星の潮流   作:fw187

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人類先行種族の贈物

 オーティス・ザ・グレイテスト率いる超能力者集団は早速、惑星ランドックで実験に参加。

 プロフェッサー・イトウ率いるプロジェクト・チームの実験が、繰り返された。

 

 地球戦団副長タルイを産んだ念力研究の先進地、東洋的宙域≪イースター・ゾーン≫の如く。

 インド哲学を源流とする禅、ヨーガ、密教を始めとする非科学的手法も多数応用された。

 

 精神文明の基幹と推察される瞑想≪メディテーション≫等、各種の試行錯誤が反復された。

 ESP波を物理学的に増幅する方法は見出せず、数千数万の可能性が試され放棄された。

 

 

 棄てられた数多の可能性が積み重なり、奇蹟≪ミラクル≫が生じた。

 超能力者達は精神統合の方法を模索し、短時間ながら統一体≪コンプリート≫形成に成功。

 

 一時的に集束された強力なESP波が時空の彼方、超次元の惑星メルへと送信された。

 

 メローラとの精神接触≪コンタクト≫は成立しなかったが、或る異次元宇宙から応答があった。

 嘗て銀河系に留まり、人類との共存を模索した非人類種族。

 

 

 人類以前の銀河系先住民族、≪銀河系最後の秘宝≫を開発し姿を消した宇宙航行種族。

 時空間転移機構≪アナザー・ディメンション≫を創造した≪ドウットントロウパの子≫。

 

 ≪銀河系最後の秘宝≫の≪護人≫、≪偉大な種族≫の変種とも言うべき後継者達。

 巨大恒星の重力崩壊を利用し、異次元へと旅立った≪オオルル人≫。

 

 女神の導きに拠り、多次元宇宙の一角に安住の地を得た彼等の許にも。

 メローラの超次元間遠隔感応映像は、到達していた。

 

 

 異世界へ旅立ったオオルル人達は無事、≪ドウットントロウパの子≫と邂逅を果たした。

 新たな宇宙を求めて旅立つ事を選んだ彼等の為に、新たな次元回廊が創造された。

 

 無論、通常の条件下では起こり得ぬ奇蹟的な出来事である。

 女神の再試行が無数に繰り返され、奇蹟≪ミラクル≫を生起させた事は言うまでもあるまい。

 

 新たな可能性を贈呈された新種族、オオルル人は彼等に感謝し別れを告げた。

 異次元世界から時空間転移機構を使用し、未知の世界へと次元跳躍を行っていた。

 

 

 人類と訣別する途を選択した異種、オオルル人もまた。

 ≪女神救出作戦≫に参加すべく、懸命の努力を続けていた。

 

 異次元宇宙の銀河系先住者達と、銀河系人類の次元間遠話≪コンタクト≫が成立。

 飽くなき挑戦を続ける3者の連絡が可能となり、次元学の研究が加速された。

 

 

 異なる時空に位置する惑星ランドック、オオルル人と≪ドウットントロウパの子≫は。

 協力して3点観測のデータを突き合わせ、次元界の構造が徐々に解明される事となった。

 

 時も次元も解明された、とまでは行かなかったが。

 或る程度の次元間移動が、可能となった。

 

 各次元界より惑星メルの次元方位を測定し、次元座標ポジションを探査する試みも行われた。

 結果は、否定的≪ネガティブ≫なものでしかなかった。

 

 

 

 或いは幻夢境≪ドリーム・ランド≫にして極寒の荒地、超次元の王国カダスであるのかもしれぬ。

 惑星メルの次元方位は観測の度に異なる結果が顕れ、座標確定に至る道は発見出来なかった。

 

 試行錯誤を重ねる3種族の前に、或る次元界が姿を現す事となった。

 宇宙航行時代から平安時代へ、エネルギー生命体≪手天童子郎≫が時を超えるを得た特殊空間。

 

 不規則≪ランダム≫に接近する平行宇宙と一瞬のみ、擦違う事の可能な超次元回廊空間に於いて。

 あらゆる手掛かりを求め、執拗且つ徹底的な観測が継続された。

 

 平行宇宙と接する次元窓≪ウィンドゥ≫は数秒で閉じてしまう。

 無数の実験が行われたが、安定化の試みは全て失敗に終わった。

 

 

 同一の時空間と数回、接触が生じた。

 共通するESP波、思考様式≪サイコ・パターン≫が確認された。

 

 統一体≪コンプリート≫を形成する超能力者達、超戦士≪スーパー・ソルジャー≫の脳裏に。

 思いがけぬ思考波が、響き渡った。

 

 

 思考波の主はケイとユリ、と名乗りを上げた。

 世界福祉事業協会(略称、WWWA)所属の犯罪担当トラコン、ラブリー・エンゼル。

 

 知らぬ者は皆無、とまで尊称された伝説の事件相談員≪トラブル・コンサルタント≫である。

 時を超え過去界の銀河系から届いた一瞬のESP波が、事態打開の切り札となった。

 

 2140年代に活躍を演じたラブリー・エンゼルの名は、広く銀河系全域に知れ渡っていた。

 最凶の超能力戦士と畏怖された伝説の数々は、20年の歳月を経過後も全く色褪せていなかった。

 

 泣く子も黙る勇名は健在であり、2160年代の銀河系に於いても知名度No.1であった。

 管理職ソラナカ部長を襲う頭痛と悩みの種、ダーティペアの勇名と共に悪夢の記憶が蘇った。

 

 

 

 WWWA犯罪担当部門を代表する事件創造者(トラブル・メーカー)、もとい、美女二人組の事件相談員(トラブル・コンサルタント)

 正式な暗号名(コード・ネーム)、ラブリーエンゼルの名を知らぬ者は星の数にも優るが。

 非公認名称ダーティペアの活躍を描いた映画が約20年後に製作、配信された。

 

 幸か不幸か、映画は驚異的な興行成績を記録。

 2140年代の銀河連合が総力を挙げ、懸命に揉み消した異名。

 裏社会で絶大な知名度を獲得した綽名、代名詞は銀河系全域に知れ渡った。

 

 オーティス・ザ・グレイテスト、プロフェッサー・イトウの言に拠れば。

 一般大衆の興味が彼女達の実績に集約され、全人類の潜在超能力を統一。

 史上空前の集団超能力、想像を絶する規模の思念波が渦巻き時空を歪めた模様であるが。

 物質文明の理解が及ばぬ超能力(サイキック)の源泉と同様、真相は闇の中。

 銀河連合の『頭脳(マザー・ブレイン)』、中央コンピュータも超常現象の論理的な解明は諦めている。

 

「宇宙軍の反乱を鎮めて、()()()()、死の星に『()()()()()』んだ!」

「『ついでに』じゃないわ、『やむなく』よ!

 『しちまった』んでもないわ、『なっちゃった』のよ!!」

 

 某クラッシャーの名文句(スーパー・フレーズ)は、本人の弁明に増幅され銀河中を駆け巡った。

 ダーティペア現役当時に数々の事件、実績の詳細な情報を知る者は限られていたが。

 銀河連合の努力も空しく、総ての太陽系国家で彼女達は爆発的な人気を獲得。

 WWWA犯罪担当部門の管理職、ソラナカ部長の後継者達は総て辞表を書いたと聞く。

 

 

 超能力の吸収増幅を可能とするバアロル教団の祭司≪アンティ≫、ならぬ中継者≪リレイヤー≫。

 或いはファウンデーションの≪選ぶ者≫が発見した宇宙人国家≪スペーサー≫、ソラリア人。

 

 ESP波を中継し念動力や映像投影能力へ転換し得る男、≪エネルギー転換能力者≫が派遣された。

 思念波が増幅され送受信が可能となり、時空を超え思考交換が実現した。

 

 メローラ姫の超3次元映像は過去界の銀河系にも到達しており、WWWAが即座に動いた。

 報告書≪レポート≫が急遽作成され、上司のソラナカ部長を経由し銀河連合主席へと提出された。

 

 2140年代、3千前後の惑星国家が参加し通称WWWA等の機関も運営する銀河連合。

 2160年代、太陽系国家間の紛争を調停し超能力者を敵視に傾いた銀河連合。

 銀河全域を統括する星間組織は時を越え、女神救出作戦の為に協力する事となった。

 

 

 太陽系に銀河連合艦隊、通称GF≪ギャラクティカ・フリート≫が参戦の数日後。

 防衛線は押し返され、冥王星の奪還も実現している。

 各惑星と衛星には重防御、大火力兼備の基地が再建された。

 新たな敵の襲撃に備え、防衛力増強を急いだのだが。

 生体宇宙船ドラン群を擁する震動守護者、最悪の敵が現れた。


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