黒子のバスケ ―太陽のColor Creation―   作:縦横夢人

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第4Q 日の出の始まり

 

 

「・・・・・・んぁ?」

 

 今までぐっすりと眠っていた我らが主人公の太陽が目を覚ました。彼は未だ眠気を残す瞼を擦りながら起き上がる。そしてふいに窓の外を見ると、もう日が暮れ闇が空を覆っていた。

 それを見て太陽は一言こぼした。

 

「・・・・・・なんだ、まだ夜か」

 

 そう言ってまたベッドに倒れ、三秒とかからず眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、そんな太陽をよそに黒子と火神は公園にあるバスケットコートで向かい合っていた。

 始まりは20分前に遡る。

 

 火神はお気に入りである「MAJIバーガー」に来ていた。ここは世界でも常識とされるほどのハンバーガーショップのチェーン店であり、老若男女全ての人が通う店である。火神はいつものように大量のハンバーガーを買い込んで食べようと席に座った。が、そこでいつの間に座っていたのかバニラシェイクを飲んでいた黒子と鉢合わせたのである。それに驚いていた火神だが、ちょうどいいと思い黒子に≪キセキの世代≫のこと、そして黒子の実力が見たいと言ったのだ。黒子も考えがあるのか、それに応じて近くにあるこのバスケットコートにきたのである。

 そして今、火神対黒子の1on1が開始されている、の・・・・・・だが・・・・・・

 

“しっ・・・・・・”

 

 シュートを撃てばはずし――――

 

“しっっ・・・・・・”

 

 奪う以前にドライブでとりこぼす――――

 

“死ぬほど弱えぇっ!?”

 ベシッ

 

 火神はシュートを撃とうとしている黒子のボールを、ハエたたきのように片手ではじく。

 

(体格がなくても得意技や特徴を極めて一流になった選手は何人もいる。

 が、コイツはドライブもシュートも素人に毛が生えたようなもんだ・・・)

 

“取り柄もへったくれもねぇ・・・!! 話になんねーっ!!!!”

 

「ふざけんなよテメェ!!話聞いてたかっ!?どう自分を過大評価したらオレに勝てると思ったんだオイっ!!」

 と火神は掴みかからん勢いで黒子に詰め寄って行く。

 

 それに対し黒子は、

「まさか。火神君の方が強いに決まってるじゃないですか」

 

 一息ついて、当然という顔をしながら答えた。

 

 ブゥチィッ!!

 

 と火神の方から音が聞こえた。どうやら怒りの限界を超え血管が切れてしまったようだ。

 こめかみ部分から血が噴き出していた。

 

「ケンカ売ってんのかオイ・・・どういうつもりだっ!?」

 

「火神君の強さを見たかったからです」

 

「はぁっ!?」

 

 黒子のなんでもないような態度に火神は怒りを通り越して呆れていた。

 

(ったく、どーかしてたぜオレも・・・。アイツに会ったせいか過度に期待しすぎた・・・・・・。ただ匂いもしねーほど弱いだけかよ、アホらし)

「あーもういいよ。弱え奴に興味はねー。

 ったく、これじゃーあいつ(・・・)もそれほどたいしたやつじゃないってことか――――」

 

「そんなことはありませんっっ!!!!」

 

 興奮が冷めどこか落胆したようにこぼした火神の言葉に、黒子は普段の様子では考えられない強い意思のこもった口調で遮った。

 火神はそんな黒子に驚いたのか、口を開けてポカンとしていた。黒子はそれに気付いてハッとし、夜であることもあり火神に謝る。

 

「すみません、急に大きい声出して」

 

「いや、別にそれはいいんだが・・・・・・」

 

 オレ何か悪いこと言ったかな?と気まずそうにする火神に黒子は首を振って答える。

 

「いえ、僕のことはいいんです。

 ただ、彼の・・・・・・太陽君のことを悪く言わないでください」

 

「・・・・・・はは、やっぱりか。お前と同じ帝光の・・・・・・いや≪キセキの世代≫ってやつか」

 

「違いますよ」 

 

「そうかそうか、違うのか・・・・・・うんんっ!? 違うの!?」

 

 うんうんと納得したように頷いていた火神だが、思っていた答えじゃないことに驚いてバッと黒子に振り向く。

 

「ええ、彼は≪キセキの世代≫と言われる前に、冒険家の親と一緒にアフリカへと旅立って行ったんです」

 

 何だ、じゃあ違うのかとまた落ち込む。

 

「でも」

 

 黒子はどこか誇らしげな顔をして言う

 

「太陽君は僕達の・・・・・・≪キセキの世代≫の始まりを創った人です」

 

 そう嬉しそうに言う黒子は昔を思い出していた。

 

 

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 ――――お~いクロ、どした?

 

 ――――・・・・・・

 

 体育館の入り口

 

 そこで僕は一人の男子と向かい合っていた。

 

 ――――キミが行ってしまうと、なんだかみんなバラバラになってしまいそうな気がして・・・・・・

 

 そう言って僕は思わず俯いてしまう。僕たちがバスケを好きになったのは君のおかげであり、君が中心にいたからこそ僕たちはうまくやれていたのだ。

 そんな君が離れてしまうと今までの、そしてこれから全てが壊れてしまいそうな予感を感じた。

 

 そんな気持ちを表すかのように外からの日の光が彼だけを照らし、僕には影が覆う。まるで僕らを分けるように感じた。

 

 ――――ん~そんな心配しなくてもいいんじゃない? 楽しそうにやってるし、仲良しだよ? みんな

 

 そう彼はなんでもないように言うが、それでも僕の不安は晴れなかった。

 

 ――――ん~じゃあさ、約束しようぜ?

 

 ――――約束・・・ですか?

 

 ――――うん。こっち帰ってきたら、“皆でまた一緒にバスケしよう”って!

 

 そう言って笑う彼の顔には一切の不安はなかった。あるのはただ約束への願いと、僕たちとまた一緒にバスケができると信じている、“信頼”した顔だった。

 そんな彼の重いが動かしたように彼の後ろから光る太陽が僕をも照らしてくれた。

 

 そんな僕が言う言葉は一つしかなかった。

 

 

------------------------

 

 

 そして現実に戻ってきた黒子は未だ驚いてる火神に言い忘れていたことを思い出し、改めて向き直る。

 

「それに見解の相違です。ボクは誰が強いとか、どうでもいいです」

 

「んだとっ・・・!?」

 

「ボクは君とは違う」

 

 そう言った黒子は後ろからの街灯により照らされた自分の下を見て言う。

 

 

「ボクは《カゲ》だ

 

≪太陽≫(彼)や≪光≫(みんな)があるからこそボクがいる」

 

 

「・・・・・・?」

 

 黒子の表情は街灯の光によって見えず、火神には何がなんだかわからなかった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 ツンツン

 

「んんぅ・・・・・・」

 

 ユサユサ

 

「うぅん・・・・・・ん?」

 

 明けて翌日

 

 虹織太陽は何かに揺さぶられる感覚を受け、目を覚ました。

 

「ぅんっ!!・・・・・・と、はぁ」

 

 手を組んで伸びをした彼は今何時か確認しようと窓を見る。

 

「・・・・・・ん?」

 

 そして曇った空が少し赤くなっているのに気付き違和感を覚えた。あらかじめセットしていた目覚まし時計を探す。

 が、そこには――――

 

「あれ?」

 

 無残に壊れた時計だけが残っていた。何か嫌な予感がした彼はベッドを飛び起きて居間にある大きな時計に駆けていく。

 そしてそこで見た時間に思わず口をポカンと開けてしまった。

 

「4時・・・・・・30分!?」

 

 普通なら学校がぁ!?と思ってしまうところだが、彼はそれを二の次にしてあることを考えていた。

 

「バスケ始まってるっ!?」

 

 ・・・・・・そう、彼はごらんの通りバスケ馬鹿である。

 彼は急いで着替え、前日に準備していたカバンを抱えて家を出る。

 

 「っとっと、行ってくるぞ!!」

 

 ――――前にあいさつをして学校に駆けて行った。

 

「・・・・・・ガォオンッ!」

 

 そんな彼の背にその鳴き声だけが届いた。

 

 

 

 

 ――――駆ける

 

 ――――駆ける

 

 ――――駆ける

 

 時には公園を抜け、塀を渡り、金網を飛んで。

 

 そこにいた人は何が起こったのかわからず、彼はその場に風だけを残して駆けていく。

 

 そして彼は三十分もかかる道をわずか十分で駆け抜け、校門を目前に、いやそれさえも今抜けて行き体育館を目指す。

 

 その胸には走って溜まった熱だけではない。大好きなバスケをやれるワクワクした喜びと、約束した友に会える嬉しさがドクンドクンと苦しいはずの心臓を動かし、さらに駆けるスピードを速める。そして未だ校舎に残る生徒を最小限の動きで避けながらひた走る。

 

 そして遂に目的の場所である体育館の扉をその瞳に捉えた。近づくそれにスピードを緩めることはせず、むしろ邪魔だと思いながら飛び掛る。

 

 そして――――

 

「ウェェェェェェエエエエイッッ!!!!!!」

 

 ドオオオォォォォーーーーンッ!!!!!!

 

 

 

「落着いてください」

 カックン 

 

「っ!? テメッ!! なにしやがん『メキャアッ』ッッブゥファァアァァァァァアアッ!!!!??」

 ヒューーーーン ダッダッダダダダゴロゴロゴロゴロゴロ・・・・・・ガクッ

 

 

 

 クルクル スタッ!!

「っと、ん?」

 

 何か踏んでしまった感じがするが、それにかまわず周りを見渡す。

 何故か全員口をはずしたのかと思うほどあんぐりと開けていたが、その中に目的とした人物を見つけて太陽は手を上げる。

 

「よぅ、クロ! 戻ってきたぞ!!」

 

「・・・・・・太陽、君?」

 

 それにニィッと口角を上げ、改めて周りを見回し、宣言する。

 

 

 

「≪虹織 太陽≫

 

 ただいま参上ッッ!!!!

 

 さぁ、やろうぜ――――バスケ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 


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