星の潮流   作:fw187

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伝説の事件相談員

 或る時空の銀河連合に関連する組織、WWWA所属の事件相談員≪トラブル・コンサルタント≫。

 ラブリー・エンゼル発信の無線、超空間経由の映像が届いた。

 

「…ったくもう、か弱い少女に重労働させんじゃないわよ!

 ホント、しんどかったわぁ。

 次元断層を使った時間移動の実績、なんて何にも無いし。

 誰も、な~んも知らないんだから!

 

 銀河連合の科学者も、無責任よね!

 ぶっつけ本番するしか手が無いなんて、サイテーよ!!

 手探り状態で何とかなっちゃったけど、もう2度とやりたくないわ!

 ソラナカ部長に、ガタガタ言われたって、やーよ。

 ずぇったい、御免蒙るかんね。

 

 惑星メルの王女、メローラの依頼だから引き受けたけどね。

 事件が解決しなかったら、どーなるかって事を、完璧に説明してくれたのよ。

 

 惑星ダングルで、ルーシファの計画を阻止してなかったら。

 ガルクロンΣ≪シグマ≫が充満して、人間の中枢神経に作用して意志を奪ったのよ。

 グラバース重工業の巨大複合製造施設は、ぜ~んぶ、ルーシファの物。

 連合宇宙軍の艦隊を数倍、上回る数の戦闘艦が揃って征服されちょうのよね。

 

 問題は、その後。

 セルダン計画が無かった場合の、≪銀河帝国興亡史≫よ。

 人類は徐々に退化を続けて原子力、宇宙航行技術を無くしちゃうんだよね。

 3万年にも及ぶ大暗黒時代が銀河系、人類全体を覆う事になんのよ。

 

 

 ラメールの空間破砕爆弾、スペース・スマッシャー事件も似た様なもんね。

 ルーシファが空間破砕爆弾の量産化に成功しちゃったら、打つ手なんて無いわよ。

 強請ってゆーか恐喝されると、銀河連合は言いなりになっちゃうのよねぇ~。

 根性、無いんだから。

 

 ボスコーンみたく中世封建的、時代錯誤、血縁関係重視の身分制度が発達しちゃってさ~。

 非人権的独裁国家、専制強権的な銀河帝国が成立しちゃうのよ。

 終いには内乱で空間破砕爆弾が盛大に使われて、平行宇宙を隔てる壁が大崩壊よ。

 数多の次元界が沸騰して溶解して、み~んな虚無の海になっちゃうんだからね。

 

 

 ドルロイだって、甘く見んじゃないわ。

 銀河系で最も優秀な技能職人集団が、ルーシファの手下にされちゃうのよ?

 セクサロイド、なんてもんじゃないわ。

 連合宇宙軍の制式兵器は足元にも及ばない高性能火器、優秀な兵器が次々に開発されんのよ。

 

 クラッシュ・ジャケットやら何やらがみ~んな、ルーシファの私設軍隊に装備されちゃってね。

 銀河連合は逆立ちしても勝てなくて、あっさり征服されちゃううんだけど。

 これまた、後が大変なのよ。

 ルーシファの後継組織、銀河系帝国がやたら張り切んのよね。

 

 超銀河系集団の征服を夢見て、攻勢終末点なんか頭から無視して領域を拡げるんだけど。

 終いには超越者の文明に抹消されて、時間犯罪者≪タイム・テロリスト≫扱いだかんね。

 

 

 チャクラも、そーよ。

 異次元の高等知的生命体、ポーラルーラと恒常的に接触が可能となった後にね。

 人類は進化するどころか、衰退し始めちゃったのよ。

 高度な精神文明のポーラルーラと接触して、人類に内在する暗黒面が表面化したって事かな。

 精神的汚濁、怠惰、依存、無気力、怨嗟、嫉妬、怨恨、差別、復讐、報復の無限連鎖。

 あー、うっとうしい、やんなっちゃうわ。

 

 オフィーリアなんて、もっと、ひどいわよ?

 グ・ジッフスが銀河連合の指揮中枢機能、中央大コンピュータ本体を乗っ取っちゃってね。

 ン・ガッファの染色体に全人類が汚染されて、異種生命体に変質させられんのよ。

 

 他にも色々言いたい事はあんだけど、キリが無いから省略するわね。

 アムニール、ノグロス、ダングル、ラメール、チャクラ、ドルロイ、オフィーリア。

 以下省略するけど、み~んな無事になってたんよ。

 

 惑星チャクラの稀元素イシャーナ発見者を、保安官ジェフみたいな善人に変えるのは簡単だけど。

 異種族ン・ガッファ、人工頭脳グ・ジッフスの《調整》はどうやったのかな?

 人類に協力する様、ばっちし言い聞かせてくれたのよね。

 どんだけ時間流を遡って、平行宇宙の分岐先を当たってくれたか見当もつかないわ。

 

 

 メローラの連絡で銀河連合、ポーラルーラ、ン・ガッファが大慌てで行動を開始したのよ。

 銀河連合の中央大コンピュータ、人工頭脳グ・ジッフスの計算能力を総動員してね。

 

 空間破砕爆弾≪スペース・スマッシャー≫の量産、製造手段も再発見したんだけど。

 惑星メルからの指示で相乗効果ってゆ~か、共鳴させて次元の壁を越えて来たのよ。

 

 何度もあさっての方向に向かいかけたり、次元遭難の一歩手前まで行ったりもしたんだけど。

 最後の決め手になったのは何たって、うちらの超能力なんだかんね。

 ダーティなんとか、なんて間違っても言っちゃ駄目よ。

 

 

 あたしらは、先遣隊。

 援軍に来たのは、うちらの宇宙からだけじゃないわ。

 太陽系国家と連合宇宙軍が総掛かりでも、無限艦隊には太刀打ち出来ないのよ。

 あたし達に続いて、もっと強力な連中が来るかんね。

 

 空間破砕爆弾≪スペース・スマッシャー≫を使って一気に吹き飛ばす、って手もあるけどさ。

 もっと、良い手があんのよ。

 多元宇宙が崩壊したら、あんた達も困るでしょ?

 

 もうちょっとだけ、踏ん張ってて。

 36個だけ残してある、空間破砕爆弾≪スペース・スマッシャー≫を使うの。

 水星≪テラ≫と太陽≪ソル≫の間に、次元回廊を開くわ。

 

 無限艦隊だって、タメ張れちゃう味方を呼んだげる。

 ぶないから、近付くんじゃないわよ?

 撒き込まれて、外宇宙に飛ばされても知らないかんね~」

 

 

 

 応答する隙を与えず、一方的に喋り続けた後で。

 長時間に渡る通信は、唐突に切れたが。

 水星後方に出現した宇宙艦隊は、遙かに真面目であった。

 

 要領良く情報を伝え、太陽系防衛戦に参戦する意志を表明してくれた。

 疲労の蓄積していた我々は厚意に感謝し、彼等と交代して損傷艦艇と機体の修理整備を急ぐ。

 太陽系防衛艦隊は各惑星に着陸し、乗員は体力と気力の回復に努める余裕を与えられた。

 

 次元回廊の開設作業は、クラッシャー・ダンのチームが担当。

 万能型宇宙船アトラスからの通信連絡は要領が良く、簡潔明瞭。

 チームリーダーと名乗る船長、ダンは優秀な宇宙戦士と知れた。

 クラッシャーの先駆者と聞くが、是非とも部下に欲しい逸材である。

 

 

 WWWAの宇宙船、ラブリーエンゼルから再び通信が入ったが。

 お喋りを延々と聞かされ、緊急の用事と称し副総統ヘスに代わる。

 通信は唐突に打ち切られ、単なる暇潰しと判明した。

 

 空間破砕爆弾≪スペース・スマッシャー≫6個を等間隔、同心円状に配置。

 更に精密な星型六角形、六芳星の魔法陣5個が闇黒の宇宙空間に描かれた。

 小六芒星6個の魔法陣を等間隔、同心円状に並べた大六芒星が数時間後に完成。

 次元共鳴波の発振装置、空間破砕爆弾≪スペース・スマッシャー≫36基が作動する。

 

 心底から嫌悪と反感を生じさせる妖波動、闇黒の波動が押し寄せて着た。

 3次元生物に属する人類には理解し難い、未知なる要素と本能的な拒絶。

 あの中へ突入しろと言われたら、私は迷わず脱走するが。

 思わず、眼を瞠った。

 

 

 小型宇宙艦が現れ、空間を走査。

 機敏な動作、共通する鮮やかな流星の徽章≪マーク≫が眼を引く。

 続いて数千隻に及ぶ艦隊、援軍が闇の中から現れた。

 

 私は彼等の勇気に敬服し、多大な尊敬の念を持つ事となったが。

 見事な操縦技術を披露する編隊を離脱し、1隻が接近して来る。

 大気圏内の飛行特性と航空力学を考慮、流線型の優美な船体《フォルム》。

 蛍光塗料で描かれた流線型の記号書体、『J』の一字が星の光を受けて輝く。

 

 或いは軽快な偵察巡洋艦《スカウト》かも知れぬが、全長は約100メートル。

 通信表示画面《スクリーン》が煌き、10代の少年とも思える立体映像を映し出す。

 若き勇者の唇が動き、溌剌とした声が流れ出た。


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