あ、シリアルはありますよ。
後、一時運営からメッセージ貰って閲覧できなくなっていた事をお詫びします。
以前やった感想欄でリクエストが規約違反だったとの事です。
なお、現在リクエストは活動報告に移っていますので、よければご利用ください。
最終回 中 親仔と約束
「母さん…僕の父さんって誰?」
遂にと言うべきか、やっとと言うべきか、アレクかた父親の事を尋ねられた。
これで2回目の事なのだが、前回は色々約束事をして有耶無耶にしてしまったので、今回ばかりはちゃんと話さなければならない。
(しゃーないさ。シュリュズべリィ先生がやられた直後で苛立ってんだしさ。)
とは言え、今まで対話を怠っていた事は事実だ。
ここいらで話せる事は話さなければならない。
無論、あの野郎からの検閲にかからない程度にだが。
「そうだな…先ずは何が聞きたい?」
「先日、あのマスターテリオンに、母さんとは知り合いだって言われた。」
「アイツか…。」
あの廃ゲーマーめ、余計な事を…。
否、これも混沌からのオーダーか?
「薄々気づいていると思うが、私はブラックロッジを始め、地球上に存在する邪神眷属共と戦っている。マスターテリオンとはそっち関係で知り合った。」
「じゃぁ、父さんは?」
やはりそこが気になるか…。
自分の顔が歪むのが解る。
だが、此処は反らしてはいけない。
正面から受け止めなければならない。
「お前の…あー、遺伝子上の父親は、マスターテリオンよりも更に邪悪な存在だ。」
「…アレ以上のがいるの?」
「いるんだ。」
言いたい事は良く解る。
私も初めてマスターテリオンを見た時は心臓が一瞬止まったしね。
「世の中には、本当に邪悪な存在というものがあるんだ。アレは正にその典型だ。」
「でも、お母さんはその人とその…/////。」
あー、うん、御年頃だからね。
そーゆーのも気になっちゃうよね。
顔真っ赤にしちゃってかーわいー…っとゲフンゲフン!
「まぁ、うん。子供が出来る事はしたよ。とは言え、あの頃は色々と荒んでたからな。私も隙を突かれた。」
「あの頃っておめー、色々やらかしてたよなー。」
プギャーwwwと指さして笑うアーリに無言でハイキック。
避けられた、くそう。
「取り敢えず、以前の約束は覚えているな?」
「え、う、うん。」
「なら良いさ。危ない事は出来るだけしてくれるなよ?」
「でも必要なら踏み込め。その時は躊躇うなよ。」
「はい!」
「よろしい。では夕飯にするとしよう。」
後にして思えば、この日が最後の平和の日だったんだよなぁ…。
………………………………
遂にブラックロッジが、マスターテリオンが動いた。
前回の様な戯れではなく、この回を終わりへと動かすための一手。
先日の3体の鬼械神の戦闘の余波により、ボロボロとなっていたアーカムシティに追い打ちをかける様に大量の無人式の破壊ロボが飛来した。
『ガンマレイ!』
ビルの上から発射された二条の砲撃がそのまま横薙ぎに照射される。
それにより、一瞬の内に大量の破壊ロボが撃破されるが、余りに迫り来る物量相手では焼け石に水でしかない。
それでも充填が完了次第、順次発射して数を減らすが、犠牲者の数は増え続ける一方だった。
幸い、有事の際の避難誘導は機能しているので、そう遠くない内に避難は完了するだろう。
『ゼルエェェェェェェルッ!』
『ぬぅぅ!?』
が、それもこのまま順調に推移すれば、という注釈が付く。
飛来したケルヴィエルの攻撃に、砲撃を中止せざるを得なかった。
遠くではメタトロンもまたサンダルフォンとの戦闘を開始し、破壊ロボの撃破が止まる。
『邪魔だァァァァァァ!!』
『がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
彼女が此処にいると言う事は、今、教会の子供達は避難が完了したのだろう。
が、この状況下であの混沌が何もしない筈が無い。
だからこそ、一刻も早くこの敵を撃退する必要があった。
『シィッ!』
『っく!』
だが、ゼルエルの、リーアの中では第六感が警鐘を鳴らしていた。
目の前の者を殺してはならない、と。
同時に、即座に抹殺すべきだ、とも。
『ガぁ!』
何時もの大振りの一撃を反らし、流し、弾く。
隙を見つけては時折カウンターを挟み、ダメージを蓄積させる。
10分程それを繰り返すだけで、何時も通りケルヴィエルは戦闘続行が不可能となった。
『ちっ、時間を喰った。』
背を向けて索敵及び戦況把握を行いながら離脱の準備を始める。
ゼルエルの中では何時も通りの事だった。
だが、ケルヴィエルにとっては違った。
………………………………
声が聞こえるのだ。
闇黒の中から、何者かの声が。
≪おやおや、やはり君じゃダメだったか。まぁそんなものだろうね。≫
≪君ではやはり彼女の■には成れないという事だね。≫
黙れ。
≪うん、まだ意識があるのかい?≫
僕はあの人の■だ。僕こそが、僕だけが、あの人の■なんだ。
≪なら証明してみせなよ。このままじゃ彼女は去るよ、何時も通りに。誰かのために、息子のために。君の為じゃなくね。≫
煩い黙れ。
そんなもの、出来ればとっくにやっている。
≪なんだ、やる気は十分じゃないか。なら、少し位手を貸してあげよう。何、君が頑張ってくれるなら、ボクとしても楽だしね。期待してるよ。≫
………………………………
殺気を感じ、瞬時に背後に向き直る。
破損した筈の装甲もそのままに、戦闘能力を喪失した筈のケルヴィエルが立ちあがっていた。
『敵魔力の上昇を確認。ヤバいぞ。』
『解った。一撃でケリを付ける。』
瞬時に肩部装甲を展開、チャージを開始する。
ガンマレイの最大出力照射。
軽く山位消し飛ぶ威力の一撃だが、全力で警鐘を鳴らす第六感に従い、躊躇いなく使用する。
『ガンマ…』
『…ぜ…。』
チャージ終了の一拍前、ケルヴィエルが装甲の隙間から魔力光を噴き出しながら突貫した。
『…何故…!』
『レイッ!!』
ガンマレイが照射される。
山をも消し飛ばす一撃は確実にケルヴィエルを消滅させる。
『何故だッ!!』
だが、それは何時もの彼女ならの話。
今のケルヴィエルには当て嵌まらない。
展開した装甲から極めて強固な防御陣が展開、山すら消し飛ばす一撃に耐えながら突進を続行する。
『ぬぅッ!?』
ゼルエルに此処に来て始めて焦りらしい焦りが見えた。
第六感が益々矛盾した感覚を叫ぶ中、それを理性で抑えつけながら、収束率を向上させる事で、その防御を貫こうとする
『何故だッ!母さんッ!!』
瞬間に、照射を強制カットした。
強引な停止に余剰エネルギーが術衣を、身体を焼きながら稲妻の様に駆け巡る。
『馬鹿野郎!?』
主が悲鳴すら漏らせない程の激痛に晒された事で、魔道書が強制的に防御陣と回復魔術を展開する。
だが、暴走状態と言っても過言ではないケルヴィエルに、その程度の対応策では足りな過ぎる。
『何故、僕を捨てたぁぁッ!!』
遂に接敵したケルヴィエルが、その拳を瀕死のゼルエルの胴体へと突き込んだ。
鮮血が飛び散った。
…………………………
ケルヴィエルの、彼女の一番古い記憶は病的なまでに白い部屋だった。
その部屋には自分以外おらず、時折、点灯するテレビが一台置いてあるだけだった。
そのテレビが映すのは、よくあるホームドラマだった。
父がいて、母がいて、子供がいて、仲良く3人で暮らしている。
時折、その内の誰かが欠けているものもあれば、子供がたくさんいたり、更に祖父母もいる。
何時もホームドラマには2人以上の家族がいた。
けれどある日、唐突に1人だけになった。
白い部屋に座るガリガリに痩せ細った少女。
それは自分だった。
動かず、どんどん痩せ細り、遂には倒れ、衰弱死していく様が何度も流れていく。
気が狂うかと思った。
何故こんなものを見せるのか、何時かこれが実現してしまうのではないか、恐怖と狂気の狭間で泣き叫んだ。
≪それは君が1人だからだよ。≫
叫びに答える声と共に、テレビの内容が変わった。
母1人に子1人、それを囲む多くの家族ではない多くの人々。
初めて見るその母子は、自分の容姿とよく似ていた。
≪酷いねぇあの2人は。君がここで1人だけで苦しんでるのに、2人だけであんなに幸せそうだ。≫
声が響く。
≪ねぇ、羨ましくないかい? あの母親の愛情は、君にも与えられる筈のものだった。あの子供の幸福は、君にも与えられる筈だった。どうして君だけ、なんて思わないかい?≫
声が響く。
≪なら自分のものにしてしまおう。自分と共にいてもらおうよ。そうすれば、もう寂しい事なんてない。あの子供に独占されていた、君自身の幸せを取り戻すんだ。≫
声が響く。
≪なに、もうそのための手段は準備してある。君はただ、願うだけでそのための力を得られるんだ。さぁ、後は唱えるだけだ。≫
「…変…神…。」
すとん、と何かが嵌った様な気がした。
身体が根底から書き換わる感覚。
世界をより深く、鮮明に感じ取る事が出来、力が全身から漲ってくる。
≪さぁ往こうか落とし仔よ! 君の母を迎えに!≫
「あぁぁぁぁあああああああああああぁぁぁぁぁッ!!」
今日この日、最後の仮面の戦士が慟哭と共に生まれ堕ちた。
…………………………
『すまない…。』
紺の仮面から、苦しげに謝罪の声が漏れた。
『お前の、声に、気付いてやれなかった。』
腹に大穴を開けられた事により、周囲には大きな血溜まりが広がり、今なお出血が止まる事は無い。
『これで、母さんは僕のものだ!僕だけの母さんだ!』
『いいや、私はアレクとお前、2人の母さんだ。』
仮面を被った異形の戦士達。
そんな尋常ならざる姿でありながら、2人の会話は我儘を言う子供とそれを諌める母のそれだ。
『やだ!嫌だ!あんな奴のじゃない!母さんは僕の…!?』
腹を貫いたまま喚く我が子を、腹を貫かれたままの母親が抱き締めた。
『お前も、私の子だ。』
『あ……。』
互いが無骨な戦装束に身を包み、今も戦火が広がる街の只中で、それでも、母の愛は雄弁だった。
『お、かあ、さん?』
『あぁ。』
子の手が母の背へと、恐る恐る伸ばされる。
甘え方を知らない、ぶつける事しか知らなかった子の、精一杯の気遣いだった。
「感動的だね。だけどそこまでだ。」
不意に妖艶な女の声が響いた。
同時、ゼルエルがケルヴィエルを庇いながら全方位を警戒する。
「はい、残念♪」
『『ッ!?』』
だが、異形の闇黒はその防御陣の中から出現した。
それも、ケルヴィエルの装甲の隙間から。
『が、あああああああああああああああああああああああああああああああっ!?』
『混沌、貴様まさかッ!?』
「如何にもその通り。この子は以前の君の種から僕が孕んで産んだもの。僕の血肉を分けてね。つまり、この子の身体は僕で構成されている。こうして分離する位は訳ないのさ。」
ケルヴィエルの血肉を奪って現れたのは、黒い女の姿をしていた。
だが、ゼルエルにはそれが己が父にして夫である存在であり、宇宙的悪意に権化である事を既に知っていた。
「見事に役目を果たしてくれたね、御苦労様。ご褒美にお母さんとずっっっといられるようにしてあげよう。」
『アーリッ!!』
闇黒が2人を包むその瞬間、ゼルエルの、リーアの術衣が解けて魔道書のページが全速で離脱する。
しかし、一手遅れたのか、一部のページはそのまま闇黒に飲まれ、アーリに少なくないダメージを与える。
「てめぇ後で覚えてろよ混沌!」
『はははハハははははハハはははッはは!!楽しみにしているよ!』
こうして、アーカム最大戦力の1人は邪悪の魔手に捕えられた。
………………………………
アレクは人気の無くなった路地を走っていた。
避難する途中、この路地に人が入っていくのを見かけたからだ。
しかも、その人物は神父服を着ており、シスターの知り合いがいる身としては放っておけなくなったのだ。
恐らく、誰か逃げ遅れでも探しているのだろうが、魔術士である自分も加われば直ぐに終わる筈だ。
そう考えて走る。
「あ! ちょっと待ってください!」
不意に路地を曲がっていく後ろ姿を見つける。
急いでその路地に入る…が、直ぐに止まった。
何せ、そこは行き止まりだったからだ。
「何を探しているのかな、少年?」
背後からの声に、全速で距離を空けた。
見れば、先程見かけた黒人の神父がこちらを見下ろしていた。
「えと、あなたが先程この路地に入っていくのを見て、慌てて追ってきたんです!誰か逃げ遅れてるのかと思って!」
「なんと。であれば気遣いは無用。私の方こそ、背後に誰か来ている事を警戒して、この様に試す形になってしまった。」
「い、いえ!こちらこそ!」
普通の神父さん。その筈だ。
だが、何処か違和感がある。
否、違和感が無さ過ぎるのだ。
痕跡を消そうとして、逆に不自然になっている様な…。
「所で、君はアレク・アシュトン君で合っているかね?」
「どうして僕の名前を?」
違和感が頂点になる。
魔術の発動のために、体内の魔力を循環させながら思考を加速する。
この神父は何が言いたいのか、何が目的なのか?
「まぁ色々あってね。君の母達、リーアとアーリの事もよく知っているよ。」
その言葉に、一つの推測が成り立った。
先日のマスター・テリオンとの邂逅。
その後の母との対話。
その時の記憶が、何より母との約束が鮮明に思い出される。
≪いいか、もしアレに遭遇した時は…。≫
「あなたは、もしかして…。」
「ふむ、少々怪し過ぎたか。恐らく君の予想は正解だ。」
一瞬の間を置いて、神父は受け入れる様に両手を開きながら、決定的な一言を口にした。
「私が、君の父親だ。」
「てぇやぁっ!」
「ぶるぅあああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?!」
≪全力で顔面をブン殴れ。情け容赦は一切無用だ。≫
全力の身体強化をした状態で、渾身のアッパーカットを放った。
特徴的な悲鳴と共に神父の身体が地面に並行にかっ飛び、向かいの建物の壁面へ衝突し、脳漿をぶち撒けた。
「はぁ…はぁ…はぁ…。」
初めての殺人に、知らず息が上がる。
母が何故こんな約束をしたのか解らないし、罪悪感が無いでもないが、取り敢えず今は避難所に行く事の方が大事だ。
証拠なんて、破壊ロボが幾らでも消してくれるし、問題は無い、と思う。
≪まだ来る。≫
「ッ!」
脳裏に届いた警告と共に、その場からサイドステップして離脱する。
同時、黒い瘴気が先程までいた場所を焼いた。
「やれやれ…流石はアレの息子だ。躾がなっていない。」
上顎から上が無い状態で、舌だけを下顎の上で蛇の様にのたうち回らせながら神父が、否、神父の形をした邪悪が立ち上がる。
「イア・ツァトゥグア!!」
瞬時に、現在出せる最大威力の魔術を放つ。
土に属するもの、即ち金属、ガラス、煉瓦、コンクリート、アスファルト等々…。
凡そ都市に存在するあらゆるも物質が砕け、割れ、歪みながら、標的へ向けて襲い掛かる。
「ハハはははハハッ!こそばゆいなぁ!」
それらは全て命中する。
しかし、有効打にはならない。
見た目の肉体は確かに損傷を受けている。
だが、その邪悪な気配は微塵も揺らいでいない。
「さて、そろそろ目的を果たすとしようか。」
『させると思っているのか?』
邪悪がその身から放つ闇黒を膨張させると同時、先程アレクの脳裏に響いたのと同じ声した。
同時、懐に入れていた「母からのプレゼント」に変化が起きた。
「折角得た新たな主を、貴様に奪わせはしない。」
プレゼント、自衛のために与えられた魔道書「ネクロノミコン機械言語訳」がページに宙に舞い、一点で一つに纏まる。
額に一角獣の様な一本角、何処か機械的な印象を持つ少女、魔道書の精霊だ。
彼女は空かさず五角形の防御陣、エルダーサインを展開し、闇黒から主を守る。
「ほぉ、リトル・エイダか。蘇生に成功していたとはなぁ。」
心底愉快気に嗤う神父、否、既にその容貌は人間のものではない。
闇黒の中の燃える三眼。
邪悪そのものだ。
「マスター、私を使ってください。」
「術衣形態って事?」
「イエス。撤退も容易になるかと。」
「解った、いくよ!」
突然の事態だが、少女からは敵意は微塵も感じない。
自分の第六感を信じて、アレクは術衣を纏うための言霊を口にする
「変神!」
掛け声と共にページが宙を舞い、少年の全身を包み込む。
複雑な曲線が描く灰色の装甲、X字を描く独特のスラスター、何処かエ○ァ弐号機を彷彿とさせる頭部デザイン。
ページの変質が終了し、術者の望む戦うための姿としての術衣が完成した。
「おぉ、流石精霊持ちの魔道書は違うね!見事なジ○クス!」
「私はマスターの将来を思うと頭が痛い。」
「ブラックオックスも大好きだよ?」
「本気で頭痛い。」
なお、超電動ロボじゃなく初代デザインでも鉄の城でも良いらしい。
趣味が渋すぎませんかね。
なお、この後クトゥグア召喚と共に離脱しました。
捕らわれた母!
初めて知る妹の存在!
そして始まる超巨大ロボバトル!
最終回 下 キ○○イに何とか! 乞うご期待!