オーティス・ザ・グレイテスト率いる超能力者集団は早速、惑星ランドックで実験に参加。
プロフェッサー・イトウ率いるプロジェクト・チームの実験が、繰り返された。
地球戦団副長タルイを産んだ念力研究の先進地、東洋的宙域≪イースター・ゾーン≫の如く。
インド哲学を源流とする禅、ヨーガ、密教を始めとする非科学的手法も多数応用された。
精神文明の基幹と推察される瞑想≪メディテーション≫等、各種の試行錯誤が反復された。
ESP波を物理学的に増幅する方法は見出せず、数千数万の可能性が試され放棄された。
棄てられた数多の可能性が積み重なり、奇蹟≪ミラクル≫が生じた。
超能力者達は精神統合の方法を模索し、短時間ながら統一体≪コンプリート≫形成に成功。
一時的に集束された強力なESP波が時空の彼方、超次元の惑星メルへと送信された。
メローラとの精神接触≪コンタクト≫は成立しなかったが、或る異次元宇宙から応答があった。
嘗て銀河系に留まり、人類との共存を模索した非人類種族。
人類以前の銀河系先住民族、≪銀河系最後の秘宝≫を開発し姿を消した宇宙航行種族。
時空間転移機構≪アナザー・ディメンション≫を創造した≪ドウットントロウパの子≫。
≪銀河系最後の秘宝≫の≪護人≫、≪偉大な種族≫の変種とも言うべき後継者達。
巨大恒星の重力崩壊を利用し、異次元へと旅立った≪オオルル人≫。
女神の導きに拠り、多次元宇宙の一角に安住の地を得た彼等の許にも。
メローラの超次元間遠隔感応映像は、到達していた。
異世界へ旅立ったオオルル人達は無事、≪ドウットントロウパの子≫と邂逅を果たした。
新たな宇宙を求めて旅立つ事を選んだ彼等の為に、新たな次元回廊が創造された。
無論、通常の条件下では起こり得ぬ奇蹟的な出来事である。
女神の再試行が無数に繰り返され、奇蹟≪ミラクル≫を生起させた事は言うまでもあるまい。
新たな可能性を贈呈された新種族、オオルル人は彼等に感謝し別れを告げた。
異次元世界から時空間転移機構を使用し、未知の世界へと次元跳躍を行っていた。
人類と訣別する途を選択した異種、オオルル人もまた。
≪女神救出作戦≫に参加すべく、懸命の努力を続けていた。
異次元宇宙の銀河系先住者達と、銀河系人類の次元間遠話≪コンタクト≫が成立。
飽くなき挑戦を続ける3者の連絡が可能となり、次元学の研究が加速された。
異なる時空に位置する惑星ランドック、オオルル人と≪ドウットントロウパの子≫は。
協力して3点観測のデータを突き合わせ、次元界の構造が徐々に解明される事となった。
時も次元も解明された、とまでは行かなかったが。
或る程度の次元間移動が、可能となった。
各次元界より惑星メルの次元方位を測定し、次元座標ポジションを探査する試みも行われた。
結果は、否定的≪ネガティブ≫なものでしかなかった。
或いは幻夢境≪ドリーム・ランド≫にして極寒の荒地、超次元の王国カダスであるのかもしれぬ。
惑星メルの次元方位は観測の度に異なる結果が顕れ、座標確定に至る道は発見出来なかった。
試行錯誤を重ねる3種族の前に、或る次元界が姿を現す事となった。
宇宙航行時代から平安時代へ、エネルギー生命体≪手天童子郎≫が時を超えるを得た特殊空間。
不規則≪ランダム≫に接近する平行宇宙と一瞬のみ、擦違う事の可能な超次元回廊空間に於いて。
あらゆる手掛かりを求め、執拗且つ徹底的な観測が継続された。
平行宇宙と接する次元窓≪ウィンドゥ≫は数秒で閉じてしまう。
無数の実験が行われたが、安定化の試みは全て失敗に終わった。
同一の時空間と数回、接触が生じた。
共通するESP波、思考様式≪サイコ・パターン≫が確認された。
統一体≪コンプリート≫を形成する超能力者達、超戦士≪スーパー・ソルジャー≫の脳裏に。
思いがけぬ思考波が、響き渡った。
思考波の主はケイとユリ、と名乗りを上げた。
世界福祉事業協会(略称、WWWA)所属の犯罪担当トラコン、ラブリー・エンゼル。
知らぬ者は皆無、とまで尊称された伝説の事件相談員≪トラブル・コンサルタント≫である。
時を超え過去界の銀河系から届いた一瞬のESP波が、事態打開の切り札となった。
2140年代に活躍を演じたラブリー・エンゼルの名は、広く銀河系全域に知れ渡っていた。
最凶の超能力戦士と畏怖された伝説の数々は、20年の歳月を経過後も全く色褪せていなかった。
泣く子も黙る勇名は健在であり、2160年代の銀河系に於いても知名度No.1であった。
管理職ソラナカ部長を襲う頭痛と悩みの種、ダーティペアの勇名と共に悪夢の記憶が蘇った。
WWWA犯罪担当部門を代表する
正式な
非公認名称ダーティペアの活躍を描いた映画が約20年後に製作、配信された。
幸か不幸か、映画は驚異的な興行成績を記録。
2140年代の銀河連合が総力を挙げ、懸命に揉み消した異名。
裏社会で絶大な知名度を獲得した綽名、代名詞は銀河系全域に知れ渡った。
オーティス・ザ・グレイテスト、プロフェッサー・イトウの言に拠れば。
一般大衆の興味が彼女達の実績に集約され、全人類の潜在超能力を統一。
史上空前の集団超能力、想像を絶する規模の思念波が渦巻き時空を歪めた模様であるが。
物質文明の理解が及ばぬ
銀河連合の『
「宇宙軍の反乱を鎮めて、
「『ついでに』じゃないわ、『やむなく』よ!
『しちまった』んでもないわ、『なっちゃった』のよ!!」
某クラッシャーの
ダーティペア現役当時に数々の事件、実績の詳細な情報を知る者は限られていたが。
銀河連合の努力も空しく、総ての太陽系国家で彼女達は爆発的な人気を獲得。
WWWA犯罪担当部門の管理職、ソラナカ部長の後継者達は総て辞表を書いたと聞く。
超能力の吸収増幅を可能とするバアロル教団の祭司≪アンティ≫、ならぬ中継者≪リレイヤー≫。
或いはファウンデーションの≪選ぶ者≫が発見した宇宙人国家≪スペーサー≫、ソラリア人。
ESP波を中継し念動力や映像投影能力へ転換し得る男、≪エネルギー転換能力者≫が派遣された。
思念波が増幅され送受信が可能となり、時空を超え思考交換が実現した。
メローラ姫の超3次元映像は過去界の銀河系にも到達しており、WWWAが即座に動いた。
報告書≪レポート≫が急遽作成され、上司のソラナカ部長を経由し銀河連合主席へと提出された。
2140年代、3千前後の惑星国家が参加し通称WWWA等の機関も運営する銀河連合。
2160年代、太陽系国家間の紛争を調停し超能力者を敵視に傾いた銀河連合。
銀河全域を統括する星間組織は時を越え、女神救出作戦の為に協力する事となった。
太陽系に銀河連合艦隊、通称GF≪ギャラクティカ・フリート≫が参戦の数日後。
防衛線は押し返され、冥王星の奪還も実現している。
各惑星と衛星には重防御、大火力兼備の基地が再建された。
新たな敵の襲撃に備え、防衛力増強を急いだのだが。
生体宇宙船ドラン群を擁する震動守護者、最悪の敵が現れた。