星の潮流   作:fw187

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ランドックの秘密

 銀河連合首席からの親書《メッセージ》、派遣軍の編成に至る過程を要約する。

 

 太陽系国家タラオの基幹産業創出を模索する大統領、フォン・ドミネートは或る研究に注目。

 時も次元も解明され巨大女神アウラ・カーの統べる神々の都、アリシア星系の第三惑星に非ず。

 首都タルカサールの存在する第5惑星、ランドックへと招致活動を行った。

 太陽系国家ザルード第3惑星ツアーン、タルボ大学トートミア校レイチェ生化学研究所。

 主任研究員プロフェッサー・イトウの掲げる野心的、天才的な研究《プロジェクト》である。

 

 主題《テーマ》は直感的な閃き(インスピレーション)、大発明の原理(メカニズム)解明。

 創造力を飛躍的に高め、天才的発明を科学的に誘発する目的の研究だが。

 或る日、突然、ピンと来た。

 『これだ!』と直感が閃き、前人未到の画期的な(アイディア)が《降りて来る》超心理学的現象の再現は難しい。

 奇蹟《ミラクル》発生の確率を向上させ、人類の進歩と発展に貢献する意欲的な試み。

 人類の更なる発展を促し、多大な貢献を齎す可能性を秘めている。

 

 発想が、凄い。

 実用化に成功すれば飛躍的な各種技術の進歩、人類全体の進化さえもが可能となるかも知れぬ。

 だが、残念な事に。

 実用化には、程遠かった。

 創造的直感《インスピレーション》と、超能力《サイキック》。

 類似性に着目した所までは良かったが、其処から先に進まない。

 

 プロフェッサー・イトウの実験、暗中模索の試行錯誤は幾度も繰り返された。

 超能力の源、ESP波の存在は確認されたのだが。

 天才的な直感の誘発は果たせず、増幅の糸口も見えない状況が続く。

 色々試している内に何故か、ESP波を重力場が遮断する(マイナス)効果を発見してしまった。

 

 足踏み状態から抜け出せない彼等の疲労は募り、県境の放棄も検討されたが。

 或る日、突然。

 彼等の研究に、大いなる変化が訪れた。

 

 

 我々ガミラス帝国を宇宙侵略者から、火星防衛軍へと変貌させた要因。

 全宇宙へ向け発信された、とも思われる超次元間遠隔感応映像。

 女神救出作戦の発動を告げる惑星メルの王女、プリンセス・メローラの超3次元映像。

 太陽系国家タラオ第5惑星ランドック、イトウ率いる研究所のスクリーンも例外ではなかった。

 

 キイ・ワードの効果が顕れ、女神の封印した記憶が解放された。

 史上最凶の超能力者クリスが率いる神聖アスタロード王国の来襲、己の死。

 多大な心理的衝撃を受け、混乱するプロジェクト・チームの眼前に。

 思いがけぬ味方が、現れた。

 

 銀河連合も未確認の遠隔瞬間移送能力、圧倒的な《サイキック・パワー》を兼ね備えた大導師。

 アスタロッチの再建した暗黒邪神教団に、2千名にも及ぶ超能力者の指導者として合流した男。

 超越者《スーパー・サイキック》とも噂される偉大な長老、オーティス・ザ・グレイテスト。

 ESP波検出器のメーターが振り切れる程、強大な《フォース》を発揮する超能力者集団である。

 

 分岐点の異なる世界で体験した記憶が甦り、畏怖の念を禁じ得ぬ天才科学者の脳裏に《声》が響く。

(貴公の研究、《インスピレーション》の実験に協力する。

 現在時空の超能力者を総動員し集団超能力を用い、超次元間往復遠隔感応を実現する為に。

 超次元間の遠隔感応能力者メローラ姫と、心話連絡《コンタクト》を取る為に。

 銀河連合所属の連合宇宙軍と協力しESP波増幅装置を試作実験し、超能力を増幅せねばならぬ。

 超能力部隊《サイキック・フォース》、超戦士《スーパー・ソルジャー》編成の用意がある)

 

 

 女神を救う事は、全てに優先する。

 事情は超能力者《エスパー》達の間でも、共通していた。

 惑星カインを死の星へ変えた後天的な精神感応能力者《テレパス》、元大統領アスタロッチは。

 幽体遊離の実験に失敗し、通常の輪廻転生を経る事となった。

 

 史上最強の素質を秘めた少年、クリスへの憑依融合も女神に阻止されていたのだ。

 父の連合宇宙軍大佐も、息子の潜在超能力に気付いていなかった。

 強力な精神感応能力と念動力を有し、ベティ・タウフリーの転生やもしれぬ第2の実力者。

 少女ソニアもまた無事に成長を遂げ、オーティスの許で強力な才能を開花させていた。

 

 10代の若者2人も含め暗黒邪神教、及び神聖アスタロード王国に参加し落命した者達。

 超能力者達の記憶封鎖も解除《リセット》され、己の《死》と異分岐の記憶が鮮明に蘇った。

 クリスの潜在超能力は覚醒し、強力な精神感応波が銀河系を駆け巡った。

 オーティスの許にも、銀河系各地から数多の超能力者達が参集している。

 

 

 異なる分岐世界に於いて、惑星カインの暗黒邪神教に参加した超能力者達。

 切札となる超念動波増幅破壊砲《サイコ・フォース・デストロイヤー》の要員を務めた3千名。

 更に暗黒邪神教の後身、神聖アスタロード王国に参加した超能力者達。

 念により時空を歪め、超次元の幻影惑星《ファンタズム・プラネット》を実体化させた2千名。

 総計5千を越える超能力者達が、惑星カインへ集結を果たした。

 前代未聞のESP波が発信され、超時空の精神感応《テレパシー》放送が行われた。

 

 史上最大の超能力者集団、超戦士《スーパー・ソルジャー》は精神融合体を形成。

 多数のESP波を共鳴させ心を一つにして、メローラに向けてメッセージを送り出した。

 余談だがミュータント部隊ならぬ超能力者集団、超戦士《スーパー・ソルジャー》の呼称は。

 史上最凶の禍津神が全人類の記憶へ強烈に刻印した悪印象を、払拭する為に選択された。

 『人類の神は光の神であり、超能力者の神は闇の神である』。

 惑星国家カイン大統領アスタロッチの着想も、高名な2人組の《実績》が影響している。

 

 人類を敵視し対エスパー同盟を壊滅させた暗黒邪神教の思想原理、行動原理は。

 銀河系を震撼させた《トラブル・コンサルタント》、2140年代最凶の超能力者に由来する。

 泣く子も黙るWWWAの鬼、犯罪捜査部門の統括責任者ソラナカ部長の遺した報告に拠れば。

 事態を収拾する為に派遣された連合宇宙軍の艦隊が全滅した事も、1度や2度ではなかった。

 

 秘密結社《ルーシファ》を遙かに上回り、惑星壊滅規模の甚大な災害を齎した事が覗える。

 私も後に直接、オーティス・ザ・グレイテストから愚痴交じりに聞かされたが。

 連合宇宙軍内部に対エスパー同盟が普及し、結構な割合で支持を得ている事実からも。

 『些細な事件が大戦争に発展する』と畏怖された伝説、災厄《トラブル》の甚大さが知れる。

 

 

 話を戻そう。

 メローラ姫から、応答は無かった。

 

 テレパシー波は、届かなかったと推察される。

 遙か次元を隔てる惑星メルに到達するには、彼等のESP波は力不足だったのだ。

 

 突破口を見出す為、多数の記憶が走査≪スキャン≫され精査された。

 種々の可能性が探索≪サーチ≫され、様々な角度から検討が試みられる事となった。

 

 ひとつの名前が、浮上した。

 太陽系国家タラオの首都、第5惑星ランドック。

 

 インスピレーションのメカニズム解明を主題とする研究者、イトウの存在が確認された。

 詳細な情報が追加検索され、ESP波を研究するプロフェッサーの発想は高く評価された。

 

 ESP波遮断装置≪ブレーカー≫は存在するが、増幅する方法は解明されていない。

 イトウはESP波増幅の可能性を探る為に本物の超能力者を探し、実験への参加を切望している。

 

 オーティス・ザ・グレイテスト、少年クリス、少女ソニアを含む本物の超能力者集団。

 超戦士≪スーパー・ソルジャー≫は即刻、タラオ星系第5惑星ランドックへ飛んだ。


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