バカと俺達の召喚獣   作:ターダン8

197 / 231
5/12 修正


時間稼ぎと弁当と昼休み

貴浩「お前ら・・・どんだけ怖かったと思ってんだ・・・」

 

明久「ごめん、ごめん。ちょっと調子に乗っちゃった」

 

雄二「お前なら大丈夫だと思ってな。悪いやりすぎた」

 

姫路「あの皆さん・・・」

 

ところ変わって2-F待機場所。現在は昼休みを迎えていた。

 

雄二「そもそも俺は『3年は持ち物検査を受けていないから、

   再試験を受けてまで試合を続けようと思わないだろう』と考えていただけだ。

   あのババアが余計な介入をしなければこんなことにはならなかったんだぞ」

 

姫路「あの坂本君・・・」

 

秀吉「流石に学園長もやりすぎたと思ったようじゃの。

   あの後すぐ元の仕様に戻すと言っておったぞ」

 

康太「・・・・・・惨劇だった」

 

姫路「あの、木下君、土屋君・・・」

 

貴浩「ってか、俺の場合は元からフィードバックがあったんだがな」

 

姫路「あの織村君・・・」

 

貴浩「で、午後の勝負は───」

 

姫路「あのっ! 皆さんっ!」

 

必死に目を逸らし続けて現実から、ついに逃げ切れなくなる。

俺達5人は今にも泣き出さんとする表情で、声の主に返事をした。

 

「「「「「・・・・・・・・・はい」」」」」

 

姫路「実は私、お弁当を作ってきたんですけど・・・」

 

姫路が大きな包みを取り出す。

姫路がそれを手にして歩いている姿が遠くから見えた時、

迫りくる死の気配で何を手にしているのかわかっていた。

なので、楓と命に弁当を持ってきてもらうため時間稼ぎをしていたのだが、駄目だったようだ。

 

雄二「ま、まぁ、とりあえず座るといい」

 

姫路と島田に場所を譲る為に立ち上がる雄二。そしてそのまま踵を返して、

 

雄二「んじゃ、俺は飲み物を買ってくる」

 

明久「いやいや、雄二は座ってなよ。僕が買ってくるから」

 

秀吉「そう言わず、ここはワシに任せるのじゃ」

 

康太「・・・・・・俺が行く」

 

貴浩「・・・・・・・・・」

 

ジリッ

 

雄二「ははっ。無理するなよ明久。飲み物を買ってくるには金がいるだろ」

 

ジリッ

 

明久「大丈夫だよ、最近は結構余裕あるから。命とデートするため貯めているからね。

   何より、使いっ走りといえば僕、僕といえば使いっ走り。

   これ以上の適任はいないと思うんだ」

 

ジリッ

 

秀吉「待つのじゃ。使い走り歴15年。姉上にこき使われ続けるワシのキャリアを舐めるでない。

   明久よりよほど洗礼された使い走りをご覧に入れよう」

 

ジリッ

 

康太「・・・・・・違う。必要ななのは速さ。

   【闇を裂く疾風迅雷の使い走り】と呼ばれた俺こそが、適任」

 

ジリッ

 

雄二「テメェら、上等じゃねぇか! この俺の本気の使い走りに勝てると思うなよ」

 

明久「何言ってるのさ! 僕の使いっ走りがずっと凄いに決まってるじゃないか!

   雑魚どもは引っ込んでるべきだ!」

 

秀吉「雑魚とは心外じゃな。このワシの使い走りを見もせずに、

   よくもそんなことが言えたものじゃ」

 

康太「・・・・・・いいから黙って俺に行かせろ・・・!」

 

ジリッ

 

島田「あ、飲み物ならウチが用意してきたけど?」

 

「「「「・・・・・・ああ・・・・・・そうですか・・・・・」」」」

 

島田「それじゃ、座らせてもらうわね」

 

雄二「・・・諦めるしかないか・・・・・・ところで貴浩、どこに行く気だ」

 

明久「さぁ、おいで貴浩」

 

貴浩「・・・チッ」

 

4人が揉めてる間に逃げ出すつもりだったのに、ちゃんと気づいていたのか。

 

貴浩「はぁ・・・で、今日はどんな弁当なんだ?」

 

秀吉「う、うむ。た、楽しみ、じゃなぁ・・・」

 

明久「まったくだね。あはは、そういえば命たち遅いね」

 

雄二「もうそろそろ戻ってくるだろ」

 

貴浩「まさか、楓と命の身に何かあったんじゃ」

 

明久「それは大変だ。今すぐ向かわないと!」

 

雄二「まぁ待て。二人には光一がついてるから大丈夫だ」

 

貴浩「・・・・・逃げれなかったか(ボソッ)」

 

島田「あれ? 瑞希、なんだか今日は量が少ないんじゃない?」

 

姫路の弁当を見てみるといつもと比べて少ないな。

 

姫路「あ、はい。実は、また失敗しちゃたんです。

   本当はおにぎりの他にちゃんとおかずを作っていたんですけど・・・」

 

それは正直俺達にとっては生き残る確立が上がったので助かるが。

 

姫路「美波ちゃんもどうですか?」

 

島田「そう?じゃあ、お言葉に甘えて」

 

「「「「「あっ!」」」」」

 

俺達が制止するよりも早く、島田が姫路のおにぎりを口に放り込んだ。

俺達が息を呑んで見守る中、島田がもぐもぐと口を動かす。

・・・・・・ん?まさか、なんともないのか・・・・・・?

 

島田「うん。普通のおにぎりだけど、美味しいわよ瑞希」

 

姫路「そうですか。良かったです」

 

貴浩「なぁ姫路。このおにぎりはどうやって作ったんだ?」

 

姫路「特に何もしていないですよ。炊いてあったご飯に、

   お塩を振ってから俵型に握って、海苔を巻いただけです」

 

なるほどな。その作り方なら、どうやっても異常な食べ物は出来ないだろう。

島田が無事なのはそういう理由か。

なら、普通に食べて大丈夫だな。

 

楓「お待たせしました。姫路さんもお弁当作ってきたんですね」

 

そこへ楓と命、光一の3人が弁当を持って戻ってきた。

 

明久「結構遅かったね。心配したよ」

 

命「ごめんね明久君。優姉のところに寄ってからきたから?」

 

秀吉「姉上のところに?」

 

命「うん、どうせなら一緒に食べないかな、と思ったんで」

 

貴浩「そうだな。そっちのほうが楽しそうだしな」

 

楓「皆さん、少ししてから来られるそうなので先に食べててくださいとの事でした」

 

明久「そうなんだ。ならお言葉に甘えて食べてようか」

 

命「たくさん作ってきたので、皆さん遠慮せず食べてください」

 

島田「あっ、ウチも作ってきたから、良かったら皆で食べて・・・」

 

雄二「おっ、島田もか。これだけあれば翔子たちが来ても足りるな」

 

光一「島田のはサンドイッチか」

 

島田「さ、サンドイッチなら、その余っても、家で食べられるし」

 

清水『・・・羨ましいです・・・お姉さまの手作り弁当・・・じゅるり』

 

ん? この気配は・・・・・どこぞの2-D所属の女子の声が聞こえる。

 

島田「この気配は・・・美春ねっ!?」

 

清水『く・・・っ! 気づかれましたか! こうなれば──奇襲は諦めて突撃です!

   お姉様ぁああーっ!』

 

島田「ウチはアンタに構ってる暇はなにのよっ!」

 

土煙をあげて突撃してくる清水から逃れるように、

島田は慌てて立ち上がり反対方向へと駆け出した。おお、速い速い。どちらも頑張れ(笑)

 

貴浩「・・・そういえば飲み物ってどこにあるんだ?」

 

明久「そういえばそうだね? 確か美波が持ってるって言ってたよね」

 

秀吉「じゃが、駆け出していったからの」

 

貴浩「仕方がない。買って来るか・・・皆、何でもいいよな?」

 

雄二「ゲテモノ以外なら何でもいいぞ」

 

貴浩「・・・チッ」

 

雄二「おい待てやコラ。何買って来る気だった」

 

明久「あっ、貴浩。僕も一緒に行くよ。

   霧島さんたちの分も買っておいたほうがいいと思うし」

 

貴浩「助かる。数が数だからな」

 

楓「兄さん、明久君。お願いしますね」

 

貴浩「じゃあ、少し待っててくれ。なるべく早く買ってくるから」

 

俺と明久は席を立ち校舎へと向かって走り出す。

でないと楓と命の弁当がなくなってしまうかもしれないからな。

多分、残しておいてくれるとは思うけど・・・


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。