ラブライブ!~μ'sのその後の物語~   作:毛虫二等兵

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どうも、毛虫二等兵です。
ちょっと時間かかっちゃいましたが、ようやく更新です。

次の回のあたりで、エリーチカの大学生活についても触れると思います。



絢瀬絵里編 第三話

(綾瀬絵里さん、俺…ずっと…あなたの事が好きでした!付き合って下さい!!)

 

 

あの時、私は間違えてしまったのかもしれない。

 

 

(はははは…ずっと好きだったのは…俺だけだったってことですか…?絵里はそんな俺を見て…今まで…すっと心の中で笑ってたのかよ……返せよ…!俺に今までの気持ちと!時間を返せ!!)

 

 

大きな声を張り上げ、強い憎しみの籠った瞳で彼は私を睨み付ける。今までにないくらい…冷たい眼差しで…

 

 

あの時…私は……!

 

 

「っ!?」

 

 

あの夢から逃げ出すように、私は目を覚ました。パジャマは汗でびっしょりと濡れていて、胸の辺りが重く、息苦しい。

 

 

「まだ…許してくれないのね」

 

 

ベッドから降り、重たい足取りでバスルームに向かった。脱衣所でパジャマを脱いで、バスルームに入ってシャワーを浴びる。

 

 

今日は…本当に行かなくちゃいけないのだろうか。少し強引だったような気がするが、希のお願いをみすみす断ることはできない。

それに希だって私はもう誰とも付き合う気はないということくらい知っているはずだ。

 

 

「もう…たくさんよ…あんな思いをするのも、させるのも…!」

 

 

お湯の弾ける音が私の声をかき消して、時間はゆっくりと流れ始めた。

 

 

 

 

 

齊藤 弘樹 6月9日 -07:55- 

 

 

「おはようございます、お兄さん♪」

 

 

朝食を食べるためにリビングに入ると、有紗の元気な声が後ろから聞こえてきた。

 

 

「おはよう。やけに気合入ってるな…今日何かあるのか?」

 

 

「はい♪今日は発表会の為の大事な授業があるんですよ!」

 

 

有紗は 精一杯頑張ります と言わんばかりの眩しい笑顔を見せると、椅子に座って朝食を食べ始めた。

 

 

「あぁ~…なるほど、足挫いたりするなよ~」

 

 

俺も椅子に座り、久しぶりのゆっくりとした時間を満喫していた。

ダンススクールに通って以来、俺と有紗は話すようになっている。少し前まで別々の時間帯に家から出ていたが、最近では時間を合わせて一緒に通勤するようになった。

 

 

「ぜっったいにセンター取って見せます!兄さんの為に!」

 

 

右手で小さくガッツポーズを決め、真顔でそんなこっぱずかしいことを口走る有紗。やる気があるのはわかるけど…まさかそんなこと外でも言ってないよな…?

 

 

「いや…そこまではしなくていい。でも、頑張ってな」

 

 

「頑張ります!…ところで…お兄さんお仕事は…?」

 

 

「ん?今日はないよ」

 

 

有紗はパンを食べる手を止め、何か考え込むように俯いた。

 

 

「もしかして…」

 

 

「?」

 

 

「リストラ…されちゃったんですか…?」

 

 

いきなり深刻そうな顔をしてなにを言い出すかと思えば、有紗は突拍子もないことを言い始めた。

 

 

「…それは違うぞ有紗。今日は会社に休みをもらったんだ、午後に外せない用事があってな」

 

 

「昨日テレビでやってました…!最初は誤魔化すために 仕事に行ってくる って言って…実は数ヶ月前にクビになっている場合があるって!まさか兄さんも…?」

 

 

これは友人の話だが、子どもの頃。心霊系の特番を見て、幽霊は実在するかを問い詰めたことがあるそうだ。断じて俺ではない、俺ではないぞ。

 

 

「あ~…さっそく影響受けちゃってるよ。ちょっと母さん、昨日の夜何教えたのさ」

 

 

「なにって…ただ気になったテレビがあるっていうから見せてあげただけよ?」

 

 

「有紗…何をみたんだ?」

「テレビです!」

 

 

「ブッ…ゴホッゴホッ…」

 

 

真顔で即答してくる有紗に牛乳を吹き出しそうになったが、ひとまず落ち着いてからもう一度質問することにしよう。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 

凄い心配そうな表情で見つめてきているということは、悪気があるわけではないだろう。でもな有紗「なにを見たんだ?」と質問されて「テレビです」なんて答え方をする人はいないぞ。お兄さんそんな斜め上の回答をされちゃったからいろいろ不安になっちゃったでしょうが

 

 

「…うん、知ってる。その中で、何の特集を見たんだ?」

 

 

「えっと…社会復帰?の難しさと非労働者の…」

 

 

曖昧だが、おそらく昨日の夜の22時くらいからやっていた特集「社会復帰の難しさと非労働者の言葉」みたいな特集が組まれていたのだ。タイトルだけでも、なんとなく察しはつく。

 

 

「もういい、いいか有紗。あれはな…説明するとややこしいからしないけど、俺はしっかり働いてる。今日はたまたま休みが貰えただけだ」

 

 

「そうなんだ!よかった~…」

 

 

有紗は心の底からホッとしたような表情を浮かべた。そんな有紗の笑顔にほんの少しばかり傷ついていると、上の階から母親の声が聞こえてきた。

 

 

「有紗~そろそろ学校の時間じゃないの~?」

 

 

「そうだった!行ってきます!」

 

 

ハッ と驚いた表情をし、立ち上がって椅子の下に置いてあった学生バックを掴んで家から飛び出していった。

 

 

「いってらっしゃい、気を付けろよ~」

 

 

~5分後~

 

 

朝食を食べ終えて、静かになったリビングでテレビを見ていると、扉が開く音が聞こえた。

 

 

「…で、あんた、顔合わせは今日なんだろう?」

 

 

少し邪魔者を退けるような言い方が突っかかったが、手に持っている掃除機でなんとなく理解した。

 

 

「みたい。今日の14時、もう一度来てくれって話らしい」

 

 

「それにしても…それまでずいぶん時間があるんだけど。今日は寝てればいいのに」

 

 

時計は8時15分を少し過ぎた頃を指していた。身支度の時間を考えてもまだ時間に余裕はある。

 

 

「そこはわざと開けたんだ。“有紗“について詳しい話が聞きたくって」

 

 

俺が真剣であるのを察したのか、母は珍しく真顔で答えた。

 

 

「…だろうね、話しとくべきだとは思っていたもの。だったらそうね…部屋の掃除をしながらでもいいなら、話してあげる」

 

 

「…まあいいや、わかったよ」

 

 

 

 

 

 

 

?? ?? ―13:40―

 

 

もうそろそろ来るであろう応接室で男性の写真を見つめ、いつものようにタロットカードを引く。

 

 

引き当てたのは ―魔術師の正位置― 物語の始まりや、問題の解決などの意味を持ったカードだ。

 

 

さて…下準備も問題ない、あとは…

 

 

「えりち次第…やね」

 

 

親友の事を思い出すと、助けに行きたくなって、今すぐこんなことは辞めさせてしまおう思ってしまう。でもそれでは解決しないことを、私も、彼女だってわかっているはずだ。

 

 

「駄目だよ、私…」

 

 

彼女の心の傷も、今どう思っているのかもわかっている。それでも駄目、行っちゃ駄目だ。私が出来ることは…後押しをすることだけだから

 

 

「心の傷は…えりちにしか…治すことができない」

 

 

カードはただの占いでしかない。それでも…もしかしたら…

 

 

「あなたに…掛けますからね」

 

 

口調が素に戻っていることに気づいたのは、ほんの少し後の事だった。

 

 

 

 

 

 

齊藤 弘樹 -13:50―

 

 

ここで…本当に合ってるんだよな…?

 

 

不安になり、辺りを見渡すが…誰もいない。何をしていいのかもわからないし、ひとまず落ち着くために、あのえせ関西弁の女の人が言っていたことを思い出した。

 

 

 

~回想~

 

 

仕事の合間に、俺は一度だけ結婚相談所に足を運んだ。思いっきり、いや徹底的に断るつもりだったが、どうやらこれだけでもお金が掛かっているらしく…一回だけのチャンスだと思って掛けることにした。

 

 

(う~ん…再来週の月曜日、予定を開けることは出来ますか?)

 

 

なんとかなりそう と答えると、えせ関西弁の女の人はすぐに予約を取り付けてきた。彼女の携帯の鈴の音色(?)の着信音が鳴ると、上機嫌そうに携帯を見て、俺に話しかけてきた。

 

 

(うん、えりちのほうも大丈夫そうやね♪それじゃあ9日の午後14時に、もう一度ここにお願いしますね♪)

 

 

~回想終わり~

 

 

ここでどうしたらいいんだろう。というか えりち って誰だ。

 

 

ここにいても落ち着かないので、ひとまず飲み物を買いに行くことを思いついた。

 

 

「落ち着かないときはこの手に限る」

 

 

立ち上がり、外に出ようとドアノブに手をかけた時だった。ドアノブが勝手に動き、扉が開いていった。そしてその先に居たのは…

 

 

「「あっ…」」

 

 

部屋に入ってきたのは…金髪碧眼の美女で、姪っ子のダンススクールの先生でもある

 

 

「絢瀬…さん?」

 

 

絢瀬絵里さんだ。

 

 

「齊藤さん…?」

 

 

希さんが反対側の出口からひょっこりと顔を出し、ニコッと笑いながら部屋に入ってきた。

 

 

「二人とも、顔合わせは済んだみたいやね♪」

 

 

「どうも…」

 

 

「希…」

 

 

「まあまあ二人とも、一旦座って座って♪」

 

 

ひとまず彼女に案内され、俺と絵里さんは一旦席に座ることになった。

 

 

 

~10分後~

 

 

「希、どういうこと?わかるように説明して頂戴!」

 

 

「だ~か~ら~、さっきから説明しとるやん。たまたまやって~。あ、そうそう、弘樹さんも来てくれてありがとうな~」

 

 

「そんなわけないでしょ!それに私に説明してくれた人は別の人だったじゃない!」

 

 

バンッ と机に手を付き、絵里さんは身を乗りだして希さんに説明を求めていた。なんでも、彼女が初めて来たときに説明を受けていたのは別の人らしく、紹介された人も別の人だったそうだ。

 

 

「あ、いえいえ…」

 

 

一旦席に座ってから10分くらい経ったが、絵里さんはずっとこの調子だ。説明を求める彼女を希さんは言葉巧みに受け流している。

 

 

「希!」

 

 

東條 希 ふわっとツインテール、服の上からでもわかる豊満な…いやなんでもない。そして何より特徴的なのは えせ関西弁 だ。本場の言葉づかいはどうか知らないが、あれがいわゆる「えせ」関西弁であるのはわかる。初めてここに来た時も、違和感のある言葉遣いに困惑した。

 

 

「そんなに怒らんでもええやんか~それに」

 

 

希さんは立ち上がり、絵里さんの耳元で何かを呟いているようだった。

 

 

「…わかったわ」

 

 

少し納得がいかなそうな表情をしていたが、一旦絵里さんは椅子に座った。なにか弱みでも握られているんだろうか…?

 

 

「さて、えりちも納得してくれたようやし、二人で出掛けてもらうで♪」

 

 

「…そうしましょう」

 

 

「あ…はい」

 

 

そんなこんなで、俺と絵里さんは二人で外に出ることになった。

 

 

 




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

絵里編の話はちょっと重くなっちゃいましたね、すいません。
「ありふれた悲しみの果て」で思いついたもんでつい…



みなさんのおかげで、UA値・お気に入り件数が凄いことになってますね。自分の中では最高記録です。
これからも生暖かい目で、お付き合いのほどをお願いしますm(__)m

評価・ご指摘・メッセージ等、心よりお待ちしています。

勝手ながら、主人公に名前を付けました。割と適当なのは許してください

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