バカと俺達の召喚獣   作:ターダン8

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体育祭編
参考書とスポ根ドラマと持ち物検査


雄二「翔子」

 

翔子「・・・・・・」

 

雄二「翔子」

 

翔子「・・・・・・」

 

雄二「おい翔子」

 

翔子「・・・・・・あ・・・・・・ごめんなさい。何、雄二?」

 

雄二「出せ」

 

翔子「・・・・・・えっと・・・多分、無理」

 

雄二「無理じゃない。いいから出してこっちに寄越すんだ」

 

翔子「・・・・・・でも・・・」

 

雄二「でもじゃない。早く出せ」

 

翔子「・・・・・・でも・・・まだ妊娠してないから」

 

雄二「待ってくれ。今会話に必要なステップが凄い飛ばされた気がする」

 

翔子「・・・???」

 

雄二「なんでそこで疑問顔ができるんだよ…。

   お前は俺が何を出せと言ってると思ったんだ?」

 

翔子「・・・・・・母乳」

 

雄二「OK。主語述語じゃなくて、

   問題なのはコミュニケーション能力だということがよくわかった」

 

翔子「・・・・・・違うの?」

 

雄二「違いすぎる。一体何を考えたらそんな答えが返ってくるんだ」

 

翔子「・・・・・・結婚後の私達の家庭を考えていた」

 

雄二「そうか結婚後の家庭か。なるほどな。

   それならあんな回答が返ってきてもおかしいだろ。やっぱり」

 

翔子「・・・・・・それで雄二なに?」

 

雄二「俺の質問は流すのかよ・・・まったく・・・まぁ面倒だからいい。

   俺が出せって言ったのはお前が持ってるでかい袋だよ」

 

翔子「・・・・・・これは何でもない」

 

雄二「翔子。お前のために指輪を買ってきたんだ。手を出してくれ」

 

翔子「・・・・・・嬉しい」

 

雄二「よっと。全く指輪と言われて躊躇い無く左手を差し出すあたりが、

   恐ろしいというかなんというか・・・。

   えーっと、どれどれ中身は・・・ウェデイング雑誌に、催眠術の本に、

   犬のしつけ方の本───ちょっと待てコラ」

 

翔子「・・・・・・返して」

 

雄二「誰が返すか!俺の身の安全のためにこれは預かっておく」

 

翔子「・・・・・・困る。それはなのはに貸してあげる約束をした本もあるのに」

 

雄二「八神にか?ちなみにどの本を?」

 

翔子「・・・・・・催眠術の本を」

 

雄二「約束を破るのはよくないな。これは返してやろう」

 

翔子「・・・・・・ありがとう」

 

雄二「俺もアイツラの幸せを考えているんだからな」

 

翔子「・・・・・・じゃあ私も雄二と築く幸せな家庭について考える」

 

雄二「そこは考えなくてもいい。まだそんな考えにいたるのは早い」

 

翔子「・・・・・・告白・・・プロポーズ・・・結婚式・・・新婚旅行・・・」

 

雄二「おい翔子。ダメだ・・・まったく聞いてねぇ・・・。トリップしてやがる。

   あっ。そういうやお袋からお前に渡しておくよう頼まれてたものがあったんだよな。

   確か端のほつれた部分を直しておいた、だかなんだかって」

 

翔子「・・・・・・おめでた・・・一人目の出産・・・・・・」

 

雄二「おい翔子。この袋の中に入れておくからな」

 

翔子「・・・・・・名前はしょうゆ・・・・・・女の子」

 

雄二「おい聞いてるのか? まぁいいか入れておくぞ」

 

翔子「・・・・・・あっ返してくれてありがとう」

 

雄二「ちゃんと渡してやれよ」

 

翔子「・・・・・・放課後になったら、そうする」

 

 

 

 

 

 

 

目の前で腕を組み、静かに俺達Fクラス生徒一同(一部除く)を見ている鉄人。

つまり担任である西村先生相手に、

Fクラスの代表である坂本雄二と織村貴浩は諭すようにゆっくり語りかけていた。

 

雄二「───だからと言って戦争が必要であると言ってるわけじゃない。

   戦争というものは多くの死者を出し、それは同種族を殺すという、

   生物にとって本能に逆らう最大のタブーを犯し続ける愚考そのものだ」

 

貴浩「だが、それが愚考であっても、そこから学び取れることだって少なからず存在する。

   それは、『知的好奇心は具体的な目的を持つことで、より良い結果へと繋がり易い』

   という事実だ。ここまで言えばあとは先生にも分かってもらえるはずだが」

 

そこで今まで黙って俺と雄二の話を聞いていた先生が始めて反応を見せた。

 

鉄人「坂本、織村兄。お前らが言わんとするしていることは伝わってきた。

   確かにお前らの言う通り、知的好奇心は目的の有無でその存在が変わってくる。

   それはその通りだ。・・・・・・だが・・・」

 

鉄人が腕を組み、俺達全員にはっきり告げる。

 

鉄人「───没収したエロ本の返却は認めんぞ」

 

「「「ちくしょぉおおおーっ!!!!」」」

 

俺達Fクラス男子一同(秀吉と光一を除く)は鉄人の無慈悲な言葉に涙を流して絶叫した。

新学期早々、眠たい目を擦って必死に登校してきた俺達を出迎えたのは、

非情ともいえる教師陣の抜き打ち持ち物検査。抵抗する暇さえ与えず取り押さえられた俺達は、

せめてもの抵抗で鉄人に没収品の返却を要求する演説を行っていた。

 

明久「どうしてですか西村先生!さっきの演説を聞いていたでしょう!?

   僕達が“保健体育”という科目の学習に対する知的好奇心を高める為には

   “エロ本の内容の理解”という本能に根ざした具体的な目的が必要なんです!」

 

鉄人「学習しなければ理解できん程高度なエロ本を読むな。お前は何歳だ」

 

明久「何歳だ、なんて!知識を求める心に年齢は関係ないはずです!」

 

鉄人「よく見ろ。思いっきり成人指定と書いてあるだろうが」

 

ぐうぅ・・・っ!ああ言えばこう言う教師め・・・!

 

『お願いします、西村先生!俺達にその本を返してください!』

 

『僕らには───僕らには、その本が必要なんです!』

 

『お願いです!俺達に、保健体育の勉強をさせて下さい!』

 

『西村先生、お願いします!』

 

『『『お願いします!』』』

 

鉄人「黙れ。一瞬スポ根ドラマと見紛うほど爽やかにエロ本の返却を懇願するな」

 

クラスの男子皆の心を込めた願いも鉄人には届かない。

なんて冷たい教師なんだ。

 

明久「それなら先生。こう考えてもらえませんか。

   アレはエロ本じゃなくて、保健体育の不足部分を補っている参考書だと」

 

鉄人「全員きちんと準備をして授業に臨むように。朝のHRを終わる」

 

とりつく島もない。このままじゃ俺達の貴重なお宝が・・・!

 

明久「ええい! こうなりゃ実力行使だ! 僕らの貴重な参考書(エロ本)のため、

   命を懸けて戦うんだ!」

 

「「「おおーっ!!」」」

 

立ち上がって鉄人を取り囲む。この人数差だ。いくら相手が人外の化物でも、

俺達が負けるはずは無い!

 

鉄人「ほほぅ・・・。キサマら、良い度胸だな」

 

そんな危機的状況でも、一切の動揺を見せない鉄人。

 

貴浩「全員、かかれぇーっ!」

 

「「「うおおおぉぉーっ!」」」

 

恨み募る怨敵に対し、俺達は拳を固め飛びかかった。


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