星の潮流   作:fw187

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女神の蒔いた種
地球戦団の援護


 或る時空に於いて銀河系最強の侵略者、エイバアド軍は数多の星間航行種族を蹂躙した。

 アリシア人の導師≪メンター≫ならぬ減物力、造物力を兼備の哲学種族ヒロソ人も打ち砕いたが。

 イースター・ゾーンの戦士達を含む地球戦団、総勢1億の挑戦者達が乾坤一擲の放胆な作戦を完遂。

 宇宙侵略者≪スペース・インベーダー≫は姿を消し、人類は滅亡を免れている。

 

 炭素=水素系種族の惑星エリダヌに於ける探検船の報告、超映動が終了した其の時。

 ヒンラート博士の大胆な仮説が披露され、会場全体が興奮の坩堝と化した直後に。

 出席者全員の精神平面に想定外の思考、心話が響いた。

 

(博士の思考様式、挑戦の気概を喪わない姿勢を賞賛します。

 私は地球戦団の別働隊、約2千万の乗組員を超空間に一時退避させました。

 戦士達の勇気に敬意を表し、4次元時空連続体への帰還を援助しますが。

 代償として、支援を要請します。

 

 多次元世界の知識が無い世界の皆様には、過酷過ぎる要求かもしれません。

 ですが私は無限の可能性を信じ、希望を託します。

 或る時空連続点≪クロス・ポイント≫、異次元の地球に到達してください。

 皆様の世界に、祝福を」

 

 

 独立星域≪イースター・ゾーン≫出身の別働隊指揮官タルイ以下、2千万の乗組員が実体化した。

 荒唐無稽と思われていた仮説が、出席者全員の眼前で実証された。

 無限の宇宙には、想像を遙かに超える存在が実在する。

 人類を救う為に生命を投げ出し、全滅した筈の2千万人を救ってくれた。

 

 炭素=水素系種族の筆頭エリダヌ人、地球人(エスピーヌン)達は哲学種族に協力を要請。

 新たな努力目標に挑むが、無数の障害と困難に直面した。

 ヒンラート博士の精神的把握法、挑戦の姿勢は有益と認められたが。

 次元跳航《ディメンション・ワープ》、時間跳躍《タイム・リープ》の実験は悉く失敗に終わった。

 

 弗素系種族や機械生命体、珪素系種族の援助も得るが顕著な進展は皆無。

 手探りで暗中模索し試行錯誤を積み重ねる以外に、方法は無い。

 無数の実験が繰り返されたが、光明は見えなかった。

 科学者達の忍耐力も限界に達し、研究の放棄を唱えている。

 

 タルイ副戦団長と最大の理解者、リンゲ・サン戦団長は研究の継続を主張。

 無数の挫折にも倦まず弛まず、思い付く限りの荒唐無稽な方法も地道に試し続けた。

 素人集団は想像力を駆使、実験を繰り返す無謀な挑戦者達の前で奇蹟《ミラクル》が突発。

 次元断層が生じ観測中、エネルギー枯渇寸前の戦闘艦から微弱な信号も検出された。

 

 宇宙海賊船《シャーク》の制御頭脳《ボースン》、人工生命体《アヤ》は最低限の電力消費量に設定。

 駆逐官の輪《リング》を預かった船長、深層睡眠状態の地球人を護り続けていた。

 地球を追放された鮫島豪は或る異星人と遭い、後継者の証を託され侵略者を駆逐。

 エネルギー供給後に異星人の遺産、母星を喪った異種族達の歴史と様々な情報が提供されている。

 

 《シャーク》装備の自動観測装置は漂流中、多種多様な現象を記録。

 銀河連邦に属する異種知性体、哲学種族の援助も得て徐々に解析が進んだ。

 無限に拡がる時空体系、百万の天球を自在に通過する転送機の創造には至らなかったが。

 次元断層の実験は繰り返され、太陽系防衛戦を展開中の複製世界に繋がった。

 

 

 地球戦団は重力場推進機構と瞬送装置を備え、エネルギー奪取弾も携えていた。

 絶対真空と絶対零度の宇宙空間に於いて、熱量を奪えば敵は戦闘不能と化す。

 防御力場は外部からの攻撃を防止するが、艦体内部のエネルギー流失を防ぐ機能は無い。

 合理的な判断、発想の転換は高く評価される。

 

 自艦のエネルギーを消費し、枯渇化させる必要は無い。

 敵艦のエネルギーを喪失させれば、戦闘不能となるのだから。

 次元断層に落ち込んだ宇宙戦艦ヤマトも、エネルギーを周囲の空間に吸収され艦橋の照明が消えた。

 スターシャの援助が無ければ、遭難した可能性が高い。

 

 エネルギー奪取弾の捕捉した敵艦は全動力が停まり、行動不能となる。

 周囲に拡がる絶対零度の宇宙空間へ熱量を吸収され、凍結するしかない。

 敵の体力を吸引する魔法≪リザイア≫、別名≪ストーム・ブリンガー≫と同じ発想だ。

 良く考えたものだ、発明者に敬意を表する。

 

 

 地球戦団の瞬送装置は跳航《ワープ》と異なり、人間を転送の場合に狂気となる確率が高いそうだが。

 小型の瞬送連絡装置で瞬間物質移送装置と同様、手榴弾を転送する分には何の問題も無い。

 再び真田志郎率いる地球人科学者、マッド・サイエンティスト達の出番となった。

 彼等は瞳を輝かせ舌舐め擦りし、エネルギー奪取弾を分解し構造を研究。

 エネルギー奪取弾の製造施設を設計、量産準備も整え稼働を開始する。

 

 三惑星連合軍に逆転の発想が供給され、防御力場を無効化。

 地球戦団の贈り物は真価を発揮、無数の敵艦が凍結し戦闘不能に陥った。

 

 宇宙海賊船≪シャーク≫に装備された歪曲波砲もまた、絶大な威力を発揮した。

 と共に太陽系防衛戦に駆け付ける際にも、歪曲波砲が効力を発揮したと聞く。

 

 

 

 宇宙戦艦ヤマトの衝撃波砲≪ショック・カノン≫と、一見似ているが。

 一種の次元振動を発生させ、敵艦を破壊する原理であるらしい。

 

 伝説の魔界都市、新宿の超能力者部隊≪サイキック・フォース≫。

 超戦士≪スーパー・ソルジャー≫副長が駆使する超能力、次元刀に近いのかもしれぬ。

 

 歪曲波砲もまた大口径レーザー砲に代わり、艦橋と艦体側面に装備される運びとなった。

 波動砲と衝撃波砲≪ショック・カノン≫の中間を埋め、広範囲影響攻撃砲として使用。

 

 

 天衣無縫の天才科学者達と接し、薫陶を受けた真田志郎は防御兵装を飛躍的に強化。

 天才科学者は宇宙海賊船≪シャーク≫の装備、エネルギー吸収光帆に注目。

 

 エネルギー奪取弾の原理を応用し更に発展させ、究極の進化形を追求。

 進化を強力に推し進め、≪エネルギー吸収防御壁≫を完成させた。

 

 空間磁力メッキと異なり、周囲の宇宙空間に展開する力場≪エネルギー・フィールド≫に非ず。

 艦体装甲板が攻撃エネルギーを無限に吸収し、蓄電器に受容可能な波動形態へ変換する。

 

 

 モルケックス装甲と共通する、物質性エネルギー透過不能重層次元力場。

 コントラ・フィールド放射装置により高次元空間へ誘導され、消失する事は無い。

 

 真田以下の技術スタッフは異次元世界で体得した、機械親和能力を駆使。

 伝説的タンペレ飛行機修理工場に匹敵する、魔術的な職人芸を発揮。

 大型艦艇から小型機体に至るまで。

 太陽系全艦艇へエネルギー吸収防御壁の追加装備を行い、エネルギー奪取弾への兵装転換を完遂した。

 

 

 

 三惑星連合軍は嘗ての第5番惑星、小惑星帯≪アステロイド・ベルト≫を奪還。

 寸暇を惜しみ、防衛線の再構築を急いだ。

 エネルギー吸収防御壁、エネルギー奪取弾を備える戦闘衛星≪デス・スター≫も配置。

 鋼鉄の砦を築くが、戦線の悪い予感は的中した。

 

 伝説の電脳機械人《ポスビ》が操る破片船、フラグメント・シップに装備される時間バリア。

 ≪相対時間フィールド≫を投入してきたのだ。

 

 

 最大80時間先の未来へと力場内部を時間移動させ得る、相対時間フィールド。

 時間の壁に隔てられた無限艦隊には、エネルギー奪取弾も無効であった。

 

 対抗策は点射、多数の火砲を1点に集中するピン・ポイント砲撃である。

 瞬間的にエネルギー転換能力を超える過負荷を生じさせれば。

 

 相対時間フィールドを破壊する事が、可能となる。

 再び集団行動戦術が、太陽系防衛戦の要となった。

 

 イースター・ゾーン出身の副戦団長、タルイ統率の勇者達。

 火星ガミラス、水星テラ、金星ガトランティス連合軍も奮闘を重ねるが。

 膨大な損害を省みず、雲霞の如く後続の敵艦が出現。

 波状攻撃に曝され、地球衛星軌道に絶対防衛線を敷いた我々の前に。

 伝説の天使が、舞い降りた。


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