”酒豪”と言われている上司に居酒屋に連れていかれた俺は、愛想笑いをしながら何とか乗り切った。
…はずなんだけど、酒がそんなに得意ではない俺は、家まであとちょっとの距離の所でダウンしてしまった!
電柱にもたれかかり、吐き気と戦っていると、割烹着を着た一人の女性に助けられ、俺は無事に帰ることが出来た。
そして朝を迎え、俺は彼女と再び出会った。
どうも、毛虫二等兵です。
今回は穂乃果編の第二話です。あともうちょっとで穂乃果と知り合った経緯は終わるかな~って思います。
拙い文章で読みにくいは思いますが、どうか温かい目でみてくださると助かります。
朝 -08:09-
「あ…」
「あ…」
「どうも…」
いざ目の前にすると、何も話せない。おそらく…というか昨日助けてくれたのは彼女であることは間違いない。間違いないんだけど…
「よかった~!大丈夫だったんですね!」
彼女は俺の手を掴み、ワンサイドアップの髪を揺らしながら、とてもうれしそうな笑顔を浮かべていた。
「あの後大丈夫かな~って思ってて、ずっと心配してたんですよ!」
「あっ…はい…」
目を輝かせて迫ってくる彼女に呆気を取られ、俺は言葉を失ってしまった。
それに、通学中の女子高生、通勤中の社会人、この道を通っている人たちの視線が刺さってきている。「朝からイチャイチャしている社会人がいる」程度に思われているのだろう。
「頭とか痛くないですか?体調は…?」
「あの…えっと、大丈夫です。それとその…とりあえず手を…」
「あっ…すいません!」
彼女はようやく気が付いてくれたのか、握っていた手を離してくれた。申し訳なさそうに謝られているものの、本来なら謝るべき立場なのは俺のはずなのだ。さっきとはまた違った意味で、視線が刺さってきた。
どうしてこうなったかな~…
彼女の勢いに押されてこうなったとはいえ、昨日ご迷惑を掛けてしまったわけだし、俺から謝るべきではあった。羞恥心がないわけではないが、せめてお礼と謝るくらいは…
「こちらこそ、昨日はご迷惑を掛けてすいませっ…いっ!」
「え~っと…さっきはすいませ…っ!」
謝ろうと頭を下げると ゴツン と鈍い音が頭に響いた。フラッと力が抜けるような感覚に襲われた俺はバランスを崩し、尻餅をついた。
「…いってて…」
「いたたた~…」
どうやら彼女の頭とぶつかったらしく、彼女もバランスを崩して尻餅をついていた。それに気づき、もしかしたら怪我をさせてしまったのではないかと思い、彼女に向かって声を掛けた。
「「大丈夫ですか!?」」
「え…?」
思っていることは同じだったらしく、言葉も、タイミングもずれがないと言っていいほど見事にシンクロしていた。
「……ぷっ」
少しの沈黙後、彼女は柔和な表情を浮かべ、楽しそうに笑い始めた。
「あははははははは!」
あ~あ…なんだこのやっちまった感…
彼女は15秒くらい笑った後、息を整え、どこか懐かしそうな表情で呟いた。
「久しぶりだな~…この感じ…」
「…?」
ピンポン♪ピンポン♪
ズボンのポケットに入っている携帯の着信音が鳴っていることに気が付き、俺は携帯の画面を見て…現実に引き戻された。
着信は二件…どっちとも会社の上司からの連絡だった。時間は08:30。仕事が始まる時間だ。
そして画面には
[仕事始まったぞ~生きてるか~?]
という通知が入っていた。
あ…え?しまったーーーーー!!
「どうかしましたか?」
急いで立ち上がり、尻餅をついている彼女にむかって手を差し出す。
「大丈夫ですか?すいません!俺こっから仕事があるから急がないと…」
彼女が手を掴んだことを確かめ、ゆっくりと力を込めて立ち上がらせる。
「はいっ!ありがとうございます!…って穂乃果も仕事しなきゃ!」
彼女はニコッと笑い、自分にも仕事があることを思い出したようだ。
ピンポン♪
携帯を取り出し、恐る恐る画面を見ると…
[早く来い]
「やべっ…すいません!また伺います!」
会社と家が近い事をせめてもの救いに思いながら、駅に向かって全力で走り出した。
夜 -20:55-
仕事を終え、いつも通りの帰路についていた。
結局…俺が仕事についてのは、午前九時ちょっと前の事だった。
「昨日のあんなに飲ませたから…すまないな」
と、上司がフォローしてくれたこともあり、なんとか遅刻を許されることとなった。そのあとはいつも通りの仕事をこなし、今日は上司に掴まらずに帰ることが出来ている。
駅の改札を抜け、10分程度の距離を歩いていると…目的の和菓子屋の看板見えてきた。
…あった。まだやっているみたいだ
暖簾を少し避け、扉開けて店内に入った。入り口に入るとすぐに、ショーケースに中にいくつかの和菓子が並べられていた。こんな時間でなければ、もっと商品が置いてあったのかもしれない。
鮮やかな色彩をもった和菓子を眺めていると…奥から「穂むら」と記された暖簾の上げ、割烹着を来た女性がカウンターまで移動してきた。
「いらっしゃま…あ、朝の人…」
「はい。その…」
「はい?」
他にお客様がいないからいいが、恥ずかしくないわけではない。それでも…迷惑かけてしまったことは変わりない以上、謝らなければならない。
「昨日といい…ご迷惑を掛けてすいませんでした!」
羞恥心を捨て去り、勢いよく頭を下げる。
「えっと~…えっと…?」
怒っているようではないようだが、少し呆気を取られたような声が聞こえたため、顔の角度を少し上げて、彼女の表情を見た。
「えっと…う~ん…」
何のことだろう?と言わんばかりに眉をひそめ、一生懸命何かを考えていた。
もしかしたら…何のことかわかってない?
彼女は何かを閃いたのか、ハッとした表情をした。…と思ったら、首を何回か横に振り、再び悩み始めた。
あ…これ絶対わかってないやつだ。でもどうするか…このままの体勢って地味に腰がきついし…それにもし他の人に見られたら「何してんの?」ってなるだろうし…
「ん~…」
真剣に悩んでいるようだが…このままだとわかる気配はない。
駄目だ…このままじゃ…。よし、とりあえず説明を…
「おねーちゃん!閉店の準備して……何してんの?」
声と共に、もう一人の女性が暖簾をくぐって出てきた…つまり、見られた。
「あ」
「あ、ごめん雪穂!」
「何…これ?どういうこと?」
「雪穂」と呼ばれた女性は、案の定ドン引きしていた。考えて見れば…当然のことだ。見知らぬ男性が店内で頭を下げている。これだけでも、もう十分異常事態だ。
どうする…とりあえず事情の説明を…!
「えっと…これは」
頭を上げて、雪穂 と呼ばれた女性に状況を説明しようとするが、彼女はハッと何かを閃き、にやにやと楽しげな笑みを浮かべた。
「そっか!なるほど!邪魔しちゃってごめんねお姉ちゃん!」
「へ?」
「ん?」
あ…あ~……これ完全に勘違いされてるやつだ
「それじゃあごゆっくり~!♪」
「あっ!ちょ!」
誤解を解く前に行ってしまった…と後悔していると、割烹着の女性が笑顔で話しかけていた。
「え~っと、お茶、飲みますか?♪」
「…はい」
いろいろ誤解を受けたようだが…ようやく落ち着いて話が出来るみたいだった。
最後まで読んでくれてありがとうございました!
次回はようやく話し合いができる感じです。
ご意見(ご指摘)・ご感想、心よりお待ちしております。
それではノシ