助けて旧神様!(旧題クラインの壺ナウ)   作:VISP

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まだまだ序盤。だけど物語はどんどん加速。
なお、今回ちょっとオリ設定。


第三話 これでも序盤

 ちょっと飛んで100回目

 

 いきなり飛んだけど、記念に100回目。

 此処までは今までとあんまり大差なかったので割愛する。

 以前転生した事のあるのは人間(男女)、深き者共(男<女)、ショゴス、蛇人間だったが、ここまでに更に大地の妖蛆(男女)、夜鬼(ナイトゴーント♂)、ショゴス(大。人間へ変身可能)、スターヴァンパイア、ゴブリン(男女)、屍食鬼(男女)への転生を経験した。

 それぞれの種族で、崇拝する神や使用する魔術や特殊能力に関する研究をする事が出来たが、特に収穫があったのが夜鬼だろう。

 夜鬼は様々な旧支配者に仕えるが、特に旧神ノーデンスの奉仕種族であり、あの混沌とその奉仕種族に対して敵対している事でも知られる。

 主な生息地はングラネク山だが、夢の国と現実世界の多くの場所に群れを作って暮らしている。

 そして「大地の神々の秘密」を守って暮らしていると言う。

 

 で、この大地の神々の秘密というのが気になって、自滅覚悟で特に警備が重厚な地域に入ってみた。

 そこはセラエノの図書館を彷彿とさせる未知の言語の石碑群があり、その内容というのが地属性の神格等に関する詳細な記述だった。

 だが、こちらは生憎とツァトゥグアの直接的な加護を持っているため、例え文字が違えど、それにかんする記述は理解できる。

 つまり、そこから解読していく事が出来るのだ。

 嘗てのヨト写本と同様のツァトゥグアとその親族の詳細な記述を皮切りに、ショブ=ニグラス、ウボ=サスラ、アトラック=ナチャ、ゴル=ゴロス、ハン、いった地属性に分類される神格(この分類も人類視点であるので、詳細は異なるだろうが)に関する記述の他、暗黒世界ン=カイ、地下都市ナコタスといった場所の記述も散見される。

 とは言え、詳細を見る時間は無かった。

 この場所に入り込んで既に数時間、周辺には同族であるナイトゴーントが無数に存在し、徐々に距離を詰めてきている。

 しかも、自身は短時間に綿密かつ詳細な記述を見てしまったため、盛大にSAN値が削られている。

 今回は此処までという事だろう。

 

 結果、多数の夜鬼及びグールを相手取って、最後は盛大に自爆した。

 

 

 

 また飛んで121回目

 

 200まで飛ばす予定だったが、今回はマジでヤバい代物に転生したので記述。

 その名も「ティンダロスの猟犬」。

 宇宙の邪悪が凝縮したとされる不浄な存在とも、善悪を超越した存在とも言われる。

 ただ、明確に解っている事は人間の持つ何かを強く渇望し、角ばった時間に存在するという。

 90度以下の鋭角から歪曲した時間(人間の暮らす世界と思われる)に刺激的な悪臭を伴う青黒い煙が噴出、それが凝固する様にして現れる。

 その特性上、一度狙われれば逃げ切る事は不可能であり、逃れるには角度の無い空間に籠るしかない。

 

 これに転生した時、自分は常に飢えていて、何かを探し回っていた。

 最終的には強い光を感じる場所に出現し、何者かとの戦闘を行った後、消滅した。

 はっきり言って二度と転生したくない存在だったが、代わりに猟犬の持つ「90度以下の鋭角からの出現」を直に体験できたので、ある程度術式で再現できる目途が立った事だけは収穫と言える。

 こんな事が残念な事に10回程続き、人間時に研究し続けた甲斐もあり、多少精度を落とせば鋭角からの出現を術式で再現できるようになった。

 

 

 

 またまた飛んで200回目

 

 今回はインスマウスだったのだが……より正確に言えばインスマウスの近海に潜むダゴンに転生していた。

 その能力は高い水の操作能力を始め、霧の雲への変化、配下の深き者共の指揮等、流石は神格持ちであると言える。

 その外観はデモベ世界特有の巨大なフナムシのそれであるが、まるで古生代の生物の様に海中を自在に泳ぎ回る事が出来る。

 サイズは30mから大きい個体で100m級まであり、自分は現在40m級である。

 基本的にインスマウスの様な深き者共の生息地域の近海の他、海上都市ルルイエの近海に生息している。

 なお、流石にハイドラとの交尾は勘弁だった。

 …だと言うのに、格上の個体に無理矢理交尾されたのは屈辱の極みだった。

 

 最後は何故かウェスパシアヌスに召喚され、アイオーンとガチバトル開始。

 何とか海中に引きずり込み、得意のクトゥグアを封じた後、体当たりや海流操作で攻撃したのだが、シャンタクによる自爆覚悟の突進により空中戦に持っていかれ、自由落下中にバルザイの偃月刀により両断された。

 うむ、種族と環境によるものとは言え、荒唐無稽ロボバトルに参加出来たので良しとしよう。

 

 

 

 250回目

 

 現在は人間に転生しているが……最近、ダゴンorハイドラと人間(男女)で転生中。

 こっちも成長してると言うのに、何故か毎度毎度アイオーンと対戦して負けるのか…。

 しかも奴め、最近ニ丁拳銃だけじゃなく、パイルバンカーにまで手を出しやがって…。

 絶対にアレはドクターの仕業だ、うん。

 開幕からの即死攻撃とかワロスwwwワロス……。

 せめてレムリアインパクトをお願いします。

 まだ出来てないけどさ…。

 

 あ、人間の時は最近世界中を回っている。

 あちこちで中位の魔道書を入手しては研究して、魔術の研鑽及び実戦経験を積んでいる。

 いやさ、結構あちこち転生してると、何処でどんな事件が起きるかが大体解るんだよね。

 お陰でシュリュズべリィ先生と葉月、その生徒御一行に会う事も多い。

 研究と実践を繰り返しているので、位階が上がるのが早い早い。

 

 

 

 祝500回目

 

 今回はロンドンで女性として生まれたのだが、時代は未だに19世紀。

 そして私が8歳の頃、新聞でとある記事を目にした。

 「潜水ゴリラ」、まるで潜水服を着たゴリラの様な怪物が夜のロンドンを徘徊しているというゴシップ以下の法螺話。

 つまり機神胎動の時代と言う事だ。

 

 此処で私は、ある実験をしたいと思う。

 これは極めて大きな賭けであるが、しかし、絶対に必要なプロセスであると断言できる。

 この時代、とある存在が一定の場所で長期間過ごしており、容易に接触する事が可能となる数少ない機会だったりする。

 

……………

 

 大英帝国首都ロンドン、その大通りに面するとあるカフェのおいて。

 帽子に眼鏡、小さな鞄を持った可憐な美少女。

 彼女は今、その手に持った新聞を読みながら、青筋をおっ立てていた。

 

 「…誰も彼も誤解してるわね。」

 「そうですねぇ。」

 

 その傍らには褐色の肌に金髪、そしてメイド服の上からでも解る程のメリハリの利いた侍女が侍っていた。

 

 「全くもう!私の活動はそんなんじゃいのに!誰よ、水中ゴリラって言いだしたのは!?」

 「まぁ確かに見た目は水中ゴリラですからねぇ。って、おやぁ?」

 「え、な、きゃっ!」

 

 少女が新聞の記事に関する愚痴を侍女に溢していた時、余りに突然の突風が少女の帽子を空へと飛ばしたのだ。

 今日は快晴であり、スモッグすら晴れているというのに、更に周囲には何の変化もない(・・・・・・・・・・)のに、その突風は見事に少女の帽子だけを遠くに飛ばした。

 

 「いけない!取ってきます!」

 「お気をつけてくださいましねぇ~。」

 

 気の抜けた声で主である筈の少女を、侍女は呑気に見送った。

 

 「さて、どなたでございますかね?」

 

 そして、先程まで誰もいなかった筈の場所に誰かが佇んでいた。

 銀髪碧眼、白磁の肌を持った、確実に将来美女になる事が約束された少女だ。

 否、今は空色のワンピースを纏っているが、着飾れば確実に美少女と今すぐにでも絶賛される事だろう。

 

 「あなたに聞きたい事がある。ニーア、いや」

 

 少女は抱えた大きな古い書を持つ手に力を込めながら、決定的かつ致命的な一言を呟いた。

 

 「ナイア■■■■■■■。」

 「ほう、何を聞きたいのかな、お嬢さん。」

 

 途端、周辺の時間が静止する。

 否、この空間だけが外界と異なる時空に置かれたのだ。

 そして、今此処にいるのは侍女と少女の2人ではない。

 侍女の美貌の代わりに三つの眼が見開かれ、炎を吹き、その声もまた何処か威厳を感じさせる様な壮年の声へと変わり、何よりその気配そのものが明らかに人間のソレではなく、底知れぬ暗黒を思わせるものへと変貌していた。

 

 「玩具(ゲーム)支配者(キーパー)である貴方だからこそ、聞きたい事がある。」

 「ふむ、子猫の様に恐怖しながらも私から目を反らさないその胆力に免じて答えてやるとしよう。何が聞きたい?」

 

 この場の支配者は人の形をしたソレに他ならない。

 少女が恐慌しないのは、彼女がこういったモノにある程度の耐性を持っているからに他ならない。

 しかし、少女が今まで経験してきた数多くの者達の中に置いてもなお、眼前の存在はそれらを圧倒的に超越していた。

 

 「私がこのクラインの壺から抜け出す事は出来る?」

 「不可能だ。」

 

 だから、少女がソレの答えを聞いた時、限界に来ていた少女は先程までの冷静さをかなぐり捨てる様に叫んだ。

 

 「何故だ!?アンタならその程度軽くできる筈だ!」

 「今の私はこのクラインの壺を管理運営するための分霊に過ぎん。私ですら滅びなければ、この壺から逃れる事は出来んよ。まぁ目的を果たせば、この壺は自動的に解除されよう。」

 「それがどれだけ先の話か、アンタは解ってて言ってるだろう!」

 

 それはこの世界が何であるかを知っているが故に、少女は混じりけの無い憎悪と共に召喚した炎の精を異形へ叩き付けた。

 

 「ハハはハハははははハハはハハハハハははははハハハははッ!!精々壊れぬ事を祈っているよ、お嬢さん!存分にこの世界を味わい尽くしてくれまえ!」

 

 異形が燃え上がる。

 しかし、何の痛痒も無いかのように異形は嗤い/笑い/哂い、少女を哀れみという完全な上から目線で見下ろす。

 ソレの哄笑と共に、少女の姿が歪み、空間に溶けていく。

 

 「くそ、待て!」

 「待てませんねぇ。そろそろお嬢様が御戻りになりますので、お帰りくださいな。」

 

 そして、少女の姿が消えた。

 同時に、空間は元の大通りのカフェに戻り、その数秒後にはその手に帽子を握った少女が息を荒くしながら戻ってきた。

 

 「も、もう…!ニアーラったら少しは手伝ってよね…!」

 「お嬢様、適度な運動も健康を保つためにゃ必要なんですよ。」

 

 既に先程までの異常な雰囲気は消えている。

 しかし、テーブルの下に僅かに燻ぶる瘴気の残り香が、確かに此処に邪悪が存在した事を物語っていた。

 

 ………………

 

 結局、混沌との接触は多少の情報を得るだけで終わった。

 まぁ予想通りと言えば予想通りなのだが、それでも期待していなかった訳ではない。

 最高の結果は自分が異物としてこの世界から弾かれる事だったのだが…もっと早めに行動すべきだったか?

 否、あの性悪の事だから、どの道結果は変わらなかっただろう。

 逆に、早急に排除されなかっただけありがたいと思うべきだろう。

 

 今回は今まで通り魔道書を探す事になったのだが…夜、大英帝国博物館前で盛大に大騒ぎする覇道・アズラット・エイダ御一行と若造りと猛獣軍団を見かけた。

 うむ、原作通りで何より。

 

 

 最後は破壊ロボの群れ相手に無双しながら、ダゴンかハイドラの群れに引き潰された。

 と言うか、連中が嬉々として向かって来た様に見えたのは何故に?

 

 

 

 祝1000回目

 

 未だダゴンorハイドラと人間でループしてます。

 流石に飽きてきたので、ダゴン&ハイドラの時は海のあちこちを探険している。

 例えば、海溝等の深海に潜り、誰も手を出していない(例外:ルルイエ)海底に存在する霊脈の結節点に赴き、そこから多量の魔力を摂取する事だ。

 此処は同族であるダゴン達も滅多に寄りつかず、極めて静かだ。

 そのため、魔力を摂取する傍ら、瞑想を行い、体内の魔力を循環させたり、術式や戦闘のシュミレーション等をして過ごしている。

 稀に実際に新技や魔術を試す事もあるが、それ以外は殆ど瞑想している。

 視覚的には本来太陽光が届かない場所だが、流石は神格持ちと言うべきか、その程度は全く問題にならない。

 お陰でこの世界では未だに未発見の筈の数々の深海生物を観察する事が出来た。

 うむ、最初の頃から世界不○議発見や動物○想天外が大好きで人嫌いだった自分には中々快適な環境だった。

 でもね、流石に累計1000年以上は飽きるの…。

 しかも、最近は特に信仰されてもいない、或いは伝承が途絶えた格の低い神性にも転生してたりする。

 内訳は超巨大芋虫とか蜥蜴とか蛇とか蜘蛛とか鰻とか鯨とか他多数…。

 マジで八百万に届くかも知れません…。

 推測だが、こいつらは恐らくガチの八百万の神様、つまり天津神の様な人の求めた人型の神様ではなく、ダゴンやハイドラの様な地球原産の生命体が力を持った連中なのだろう。

 だが、格が低いとはいえ神は神。

 一般人が直視すればSAN値が削れる事は間違いない。

 と言うか、結構夜鬼の大地の神々の秘密で見た有名所を除いた連中にそっくりなのは、恐らく偶然ではないのだろう。

 また、種族固有の特殊能力や生息環境といった情報はガンガン貯まる上に、術式での能力の再現等も見当できるため、決して無駄にはならない。

 …ただ、転生時に交尾の可能性が高い種族だったりするとSAN値が削られるけどね…。

 

 人間の魔術師としては相当に水属性と土属性の親和性が上がっており、水との適性だけなら以前見たカリグラを超えるのではなかろうか?

そう言えば、何時ぞやインスマウスに訪れた時、あそこの秘密教団から勧誘が来た。

 その時は丁寧にお断りしたのだが、何だか拝みまくられた。

 他にも、日本の国津神系神社やアジア方面の原始宗教の神殿なんかに立ち寄ると、ほぼ漏れなく拝まれた。

…生き神扱いされてきたんじゃなかろうか?

 

 とはいえまだまだ弱いので、ダゴン&ハイドラに踏み潰されるか、アイオーンに退治される状態は続行中である。

 一応、破壊ロボには対応できるが、遠距離から飽和射撃をされ続けると詰む。

 

 

 

 大体3万回目

 

 祝☆ダゴン&ハイドラ他低位神格卒業!此処まで長かった!!本当に長かった…ッ!!マヂで長かった…ッ!!

 ってか卒業まで3万年近くとか!

 でも、未だに機神召喚は出来ないの…。

 最終的に自分の転生したダゴン&ハイドラは海サソリの如く鋏と尾を備え、体当たりだけでなく、鋏と尾による近接攻撃と大規模津波級の水の操作を可能としていた。

 そのため、尻尾の先端から高圧水流を出すという疑似荷電粒子砲的な事も出来る。ゾイド的な感じに。

 でも、普通に水を操った方が効率が良いのでやる事は滅多にないネタ技に過ぎない。

 まぁ対空攻撃可能な技を得た他、水の竜巻や豪雨を起こす事でシャンタクの機動性を大いに低下させる事に成功し、対空戦もある程度は可能となっている。

 …でもね、その度にアルハザードのランプが全力稼働して性能が上昇して逆転されるの。

 相当負担がある筈なんだけど、主機関を除いて大分ガワが出来始めたので、平時の負担は減っているのでどっこいどっこいといった所だろうか。

 他の神格でも芋虫→蝶、蛾→モ○ラ、植物→ビ○ランテ、蜥蜴→魚食ってるゴ○ラ、蛇→竜等の様に多種多様な進化と遂げていた。

 そして明らかに各地の宗教関係者に拝まれていた。

 いや十字教とかあの辺りの連中からは邪教扱いされてるけど、多神教の連中からは大概拝まれる存在になってしまったのはマジでどうしろと?

 

 んで、最近は人間形態の際は遂に中位以上の魔道書に手を出し始めた。

 その中で特に顕著なのがネクロノミコン:ラテン語訳だ。

 これはミスカトニック秘密図書館に治められた最高峰の魔道書であり、外道の魔術師であっても追い求める程の一品だ。

 これによりクトゥグアの直接召喚が可能になったため、最低でも火力不足に困る事は無い。

 だが、元々水と土に相性の良い自分では、原作の九郎を始めとしたマスター・オブ・ネクロノミコンの様な威力は出せないし、制御も甘過ぎる。

 

 更に、今度はもっと困った転生先になった。

 気付けば、身体が本でした。

 今度は魔道書の様です。

 

 

 

 約3万2000回目

 

 現在は魔道書と人間(男女)を繰り返し中。

 この際、人間の場合は大体行動が決まっており、近場の魔道書を入手し、それを使って更に強力な魔道書を探す事を繰り返すというものだ。

 そして、遂にネクロノミコン:ラテン語訳を使いこなす事に成功した。

 クトゥグア召喚もかなり板についてきたので、制御もちゃんと出来る様になった。

 それまでの使用法?勿論最後の切り札=自爆技ですとも。

 

 んで、魔道書としての人生なのだが…専ら狂人の手稿として生を受ける。

 魔道書と言ってもピンキリであり、ナコト写本やネクロノミコン等の最上位から取りとめの無い狂人の手稿等の最低位まである。

 今現在はオレという魔道書は未だに格が低く、記述内容も精選されていないので、記述の精度が低いのだ。

 ただし、精選さえ終えれば中位程度は確実だと思われる。

 上級(逆十字らの持つ原典の魔道書並)は未だにまともに読めない身としては遥か彼方であると言える。

 しかし、何故に無生物である魔道書への転生なのだろうか?

 確かに魂と魔力を宿すため、転生自体は可能だろうが、精霊化する程の魔力を得なければ全く意味が無い。

 幸い、1人でいる間は殆ど休眠状態なので退屈はしないのだが…。

 それに、情報を精選するためには作者が、最大スペックを発揮するには契約した術者がそれぞれ必要であり、単体ではどうしようもない。

 つまり、何かオレの知らない抜け道があると言う事か?

 

 なお、魔道書としての最後は馬鹿な主又は作者と共に自滅するか、ホラーハンターに焼き払われるか、破壊ロボに蹂躙されるか、ダゴン&ハイドラに踏まれるかである。

 

 

 

 凡そ4万回目

 

 キリが良いので記録。

 魔道書になった事の利点は、自らの記憶整理が容易くなった事だと思う。

 と言うのも、魔道書という超高性能な魔術式CPUとなる事で、自身の記憶、つまり記述を客観的に見る事が出来、それを通じてうろ覚えだったり、精度の低い個所が容易に発見できるのだ。

 これに人間転生時にその部分に詳しい魔道書を探し、記憶する事で精度を高めていく事が出来る。

 とは言え、魔道書転生時には記述の改訂なんて出来ないので、微妙にもどかしいのだが。

 まぁお陰でループによる成長速度が自覚できる程度にまで高まったので良しとしよう。

 

 これにより、最近では実戦のみはもう十分だと判断し、人間の時に今まで見れなかった高位の書に手を出しまくり、魔道書の時に整理していくというライフスタイルが固まった。

 なお、大体においてはモグリの魔術師で魔道書探し、陰秘学科で実践している。

 最近では陰秘学科に入学後、数か月程度でネクロノミコン:ラテン語訳の所持を許可されるに至っている(無論、素行には気を付けているが)。

 

 とは言え、クトゥグアの召喚は元々得意ではなく、同じ魔力消費ならクトゥルー由来の水の魔術で数倍の規模を破壊可能だ。

 だが、どうしても水場でないと最大威力を出せない水に対し、クトゥグアとその眷属は水場を除けば何処でも活用できる。

 錬度は徐々にとは言え上がっているとは言え、それは水と土程ではなく、激しくもどかしいものだった。

 これを打破するには自身の成長を待たねばならず、相当の回数を経なければならない事が簡単に予想できてしまったため、今から憂鬱になった。

 

 

 

 3万回未満のとある回

 

 ソレは空腹のまま、寝ぼけたままに召喚された。

 それでも、目の前に立つ黒と白の人型が、自身の敵である事だけは明確に認識していた。

 周辺に存在する生命を喰らいながら、急速に醒めていく意識の中、ソレは戦いの開幕を告げる様に咆哮した。

 

 ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイ―――――ッ!!

 

 脱皮を繰り返しながら、両の鋏と尾を振り回し、呼び出された洞窟を破壊する。

 その全身が夜空の下に現れた時には、既に全長は200mに届かんかという程に巨大化していた。

 既に召喚のための祭壇は意味を成さず、制御するための魔道書も回収されて此処には無い。

 後はただ、空腹かつ敵の存在を知った怒れる怪獣がいるだけだった。

 

 「来るぞ、九郎!」

 「おうよ!」

 

 対するは黒と白の人型、鬼械神デモンベイン(完成度40%+動力源と内部構造の多くはアイオーン)が未だ未完成の身で海神へと立ち向かう。

 先手を取ったのは既に戦闘体勢を整えていたデモンベインだった。

 

 「力を与えよ/力を与えよ/力を与えよ!バルザイの偃月刀!」

 

 素早く召喚を行い、呼び出すは霊験あらたかな刃。

 その刀身が灼熱と化し、周辺の水気を蒸発させながら、ダゴンの甲殻へと振り下ろされる。

 だが

 

 ガギンッ!

 「硬ぇ!?」

 「不味い!下がれ!」

 ギュアアアアアアアアッ!

 

 その一太刀は重厚な外殻によって完全に防がれる。

 寧ろ、渾身の力を込めて振り下ろしたが故に、その後は隙だらけ。

 それを悟ってか、ダゴンは両の鋏でデモンベインを拘束した。

 

 「ぐお!この、放しやがれ!」

 「彼奴め、海に引き込むつもりだぞ!」

 

 アル=アジフの警告と同時、ダゴンがデモンベインを拘束したまま、海へと突進する様に突き進んだ。

 

 「ぐおおお!?」

 

 大質量が叩き込まれた性で荒れ狂う海流に、デモンベインが成す術も無く翻弄される。

 しかし、此処はダゴンにとっては自らのテリトリー。

 海流に束縛される事等なく、寧ろ大空を行く鳥の様にいっそ優雅とも言える程に巧みな泳ぎでデモンベインから距離を取る。

 

 「九郎!シャンタクなら水中でもある程度活動可能だ!」

 「解った!シャンタ…っがぁ!?」

 

 次いで、機動性向上のためにデモンベインが飛行ユニットたるシャンタクを展開しようとするも、それを邪魔する様に海流が激しさを増し、デモンベインの動きを封じた。

 

 「く、この!」

 「ぬぅぅ、流石はクトゥルーの眷属か!」

 

 その致命的な隙を、この邪悪な海神が見逃す筈が無い。

 一度距離を取っていたダゴンが旋回し、猛烈な勢いで突進してくる。

 

 「エルダーサイン!」

 

 咄嗟にアル=アジフが旧神の印を発動させ、その身を守る盾とする。

 

 ギュアアアア!

 

 だが、迫り来るダゴンは途中で更に加速、その甲殻で包まれた巨体の質量を存分に生かし、展開されたエルダーサインへと盛大にブチかました。

 

 「ぐああああああああ!?」

 「きゃあああああああ!?」

 

 その絶大な運動エネルギーを、エルダーサインは一瞬だけ緩める事しか出来ずに弾け飛んだ。

 一撃で幾つかの計器が火を噴き、エラーや警告音を吐き出す。

 だが、敵と零距離である現在はデモンベインにとっても勝機となる。

 

 「こ、の、舟虫野郎があああああああああああああッ!!」

 

 衝撃と苦痛の中、九郎が咆哮と共にバルザイの偃月刀を振り上げる。

 狙いは甲殻と甲殻の隙間、節目だ。

 そこならば、ある程度は刃も通る。

 だが、

 

 ガギン!

 

 (クソ、こんな揺れてちゃ上手く狙えねぇ!)

 ギュアアアッ!

 

 その行動が怒りを買ったのか、ダゴンが更に加速し、デモンベインの機体が海底へと叩きつけられた。

 

 「アル!何かないのか!?」

 「あの機動性に追従するのは不可能だ!何とかして空か陸に上がらねば嬲り殺しだぞ!一応、シャンタクならある程度は動けるが、それとて何処までいけるか…。」

 

 その言葉に、九郎の勘が何かに引っ掛かった。

 

 「アル、…………って出来るか?」

 「む、一か八かだぞ?」

 「ジリ貧からの嬲り殺しよかマシだろ?」

 「解った、サポートは任せよ!」

 

 ダゴンの持つ野生の勘によるものか、はたまたその中にいる者の経験則によるものか、再び海流の動きが強まり、デモンベインを拘束せんとうねり始める。

 

 「行くぞアル!」

 「シャンタク展開!」

 

 デモンベインの背面にまるで書のページが折り重なって出来た翼の様な印象を受ける飛行用ユニット「シャンタク」が現れる。

 そして、刃金の身体が水中を飛ぶ様に自在に機動し、こちらを捕えようとする海流を回避した。

 

 ギュアアォ!

 

 それに対し危機感を抱いたのか、ダゴンが先程以上の加速で以て突進していく。

 それは水中でも機動性を確保したデモンベインを以てしてもなお、回避の難しい一撃だった。

 

 「九郎、来るぞ!」

 「応!」

 

 再び展開されるエルダーサイン。

 しかし、先程と違うのは今度は3重であると言う事だ。

 そこに、ダゴンが突っ込んで切る。

 凄まじい衝撃に一枚目のエルダーサインが弾け飛び、数秒を置いて二枚目も同様の末路を辿る。

 

 「踏ん張れ九郎!」

 「があああああああああああッ!!」

 

 三枚目のエルダーサインに追加で魔力を込める。

 それでも徐々に罅が走り、衝突から10秒も持たずに砕け散る。

 これで突進の衝撃を殺し切る事に成功したものの、ダゴン自体は未だに加速を続けている。

 

 「シャンタク、全力稼働!」

 「お出でませ、お空の旅ってなぁ!」

 ギュアッ!?

 

 だから、此処からは反撃の時間だ。

 ダゴンの甲殻を鷲掴み、シャンタクの推進力が徐々に二つの巨体を持ち上げていく。

 それにダゴン自身が生み出していた推力も加わり、ニ体は徐々に海面近くまで浮上する。

 

 ギュゥアアアアア!!

 

 自身のテリトリーから抜ける事を嫌ったダゴンが抵抗とばかりにもがく。

 しかし、減速したとは言え、既に加速した後では余り意味も無い。

 

 ザッパアアアアアアン!

 

 夜の海に、ニ体の巨体が躍り出る。

 片や水銀の血を流す白黒の機神。

 片や古代の水棲生物染みた姿の海神。

 縺れ合う様にしながら、ニ体は空中でなおも闘争本能のままに戦闘を続行した。

 

 「喰らえぇ!」

 

 デモンベインが至近距離から頭部に内蔵されたバルカン砲を連射する。

 だが、その弾丸が命中した筈のダゴンの甲殻は、まるで霞みか何かの様にその姿を消した。

 

 「何だ!?」

 「いかん、距離を取れ!」

 

 それは霧だった。

 ダゴンの巨体が霧となって宙に溶けていく。

 そして、周辺の気候が瞬く間に悪化し、猛烈な豪雨となって荒れ狂い始める。

 

 「彼奴め!天候操作に霧への変化だと!?どー考えても完全復活しているであろう!?」

 「こんな奴どうやって倒すんだよ!」

 「大火力で一撃で倒すしかあるまい!何とか隙を見出すのだ!」

 

 轟く雷鳴と土砂降りの豪雨が視界と機動を妨げる。

 更に、霧と化したダゴンは海水を水柱へと変じさせ、蛇の様にのたくらせながらデモンベインへと仕向た。

 

 「こんなん当たるかよ!」

 

 だが、水中とは異なり、空はデモンベインに分があった。

 シャンタクを用いた複雑かつ高速の空中機動により、水柱は無為に宙を貫くだけだ。

 だが、近づいた所で霧となったダゴンを撃破する事は出来ない。

 否、

 

 (いや、そもそも近づく必要があんのか(・・・・・・・・・・・・・・・・・)?)

 

 だから、九郎はデモンベインに距離を取らせた。

 一路目指すのは直上、豪雨を降らせる雲に突入し、それを突き抜けんと更に上を目指す。

 

 「く、九郎!?」

 「アル!魔杖展開!」

 「ええい、後で説明せよ!」

 

 雲を貫き、月夜の雲海の上で、デモンベインが眼下を見下ろす。

 その視界は霊視により、雲を貫き、海上に存在する霧となったダゴンを正確に捉えていた。

 その手にはデモンベインそのもよりも更に大きな物体が握られていた。

 魔法使いの杖にして、対霊狙撃砲。

デモンベインの素体となったアイオーン、その最強兵装だ。

 

 「神獣形態!」

 「イア・クトゥグア!!」

 

 呪文と共にフォマルハウトに封じられた旧支配者の一端が召喚される。

獣の形を取った必滅の炎が分厚い雲を貫き、海上の海神へと突撃する。

 それに対し、ダゴンは水柱を眼前に収束させ、防御を固めた。

 だが、怒れる旧支配者にそんなものは障子紙よりもなお薄く、一瞬の停滞も無く突破され、霧となった身体すら轟音と閃光と共に完全に消熱した。

 

 後に残ったのは、雲が吹き散らされた事により現れた月とその光を浴びて夜空を舞う魔を断つ剣だけだった。

 

 

 

 




次はもっとハードな転生先が出ます。

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