銀河連合首席からの親書《メッセージ》、派遣軍の編成に至る過程を要約する。
太陽系国家タラオの基幹産業創出を模索する大統領、フォン・ドミネートは或る研究に注目。
時も次元も解明され巨大女神アウラ・カーの統べる神々の都、アリシア星系の第三惑星に非ず。
首都タルカサールの存在する第5惑星、ランドックへと招致活動を行った。
太陽系国家ザルード第3惑星ツアーン、タルボ大学トートミア校レイチェ生化学研究所。
主任研究員プロフェッサー・イトウの掲げる野心的、天才的な研究《プロジェクト》である。
主題《テーマ》は
創造力を飛躍的に高め、天才的発明を科学的に誘発する目的の研究だが。
或る日、突然、ピンと来た。
『これだ!』と直感が閃き、前人未到の画期的な
奇蹟《ミラクル》発生の確率を向上させ、人類の進歩と発展に貢献する意欲的な試み。
人類の更なる発展を促し、多大な貢献を齎す可能性を秘めている。
発想が、凄い。
実用化に成功すれば飛躍的な各種技術の進歩、人類全体の進化さえもが可能となるかも知れぬ。
だが、残念な事に。
実用化には、程遠かった。
創造的直感《インスピレーション》と、超能力《サイキック》。
類似性に着目した所までは良かったが、其処から先に進まない。
プロフェッサー・イトウの実験、暗中模索の試行錯誤は幾度も繰り返された。
超能力の源、ESP波の存在は確認されたのだが。
天才的な直感の誘発は果たせず、増幅の糸口も見えない状況が続く。
色々試している内に何故か、ESP波を重力場が遮断する
足踏み状態から抜け出せない彼等の疲労は募り、県境の放棄も検討されたが。
或る日、突然。
彼等の研究に、大いなる変化が訪れた。
我々ガミラス帝国を宇宙侵略者から、火星防衛軍へと変貌させた要因。
全宇宙へ向け発信された、とも思われる超次元間遠隔感応映像。
女神救出作戦の発動を告げる惑星メルの王女、プリンセス・メローラの超3次元映像。
太陽系国家タラオ第5惑星ランドック、イトウ率いる研究所のスクリーンも例外ではなかった。
キイ・ワードの効果が顕れ、女神の封印した記憶が解放された。
史上最凶の超能力者クリスが率いる神聖アスタロード王国の来襲、己の死。
多大な心理的衝撃を受け、混乱するプロジェクト・チームの眼前に。
思いがけぬ味方が、現れた。
銀河連合も未確認の遠隔瞬間移送能力、圧倒的な《サイキック・パワー》を兼ね備えた大導師。
アスタロッチの再建した暗黒邪神教団に、2千名にも及ぶ超能力者の指導者として合流した男。
超越者《スーパー・サイキック》とも噂される偉大な長老、オーティス・ザ・グレイテスト。
ESP波検出器のメーターが振り切れる程、強大な《フォース》を発揮する超能力者集団である。
分岐点の異なる世界で体験した記憶が甦り、畏怖の念を禁じ得ぬ天才科学者の脳裏に《声》が響く。
(貴公の研究、《インスピレーション》の実験に協力する。
現在時空の超能力者を総動員し集団超能力を用い、超次元間往復遠隔感応を実現する為に。
超次元間の遠隔感応能力者メローラ姫と、心話連絡《コンタクト》を取る為に。
銀河連合所属の連合宇宙軍と協力しESP波増幅装置を試作実験し、超能力を増幅せねばならぬ。
超能力部隊《サイキック・フォース》、超戦士《スーパー・ソルジャー》編成の用意がある)
女神を救う事は、全てに優先する。
事情は超能力者《エスパー》達の間でも、共通していた。
惑星カインを死の星へ変えた後天的な精神感応能力者《テレパス》、元大統領アスタロッチは。
幽体遊離の実験に失敗し、通常の輪廻転生を経る事となった。
史上最強の素質を秘めた少年、クリスへの憑依融合も女神に阻止されていたのだ。
父の連合宇宙軍大佐も、息子の潜在超能力に気付いていなかった。
強力な精神感応能力と念動力を有し、ベティ・タウフリーの転生やもしれぬ第2の実力者。
少女ソニアもまた無事に成長を遂げ、オーティスの許で強力な才能を開花させていた。
10代の若者2人も含め暗黒邪神教、及び神聖アスタロード王国に参加し落命した者達。
超能力者達の記憶封鎖も解除《リセット》され、己の《死》と異分岐の記憶が鮮明に蘇った。
クリスの潜在超能力は覚醒し、強力な精神感応波が銀河系を駆け巡った。
オーティスの許にも、銀河系各地から数多の超能力者達が参集している。
異なる分岐世界に於いて、惑星カインの暗黒邪神教に参加した超能力者達。
切札となる超念動波増幅破壊砲《サイコ・フォース・デストロイヤー》の要員を務めた3千名。
更に暗黒邪神教の後身、神聖アスタロード王国に参加した超能力者達。
念により時空を歪め、超次元の幻影惑星《ファンタズム・プラネット》を実体化させた2千名。
総計5千を越える超能力者達が、惑星カインへ集結を果たした。
前代未聞のESP波が発信され、超時空の精神感応《テレパシー》放送が行われた。
史上最大の超能力者集団、超戦士《スーパー・ソルジャー》は精神融合体を形成。
多数のESP波を共鳴させ心を一つにして、メローラに向けてメッセージを送り出した。
余談だがミュータント部隊ならぬ超能力者集団、超戦士《スーパー・ソルジャー》の呼称は。
史上最凶の禍津神が全人類の記憶へ強烈に刻印した悪印象を、払拭する為に選択された。
『人類の神は光の神であり、超能力者の神は闇の神である』。
惑星国家カイン大統領アスタロッチの着想も、高名な2人組の《実績》が影響している。
人類を敵視し対エスパー同盟を壊滅させた暗黒邪神教の思想原理、行動原理は。
銀河系を震撼させた《トラブル・コンサルタント》、2140年代最凶の超能力者に由来する。
泣く子も黙るWWWAの鬼、犯罪捜査部門の統括責任者ソラナカ部長の遺した報告に拠れば。
事態を収拾する為に派遣された連合宇宙軍の艦隊が全滅した事も、1度や2度ではなかった。
秘密結社《ルーシファ》を遙かに上回り、惑星壊滅規模の甚大な災害を齎した事が覗える。
私も後に直接、オーティス・ザ・グレイテストから愚痴交じりに聞かされたが。
連合宇宙軍内部に対エスパー同盟が普及し、結構な割合で支持を得ている事実からも。
『些細な事件が大戦争に発展する』と畏怖された伝説、災厄《トラブル》の甚大さが知れる。
話を戻そう。
メローラ姫から、応答は無かった。
テレパシー波は、届かなかったと推察される。
遙か次元を隔てる惑星メルに到達するには、彼等のESP波は力不足だったのだ。
突破口を見出す為、多数の記憶が走査≪スキャン≫され精査された。
種々の可能性が探索≪サーチ≫され、様々な角度から検討が試みられる事となった。
ひとつの名前が、浮上した。
太陽系国家タラオの首都、第5惑星ランドック。
インスピレーションのメカニズム解明を主題とする研究者、イトウの存在が確認された。
詳細な情報が追加検索され、ESP波を研究するプロフェッサーの発想は高く評価された。
ESP波遮断装置≪ブレーカー≫は存在するが、増幅する方法は解明されていない。
イトウはESP波増幅の可能性を探る為に本物の超能力者を探し、実験への参加を切望している。
オーティス・ザ・グレイテスト、少年クリス、少女ソニアを含む本物の超能力者集団。
超戦士≪スーパー・ソルジャー≫は即刻、タラオ星系第5惑星ランドックへ飛んだ。