを織り交ぜながらまた右に振った刹那、素早く切り替えて前に進む。そして自分のダンク可能範囲にゴールが入った瞬間、低く構えていた身体をさらに縮める。まるでバネのようにギシギシと音を鳴らす脚を爆発させるように解き放ち――
「うぇいうぇい♪ ん? おぉ、カガミンじゃないか!」
力が抜ける言葉が聞こえズルッとこけた。その際跳ぶ勢いが止まらずゴールの根元近くのポールに頭から激突する。デジャヴュと感じたのは何故だろうか。
「~~っつぉぉぉお、まっえ……その声、虹織かぁ!?」
「おー、こんなとこで会えるなんて奇遇だなぁ!」
太陽はコートと歩道を分ける植木の上から覗き込むように現れた。見える限り上は白いTシャツだけのラフな格好で、何故か下は短パンだろう。――似合うと考えただけなのに、なぜか確信できた。
痛む額をさすりながら彼に近付く。
「あ~まだ痛ぇ、ったく。そういやお前何してんだ? てかカガミンって何だカガミンって」
「散歩ださ・ん・ぽ。まぁいいじゃん、イカしてるだろ?」
「どこがだ!? もっとマシなもんねーのかよ!!」
「ん~じゃあ、ヒガミとか――」
「何でそうなんだ!? てかそれだとオレが嫌なヤツみたいじゃねぇかっ!!」
「じゃあヒガミンで!」
「それたださっきの二つ合わせただけじゃねぇか!? もっと嫌だわ!?」
「ならタイガーでどうだ!」
「バっカんなもんダメ……ん?まぁこれはいいのか……んん?いいのか?」
しばらく唸っていたが、ツッコミ疲れたのかようやく折れたようだ。
「ハァ、まぁんなことはどうでもいい。しかしお前ン家この近くなのか……」
「ん~近いと言えば近いのかな? 今探検もかねて走ってるからなぁ」
「ふーん、まぁいいや。そんなことより――」
落としたボールを拾い、太陽に向ける。
「やろうぜっ!!」
何を、とは言わない。いや言わなくてもお互いわかっている。その証拠に太陽は口角を上げて笑う。
が、
「おぉ、悪い悪い。っとごめんな? オレもやりたいけどもうすぐ学校始まるからな。
太陽は何かに気付いたように下を見た後、火神に謝ってくる。
「っとそういえばもうそんな時間か。さすがに今からじゃ無理か。」
「そうそう、それにやるなら時間がたっぷりある放課後に全力で、だろ? 今疲れてるみたいだし」
「ハッ、別にオレは今からでもかまわないんだがな。だがさすがに学校入学初めにサボるわけにはいかないか。時間に邪魔されても困るしな」
「うんうん。じゃ、また後でな! 行くぜ!」
それを最後に走って行く太陽に火神もまた後でな、と返して動き始める。
「オレも片付けて行かねぇと……ん?」
そこではたと気付く。先程の太陽は植木に乗っかるように顔を出してきたが、顔の高さそのままに走っていった。しかもかなりのスピードで。
「あいつ、オレと同じくらいの背じゃなかったか?」
んん?と首を傾げながらも、時間が押しているので急ぎ片付けを始めるのだった。
「んで、何コレ?」
そう疑問をこぼす火神がいるのは、誠凛高校の屋上。そして周りには自分と同じく何故か屋上に呼び出されバスケ部一年一同。いや、一番目立つアイツを抜いた全員だ。さらにそこから下に見えるグラウンドには大勢の生徒と教師が居並んでいた。
「何でこうなったんだ?」
火神は数日前の出来事を思い出す。
今朝の太陽とのやりとりもあり胸に宿る熱を収めることができず、ついキャプテンの日向に訊ねたのだ。試合はいつあるんだ……ですか?と。しかし日向からの返答は予想の斜め上をいくものだった。
『試合? あぁ、お前はまだ出れないよ』
その言葉に火神は開いた口が塞がらず、背後にガーンという文字が見えるほど呆気にとられていた。すぐさま気を取り直し聞いてみた。自分何かしましたか!?と。
しかしその答えに日向が逆に呆気にとられていたが、すぐさまその間違えに気付き苦笑しながら言う。
『あぁ、何を勘違いしてるのかしらないが別にお前が悪いわけじゃない。それ以前の話だ』
どゆこと?と目で問うと、日向は詳しく説明する。
まだこの期間は仮入部とされていて、正式な用紙に記入して提出しなければならないとのこと。それを聞きすぐさま監督のリコの所へ行き用紙をもらった。が、それを書いてすぐにでも渡そうとしたがリコが待ったをかけた。何でもそれを受け取るのは月曜の朝8:40からだそうだ。それと何故か屋上で集合と言い渡された。疑問に思いつつも返事をして別れた。
その後は――
とそこまで思い出して思わず持ってきた用紙を握り締める。その後何かむかつくことがあったのか握った拳が震えていた。
(くそっ!! アイツは幽霊か!? 消えたり現れたで神出鬼没すぎる!! それに太陽のやろうもだ!! あれから全然
火神の背から漂う怒りの雰囲気に周りは近付けずにいた。
とそこに屋上のドアからリコが現れ、一年生を整列させる。火神以外の一年生はホッとしながら、また火神も頭が冷えたのか前に並ぶ。
「フッフッフ、待っていたぞ!」
仁王立ちしながら言うリコに場が静まり返る。思わずもらしてしまった火神の言葉が響くほどに。
「……アホなのか?」
「巌流島? 小次郎のつもりなのか?」
「いや、それ以前に待ってたのオレらだし……」
「あーもーうっさいわね!! 言ってみたかっただけよ!!」
顔を真っ赤にして怒鳴るリコ。
「てか今思い出したけど、もうすぐ朝礼じゃ……」
「フフフ、それも含めて説明するわ」
リコは一度コホンと息を整えて再度話し出す。
「簡単に言うと、みんなにはここから宣言をしてもらいます!」
リコが指す先は柵の向こう。つまりこれからの朝礼を待つ大勢の生徒、教師がいるグラウンドだ。
「ってことは、大勢の前で言うってこと!?」
うわ恥ずかしっ、ともらす一年生にリコは鋭い視線を向ける。
「先に言っとくけど、去年日向君たちに監督頼まれた時約束したの。“全国目指してガチでバスケをやること!!”こんなことで恥ずかしがってたらどうせ後でこれからのい練習についていけないし、ついていけたとしても「いつか」とか「できれば」とかいって夢大きくしてするだけでヘタレていくに決まってるわ!そういう人は同好会もあるからそっちへどうぞ!」
そう捲くし立てるリコに指を指された生徒は迫力に押され後ずさる。しかしそれだけに全員には伝わった。“この人は、いやこの人たちは真剣《マジ》なんだ”と。
「だからウチには具体的かつ高い目標と、それを必ず達成しようとする“意思”が欲しいの。恥も外聞も捨てられるほど勝利を目指す“意思”が!!」
そう宣言するリコの瞳には、監督でありながらも日向たち選手とおなじくらいの“意思”がみてとれた。
「……ハッ!んなもん余裕じゃねぇか!」
火神は柵の前に進む。そんなものはとっくの昔から持っているのだから。
「あ、ちなみにできなかったら今度はここから全裸で好きなコに告白してもらいます」
そんな覚悟を折るかのように、リコが笑顔で言い放った言葉に歩いていた火神も含みコケた。
『えええぇっ!!!?? マジっすかぁ!!』
「ちなみにどっちができなかったら?」
「さぁ、どっちかしら?」
楽しそうに言うリコにジト目を送っていた火神は一度息を整え、柵に飛び上がって叫ぶ。
「1-B、5番!! 火神大我!! ≪キセキの世代≫を倒して日本一になる!!!!」
それに驚くのはもちろん下にいる何も知らない生徒達。いきなりの宣言に驚き、近くにいる者同士で話し、ザワめきが広がっていく。
(うっわ、やっぱ今年もやりやがった)
そう心の中で呟くのはそれに混じる日向。この言葉でわかる通り、日向たちも去年同じように屋上でやったのである。まさか恒例行事になるとは。
「さて、次は?」
他の一年生の顔を見るが、誰も前に進まない。とそこでリコと火神は気付く。
(あ? そういえば黒子と太陽は?)
(あのコたちどこ行ったんだろ。逃げたとか? いやまさかそんなあの二人に限って――)
「あの、遅れました」
「うわぉっ!?」
「うぉっ!? く、黒子!? いつの間に!?」
リコと火神の間にはいつの間にか黒子が拡声器を持って存在していた。
「すいません。ボク声張るの苦手なんで、コレ取りに行ってました。使ってもいいですよね?」
「(あ、相変わらず気付かないわ、このコ)え、えぇいいけど、太陽君は?」
「寝てたのでついでに起こしてきました。もうすぐ来ると思います」
「そっ、そう。(こっちも相変わらずか……)じゃあどうぞ」
黒子はリコに促されて柵の前に立つ。そして拡声器のスイッチを入れて構える。できるだけ息を大きく吸い込み、そして――
「いち「うぇい!! 1-B、24番! 虹織太陽!! バスケで頂点《てっぺん》に輝く男だ!! 友達も募集中だからよろしく!!!!」……――」
屋上にあるドアをまたも蹴破りながら現れた太陽は、勢いそのまま柵の上へ猫のように飛び移り両手両足で掴みながら宣言する。その声は拡声器を使って話していた黒子の声も呑み込んで響かせた。その大きさは全てのものを震わせ、耳をふさぐ者さえ現れるほどだ。
「あ~すっきりした!」
「おまっ、声、でかす、ぎ!! 耳が痛ぇわ!!」
「はは、は。さすが太陽君、あたしにも読めないわ……」
「――――」
「いやークロから聞いたらとりあえず大きい声で自己紹介って言われたから、ついでに友達も募集すりゃいいなと思ってな」
「いやそこを言ってるんじゃなくてだな!!」
「あー、キミ達。そろそろそこらへんでやめた方が……」
「――――」
「くぅるああぁぁぁぁああッッ!! またかバスケ部!!」
「げっ、今年は早い!?」
「えっ、前もこれやってたんすか!?」
「いやーすまん、すまん。許せセンセ!」
「~~ッッ、おまえらぁぁぁぁッッ!!!! ぜ・ん・い・ん、正座じゃぁぁぁぁああッッ!!!!!!」
「うぇい!?」
「――――」
その後屋上にいた全員正座で説教させられ、屋上宣言は幕を閉じた。
後日残った一年生は朝の校門前で声だしをさせられ少数に絞られた。
ちなみに黒子は宣言を太陽に奪われたショックで、しばらく屋上で棒立ちになったまま忘れ去られていた。
のちにこれを解消するためグラウンドにラインマーカーで『日本一にします。』と書いたが、それに太陽が手伝わされたのは別の話し。
この時の黒子の顔を見て太陽は「ヒサシブリニコワカッタ」という言葉を残した。
またそれに名前を書き忘れたため、謎のミステリーサークルとして誠凛高校七不思議となったのもまた別の話し。
ところでまたまた話が変わりますが、新しい小説の案が浮かんだので一応アンケートを。
もちろんまだ頭の中での構想ですし今書いている小説もあるのでまだまだ先の話です。それに面白いか面白くないか聞くだけなので軽くい気持ちでお願いします。
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幼少期から九鬼家にてスタート
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初代からタイムスリップしたオリ主
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てな感じです。
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では( ̄▽ ̄)ノシ