うさぎ帝国   作:羽毛布団

11 / 16
あ……あれ?前回投稿した時とお気に入りの数が、文字通り桁違いなのですが……果たして一体何が!?妖怪の仕業ですか?うさぎですか?うさぎなら仕方ないですね。(意味不明)


……前置きはともかく。本編をお楽しみ下さっていた方、誠に申し訳ございません。今回は間話という形で投稿させて頂くことになります。

小説を投稿しようと思い立った時、同時に私自身が「書きたい!」と熱望したのが間話です。物語の本筋から一旦離れ、全く新しい視点で人物を、ストーリーそのものを見詰める──そういった役割を担う「間話」が書けたらいいなぁ、って思いました。
……私にまだまだそんな実力はないのですが。が、頑張ります!


さて、今回の間話ですが、本編と比べて字数が少なく、(どの程度完成度があるかわかりませんが)少し古臭い口調を意識して書き上げました。今後十話に一話程度は、間話を挟んでいきたいと考えております。



改めまして、この小説を開いていただき、またお気に入り登録、感想、評価などつけて下さった方、本当にありがとうございます。これからも精進して参りますので、よろしければお付き合い下さい。


では、短いですがお楽しみ頂ければ幸いです。どうぞ。




……あ、そういえば公式ガイドブック買いました。あれ、凄く便利ですね。店や街、そして公園の設定描写もキチンと載ってたのは有難いです。


〜間話〜 吾輩はうさぎである

 私がこの街に生を受けて、およそ七年と少しとなる。

 

 ある時は自力で食物を探し当て、ある時は人間という物好きな生き物が私たちの好物を寄越した。ただ、何故人参がその大多数を占めているのか、私は彼等に問い質したくなる事がある。美味ではあるが、あれは摂り過ぎると体調を崩すのだ。

 

 私の住処には同族が多い。かといって仲違いしているかというと、そうではない。私は彼らと共存し、時には喧嘩した。陽の暖かい日はそれを全身一杯に受けて眠り、寒空の日には仲間と身を寄せ合った。そんなのんべんだらりとした生活を送ってきた。

 

 ──さて、そんな私だが、最近になって主人を得た。誤解の無いよう言うならば、私は家畜となったわけではない。『ぺっと』と『かいぬし』なる契約を結んだわけでもない。

 ただ、彼と寝食を共にし、『さーかす』なる行事に参加し、気が向いた時にはフラッと旅に出掛け、飽きたら彼の元に帰る。新しい拠り所を得た感覚だった。私を含めた多くの仲間たちが、彼に心を許していた。

 

 

 

 ──今日はしがない一匹のうさぎである私が、そんな私の主人の一日について綴ろうと思う。

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□□

 

 

 

 

 

 

「おはよう、みんな」

 

 我が主人──佐藤 上白の朝は早い。

 詳しい理由は定かでないが、前に「寝ている所を見られるのはまずい」と独りごちていたのを、記憶の片隅に留めている。

 

 我が主人の起床と同時に、彼の上や周りで眠りについていた同胞たちも目を覚ます。本来、夜を主な行動時間としている我々だが、主人と活動時間を合わせる為現在では夜間に就寝している。

 目覚めた主人は、先ず『すいどう』と呼ばれる場所に足を運ぶ。そこで『せんがん』と『はみがき』なる行為を終え、漸く始まるのが──朝食だ。

 

「さあ、今日も新鮮な野菜を切ってあるよー」

 

 主人がよく持ってくるのが大根、野沢菜、セロリ、ナズナ等の野菜と、『ぺっとふーど』なる乾燥した食品である。私も後者を口にしてみたが、あれはなんとも不思議な味であった。

 

 朝食を終えると、主人は衣服を着替える。彼等人間には体毛が無い為、ああやって纏う物を頻繁に取り替えねばならないらしい。難儀である。

 

「さ、おいで」

 

 ──さて、日々待ちに待っているあの時間がやってきた。

 

 主人が手招きすると、若い同胞から我先にと彼の膝上を目掛けて飛び掛かる。主人はそれを困ったように微笑みながら、順番だよ、と諭すのだ。

 最初の一匹が決まり、膝の上を占領する。そして主人が取り出したるは──『ぶらし』なる棒だ。

 

「じゃあ、始めるよ」

 

 その棒を、同胞の毛の間に差し込み、撫でるようにして動かす。それを全身で幾度となく繰り返し、終了となる。

 その行為──『ぶらっしんぐ』と言うらしいが、それはまさに天にも昇る心地である。

 労わるような手捌き。我等のツボを心得ているのか、快感とこそばゆさを併せた刺激が全身を包む。加えて、余ったもう片方の手で頭を、身体を、腹を撫でられる。

 あまりの気分の良さに、そのまま瞼が重くなることもしばしばあることだ。

 

「ほら、君の番だよ」

 

 ──おっと、語っているうちに出番が回ってきたようだ。また後ほどお会いしよう。

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□□

 

 

 

 

 

 さて──さて。例の行事を終えた私たちは、次に『さーかす』なる催し物の打ち合わせをしている最中だ。

 ……と、大層な事を口に出してしまったが、実質主人一人が取り仕切っているに過ぎない。どんなことをすれば良いのか、うさぎである私たちにはとんと見当がつかぬからだ。

 

 私は既に結構歳を食っている。それ故、若い同胞のような活気溢れた動きはてんで出来ない。

 ──しかしである。無意味であるならば兎も角、『さーかす』とやらには我等の、延いては我が主人の食料が懸かっていると言うではないか!

 なれば、老骨に鞭をうち、全身全霊を賭す私を誰が止められようか。主人は「無理をしなくていいよ」と私を労ってくれるが、それでは私の気が済まないのだ。

 それでも主人は私の、この年老いた身体を憂慮してくれている。それの、何と歓天喜地であることか!

 

 ──だからこそ、私は彼に尽くすのだ。

 

 きっと私は、我が身が朽ちるその瞬間まで主人と共に生を全うし、最期は彼の膝の上で生涯を終えるのだろう。

 そして、私は切に願う。叶え得るならば天命尽きるその日まで、彼と長く同じ刻を過ごしたいと────。

 

 

 

 

□□□□□□□□□□

 

 

 

 

 

 日が高くなり、人間の活動が活発になる時分になると、我が主人は『ばいと』なる行為に身を(やつ)す為、一度住処を離れる。

 主人が留守の間、我々は自由に行動することを許されている。事実、この間同胞の多くは散策へ出掛けている。

 だが、私はこの場所から離れることは滅多にない。主人が帰還するその時を只管(ひたすら)待ち続けるのも、私の楽しみの一つだからだ。

 何もそれだけではない。主人が居なくとも、この公園には沢山の人間が立ち寄るのだ。その中には当然、主人を知る者が訪れる事もある。

 

 ──そんな時、主人の留守を伝えるのが私の存在意義の一つだ。

 

 ……噂をすれば、というやつだろうか。嗅ぎ慣れた匂いの持ち主が、この場所へ接近してきている。

 そして匂いに敏感なのは、何も私だけではない。どうやら若い同胞たちも気が付いたようだ。

 

『青ブルマだー』『ほんとだ、青ブルマが来た』

 

 口々に言いながら、すぐそばまでやってきたその人間の足元へ群がる同胞たち。彼等の歓迎に、人間は困惑しているようだ。

 

「あのぅ、上白さんはもう行ってしまわれたのでしょうか」

 

 戸惑いながらも、何やら言葉を発している人間。名を一度耳にしている筈なのだが、どうにも長くて覚えていられない。

 実は以前、その旨を主人に伝えた同胞が居た。それに対し、主人は「まあ確かに青山ブルーマウンテンは長いよなぁ……略すと青ブルマかな」と言った事がある。それ以来、我が同胞の中でこの人間の呼称は『青ブルマ』で統一されている。非常に語感が良い。こちらに改名すればどうか、と会う度私は思っている。こんな時、人の言葉が話せぬのが残念でならない。

 

 ともあれ、主人の不在を伝えねばなるまい。私は長椅子の上から、意思を込めて人間の目をじっと見詰めた。

 

「……そうですか。上白さんを題材にした新しい小説を書こうと思って、色々お話を聞きたかったのですが……また出直しましょう」

 

 私の思考を察したのか、足元の同胞をひと撫ですると一度私に目礼して、人間は踵を返した。

 

『青ブルマー、また来てね』『またねー』『今度は野菜持って来てよー』

 

 人間の背中を見ながら、同胞たちが次々と別れの言葉を口にする。当然彼等の声は聞こえていないだろう。

 ──しかし。感情は、思いはきっと伝わると、私は信じている。そしていつの日にか、胸の内を伝えられる時が訪れたなら、その時私はあの人間に言いたいと思うのだ。

 

 

 

 

 ──早く青ブルマに改名しろ、と。

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□□

 

 

 

 

 

「皆、ただいま」

 

 日が沈み、空から光が消え、『がいとう』なる、先端が光る竹が眩くなってきた頃に、我が主人は住処へと舞い戻ってくる。

 

『おかえり!』『上白おかえり!』『早く撫でてー!』『晩ご飯は?』『晩ご飯!』

 

 途端に繰り返される『晩ご飯』の言葉。我が主人は苦笑いを呈している。

 

 ……これは、少し説教せねばなるまい。そう思考し、私は言葉を発した。

 

『これ、皆の衆。疲労を携えて戻った主人に対し、その態度とは何事か。礼節を弁えなさい』

 

 

 

 

 

 ──刹那の後、辺りは水を打ったような静寂へと変容した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『「しゃ……喋った!?」』』』

 

 

 

 

 

 …………そんなに驚愕しなくともよいではないか。我が主人までも。




人物紹介:佐藤 上白(さとう かみしろ)
年齢:16歳
生年月日:6月6日
血液型:B型
身長:167cm

概要:黒髪黒眼の純日本人。細身で童顔。父と母の三人暮らしだったが、突如石畳の街へやってきた。三度の飯よりうさぎが大好き。昔からうさぎに懐かれていたが、石畳の街へ迷い込んでからは「うさぎをリラックスさせ、心を通わせる」というわけの解らない力を手に入れた。更に、その効力範囲は「見た目がうさぎっぽければ種族は関係ない」というレベル。人間相手には警戒心を和らげ、リラックス効果を齎す程度であるが、その力は確かに発揮されている。尚、別に心は読めない模様。
性格は温厚そのものであるが、からかい甲斐がある相手に対しては積極的になることも。そしてうさぎが絡むと行動力が跳ね上がる。



人物紹介:うさぎ
年齢:7歳
生年月日:不明
血液型:不明
毛色:灰色

概要:街一番の年寄りうさぎ。滅多に喋ることはないが、実は心の中で色々な事を考えている。佐藤 上白の事を主人と仰ぎ、敬愛している。ちなみに、上白や他のうさぎからは密かに「長老」と呼ばれている。




短かったので、人物紹介をつけてみました。本編の方はもう少しお待ちください。今週中には投稿したいと思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。