雄二「で、どうするんだ貴浩?」
貴浩「どうするって言われてもなぁ…」
明久「まあ姫路さんに料理させないようにすれば問題ないんじゃないかな?」
秀吉「そうじゃな。他のメンバーなら料理に薬品を入れるなんて考え起こさぬじゃろうし」
光一「霧島もこんな時に薬品は入れないだろうしな」
康太「・・・・・・・・・だが、俺たちには何もできない」
「「「「「ハァ~」」」」」
刀麻「どうしたんだお前らため息なんかついて?
女子の手料理が食べられるんだぞ。いいことじゃないか」
そう、今キッチンに立っているのは全員女子だ。
『キッチンは女の戦場』と言われ俺たち男子連中は追い出されてしまった。
料理のできる楓と命がいるから大丈夫だとは思うが・・・・・・
姫路「あの織村君」
貴浩「ん? どうした姫路?」
そこへ姫路がキッチンから顔を出してくる。何かあったのか?
姫路「ちょっと道具を探しているんですけど・・・」
貴浩「ああ、何がいるんだ?」
そりゃそうだよな。人の家だから何がどこにあるのかわかるわけ無いよな。
どうやら楓は優子や愛子、砂原、椎名と料理しているようだし。
ただ、命の様子が少しおかしいような気がするんだが・・・・・・何故だろう嫌な予感がする。
姫路「えっと・・・・・・瞬間接着剤を探しているんです」
今、俺は料理の定義を根底から崩されつつある。
秀吉「もう駄目じゃ・・・・・・ワシはここで死ぬんじゃ・・・・・・」
雄二「くそっ・・・俺にはまだやりたいことがたくさんあるんだ・・・・・・」
明久「ああ、僕の人生もここまでか・・・・・・でも最後に皆と一緒に死ねるならそれも・・・・・・」
康太「・・・・・・生きたい。もっと・・・・・・」
刀麻「・・・・・・あれ?今俺おかしなことを耳にしたんだが・・・・・・気のせいだよな・・・」
光一「今のうちに救急車を呼ぶべきか・・・・・・」
今の姫路の発言を聞いて俺の友達から葬式ムードが漂い始める。
皆、まだ諦めるのは早い!まだ修正する事が可能なはずだ。
貴浩「なぁ姫路。わかってると思うが料理に瞬間接着剤を入れるのはかなり危険なことだ」
姫路「? 何を言っているんですか?お料理に瞬間接着剤を入れたら大変じゃないですか」
貴浩「だよなっ!それくらいは常識だよな」
今の姫路の発言を聞き葬式ムードが払拭されていく。
貴浩「ならなんでそんなものが必要なんだ?」
姫路「はい。えっと、ブイヤベースを作っていたら、
圧力鍋が真ん中から破裂しちゃいまして・・・・・・」
「「「「「さらばだっ!」」」」」
貴浩「待てやコラっ! 逃がしてなるか! 光一アイツらを逃がすな!」
光一「了解」
逃げ出す4人を光一と2人がかりで捕まえる。
貴浩「ちょい鍋を見てくる」
そして俺は姫路が壊した鍋を見ることにした。
貴浩「・・・・・・うわぁ・・・俺初めて見たぞ・・・鍋がこんな風に壊れてるところ見るの」
見てみると鍋の底から割れていて下が見える状態になっていた。
ってか人の家の鍋壊すか普通……
命「ごめんね貴浩君。見てたはずなんだけど・・・少し目を離した隙にこのありさまで・・・」
ああ、命の顔色が悪かった理由がわかった。
貴浩「ああ、大丈夫。食べる前に気づくことが出来たんだからこれはこれでOKだ。
怪我とかしてないな?」
命「うん、大丈夫だよ」
俺は壊れた鍋と破片、中に入っていた料理を別々の袋にいれ、
あとで光一が頼んでおいた業者に回収してもらった。
島田「あれ、瑞希?どうしたの?」
姫路「料理に失敗しちゃいまして・・・・・・」
その失敗が鍋の破壊なんて気づかないだろうな。
翔子「・・・・・・・・・失敗は成功の母」
愛子「僕はあんまり料理についてわからないけど、きっと次はうまくいくよ」
優子「ええ、最初は誰でも失敗するものよ」
なのは「そうだよ。だから諦めず頑張ろう」
楓「兄さん・・・もしかして・・・・・・」
貴浩「ああ、そのもしかしてだ・・・・・・」
「「・・・・・・・・・」」
姫路「そうですね。皆さんありがとうございます」
このままではマズイ・・・また料理されたら今回は鍋ですんだが
今度はキッチン・・・いや、俺たちの身が危ない。
そこで居間にいる明久たちを見てみると
『なんとかしろ』といわんばかりの目線をしている。
そんなこと言われなくれてもわかっている。
貴浩「なあ、時間もなくなってきたことだし、それに大勢いるから鍋にしないか?」
椎名「鍋ですか?」
貴浩「ああ、大勢いるし、海鮮類も冷蔵庫に入ってるからな。
それに鍋なら時間も問題ないだろう」
姫路「お鍋ですか。わかりました。それなら今すぐ料理を始めますね」
問題はその製作者が必殺料理人ってことだ。
雄二「あー姫路。鍋なら俺が得意だから、任せてくれるか?」
姫路「ダ──」
明久「何を言ってるんだ雄二。鍋といったら僕。僕といったら鍋。それくらい常識でしょ」
康太「・・・・・・いいや、鍋の事なら俺以上に詳しいものは誰もいない」
貴浩「お前ら何言ってるんだ。ここは鍋奉行の俺に任せるのが普通だろう」
雄二「いやいや、鍋は俺の専門分野だ。俺に任せとけ」
明久「何を言ってるんだ雄二。僕に任せとけばいいんだよ」
康太「・・・・・・・・・お前もふざけた事言うな。俺が鍋を作る」
貴浩「いやいや、もうここは俺が作るってことで・・・・・・」
姫路に主導権を握らせないために俺たちは次々に言い合う。
砂原「なら、闇鍋なんてどうかな♪」
と、そこで砂原が可笑しな発言をかます。
楓「闇鍋ですか?」
砂原「うん♪確か闇鍋って鍋の中でもメジャーなものなんだよね」
貴浩「いや、砂原それは───」
それは違うと言いかけて思い直す。
これ・・・・・・もしかして結構いい案じゃないか?
今から男子勢が短時間で料理を作ると言ったとしても、
姫路は何らかの手段で料理を作るかもしれない。
だが、闇鍋となれば話は変わる。
アレはその場で鍋の中に食材を入れるだけのものだから、手伝いも何も関係が無い。
そもそも料理の腕が関係ないのだから、危険なものが出来上がる事が無い。
念にために鍋を2つ用意しておいて2つのグループの別々の物を作るとも言えば、
もし姫路が危険物を片方の鍋に入れたとしてももう片方は無事なわけだから
そちらを食べればいい。
明久、雄二、秀吉、ムッツリーニ、楓、命、光一の7人に目線を送る。
どうやら皆も俺の案に賛成のようだ。
優子「あのね鈴歌。闇鍋って言うのは普通の鍋料理と違って───」
秀吉「それはいいのう!闇鍋とは面白い提案じゃ!」
楓「そうですね。人数も多いことですし面白そうですね」
雄二「そうだな。闇鍋は鍋の中の鍋だよな」
康太「・・・・・・・・・闇鍋最高・・・」
命「砂原さん面白い提案ですよ本当に」
貴浩「たまには砂原もいい提案するじゃないか」
光一「ああ、見直した」
一斉に賛同して優子の声を掻き消す。
ここは闇鍋こそ正しい選択だ。皆の命を守るにはこれが最善の選択なんだ。
愛子「闇鍋って僕も興味あるな~。やったことないよ」
翔子「・・・・・・・・・私もやってみたいかも」
なのは「そうだね。人数も揃ってるから面白いかもしれないね」
刀麻「俺も一度闇鍋してみたかったんだよな」
貴浩「あっ、そうだ。カセットコンロ1つしかないから優子貸してくれないか?」
優子「ええ、いいけど・・・2個もいるの?」
雄二「ああ、コレだけ人数がいるんだ。
なら闇鍋も2種類作ってみるもの面白そうじゃないか?」
椎名「そうですね。えっと・・・17人いますからだいたい8人で1つの鍋を作るんですね」
楓「はい、17人じゃ入れる具が多くなるかもしれませんが
8人ならちょうどいいぐらいだと思いますよ」
命「それに皆が何を入れるかわかりませんから変わった味になるかもしれませんしね」
貴浩「そういうことだ。なら明久、命と一緒に取りに行ってくれないか?」
明久「うん、命行こっ」
命「うん」
よし、さりげなく鍋を2つ作る事に成功したな。
あとはグループ分けだ。
光一「あとはグループ分けだが・・・
ここは家主である貴浩に決めてもらうのが妥当じゃないか?」
刀麻「そうだな。こんな大勢で押しかけてるんだし」
愛子「僕は貴浩君でいいと思うよ」
砂原「私も、ター君なら面白い班分けにしてくれそうだし」
そういうことで俺が班分けすることに決まった。
光一ナイス発言、そして刀麻ナイスアシスト!
さて、班かどうするかな。
≪ 料理経験者 ≫
貴浩、楓、明久、命、雄二、霧島、康太、なのは、島田、刀麻
≪ 料理経験無しもしくは少ない ≫
秀吉、優子、愛子、光一、椎名、砂原
≪ 要注意人物 ≫
姫路
ってところか。
貴浩「A班は俺に楓、優子、愛子、なのは、椎名、砂原、刀麻、命の9名、
B班は明久、雄二、ムッツリーニ、秀吉、光一、姫路、島田、霧島の8名だ」
A班は常識があるメンバーで固めたから酷い鍋にはならないだろう。
砂原が面白がって何を入れるか心配だが……
班分けを決めた後机の移動など食事の準備を男性陣が行い、
女性陣は作りかけの料理に向かった。
姫路は楓に監視してもらっている。