咲-Saki- もし咲が家族麻雀で覚醒してたら   作:サイレン

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 『龍門渕高校の天江衣が飛ばされた』

 

 この報せは瞬く間に全国へと拡がった。

 

 昨年の全国高校生麻雀大会、インターハイ団体戦を見た者で天江衣の名を知らない者はいない。彗星の如く現れた彼女がそこで残した記録は、過去に例を見ないほどのものだったからだ。

 インターハイ最多獲得点数記録を樹立。

 昨年度MVP。

 同年行われたプロアマ親善試合でも優勝。

 上記のような数多くの伝説を残したのが天江衣だ。これらの功績から《白糸台の宮永照》、《永水の神代小蒔》と並ぶ《牌に愛された子》として全国でも有名になり、その名を轟かせた。

 

 《牌に愛された子》は皆一様に圧倒的な闘牌を見せつけている。それは常人はもちろん、全国屈指のプレイヤーですらまともに太刀打ちできないほどのものだ。

 白糸台の宮永照は他を寄せ付けないスピードを誇る連続和了で。永水の神代小蒔は時折見せる文字通り“神懸かった”上がりで有名だ。

 天江衣もこの二人に負けず劣らずの実力を有している。特に、昨年見せた三校同時飛ばしの絶技は人々の記憶に深く刻み込まれていることだろう。

 長野の強豪校である風越には耳の痛い話ではあったが、今年の長野県代表も龍門渕高校で決まりだろうと全国では囁かれていた。

 

 だが、その龍門渕高校の天江衣が負け、しかも飛ばされたと聞けば誰もが耳を疑った。それほどまでに突拍子もない話なのだ。

 

 そもそも団体戦の持ち点は100000点だ。昨年の天江衣が実現させたのように事例がないわけではないが、運が大きく関わる麻雀でどこかの高校が飛ぶことなどそちらの方が珍しい。

 それも《牌に愛された子》の一人である天江衣が飛ぶなど、俄かには信じられないものであった。

 

 だからこそ、この報せは全国の高校生雀士に大きな衝撃を与えた。

 そして、当然の成り行きとしてどこの高校の、誰がそんなことをしたのかに注目が集まった。ただ勝つだけなら未だしも、あの天江衣を飛ばすほどの実力者なのだ。気にならない訳がない。情報が広まるのは一瞬だった。

 

 高校名は清澄高校。

 今年初出場にして県予選突破という、昨年の龍門渕高校を彷彿とさせる成績を残している。

 しかもそこには、最近雑誌などでもよく取り上げられている全中覇者の原村和がいた。確かに和は有名人ではあったが、多くの人にとってノーマークであったのだ。

 最初こそは原村和が天江衣を倒したのかと思われたが、それは違った。天江衣は大将であり、原村和は副将。直接対決はしていない。

 

 では大将の名前は、ということで多くの者がその名前を確認し、そして、二度目の衝撃が訪れた。

 この時全国に与えた衝撃は、天江衣が飛ばされたと聞いた時以上のものだっただろう。

 

 その名前は偶然か、それとも必然か。

 そこにはこう示されていた。

 

 

 

 

 大将──宮永咲

 

 

 

 

 

 こうして、長い長い県予選は終了した。

 宮永咲という、新たな《牌に愛された子》の出現と共に。





一応これで県予選は終了です。

あのあとどうなったのかは次にザックリ書こうかと思います。

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