現在少し遠くに出掛けてしまっていて、SSを投稿できない状況です。
かなり急いで書いたので、今回はちょっと長いです
朝 ―07:20―
ピピピピ♪ピピピピ♪ピピピピ♪
携帯電話のアラームが部屋に鳴り響き、俺は目が覚めた。
「あ…仕事…」
布団から起き上がり、会社に向かうためにスーツを着る。仕事の資料を確認し、少し浮かれた気分に浸りながら、俺は家を出た。
駅まで歩いていく道のりの途中に…その店はある。そして、そのお店の前には…後継ぎ兼看板娘である、高坂穂乃果が居た。
彼女は「穂むら」の暖簾をかけ、竹ぼうきで店の前を掃いている最中だった。
忙しそうだし…今はいいか
店の前を通り過ぎて少したった頃、後ろから彼女の声が聞こえた。
「おはようございま~す!お仕事、頑張ってくださいね~!♪」
「!?」
後ろに振り向くと、彼女が大きく手を振っていた。当然、この道を通っている通行人の目線が一気に俺に集まってきた。
俺は足を止め、苦笑いをしながら軽く手を振り返した。横を通り過ぎた女子高生の会話が、嫌でも耳に入ってくる。
「すごいね~」
「ね~」
「ラブラブだね~!」
「きゃ~!」と、悲鳴のような高い声を上げ、キャッキャと騒ぎながら歩いていった。
うちの近くの高校といえば、音ノ木坂学院と、超難関校のUTX学園くらいだ。当の本人は人目なんかを気にしてないかのように、変わらない笑顔を向けて手を振っていた。
うわぁ…めっちゃいい笑顔だ。嬉しいけど、なんとも反応しにくい…
恥ずかしさのあまり顔を見ることは出来なかったが、もう一度だけ手を軽く振り返して、会社に向かった。
夕方 ―19:40-
仕事を片付けたと同じタイミングで、上司の一人が俺に向かって声を掛けてきた。
「お~い、今日飲みに行かないか?」
…今日はいけないか
「わかりました」
少し心残りを残しながら、俺は上司に連れられて居酒屋に向かった。
ネットでは、「無駄」という意見をよく目にするが、上司に居酒屋に誘われるのは、決して悪い事ばかりではない。(悪いことのほうが多いかもしれないが…)
確かに愚痴られるし、自分の時間もなくなってしまう。だが、仕事の経験や、実績を残す方法など、勉強になることも多い。
「この間の事もあるので、俺は控えめで」
一応控えめとは言ったが、どうせ飲まされるのは目に見えていた。
夜―??:??―
散々愚痴を言われ、挙句飲まされた俺は、帰り道のどこかで、電柱にもたれかかっていた。
「大丈夫…?…雪穂~!お水~!」
頭…ぼーっとする…
誰かに助けられたところで、俺の記憶は途切れていた。
朝 ―07:30―
ピピピピ♪ピピピピ♪
「はっ…!?」
アラームの甲高い電子音に叩き起こされ、俺は目が覚めた。
あれ…どうしてここに…ってスーツが!?
布団から起きあがり、身体に触れて今着ている服を確認する。
あれ…Yシャツ…?スーツの上着は…なんだこれ?
どこかに行ってしまったスーツの上着を探すと、布団の横に手紙が置いてあった紙を発見した。
「これ…」
“昨日も飲み過ぎてしまったんですね。無茶は禁物ですよ!”
読み進めていて思った。これは俺の文字ではない。まさか…酔っぱらって変な人格出来上がったとか恐ろしい事にはなってないよな…?
誰かは思い当たらないが、女の子らしい、柔らかい文字の手紙を読み進めていく。
“それと、スーツの上着は私が預かっています。あと、机の上に”リ○ビタンE“を買っておきました。もしよかったら飲んでくださいね!
スーツを…預かった…?まさか…
俺の家を知っていて、ここまでしてくれるの女の子。そんなことをしてくれるのは…
高坂 穂乃果より!
彼女一人しかいない
「…っ!?」
咄嗟に出そうになった声を押さえつけ、高鳴る心臓と、一気に熱くなった顔の熱を抑える。
うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
思いっきり叫びたくなる衝動に駆られたのは…高校時代の、初恋以来だったかもしれない。
頭を冷やすようにシャワーを浴び、さっさと会社に行く格好に着替えて「穂むら」に向かった。
徒歩五分の距離にある和菓子屋の前に、割烹着の彼女はいた。
この間と同じように、店の前を竹箒で掃いている。彼女は反対側を向いてる為、俺に気が付いていないみたいだった。
「~♪」
陽気に鼻歌歌っている彼女の肩を軽くたたくと、オレンジ色の髪を揺らし、彼女がこっちに振り向いた。
「おはようございます、穂乃果さん」
「おはようございます!昨日は大丈夫でしたか?そうだ!雪穂~!」
彼女は朗らかな笑顔で答え、二階に向かって声を張って叫んだ。
「やっぱり…本当にすいません」
「いえいえ!雪穂~!早く早く~!」
本当のことを言うと、嬉しさもある。というか…もしかしたら嬉しさの方が大きいかもしれない。言葉に出すわけにはいかないが…
店の入り口の扉が開くと、この間の格好とは違い、スーツを着た雪穂が慌ただしく走って出てきた。
「はいこれ!行ってきます!!!」
押し付けるようにスーツを俺に渡し、彼女は走っていってしまった。
「いってらっしゃ~い♪」
笑顔で手を振り、彼女は雪穂を見送った。
そういえば…姉の穂乃果さんはお店を継いでいるとして…雪穂さんは…?
「そういえば…雪穂さんは仕事ですか?」
「ん~…今は大学四年生ですよ。今日は教育実習?みたいのがあるらしくて、寝坊しちゃったみたいです」
「あ~…寝坊?ってことは時間は…」
腕時計を見ると、時刻は8:30分を示していた。携帯に連絡が着ていないかを見ると……充電が切れていた。
「やっべ!すいません!時間なので失礼します!」
急いでスーツを着て、駅に向かって走り出す。
「頑張ってくださいね!♪」
「穂むら」の看板がどんどん小さくなり、距離が遠のいていく。
こんな状況なのに…ほんの少しだけ嬉しい気持ちが俺の中にはあった。
―20:30―
二度目の遅刻に、さすがに怒られたものの…上司のフォローもあり、遅刻は水に流された。
「昨日はすまんな、さて今日はどうする?」
笑顔で謝ってくる上司に少しだけイラっときたものの、愛想笑いを浮かべながら、上司のやんわりと断る。
「それ、昨日と同じじゃないですか。俺もう遅刻するのは嫌ですよ~」
「そうか。それじゃあ、明日は遅刻するなよ。お疲れ~」
「気を付けます。お疲れ様でした」
さて…俺も行くか
「お疲れさまでした!」
鞄を掴み、俺は会社を後にした。人が多くなってきた電車に乗り込むと、いつもは短いと思っていた15分程度の時間が、異常に長く感じた。
落ち着かない…
やっとの思いで付いた「秋葉原」に到着し、「早く」と命じる心を落ち着かせながら、人の流れに沿って歩いていく。駅の改札を抜けると、俺は早足で「穂むら」へと向かった。
早く…
出会ってまだ二日程度、時間にしたら24時間もないだろう。それでも、気が付いた頃には、俺は彼女の夢中になっていた。
「穂むら」の店内に入ると、カウンターには笑顔の穂乃果さんはいた。
「いらっしゃいませ~♪また来てくれたんですね!」
少し照れ隠しの愛想笑いを浮かべ、この間の奥の席に座る。少しすると、彼女が冷たいお茶を配膳してきた。
「メニューはそこにありますから、ごゆっくりどうぞ♪」
ニコニコしながらこっちを見てくる穂乃果さんに気を取られながらも、メニューの一覧を見ると、この間の商品がない事に気付いた。
あれ…白玉あんみつ…?
「あの…この間のって…」
「この間…?あっ…もしかして穂乃果スペシャルですか?」
彼女にしては珍しい、少し困った表情をしていた。
「はい、あれ…また食べたかったんですけど…白玉あんみつで…」
少しだけ残念に思ってメニューを見直そうとした瞬間、彼女は机に両手をつき、目を輝かせながらグイッと顔を近づけてきた。
「本当ですか!!」
「っ!?」
近っ!?
俺と彼女の顔との距離は、ほんの10センチ程度しか離れていなかった。
「よかった~!白玉あんみつ入りました~!♪」
あれ…非売品だったのか…?
いつも通りの明るい笑顔で、彼女は奥に入っていった。
~30分後~
白玉あんみつを食べ終えた後、俺は彼女と自分の勤めている会社の事、「穂むら」での修行のことなどの話していた。
「へぇ~…あの会社の人だったんですね!」
「まあ…平社員ですけどね」
「いいな~…穂乃果も会社員、やってみたかったな~」
羨ましそうに言いながら、彼女は上を向いた。自分のスーツ姿でも想像しているんだろうか…
穂乃果さんのスーツ姿…か…
想像を膨らませ、いつもの割烹着ではなくスーツ姿の彼女を想像してみた。
―おはようございます!今日も一日がんばりましょ~!♪―
「どうかしました?」
…ありかもしれない
なんてことは言えず。俺は少し慌てて誤魔化し、思いついた適当な話題に話を逸らす。
「いやなんでも…そんなにいいもんじゃないですよ、会社員なんて。今日はこれで失礼します。閉店時間になりそうですし…」
「あっ…ほんとだ」
立てかけられている時計を見ると、時間は21:30を回っていた。穂乃果さんと俺は椅子から立ち上がり、ゆっくりと歩いて店の外に出た。
「今日はありがとうございました。昨日も助けてもらったみたいで…」
「困ったときはお互い様です。でも、お酒は少し控えなきゃだめですよ?」
少し怒った表情を見せる彼女に、少しだけドキッとした。
「…はい、気を付けます。それじゃあ、失礼します」
「そうだ!ちょっと待っててくださいね!」
振り返り、家に向かって歩き出した足が止まる。慌ただしそうに店内に戻って行ってしまった。
「…?」
すこしお店の前で待っていると、紙袋を持った彼女が店から出てきた。
「これ、もしよかったらなんですけど…」
紙袋の中には、店頭に並んでいた綺麗な和菓子が包装されて入っていた。
「これ…いいんですか?」
「はい。残っているのって勿体ないので、せっかくだから食べてほしくて」
「ご自宅では食べないんですか?」
「ははは…本当はそうしたいんですけど、穂乃果の家って昔から和菓子屋だから、正直和菓子に飽きちゃったというか…」
頭に付けている白い三角巾を解き、少し苦い表情をしながら彼女は答えた。オレンジ色の髪が風に吹かれ、ワンサイドアップの髪がゆらりゆらりと揺れる。ほんの少しだが風に乗って甘い香りがした。
「あぁ…なるほど、それじゃあ、ここに長くいるのもあれなので、失礼します」
幼いころから和菓子屋の娘として育っているのなら、もしかしたら飽きるほど食べているのかもしれないな…それはそれで羨ましいが
身体の向きを変え、俺は自宅に向かって歩き始めた。ほんの数メートル離れた場所で足を止めてもう一度振り返ると、今朝と同じように、彼女は笑顔で大きく手を振っていた。
少し照れくさかったが、今度は俺も彼女に向かって手を振り返した、
「今度来た時!穂乃果アレンジ作って待ってますからね~!」
「…!」
穂乃果アレンジって…まさかあの…
「それじゃあ、おやすみなさ~い!」
彼女は店の中に戻っていき、俺は自宅に向かってもう一度歩き始めた。
また…次回がある
叫びたくなる気持ちを抑え、俺は家に走って帰った。
~一カ月後~
夜 ―21:35―
ここ最近…といっても一ヶ月だが、俺は毎日のように「穂むら」に足を運んでいた。
やることは定休日でも変わらず、俺は彼女の試作品を食べ、感想を言う。そして、空いた時間は彼女と話しているだけだ。
ここ一ヶ月でわかったことだが、この時間に来るお客さんはそんなにいない。来るとすれば…時折、業者のお兄さんが来るだけだ。
この時間の奥の席は俺の特等席(?)になっている。
「穂乃…いいなぁ~、私もやっぱりスーツ着てみたかった~!」
駄々をこねる子供の様に足をバタバタと動かし、羨ましそうに声で彼女は叫んだ。
「そんなことないですよ。飲み会とか疲れますし…」
「え~…そういえば、穂乃…私もお酒ってあんまり飲んだことないな~」
「そうなんですか?」
「うん、大学の時は高校からの友達と一緒の事が多かったし…サークルも入らなかったんです」
「サークル…そういえば俺はワンゲルでしたね」
「ワンゲル?」
「ワンダーフォーゲルです。登山とか、ツーリングとか、小さなサークルでしたけどね」
「いいな~!穂乃果も登山してみたい!」
「また、穂乃果って言ってます」
名前の事を指摘すると、口を押え、はっ!?っと驚いた表情をした。
「いいな~私も行ってみたい!」
言い直すのか…
穂乃果 と何度も言いかけては、私 と言い替えている。昔からの口癖らしく、言ってしまうのだそうだ。
さっき聞いた話では、昨日の夜、雪穂さんに
「そろそろさ、自分の事「穂乃果」って言う癖やめた方がいいよ」
と、言われたらしく、なんとか改善しようとしているらしい。
「手ごろな山だと…高尾山ですかね、近いですし」
「いいな~!」
奥からTシャツとホットパンツを着ている雪穂さんが現れ、奥に席に座っている俺に指を指した。
「来て」
「俺?」
「お姉ちゃんもだからね」
俺と穂乃果さんと顔を合わせると、頭の上に「?」が浮かんだ。
「穂乃果さん、何か知ってますか?」
「さぁ…穂乃果にもなにがなんだか…」
「あ、また言ってます」
ハッと驚き、両手で口を押さえると、一呼吸置いて、もう一度話し始めた。
「…私にも何が何だか…」
やっぱり言いなおすんだ…
「早くきて、お姉ちゃんも早く~!」
ゆっくり話している俺達を急かすように、雪穂さんの声が店内に響いた。
「はい!」
「わかったよ~」
穂乃果さんは少しムッとした表情をしながら、席を立ってゆっくりと歩き始める。これ以上怒られたくはないので、俺も席を立って歩き始めた。
カウンターを抜け、奥に入っていくと、何の部屋かはわからない居間のようなところに案内された。部屋の中に入ると、ムッとした表情の雪穂さん、にこにこしている綺麗な女性、この間のように殺気を纏っている男性がいた。
「やっときた、早く座って」
「は…はい…」
四角形の席にを囲んで、入り口に近い手前に母親(?)、父親、真ん中に雪穂さん、奥に俺、穂乃果さんが座った。
重苦しい空気の中。禍々し殺気を放っている父親の隣にいる女性が口を開いた。
「初めまして、穂乃果と雪穂の母の高坂美穂(みほ)、そして夫の高坂秀造(しゅうぞう)です」
「は…はい…はじめまして…」
いや…なんで自己紹介を…?というか…プレッシャーやばい…!
「ここ最近、娘の穂乃果が、いろいろお世話になっているようで…雪穂からいろいろ聞いていますよ」
「いえいえ…お世話になっているのはむしろ俺の方で…」
重く圧し掛かるプレッシャーを堪え、いつも仕事で使っている愛想笑いで応じる。
「ということで、あなたには穂乃果とお付き合いをしてもらいたいと思っているんです」
「ははは…そうですね……え?」
「お母さん!?」
バンッと勢いよく机に両手を叩き付け、穂乃果さんは母親に向かって身を乗り出した。猛抗議する彼女を無視し、美穂さんは話を続ける。
「悪い男に引っかからなかったのは良いけど…今年でもう24歳。なのにぜんぜん相手を見つけてこないし…」
「は…はぁ…」
「お姉ちゃんうるさい!話聞こえないじゃん!」
「だって雪穂だって彼氏いないじゃん!」
「そ…そんなの私の勝手でしょ!お姉ちゃんだって…」
後ろでなんか口論が起きているが…それを気にも留めずに美穂さんは話し続ける。
「高校時代、大学時代といい…結局友達と遊んでばかりで…」
「は…はあ…」
なんだこのスルースキル…まるで美穂さんのいる部分だけ別次元みたいだ
「それもこれもお姉ちゃんが悪いし!」
「穂乃果は悪くないもん!」
「それに!また「穂乃果」って言ってるし!」
「うぐっ…いいじゃん!穂乃果は穂乃果だもん!」
「そんなんだから…」
雪穂さんが反論しようとした瞬間、美穂さんの雰囲気ががらりと変わった。
「あんたたち…うるさいから静かにしなさい」
「っ!?」
「「ひぃ!?」」
さっきまでのおっとりとした雰囲気とは違い、美穂さんの雰囲気が鬼のそれに変わった。
「……はい、というわけで、よろしくお願いしますね♪」
もとのおっとりとした雰囲気に戻り、穂乃果さんと似た朗らかな微笑みを向けてきた。
「は…はい…」
かなり強引だが、明日から俺と穂乃果さんの奇妙な関係が始まることになった。
はい、というわけで穂乃果編の第三話です。
今回は忙しい中投稿したので…もしかしたら「?」と思う部分があるかもしれません。
帰って落ち着いたら、いろいろ編集したいと思います。
高坂美穂っていうのは、穂乃果の母親で、秀造ってうのはお父さんの事です。
え~っと…実は、これからどう穂乃果とイチャイチャさせるかは、正直あんまり浮かんでないのが現状です。(いくつかは浮かんでますけど…中盤かな~って感じのネタが多いです。遊園地とか)
9人分全員のネタを考えるのって割と思いつかないもんですね~…
しばらくの間書くことは出来ないですし、ネタを募集したいと思います。
穂乃果と行ってみたい所とか、書いてくれると嬉しいです。※詳しくは第一話へ
え?ストーリーに組み込んでも大丈夫なの?
といった疑問を持った人もいるかもしれませんが、今作の世界観や、大まかなストーリーは決まっていますが、ネタに関してはあんまり考えていません
9人分も書くのは私の頭が処理しきれないです
なので、皆さんが考えたネタを突っ込んでもらって結構です
あと、俺ガイルコラボですが、現在小説を読んで勉強中なので、もう少々お待ちください。
ご意見やご指摘・感想・評価・ネタ提供など、心よりお待ちしております。
わざわざ最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
それではノシ