雄二「よくやった貴浩」
光一「守備の穴をついた作戦だな」
明久「そうだね。高橋先生、あんまり野球に詳しくないみたいだったからね」
秀吉「次はムッツリーニじゃな」
康太「・・・・・・・・・貴浩に続く」
ムッツリーニがバットを担いでバッターボックスに入る。
大島先生が一球目を振りかぶり、景気よくその腕を振り下ろす。
ボールはうねりを上げて、キャッチャー目掛けて飛んでくる。
康太「・・・・・・っ!(ブン)」
『ストライク』
ムッツリーニはボールの1個分下で、空振りする。
康太「・・・・・・(スッ)」
ムッツリーニがバットを構え直す。
大島先生は鉄人とのサインのやり取りを終えると2球目を投げてくる。
ストレートと大差ない速度で迫るボールが、バッターの手前で横方向に変化する。
あれは・・・スライダーか。
康太「・・・・・・っ!(ブン)」
『ストライク』
ムッツリーニは2球目も空振りし、これで2ストライク。後がなくなる。
西村「ナイスピッチ、大島先生」
鉄人がボールを大島先生に投げ受け取る。
大島先生がボールを投げる。今度はカーブだ。
『ボール』
審判がボールを宣告する。
『タイム』
そこでムッツリーニが一度タイムを取り靴紐を結び直す。
そして、ムッツリーニが俺の方を若干向きバットで2回肩を叩いた。
アレは・・・・・・そういうことか・・・・・・了解・・・信じるぞ。
俺は了解の意味を込め、右手の親指と小指を立てて顔の前で数回振る。
ムッツリーニはそれを確認するとバッターボックスに入る。
『プレイ』
振りかぶっての4球目。
俺は大島先生が投球したと同時に全力で走り出す。
ボールは直球を内角に投げ込まれていた。
康太「・・・・・・いけ・・・・・・っ!」
とそこで、ムッツリーニが構えを変えた。
高橋先生が見せたものと同じ行動。プッシュバントだ。
ピッチャーの横を抜けて、サード前に転がるボール。
サードは布施先生が守っている。
布施先生が運動神経がいいなんて話は聞いた事がない。
それに俺が走り出した事で慌てているのがわかる。
布施「っと、ととっ」
転がってきたボールを拾う布施先生。
そしてホームに慌てて送球する。
『セーフ』
しかし、時はすでに遅く俺はホームを駆け抜けており勢い余って転んでいた。
そしてボールを捕球した鉄人は1塁へすぐさま送球するがまたしても時遅く、
ムッツリーニは1塁へ到達していた。
『セーフ』
2人ともセーフとなり、ついに1点を返した。
これで1対3だ。残り3点
楓「兄さん大丈夫ですか。最後派手に転んでましたけど?」
貴浩「いててっ、全力で走ってたからな。派手に転んだな。少し恥ずかしいなコレは。
でもこれで1点返したな」
雄二「よくやった貴浩、ムッツリーニ」
明久「でも驚いたよ。まさかホームスクイズかけるなんて。
失敗したら2アウトだよ」
貴浩「そこはムッツリーニを信じるしかないさ。
ムッツリーニなら失敗しないだろうしな」
光一「さて、俺も続かないと」
続いてのバッターは光一。
光一は一球目から降っていき見事ライト前にヒットを放ちランナー1塁2塁となった。