カードキャプターさくら&リリカルなのはA's〜Love in their hearts〜   作:1202155@

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 この章の戦いはこれでラストです。あと2話くらい書いてから、次の章に行きます。


クロウの末裔と鉄槌の騎士

ヴィータの前に降り立ったさくらは星の杖を両手で握りしめた。

対するヴィータはグラーフアイゼンを通常形態に戻す。

互いに臨戦態勢を取った。

コール無しで発動可能なカードの数は二枚のみ。最大発動数である5枚はコールしなければ発動出来ない。

 

(単純な魔法の発動する速さじゃ、勝てない……)

 

魔導師相手に速さで勝てるなんて愚かな考えは彼女にはない。想也との訓練で百も十も二百も承知だったからだ。

そんなことを考えていると、ヴィータが攻撃に移った。

 

「お前の魔力も頂いてく!アイゼン!」

《シュワルベフリーゲン・クレイモア!》

 

打ち出された鉄球は超音速でさくらに向かって飛んでゆく。それと同時にさくらは、『跳』を発動させ、水平に大きく飛び、地面を滑りながら着地する。その直後、今まで彼女のいた場所は鉄球が着弾すると同時に爆発し、燃焼する。避けて正解だった、と思い、安堵すると同時に決意を決めると、さくらは杖を前に向ける。すると、無数の矢がさくらの周りに現れる。

 

「いっけーっ!」

 

 発動させたのは『矢』(アロー)のカード。能力は見てわかるように、無数の矢を撃ち出すことだ。撃ち出された魔法の矢にヴィータは驚き、ながらも、障壁を展開。それを体の周りに張り巡らせることで、矢の攻撃から身を守る。

 

「ッ!サンダーッ!」

 

 声と共に緑色の光がヴィータ目掛けて空から落ちてきた。発動させたのは『雷』(サンダー)それがヴィータを障壁の上から痺れさせた。ヴィータが痛みで顔を顰めるが、即座に鉄球を取り出し、空中に並べると、それらを叩し、打ち出した。誘導弾となったそれは、不規則な弾道を描きながら、さくらへ襲いかかる。流石に地上で避け続けるのは無理がある。さくらは、『翔』を発動させ、空中へ飛び上がる。

翼をはためかせ、羽根を舞い散らせながら、鉄球の攻撃を避けていく。しかし、ここまで直接的な『戦闘』というものを経験したことが無いさくらは、この鉄球を避けるのが精一杯だったため、あることを失念していた。それは――

 

「フランメ!シュラァアアアックッ!」

 

 そう、当然のことながら、術者のことだ。気づいた時には既に遅く、もう獲物を振りかぶり、今にも襲いかからんとする彼女の姿が視界の端に映った。だが、そのグラーフアイゼンの柄を地上から飛んできた何かが、その柄をなぞるように巻き込み、ヴィータごと吹き飛ばした。飛び散る火花と、その下で、弾き飛ばされるヴィータ。

 

「無事か?さくら」

 

 さくらを片手で抱きとめながら、もう片方の手で剣を構える一人の少年。その面立ちの整った顔は、静かに目の前の敵を睨んでいる。

抱きとめられたさくらは、まさかの状態にその顔を真っ赤に染め、慌てふためいている。そんな彼女に呆れながらも、彼は優しく声をかけた。

 

「選手交代だ……さくら。お前は下に行ってあの娘を頼む」

 

 耳元でそう囁くと、顔を朱に染めながら、無言で頷き、フラフラと地上へ飛んでいくさくら。それを尻目に、少年ー小狼は剣を両手で構えた。

 

「じきに彼奴の使い魔が結界を維持してる奴の居場所を突き止める。大人しく、して欲しいんだが……」

「うっせぇ!チビガキ!あたしらの邪魔、すんじゃねぇ!」

「……なら、仕方ないな……纏え、火神」

 

 そう呆れたように言葉を零した瞬間、彼の握る剣の刀身に炎が吹き出し、逆巻いた。

 

「覚悟しろ……俺は彼奴ほど甘くは無い……ッ!」

 

 その言葉と共に幾度目の斬り合いが始まった……。

 

 

 

 

「……みんな、状況は厳しいみたいね……」

 

 ビルの屋上で、一人の女性が空中投影ディスプレーに映し出された映像を見ながら、そう呟いた。それらのディスプレーにはこの世のものとは思えない闘いの様子が映し出されていた。

 

「……この激戦だと、静観してるあの娘と介抱されてるあの娘から取るしかなさそうね……」

 

そう決めると、女性はペンダントを取り出し、それを輪にし、空中に浮かべた。その輪の中は異空間になっているのか、本来映るはずの目の前の景色は映っておらず、変わりに緑色の光が見えていた。

 

「座標認識……固定化開始……空間接続……」

 

 そう呟きながら、ペンダントが創り出した空間に手を入れる彼女。だが、その瞬間、彼女の足元に氷の矢が刺さった。

 

「!?」

「……お前がこの結界の中で闘う者たちの参謀のようだな」

 

 現れたのは全身が白の男。白銀の髪に白装束。さらに見える素肌は白い。極め付けに背中から生えているのは純白の白い翼。その翼と彼が纏う雰囲気が、人間でないことを如実に表していた。

 

「ここで引けば、手出しはしない。だが、退かぬというのであれば……」

 

 その手に氷の細剣を創り出し、それを手にして構えた。

 

「倒すように言われているのでな」

 

 女性は悔しそうな表情を浮かべ、歯を噛み締めた。確かに状況的には無理をしないほうがいいのであろう。だが、ここで退けば、後に支障を来す恐れがあった。

 

(どうすればいいのかしら……状況はこちらが不利……でも、これを逃せば……)

(今は引きなさないな。シャマル。焦っていては、いい孝も思い浮かばないわよ?)

偽名(ジャーミン)!?……わかったわ。ここは一旦、引くわ!)

(いい判断よ。私が閃光弾を撃つわ。あなたは適当に指示を出して。それに合わせるから)

(ええ!わかったわ)

 

 その言葉に頷き、シャマルは念話を切った。そして、目の前にいる男に撤退する旨を伝える。男は冷静な声で、そうか、と呟くと翼をはためかせ、去っていった。

 

(ふう……とにかくどうにかなりそうね……)

 

 そう考えると、シャマルは撤退するように、全員に指示を出し始めた。

 

 

 

 

 

「紫電一閃!」

「フラッシュエッジ!」

 

 炎と光。その二つがぶつかり、火花と光を散らす。最早数えるのも億劫になるほど、この2人は斬り結び、交差し、唾を競り合った。その証拠にシグナムは自慢の甲冑と純白の泡肌に切り傷を作り、少年はその無骨な甲冑と兜を所々斬り落とされ、額には血が乾いた後があった。

 

「でぇえええりゃぁあああっ!」

「ハァアアアッ!」

 

 片手の上凪と両手の幹竹割りがぶつかる。互いの太刀筋がぶつかり、その衝撃でさらに傷が増える。だが、不思議と痛みは感じない。

 

「おっかしいなぁ……」

「なにがだ?」

「こんなに真っ直ぐな剣をしてるのに……こんなに意思の篭った太刀筋をしてるのに、貴女の心は何処か曇ってるみたい」

「………当たり前だ。私は主の為に泥を啜り、荊の道を進むと決めた。そのためなら、騎士としての誇りも捨てる」

「……そっか。なるほどね。そーいうことか……なら、管理局として、そいつは見過ごせないねぇ」

「ならば、我らを捕まえるか?」

「いや……事情によるさ」

 

 少年の言葉に違和感を覚えると、少年はレバンティン宛にメッセージを送信してきた。

 

「P.M.Cのダイレクトコードだ。管理局はこの手の奴を嫌う。訳ありなら話を聞く。強制はしないよ」

 

少年の突飛な行動に虚を突かれるシグナム。当の少年は既に武器をしまい、闘う意思は無いようだった。それを見て、シグナムは一瞬、戸惑ったが、レバンティンを納刀し、少年に念話を送った。

 

(礼は言わんぞ。いずれ、お前の魔力も戴く)

(おう。勝手に取りに来い。そんときは寄付でもなんでもしてやるさ)

 

 少年の管理局にあるまじき発言にズッコケながらも、シグナムは迷った挙句名乗ることにした。

 

(ヴォルケンリッターが将、シグナム。貴様の名は?)

(立花想也だ)

(そうか。立花か。覚えておこう)

 

 そう言って念話を切ると、結界の最頂部から、全体を見渡す。三角形に展開された結界のそれぞれの隅付近で戦いが行われているようだった。

 

(みんな、聞こえる?)

 

 念話の主はヴォルケンリッター、バックアップの要『湖の騎士』シャマルだった。

 

(どうしたシャマル)

(偽名が、閃光弾を放つから、その隙に離脱しろとのことよ)

(だろうな。状況は戦力的に見てもこちらが不利。一度体制を立て直すのが先決だな)

(そうね。シグナム、そっちはー)

(……逃げられてしまった。相手のほうが速かったようだ)

(そう。わかったわ。なら、転移魔法で即座に離脱して)

(わかった)

 

 シャマルの指示に従い、転送の準備をするシグナム。最後にもう一度、先程の少年がいる方向を見たあとで、呪文を唱え、消えていった。

 

 

 

 

 

 

 炎の剣とハンマーがぶつかり合う。かたや技量特化の扱いにくい両手持ちの剣。かたや一撃必殺の打撃兵装。打ち合えばどちらが壊れるかなど、明白なのだが、ヴィータと対峙するこの少年はそれを無視し、圧倒的な技巧で20分以上、打ち合っても刃毀れや折れることなく闘っている。

 

(こいつ……!打ち合う時に流してやがる!)

 

「ハァアアアッ!」

 

 ハンマーを弾き、体制を崩したヴィータ。そこへすかさず、小狼は空いたヴィータの懐に飛び込み、発勁を叩き込んだ。勢いよく後方に吹っ飛ぶヴィータ。小狼は追撃をかける為に、刀身に手を添えた。

 

「水龍招来!」

 

 その呪文と共にどこからとも無く、大量の水が集まり、巨大な龍を形作った。それは大きくうねりながら、近づき、その大きな顎でヴィータを飲み込んだ。

 

「ガボッゴボッ!」

 

 突然大量の水に呑み込まれてしまい、おぼれそうになったヴィータだったが、どうにか体制を立て直し、水の中から飛び出した。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 息も絶え絶えと言ったふうに、荒い息をしながら、力なく片手で握っていたグラーフアイゼンを握りしめた。遥か前にいる小狼は今度は剣を天に向けて突き出して、攻撃を放とうとしているのが見て取れた。

 

(これ以上はまずい……どうすりゃ……!)

(ヴィータ、閃光弾を放つはその間に転送を!)

(偽名!ッ!わかった!)

 

 送られた念話に即座に反応し、ヴィータは高速飛行魔法を発動し、結界の最上部へ目もくれず逃げる。

 

「!待て!」

 

 それを追いかける小狼。ヴィータはシュワンベフリーゲンで足止めをすると、再び空を目指した。

小狼はその弾丸を避けるのが精一杯で、まともに追えなくなってしまう。すると、突然、結界の空一杯に光が現れた。

 

「なんだ……?」

 

 疑問に思った瞬間、その光は勢いよく爆ぜ、強烈な光へと変わった。その隙にヴィータは転移魔法で、消えてしまう。

小狼はその光の眩しさで、思わず目を瞑ってしまった。そして、光が収まった時には、結界も闘っていた少女達も消えていた。

 

 

 

 

 

 

「終わったか……」

 

 デバイスを待機状態の蜻蛉玉に変えた想也は戦闘具足を解除し、ゆっくりと地上に降り立った。空は先程の薄ぼんやりとした結界と違い、冬特有の澄んだ星空が広がっている。

 

「ふぅ……大丈夫かい?」

「はい!お陰様で……危ないところを助けて頂いてありがとうございました」

「気にすんな。アルバイトといえど、局員の端くれ。元民間協力者を助けるのは当たり前だよ」

 

 なのはとそう言葉を交わすと、ニッコリ笑ってサムズアップをする想也。なのはも大きく頷いた。

 

「さて……聞きたいことや話したいことはあるとは思うが……先ずは合流しねぇとな」

 

 そう言うと、想也は転送魔法を発動させようと、魔法陣を展開した。

 

「え……?」

 

 なのはの小さな呟きが転送ゲートを開こうとした想也の耳に聞こえて来た。何事かと気になり、後ろを振り向けば、そこには信じられない光景が広がっていた

彼女の体の中心。ちょうど心臓に当たる位置から、手が突き出ていたのだ。その手が握るのは、桜色の小さな光の塊。それがどんなものか、魔導師として活躍してきた想也には嫌になるくらいわかっていた。

 

「ッ!んのやろォーっ!」

 

 想也は躊躇うことなくデバイスを戦闘形態に変化させるも、なのは……では無く、レイジングハートに指示を出す。

 

「レイジングハート!魔力流出カット!なのはの視界を塞いどけ!」

《了解しました!》

「あ……ぁあああっ!」

 

 言い表せない恐怖によって、なのはの顔は青白いを通り越して、真っ白になっていた。そんな彼女の視界を桜色の光が覆った。

 

「泥棒したなら……この腕ごと叩っ斬る!」

 

 気合と共に振り下ろされた弓刀型のデバイスーエクスシア。それがなのはの体から飛び出した腕の手首を斬り裂いた。ゴトッと切り落とされた手が地面に落ちた。同時に、腕の方からは血が流れ出る。それは、なのはの衣服を徐々に赤に染めてゆく。

手を斬り落とされたことにより、腕は引っ込んで行った。それにより、リンカーコアもなのはの中に戻ってゆく。

 

「レイジングハート……なのはの意識を強制カット」

《わかりました。そのように》

 

 その言葉の後で電源が切れたかのように、地面に倒れこむなのは。それを想也は受け止め、抱き抱える。すると、一人の青年が空から舞い降りて、想也の前に立った。

 

「無事なようだな……その娘は」

 

 (ユエ)が心配そうな面持ちで問いかけてきた。

 

「あぁ。月。この娘はちょっといろいろあってな。休ませてやりたいんだが……」

「私は主の元へ戻る。お前は?」

「すぐ行く。……いや、この子を頼む」

「?お前は?」

「……ちょっと報告することができた」

 

 想也の神妙な面持ちに何かを感じ取ったのか、月と言われた少年はゆっくり頷くと、なのはを抱え、空へ飛び立った。

 




やっと、ひと段落ついた第8話。
・オリキャラの想也はチートではないですよー。あしからずー
・さくらのピンチに颯爽と駆けつける小狼君。そして、敵前でも顔を赤くするさくらちゃん。→リア充まじで末永くお幸せに
・ケルベロスが出てこない……書いてるときは気にならなかったのになぁ……
・あげて落とすの作者大好きです。魔力蒐集がないと思った?残念ッ!これがまた、あるんですねぇー!

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