バカと俺達の召喚獣   作:ターダン8

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妖怪との交渉

俺達は学園長室へと向かうと

 

 

『……賞品の……として隠し……』

 

『……こそ……勝手に……如月ハイランド……』

 

 

学園長室前まで来ると、部屋から誰かが言い争っている声が聞こえてきたが

あまり関係なさそうなので気にしないことにした。

 

雄二「失礼しまーす!」

 

明久と雄二がドアをノックして学園長室に入っていく。

 

学園長「本当に失礼なガキどもだねぇ。普通は返事を待つものだと思うんだよ」

 

俺もずっと廊下に立っている訳にもいかないので中に入る。

 

教頭「やれやれ。取り込み中だというのに、とんだ来客ですね。

   これでは話を続けることもできません……まさか、貴女の差し金ですか?」

 

そう言ったのは教頭の竹原先生だ。

鋭い目つきに眼鏡をしていて、

クールな態度で一部の女子生徒に人気が高いらしいが俺はコイツの事が嫌いだ。

コイツの目は俺たちを見下しているような感じがするからだ。

 

学園長「馬鹿を言わないでおくれ。

    どうしてこのアタシがそんなセコい手を使わなきゃいけないのさ。

    負い目があるというわけでもないのに」

 

教頭「それはどうだか。学園長は隠し事がお得意のようですから」

 

学園長「さっきから言っているように隠し事なんて無いね。アンタの見当違いだよ」

 

教頭「……そうですか。そこまで否定されるならこの場はそういうことにしておきましょう」

 

そういって、竹原先生は部屋の隅を一瞬見てから、

 

教頭「それでは、この場は失礼させて頂きます」

 

なんだろう? 盗聴でもしているんだろうか?

まあ気にしないでおこう。

 

学園長「んで、ガキども。アンタらは何の用だい?」

 

雄二「今日は学園長にお話があって来ました」

 

流石の雄二もここは敬語なんだな、ま、当たり前か。

俺でも一応敬語を使っているんだ。本当は嫌だけど・・・

 

学園長「私はそれどころじゃないんでね。

    学園の経営に関することなら教頭の竹原に言いな。

    それと、まずは名前を名乗るのが社会の礼儀ってモンだ。覚えておきな」

 

雄二「俺は2年F組代表の坂本雄二。それでこちらにいるのが織村貴浩。

   最後に紹介するのは―――」

 

雄二は名前を名乗ってから明久を示して紹介する。

 

雄二「―――2年生を代表するバカです」

 

学園長「ほぅ……そうかい。アンタたちがFクラスの織村と坂本と吉井かい」

 

明久「ちょっと待って学園長! 僕はまだ名前を言ってませんよね!?」

 

そりゃあ、一応これでも学園長なんだから観察処分者の事ぐらいは知ってるだろうよ。

まあ俺は去年から実験とかに付き合っているから覚えているだろうけど。

 

学園長「気が変わったよ。話を聞いてやろうじゃないか」

 

雄二「ありがとうございます」

 

学園長「礼なんか言う暇があったらさっさと話しな、ウスノロ」

 

雄二「わかりました」

 

この性格は前から知ってたから特に気にしないが、

それよりもこれだけ罵倒されているのに落ち着いている雄二に驚いている。

 

雄二「Fクラスの設備について改善を要求しにきました」

 

学園長「そうかい。それは暇そうで羨ましいことだね」

 

雄二「今のFクラスの教室は、まるで学園長の脳みそのように穴だらけで、

   隙間風が吹き込んでくるような酷い状態です」

 

さすが雄二…少しずつメッキがはがれてきたな。

 

雄二「学園長のように戦国時代から生きている老いぼれならともかく、

   今の普通の高校生にこの状態は危険です。

   健康に害を及ぼす可能性が非常高いと思われます」

 

結構きれてるな

 

雄二「要するに、隙間風の吹き込むような教室のせいで体調を崩す生徒が出てくるから、

   さっさと直せクソババァ、というワケです」

 

さすがだぜ雄二。期待を裏切らない男だ。

 

学園長「…ふむ、丁度いいタイミングさね……」

 

何か言ったか、丁度いい?

 

学園長「よしよし。お前たちの言いたいことはよくわかった」

 

明久「え? それじゃ、直してもらえるんですね!」

 

学園長「却下だね」

 

明久「雄二、このババァをコンクリに詰めて海に捨ててこよう」

 

貴浩「明久何を言ってるんだ。

   そんなことしたら今後魚が食べられなくなるだろうが。

   だからここはこんがり焼いてから地中深くに埋めるんだよ」

 

もう俺も我慢しない。疲れた

 

雄二「まったく、このバカ共が失礼しました。

   どうか理由をお聞かせ願えますか? ババァ」

 

明久「そうですね。教えて下さい、ババァ」

 

貴浩「理由を教えてください ババァ」

 

学園長「お前たちは本当に聞かせてもらいたいと思っているのかい?」

 

学園長も呆れているが知った事ではない

 

学園長「理由も何も、設備に差をつけるのはこの学園の教育方針だからね。

    ガタガタ抜かすんじゃないよ、なまっちょろいガキども」

 

明久「それは困ります! そうなると、僕らはともかく身体の弱い子が倒れて」

 

学園長「―――と、いつもなら言っているんだけどね。可愛い生徒の頼みだ。

    こちらの頼みも聞くなら、相談に乗ってやろうじゃないか」

 

さっきの呟きからしてこうなるのは想定内だ。

それにババァが俺たちを可愛い生徒だって、気持ちが悪い。どうせ何かあるんだろう。

 

明久「その条件とはなんですか?」

 

黙っている雄二は気にせずに話を進めた。

 

学園長「清涼祭で行われる召喚大会は知ってるかい?」

 

貴浩「そうなんですか?今初めて知りました」

 

学園長「……まあ清涼祭で単体戦と2人1組のタッグマッチ戦の

    召喚大会が2試合行われるんだよ」

 

明久「そうなんですか」

 

学園長「じゃ、その優勝賞品は知ってるかい?」

 

明久「え? 優勝賞品?」

 

学園長「優勝者には正賞に賞状とトロフィーで、単体戦の優勝者には

    『深紅の腕輪』と『如月ハイランド プレオープンプレミアムペアチケット』、

    タッグマッチ優勝者には

    『黒金の腕輪』と『白金の腕輪』の2つの腕輪に

    『如月ハイランド プレオープンプレミアムペアチケット』を2枚渡すつもりだよ」

 

ペアチケットで雄二が反応していた。

 

明久「はぁ…。それと交換条件に何の関係が」

 

学園長「話は最後まで聞きな。慌てるナントカは貰いが少ないって言葉を知らないのかい?」

 

明久「知りません」

 

貴浩「威張って言うことじゃないぞ明久」

 

学園長「まあいいさ、この副賞のペアチケットなんだけど、

    ちょっと良からぬ噂を聞いてね。できれば回収したいのさ」

 

貴浩「回収?それなら、賞品に出さなければいいじゃないのか」

 

学園長「そうできるならしているさ。

    けどね、この話は教頭が進めたとは言え、

    文月学園として如月グループと行った正式な契約だ。

    今更覆すわけにはいかないんだよ」

 

確かに学園長は召喚システムの開発に手一杯だから

経営に関しては教頭に一任しているみたいだったな。

 

貴浩「契約する前に気付けよ。学園長なんだから」

 

学園長「うるさいガキだね。黒金の腕輪と白金の腕輪と深紅の腕輪で手一杯だったんだよ。

    それに、悪い噂を聞いたのは最近だしね」

 

学園長が眉をしかめます。

口調はアレですが、責任は感じているようだ。

 

明久「それで、悪い噂ってのは何ですか?」

 

学園長「つまらない内容なんだけどね、

    如月グループは如月ハイランドに一つのジンクスを作ろうとしているのさ。

    『ここを訪れたカップルは幸せになれる』っていうジンクスをね」

 

貴浩「それのどこが悪い噂なんだ? 良い話じゃないか」

 

学園長「そのジンクスを作る為に、プレミアムチケットを使ってやって来たカップルを

    結婚までコーディネイトするつもりらしい。

    企業として、多少強引な手段を用いてもね」

 

雄二「な、なんだと!?」

 

今まで黙っていた雄二が大声を上げた。

 

明久「どうしたのさ、雄二。そんなに慌てて」

 

雄二「慌てるに決まっているだろう! 今ババアが言ったことは、

   『プレオープンプレミアムチケットでやってきたカップルを

   如月グループの力で強引に結婚させる』ってことだぞ!?」

 

貴浩「いや、言い直さなくてもわかっているが」

 

学園長「そのカップルを出す候補が、我が文月学園ってわけさ」

 

雄二「クソっ!うちの学校は何故か美人揃いだし、

   試験召喚システムという話題性もたっぷりだからな。

   学生から結婚までいけばジンクスとしては申し分ないし、

   如月グループが目をつけるのも当然ってことか」

 

学園長「ふむ。流石は神童と呼ばれているだけはあるね。頭の回転はまずまずじゃないか」

 

学園長だからか、さっきから雄二や明久に詳しいな。

試召戦争とかで有名になったからか?

 

明久「雄二とりあえず落ち着きなよ。

   如月グループの計画は別にそこまで悪いことでもないし、

   第一僕らはその話を知っているんだから、行かなければ済む話じゃないか」

 

雄二「…絶対にアイツは参加して、優勝を狙ってくる……行けば結婚、

   行かなくても『約束破ったから』と結婚……。俺の、将来は……」

 

霧島は雄二に何て言ったんだ?そして雄二は何を約束したんだ?

 

学園長「ま、そんなワケで、本人の意思を無視して、

    うちの可愛い生徒の将来を決定しようって計画が気に入らないのさ」

 

本当は生徒を可愛いと思っていないだろ・・・

 

貴浩「つまり交換条件って言うのは―――」

 

学園長「そうさね。『召喚大会の賞品』と交換。それができるなら、

    教室の改修くらいしてやろうじゃないか」

 

明久のことだから強奪とか考えているんじゃないだろうな

 

学園長「無論、優勝者、準優勝者から強奪なんて真似はするんじゃないよ。

    譲ってもらうのも不可だ。私はお前たちに優勝をしろ、と言ってるんだからね」

 

出るからには優勝したいしな

 

明久「僕たちが優勝か準優勝したら、

   教室の改修と設備の向上を約束してくれるんですね?」

 

学園長「何を言ってるんだい。やってやるのは教室の改修だけ。

    設備についてはうちの教育方針だ。変える気はないよ」

 

明久。それは流石に欲張りすぎだ。

 

学園長「ただし、清涼祭で得た利益でなんとかしようっていうなら話は別だよ。

    特別に今回だけは勝手に設備を変更することに目を瞑ってやってもいい」

 

貴浩「わかりました。この話引き受けます」

 

学園長「そうかい。それなら交渉成立だね」

 

雄二「ただし、こちらからも提案がある」

 

話がまとまったから教室に戻ろうとしたら雄二が学園長に話しかけていた。

 

学園長「なんだい? 言ってみな」

 

雄二「召喚大会は形式はトーナメント制で、1回戦が数学だと2回戦は化学、

   といった具合に進めていくと聞いている」

 

学園長「それがどうかしたかい?」

 

雄二「対戦表が決まったら、その科目の指定を俺にやらせてもらいたい」

 

学園長「ふむ…いいだろう。点数の水増しとかだったら一蹴していたけど、

    それくらいなら協力しようじゃないか」

 

雄二「……ありがとうございます」

 

雄二には何か考えがあるんだろうな

 

学園長「さて。そこまで協力するんだ。当然召喚大会で、優勝できるんだろうね?」

 

雄二「無論だ。俺たちを誰だと思っている?」

 

2年の最低クラスの代表とバカ代表と戦バカだな

 

まあ冗談はさておいて、雄二はやる気全開のようだな。

 

明久「絶対に優勝して見せます。そっちこそ、約束を忘れないように!」

 

貴浩「やるからには優勝を狙わないとな」

 

学園長「それじゃ、任せたよ」

 

貴・雄・明「「「おうよっ!」」」

 

そういって俺達は学園長室を後にしてAクラスへと向かって行った。

 


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