フェンリルに勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない   作:ノシ棒

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ごっどいーたー:14噛

神狩人、加賀美リョウタロウを語る際、対として必ず挙げられる名がある。

血闘士、神薙・R・ユウ――――――英雄の一人として数えられる男である。

神狩人(ゴッドイーター)、血闘士(グラディエーター)。

表の英雄、裏の英雄。

識者は口を揃えて述べる。両者は表裏一体。コインの裏と表のような存在であるのだと。

共に華々しい活躍の裏に、後ろ暗い逸話も付いて回るとなれば、どちらが表で、どちらが裏か定かではない。

諸説入り乱れ、当時の記録も散逸し、他のゴッドイーターの働きに紛れてしまったものも多い。

この二人は実は同一人物だったんだよ、などという眉唾物の説まである。

黒蛛病、螺旋の樹、ゴッドイーターの新たなる可能性……単語を羅列するだけで当時の混沌振りも理解できよう。情報が錯綜するのは仕方の無いことなのかもしれない。

語られるべきは、同時期に台頭した数多の英雄の中で、抜きん出た功績と闇を抱えた両名であるということ。

そして、記録にあるエピソードの不明瞭さが後年の作品群の題材となり、今もなお考察が続いているということ。

リョウタロウ、ユウ。共に謎の多く魅力的な、そして英雄と称されるにたる高潔な人物であったということだ。

両者人格性格共に清廉潔白であり、近代の聖人とも称される程であったことは、疑う由もない。ペイラー・榊の著書にも記載されている。

忌避される事柄も、恐らくは已む無くといった事情によるものであると推察される。英雄とはどちらを切り捨てるか、という決断を常に迫られる存在なのだから。

なお、この二人が対面したことはないとされるのが公式情報である。

上記のペイラー・榊による、当時のゴッドイーター達の生活を克明に記録したノンフィクションの著書にも、この二人が出会うことはなかったということが明確に記されている。

両者が同一人物ではないか、という問い合わせがあまりにも多く寄せられたことに対し、ペイラー・榊がそのしつこさに憤慨したとも。

一級のゴッドイーターが一所に集まることがなかったのは、戦略的な理由によるものと、恐らくは支部長であった榊による何らかの裏取引が行われたのだと考えられる。

だが、歴史の裏では何が起きていたかは誰も知る術はない。

もしも、を考え夢想するのは、万人に許された自由である。

もしも、の話だ。もしも、この二人が非公式に出会い、肩を並べて闘ったことがあるのだとしたら。

英雄が力を合わせねばならない事態。それはきっと、地球規模の、神代の戦いであったことだろう。

その戦いに胸躍らせられるのは、この世が地獄の一歩手前で踏み止まっている証拠なのかもしれない。人の心はいつでも“平和”であるというのだから、皮肉なことだ。

かく言う私も、『R』同一人物説を指示する一人であるのだが。

 

【ゴッドイーターマガジン創刊50周年記念特別号、この冬熱い!イケてるゴッドイーター100選!より抜粋――――――】

 

 

 

 

□ ■ □

 

 

 

 

手が、ある。

キレイな手が。

目が開いて最初に思ったことは、自分の手がこんなにも細くて白かったのか、という驚きだった。

訓練での内出血と骨折に、真っ黒に色素沈殿して歪に折れ曲がっていたはずなのに。

顔に触れる。鼻があった。銃床で殴られてから平らになってしまったはずなのに。瞼が、頬が、膿の溜まったブヨブヨの感触ではない、正常な肌の触感がした。

「すばらしい」何人もの白衣を着た科学者が口々に称賛する。

「君は成功例だ」拍手が巻き起こった。

向けられたライトが眩しくて手をかざせば、手首に違和感が。

腕輪だ。

黒と金の、無骨な腕輪がそこにあった。

ゴッドイーターの腕輪が。

 

「何度見ても、回復錠の効果は素晴らしい。正に叡智の結晶だ」

 

「ゴッドイーターというのは便利なものだな。黒い干物が、愛らしい少女に早変わりだ」

 

「これであの何とか言う博士も満足するだろう」

 

「神機兵への適用はどうする」

 

「後期ロットに回そう。まずはこの試作品を送りつけなければ」

 

頭上で理解不能な言葉が交わされている。

 

「後期ロットの仕様は?」

 

「神機兵の全開稼働に生身の人間は耐えられんぞ。ゴッドイーターですら直ぐに使い物にならなくなる」

 

「なら負荷を減らせばいいだけのこと。幼年固定をし不要なパーツ、手足を落としてしまおう。内蔵もいらんな」

 

「いっそ脳を摘出してシリンダーに詰めて……」

 

何か、重大なことを話しているような気がする。

だが急激に戻りつつある身体感覚に、聴覚が情報を取り入れることを拒絶しているかのようだ。

身体が鉛の様に重い。

 

「君は特別な訓練を受けたんだ。誰にも……何といったかな、何とか博士にだって、君が受けた訓練のことを話してはいけないよ。いいね?」

 

はい、と舌が言葉を押し出す。

喉が張り付き、ひゅうとただ吐息が漏れただけだった。

満足したのか、科学者は頭上でのおしゃべりを再開する。

 

「R-TYPEは一応の成功、といったところか……ここまでやっても、素体の性能基準は最低限だとは」

 

「仕方がない。訓練だけでは、人間の限界は越えられまい。これ以上は投薬か、機械化しかないだろう」

 

「それこそ神機兵につなげば済む話ではないか。だが、そうまでしなければオリジナルに届かんとは」

 

「オリジナルRは化け物だな。さすがは、アルティメットゴッドイーターといったところか」

 

「この固体は成功例だった。手放すのが惜しいものだ。良い素体になれただろうに」

 

「神機兵に乗せる前に、素体の性能を上げるという着眼点は正しかった。取り外すものを鍛えて何になるかと思っていたが、さすがは北の賢者だ」

 

「能力は認めるが、あれもあれで、独自で動いているようだがね」

 

「お互い様だ。利害の一致でしかない。あれは所詮、我々のTEAMではないのだから」

 

「個としての知か、群れとしての知か。どちらが優れているかではないな。手段が違う。そう、手段だ」

 

「悪意か、あるいは、狂気が知識の探求には必要だ。かねてより、世界を切り拓く偉大な発明は個人が為すものだった。だが、世界を脅かす……世界を壊す一手は、人という群れが、その総意で行ってきたものだ」

 

「科学とは何ぞや。科学とは、消費にこそその究極がある。エネルギーを用いて、結果を導くことが科学だ。つまり、消費だ。世界を消費することが科学の究極だ。

 みんなで、ね。ならばたった一人が作り上げたものではなく、大勢の人間によって産み出されたものこそが、世界を使い切るのだ。

 科学とは人の業、進化の果てなのだとしたら、つまり人は世界を削り取ることで進化するのだから」

 

「世界を破壊することでこそ、人は次のステージに昇れるのだ。そう思わないかい? 君も」

 

話しかけられる。

返答が出来ない。

言葉が出ない。

理解出来ない。

 

「ふむん、しかし、これを送る……その、何とか博士のお人形遊びにも困ったものだな。面倒なのは妹の方だったか?」

 

「おいおい、我々のパトロンだぞ。お嬢さんなんだ、名前を覚えてやらねば、傷付いてしまうじゃないか」

 

「姉妹で科学者とはね。紛らわしいんだよ。あの車椅子の方の指図だろう? 面倒なことだ。姉の方が扱い易くていい。馬鹿だからな」

 

「賢く、そして馬鹿だ。女として最上だよ」

 

「安売りしすぎだと思うがね。どこぞの支部局長に尻尾を振っているんだったか。自分の値段もわからん程に愚かなのはな」

 

「そうは言っても、金がなければ研究は続けられん。そして、サンプルが最も重要だ。彼女達は金とサンプルをくれるんだ。我々は彼女の代わりに手と足になってやる。等価交換さ」

 

「世知辛い世の中になったものだ」

 

「昔からそうさ。なに、今の時代、サンプルに欠くことはないのだからいいではないか。それに頭を悩ませることがないのだから、我々は幸せさ」

 

「モルモットとは言わないのか」

 

「人間性だよ。我々に残された最後の救いだ」

 

「はん、面白いジョークだ」

 

言葉が出ない。

理解出来ない。

怖い。

恐ろしくてしかたがない。

目の前で会話している白衣の者達は、果たして本当に人間なのだろうか。

ああ、駄目だ。

心を殺せ。

感情を切り離せ。

思考を、心を、自らの意思から乖離させるのだ。

教わったように、訓練されたように、感情を人格から引き剥がせ。

 

「さて、せっかく身体が動くようになったのだ。何か欲しいものはないかね? 望みを言ってごらん。今日が君の、ゴッドイーターとしての誕生日だ」

 

「さっそく人間性の発揮か。命令だ。答えたまえ。どんな要求が出てくるものか、興味がある」

 

にっこりと、人好きのする笑顔で、人の形をした人ではない者が問う。

 

「紙と、ペンを、ください」

 

細波のように凪いだ心持ちでそれを見上げながら、自然と言葉が口から飛び出した。

胸の奥から熱い塊が競り上がってくるようだった。

からからの舌先が、歯茎をなぞる。

長らく潰れた鼻で呼吸することを忘れていたためか、口呼吸でいることが癖になってしまった。

喉が渇いた。でも、水はいらない。生理的な欲求ではない。

切り離された感情が叫ぶ。魂が軋む。

私の望みは。

 

「手紙を……書かせてください――――――」

 

 

 

 

□ ■ □

 

 

 

 

さて、と榊さんが前置きして机の上で手を組んだ。

すごく……嫌な予感がします。

はいわかってます。わかってますからね。

それ絶対あのパターンですよね。

無茶振りの。

 

「世界各地を飛び回っていた君を、ここに呼び戻した理由を話そう」

 

ほらきた。

榊さんの顔、おれ最近、見分けがつくようになってきましたよ。

それ、やばいこと話す時の顔ですよね?

ここまで付いて来てくれたツバキさんとか、もうすっごい暗い顔してましたもん。

すまない、って俺の耳のとこなでなでしてからおでことおでこ合わせて慰めてくれましたもん。

知ってるー、これ見たことあるー。

こっそり可愛がってた捨てワンコが保健所に連れてかれるのを見る優しい人の眼だこれー。

今から話すのって、ツバキさんをマジへこみさせるぐらいやばいってことですよね?

やめてぇ!

神機なしの出撃とかもきっついのに、もうこれ以上は限界!

限界ですからぁ!

 

「君がアナグラを離れていた間に、君のゴッドイーターとしての新たな登録情報を作成しておいた。今の君は、加賀美リョウタロウであって、非なる存在」

 

待って、話が見えない。

待って。

 

「加賀美リョウタロウは、“今も変わらず極東支部から離れて欧州で活動中”。いいね?」

 

アッ、ハイ。

 

「君は、防壁外の集落を中心にアラガミ退治を請け負い金品を巻き上げる傭兵ゴッドイーター……血で染めた赤い肩、赤い肩をした鉄の悪魔、悪名高き吸血部隊の隊員として」

 

やめて。

お願いだから、やめて。

それ以上口を開くなら、例え榊さんでも手を上げることを辞さない。

尾ヒレ背ヒレってレベルじゃねーぞ!

そういう設定を俺につけ加えるのやめてくれませんか?

これ以上俺をとんでも人間にしないでお願い!

 

「それじゃあ、金さえ積まれれば何でもする何でも屋……表の顔は運び屋、しかし裏の顔は非常なる殺し屋家業。闇に隠れ、外道を討つ! ああ、俺が斬らねば誰が斬る、必殺仕事人!」

 

それじゃあ、じゃないって。

もうやめてくれませんかねえ!

 

「仕方がないな。ならば在野で新たに見出された、新人ってことで。第二世代に適正があって腕輪を嵌めたが、神機が見つからずすぐに次のものに換装することになった、としよう」

 

うぐぐ、それなら、まあ。

何か上手いこと乗せられたような。

ああ……赤紙が届いたあの日のことが、今よみがえる……。

 

「なぜ君に新たな身分を用意せねばならないのか。そう、君には新米ゴッドイーターとして、とある場所へ潜り込んでもらいたい。スパイ活動だよ!」

 

色んなことがあったけど。

もう一度だけ、言わせて欲しい。

 

「目標は、独立移動要塞……その名も、フライヤ――――――!」

 

フェンリルに勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない。

もおぉぉ、榊さんが言う言葉全部お願いと言う名の命令なんだからぁぁ。

柔らかい言い方したって拒否権ないじゃんもぉぉ。

ていうかなんだっけ、フライヤって。聞いたことあるな。本部直属の何かだっけ。

独立移動要塞って響きが怖すぎるんですけど……。

 

「ま、すごいキナ臭いから実情を調べてきておくれ。独立移動要塞とか、秘密の塊って感じがするだろう? それに君、暇でしょ? 何もなければ無いでいいからさ」

 

身も蓋も無さ過ぎる。

暇って、そこそこやることありますけどね。

さすがに神機無しじゃどうにもならない任務もあるわけで、最近じゃもっぱらスタングレネード職人してますけど。

榊さんの提案で何もなかったなんて事が無いって知ってますからね。

絶対何かある流れじゃんこれもう……。

どうせまた支部長ポジションの人か博士的な人が黒幕なんでしょ。解ります。

ほんとこの世界の博士はロクな奴がいないな!

 

「渋い顔だね」

 

だってえ、やる気出ませんもん。

新人ゴッドイーターとして潜り込むって、何やるんですか?

訓練生とかになって座学するんですかね。

俺、そういう座学とか全部すっ飛ばして戦場入りさせられたんですよね。

コウタも同じかと思ってお前も初期教育受けてないんだろ、って話したら、幽霊を見るような目で見られたし。

ヒバリさんみたいにゴッドイーター適性のある職員とかじゃ駄目なんですかね。

整備士とかほら、俺すごい合ってると思うんですけど。

最近、リッカの手伝いして色々覚えまして。

腕輪付いてるからバランス悪くてたまに指とか切っちゃって、その度にリッカが治療って口に指をですね。

 

「もちろん、君にはゴッドイーターとして働いてもらうことになる」

 

まあ……そうでしょうね。

見つかったんですか。俺に合う神機。

 

「新しい神機……必要だろう?」

 

ええ……でも。

正直、少し複雑です。

いいのかなって。

その……新しい神機を使うのが、前の相棒に悪いかもって思うのと。

それと。

それと、やっと戦場から離れることが出来たのに、また戦いの中に戻るのかと思うと。

嫌なものを、たくさん見ることになるのかと思うと。

少し、怖くて。

 

「世代を隔てた神機に適正が認められた場合、これまで使われていた神機は保管され、新たなものに乗り換えることとなる。

 君には旧型神機の適性は無い。これから新たに作られる神機、そのコアに適正が認められた。フライヤで作られる新たな世代の神機にだ。

 フライヤは特殊な場所だ。本部の直轄領のようなものだ。こちらの要請は通ることはない。ならば、こちらから出向かねばならない。

 これは転機だよ。君にとっての転機だ。

 いいかい、君も理解しているはずだ。魂がそう囁いているはずだ。君には、ゴッドイーターとして生きる以外の道はないのだと。

 君は証拠もなく、ただ私の勘であると理由だけで、たった一人で死地に送り込まれることになる。私の一存でだ。君は言わば、私の共犯になるのだ。

 特務……と言う奴だよ。これまでは、高難易度任務という形でしか君に命じていなかったが。これが私が初めてゴッドイーターに命じる、支部長としての後ろ暗い意味を持った、特務だ。

 さあ、掴みたまえ。この手を。君の歩むべき未来を、その手に」

 

手を差し出される。

ああ、きっと差し出されたこの手は、地獄への標なんだろう。

俺もまったく酔狂な奴だなあ。

望んで死地へ踏み出しにいくんだから。

でもまあ、榊さんに言われちゃあね、しょうがないか。

だって、この手がこんなにも暖かいんだからさ。

この手に誘われて、皆、地獄に行くんだとしたら。皆、ともに逝くのだとしたら。

悪くないな。うん、悪くない。

だってきっと、この人もそこにいるんだろうから。

 

「契約成立。こちらの皆には私が上手く言い置いておくから、安心しなさい。頼んだよ」

 

了解しました、榊支部長。

元第一部隊隊長、現クレイドル所属特設遊撃部隊隊員、加賀美リョウタロウ。

諜報の任、委細承知致しました。

 

「よろしく頼む、加賀美リョウタロウ君。否――――――」

 

本当に、食えない人だ。

道化の仮面をかぶって、真理を見ている。

“スターゲイザー”は伊達じゃないってことか。二つ名の意味は、星の観測者だったかな。

自分は見るだけしか出来ない覗き屋なのさ。そんな風に自分を卑下していた台詞も聞いたっけ。

舞台を動かしているのはご自分であると、自覚があるのでしょうか、この上司様は。

無力ぶって喜劇にしようとしているのだろうか。そう考えると、どうしてもこの人を憎むことが出来ない。とんでもなく酷い目に会わされてもいるっていうのに。

ありがとう、榊さん。

あなたの陽気な悪ふざけとお茶目さが、きっと皆を照らす光りとなっている。

何だっけ、悪名高き吸血部隊の傭兵だっけ? さすがにこれは無いけれど。

金を詰まれたら殺しまでする何でも屋、か。

ははは、面白いな。本当に面白いよ、榊さんは。

それ、どうやって調べたんですか?

 

「『神薙・R・ユウ』――――――君」

 

ミドルネームはやめてぇ!

 

 

 

 

□ ■ □

 

 

 

 

「おーっす! リョウ!」

 

「おう」

 

――――――おっすコウタ、ソーマ。

 

「どうしたんだよー。なーんか嬉しそうじゃん?」

 

――――――あ、わかる? ほら、これこれ。二年くらい音信不通だった友達から久しぶりに手紙が届いてさ。

 

「手紙? へー、珍しいじゃん、手紙なんて。郵便網なんて分断されちゃってもう長いってのに」

 

「おい、お前……まさか、女からのじゃないだろうな? やめろ、マジでやめろ。俺に被害が全部くるんだぞ。

 最近はアリサだけじゃなく、他の奴等まで俺にアタリやがる。なんなんだあいつ等は……」

 

「はーい、ソーマ君は向こうでお休みしましょうねー。で、なにそれ。フェンリルマークがガッツリ捺されてる時点でやな予感しかしないんだけど」

 

――――――ところがどっこい、フェンリルが昔からやってる慈善事業ってやつ。建前だけのね。世界中の孤独な子供たちに交流の機会をーっていうプロジェクトの名残りだよ。

子供の頃、ゲンさんに勧められてさ。それからずっとペンフレンドってなわけよ。アラガミ情勢とか俺が住所不定無職になっちゃったりしたから、届いたり届かなかったりだけど。

フェンリルもたまには良い事をするもんだ。

 

「外面だけ取り繕ってなんだかなーって感じもするけどね。封筒のそれ、海外の押し印? どこから? 誰から? 何て人?」

 

「やめろ……女だ……絶対女からだ……やめろ……やめてください……」

 

「ムツミちゃーん! ソーマにお酒出してやって! キツイやつ!」

 

――――――いやいや、男だよ。ほら、これ名前。ぼんじゅーまどまじゅーる、の国からだよ。

 

「おーフランスかあ!」

 

「お前、マジか……コウタ」

 

――――――自分で言っておいてなんだけど、よくわかったな。ちゃんと勉強してるんだな、コウタ。なんか感動しちゃったよ。

 

「お前達が俺のことどう思ってるのかよくわかったよ」

 

「で、相手は一般人なんだろう? 機密を漏らしたりはしていないだろうな」

 

――――――そこは大丈夫。お仕事はちゃんとしないとね。まあ、近況報告とか、最近面白かったこととか、雑談ばっかりだよ。

ここ二年、返事がなかったからさ、心配してたんだぜーとか。

こっちは無職から華麗にゴッドイーターに転職したってのに、ヘマやって神機ぶっ壊して休職中ですーとか、それくらい。

 

「それは……」

 

――――――機密には触れてないだろ? それに、お互いペンネームを使ってるから、誰かなんてわからないよ。

 

「そうだな。ならいい」

 

「おっとお、なんか不機嫌ですねソーマ君。あれかな? ぼくの友達だったリョウ君を取られちゃった悔しい! みたいなジェラシーかな? んー?」

 

「うぜえ。嫌な予感がするってだけだ。本当にな……」

 

――――――それで、まあ最近の事書くくらいだからさ、心配いらないよ。新しい配属先で、新しい神機もらうことになりました、とかね。

 

「そっかー、新しい配属先で新しい神機を……え、はぁあああ!? ちょっ、はぁあああ!?」

 

「そうか。短い休暇だったな」

 

――――――あんまり休めた気はしないけど。極東ってブラックすぎんよーマジで。

 

「違いない」

 

「いや、ちょっ、そんな軽く言って、ソーマ!」

 

「うるさいぞコウタ。静かにしてろ。ムツミが睨んでる」

 

「だってさあ! 何でそんな大事なこと黙ってたんだよ、水臭いぞリョウ!」

 

――――――いやあ、また海外周りに戻されるらしいし、ことさら言うものでもないかなって。特務ってやつですよ、特務。

 

「はい来た特務って言う名の博士の無茶振り! ああ、もう! そーだねそーですよね! 肝心なこと言わないとかそういうところあるよねリョウって! まったく!」

 

「アリサ達には知らせずに行くのか? 前の海外派遣も唐突だったが」

 

――――――まあ、他のみんなはともかく、アリサには最近避けられてるしね。榊さんが上手いこと説明してくれるとか何とか。これが今生の別れでもあるまいし、またすぐ戻ってくるからさ。

 

「そうか。なら俺から何も言うことはない。向こうでもしっかりやれよ」

 

――――――うん。こっちの事は任せた。

 

「おう」

 

「ちょっと! なんでそんな良い話みたいに締めようとしちゃってるのさ!」

 

「なんだコウタ、お前、泣いてるのか」

 

「だって、リョウがさ、ゴッドイーターにさあ! 神機が……リョウが、ゴッドイーターをまた……! 俺、俺!」

 

「大げさな奴だ。極東で腕輪の封印処理もされず、待機を命じられていた時点で、次の神機が用意されるのは決まりきっていたものだろうが」

 

「ソーマだって涙目じゃん!」

 

「見間違いだ」

 

「嘘つけ!」

 

「おいにじり寄ってくるなコウタ! リョウ、お前笑ってるんじゃねえぞ!」

 

フェンリルに勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない。

君には初め、そう言っていたね。

でも最近じゃ、少し違うんだ。

色んなことがあって、ありすぎて、言葉にするのが難しいけれど。

そんなに悪くないんじゃないかなって、思うようになったんだ。

だって、やっぱり世界は綺麗で、美しいものだったって、解ったんだ。

解ったんだよ。

こんなにも綺麗で美しい世界を、俺は真っ直ぐに見られないことを。

世界は清らかだった。でも俺は、それを愛することができないままでいる。

努力を重ねている。好きになる努力を。愛する努力を。無駄な努力を。

こんなにも愛そうとしているのに、愛したいのに……愛せないんだ。

誰かを守ろうと思う気持ちはあるんだ。大切だと思う気持ちも。

でも、ふとした時に、何もかもがどうでもよくなってしまう。

こんな世界なんか、一度綺麗に消えてなくなってしまったほうがいいんじゃないかって。

そっちの方がさっぱりするって。

全部壊れてしまえと、そう思う時があるんだ。

きっと俺は間違っていて、俺の心も偽者なんだろうと思う。

でも、それでもいいんだって、最近思えてきたんだ。

きっと、面白おかしい、友人達がいるからだと思う。

俺の汚い部分を見ても、別にそれでもいいさと笑ってくれる友人達が。

それはきっと、素敵なことで。なんていうか、救いなんだと思う。

きっと誰かと寄り添って、暖かいと感じることが出来れば、その瞬間、誰もが救われているんだと思う。

たとえ世界を、憎んでいたとしても。

美しいと知ってしまって、それでも憎しみは消えず、愛することに苦悩する者であったとしても。

触れ合った瞬間の暖かさは、きっと真実なんだから。

なんて言えばいいのか、つまり、友達はいいものだってこと。

だから、いつか君にも会えるといいなと願っています。

 

 

 

 

【君の友人より――――――アランへ】

 

 

 

 

 

 

 

 




毎回これくらいの文量であれば書いていて負担にならず、早めに投稿できそうです。
本当はもっと軽く読み流せるくらいの文体にする練習だったはずが、どうしてこうなった・・・。
ぎちぎちすぎて読みにくい文だなあもう。

さて。
スナイパー兼衛生兵おっぱいが主人公のせいで超強化されたようです。いったい何エルなんだ・・・。
2はヒロインが多くてもう、嬉しくて困っちゃうなー!
次回から本格的に2へと展開していこうと思います!
レイジバーストでるし2のストーリーやったらネタバレになるんじゃ、とか考えなくてもいいや!
やったる!

ロ(R)ミオ
リ(R)ヴィ
ひゃっはー!マグノリアコンパスは本当に地獄だぜぇ!


※没ネタものをまた活動報告へ。

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