まぁ原作がギャグ路線なので無理にシリアス入れちゃった感があるが…。
取り敢えず、18禁済ませたらカンピオーネに行くよー。
番外編 這い寄れ!ニャル子さんとのクロスオーバー
「真尋さん!御近所さんに挨拶しましょう!」
ある日曜日の午前、八坂邸の居候のニャルラトホテプ星人ことニャル子が唐突に宣言した。
「で、突然どうしたんだ?ってか、今までそんな事しなかっただろ?」
真尋が訝しげにニャル子を見つめる。
既に彼女やクー子、ハス太が滞在し始めてから結構な日数が経っている。
と言うのに、彼女がそんな殊勝な真似をしたのは真尋の母である頼子位なものだった。
それを今更御近所付き合い? 何か企んでいるとしか思えなかった。
「あ、はい。実はこの近所にニャルラトホテプ星人に縁のある御一家がいるんです。ただまぁ、ハーフの奥さんとスリークォーター、要するに四分の三ニャルラトホテプ星人のお子さん2人っていう複雑な御家庭でして…。」
「あー、御役所的に無用な刺激はすべきじゃないし、複雑な家庭環境だからあんまり触りたくないって事か? でも長期滞在するなら挨拶しといた方が良い、と。」
「まーぶっちゃけるとそうなるんですよねー。でも、今なら情勢も結構落ち着いてますし、大丈夫かなーっと。」
あははは…と誤魔化す様に笑うニャル子に、ジト目を向ける真尋。
まぁ言ってる事は理解できるので、視線は手元の雑誌に戻した。
「んで、挨拶するなら一応贈り物とかはあるんだろうな?」
引っ越しの挨拶と来たら引っ越し蕎麦だが、ニャルラトホテプ星人の、というか邪神どもの文化なんてオタク文化が咲き誇っている事位しか知らない真尋である。
想像すらできなかったし、SAN値的な意味で想像すらしたくなかった。
「あ、それならこれがあります!」
てーれってーと例のBGMを背景にニャル子が取り出したのは…
「数の子ならぬ無形の落とし子の塩漬けー!」
「どうしてお前はそんなんばっかなんだ!」
「いだー!? だからフォークは無しって言ってるじゃないですかぁ!?」
取り敢えず、近所のスーパーで蕎麦の詰め合わせを購入する事になった。
…………………………………………………
「えーと、詰め合わせ詰め合わせ…。」
「あ、真尋さーん!こっちですよー!」
「解ったから静かにしろって…。」
相変わらずのニャル子の騒がしさを、保護者役の真尋が嗜める。
「少年、私にもこれ買って…。」
「あの…僕も…。」
「クー子は自分の稼ぎがあるだろうがッ!食玩位は自分で買え!ハス太君は…まぁいっか。あんまり高いのはダメだぞ。」
「ありがとう、真尋お兄ちゃん!」
「少年、ニャル子に靡かないと思ったらまさか…ッ!」
「フォークは5本で良いか?」
「ごめんなさい。」
そして、夕飯の材料もついでに買おうとした所、嗅ぎつけたクー子とハス太の2人まで便乗してきた。
後者は無害だが、前者は割とこうして悪質な真似をしてくる事もあるため、真尋としてはニャル子と並んで要監視対象だったりする。
「えーと…今日は豆腐と長ネギにピーマン…あ、マーボー豆腐の元も安いな。今夜はこれにするか。」
「真っ尋さーん!是非とも激辛外道マーボーn「誰も食えなくなるから止めろ。」はぃ…。」
どーして何事もネタに走るからコイツは…と内心で溜息をつきながら、常時ハイテンションのニャル子を捌く真尋。
その様子、既に熟練の領域に入っているのを周囲の者だけが気付いていた。
(っと、マーボー豆腐の元がラスト一個。早く確保しないと…。)
買い物籠を揺らしながら速足で急ぐ、が、ちょっと遅かった。
「おしゲットー! っておや?」
「え…。」
一手先にマーボーの元を手に入れたのは、ハス太君とそう変わらない歳恰好の少女だった。
ただ、真尋が驚いたのはそこじゃない。
銀髪碧眼に白磁の肌、そして何処か能天気かつ溌剌そうな印象を受けるその表情は、どう見ても傍らにいるニャル子にそっくりだった。
「おやおや、御同類かい? ふむふむ…ほら。」
何やら真尋達を見て納得した後に、目の前のニャル子のそっくりさんが手に入れたマーボー豆腐の元を突きだしてきた。
「って、悪いですよ! 先に取ったのはそっちじゃないですか!」
「いやいや、君の籠の中身からするに、今夜はマーボー豆腐でしょ? うちはまだ在庫あるし、安売りしてるから買うだけだしね。これ一個手に入んなくても無問題無問題。」
「は、はぁ…。」
「それにお連れさんの方、最近引っ越してきた子でしょ? 先住としては仲良くしときたいかなーって。」
にこやかにそう告げるそっくりさんに、真尋はやはりか、と思考する。
(ニャルラトホテプ星人って、随分と外見が似てるんだな。そう言えば、ニャル子の兄も髪の色とかは同じだったし…まぁ外国人から見た日本人って所かな?)
「…明日にでも挨拶に行きますので、ドーゾコンゴトモヨロシク。」
「何で片言なんだお前は…。」
「あはは、嫌われちゃったかな?」
「すいません、彼女が失礼を…。」
「いーよいーよ、若い子なら私を警戒しても仕方ないし。」
やや残念そうに言うそっくりさんに、真尋は慌てて頭を下げる。
(にしても、珍しいコイツの態度といい容姿といい、この人がニャル子の言ってたご近所さんかな?)
「んじゃ私はこの辺で。じゃーねーご両人。」
「あ、はい!ありがとうございました!」
そう言ってそっくりさんは去っていった。
残ったのは未だにそっくりさんが去っていった方向を睨むニャル子と真尋だけ。
「ニャル子、お前どうしたんだ?さっきからおかしいぞ?」
「…いえ、本部が出来るだけ刺激しない様に、って言った意味を痛感しまして、えぇ。」
「なんだそりゃ? まぁいいや、残りの買い物を済ませるぞ。」
…………………………………………………
「やっべーです真尋さん。あの人達ガチで危険です。」
「取り敢えず説明しろ説明。それだけじゃ訳解らん。」
帰宅後、真尋が早速ニャル子を問い質した結果、珍しくガチな反応が返ってきた。
「昼間に会ったあの人ですけど、多分魔道書の精霊ですね。それも最高位の。」
「魔道書の? それって何かヤバいのか?」
「ヤバいも何も戦略核地雷並ですよ!! 最初の護衛任務、赴任先が地球だってのにみょーに人気が無かった理由が今解りました! あーもーあーもー! 今日の出会いも絶対敵情視察に決まってます! 私退治されちゃうんだー! 真尋さん、悔いを残さないためにも一発私t「落ち着け馬鹿。」イッダーーー!?! フォークは反則ですよー!」
余りのヒートアップぶりに真尋が何時もの0フレームフォークで鎮圧する。
この辺り、既に熟練夫婦並だとは本人達だけが知らない。
「で、何がヤバいのか説明。」
「あ、はい。魔道書は基本私達の技術を人間が使うためにマイナーチェンジしたものなんですけど…中には私達にも目茶苦茶ヤバい代物もありまして。しかも、あんな風に精霊が元気に独り歩きしてるって事はそれを使いこなせる契約者もいる訳でして…。」
「それだけじゃないんだろ?」
確かに、地球上でそんな存在がいたら確かに危険かもしれない。
だが、それはあくまで同じステージに立っただけであり、危険度だけなら邪神ハンターの頼子等もいるため、どっこいどっこいでしかない。
「はい、問題はあの精霊がこの宇宙の外の私達に対抗するための魔道書だって事です。」
「この宇宙の外って言うと…外宇宙じゃないのか?」
「私達のいる外宇宙じゃなく、文字通りの異世界です。ドリームランドとも全く違います。」
そう言うニャル子の顔には普段の茶目っ気は微塵も無い。
あるのは真剣さのみだった。
「真尋さん…今から言う話を聞いて、私を、私達を嫌いになりませんか?」
「今更だな。それに話を聞いてみない事には判断がつかない。」
「あは、真尋さんらしいですね。」
そう言って微笑むニャル子は、何時もの彼女らしくなく、今にも消えてしまいそうで…。
真尋は何故か、彼女のそんな顔を見たくない、と思ってしまった。
「多くの宇宙で、私達は人間達が伝えている通りのモノとして存在しています。宇宙を、正気を、魂をを犯し、侵し、冒す。冒涜的なまでに巨大で強大な存在。ただ其処にいるだけで、何もかにもを汚してしまう者。それが私達です。」
「真尋さん…この宇宙はね、遥か遠い昔にそんな私達でも穏やかに暮らすために作られた、理想の宇宙なんですよ。触れれば腐らせてしまうなら、腐らない様に変えてしまえば良い。そんな傲慢を満たすために。」
「私達ニャルラトホテプ星人が宇宙連合の中でも他の種族よりも影響力が強いのは、この計画を立案、実行したのが私達だからなんです。だからこそ、この宇宙の現在の秩序を崩壊させる様な連中は見逃さないし、あーいう外から来た人達の対応も私達のお仕事なんです。」
「…幻滅しましたか? でも、これが真実なんです。この宇宙の、一番根っこの部分。」
「ねぇ、真尋さん。どう思いましたか? 化け物だって、改めて実感しましたか? 幻滅しましたか?でも、これが私達なんです。 これが私達「馬鹿。」へ?」
何か1人、泣きそうな顔で鬱シーンに突入している馬鹿を罵倒する真尋。
「お前の今まで言ってきた事は嘘か!? 今まで此処で過ごしてきた生活は嘘か!?」
「ち、違います!」
真尋が普段のニャル子への態度をかなぐり捨てて、彼女の両肩を掴んで、逃げられない様に拘束する。
その程度、ニャル子にとっては拘束とはならないが、普段と全く違う惚れた男の様子に何故だか抵抗する気力が湧かなかった。
「お前が、僕に惚れてるのは、本当の事なんだな!?」
「は、はいッ!!」
「それなら、別に良い。今の生活が続くなら、そんな大層な話は僕には関係ない。」
普段の真尋からは想像つかない様な、断固とした意思。
その姿にニャル子は遠い昔に見た、初恋の男性を思い出して…
「うぇぇぇぇぇぇんまびろざ~~ん!」
「あーもう纏わりつくなうっとおしい!」
「あいたー!?」
感動の余り抱きつこうとしたが、それは勿論迎撃されたのだった。
…………………………………………………
小一時間後。
「うぅぅ…あの場面は抱き締めるのが正解じゃないですか~…。」
「言ってろ。んで、結局他の世界の魔道書の精霊がいるとどうなるんだ?」
「あ、はい。例の御近所さんがあんなブツを持っていて、尚且つ話を聞かない問答無用の邪神ハンターだった場合、頼子さんの時以上の修羅場になります。」
思い出されるのは頼子の帰宅に居合わせてしまったニャル子とクー子への対応だ。
名乗りの直後、瞬時にフォークで武装し、殲滅の意思を見せた頼子の対応に、アレがまた起きるのか…と真尋は頭が痛くなった。
「あー、確かに厄介だな、それは…。」
「んで、最大の問題はそういった連中に限って、戦術核程度の火力は平然と持ってたりします。」
「つまり、街が壊滅の危機って事か…。はぁ~、ったく。どうして僕の回りにはそんな連中ばかり集まるんだ…?」
「それはもう真尋さんの人徳としか言い様g「黙ってろ。」ぐぇ!? フォークは止めてくださいってばぁ!?」
「で、どう対応するんだ?」
更に酷くなった頭痛を堪えつつフォークを投擲した真尋は何事も無い様に尋ねた。
「あー、それはですね……ぶっちゃけ何も考えてません。」
「そうか、何本が良い?」
「おーけー真尋さん、落ち着いてそのフォークを降ろしてください。流石の私でもそれ全部は勘弁です。」
どーどーと手を翳すニャル子の視線の先には、大量にフォークが詰め込まれたバッグに手を突っ込んだ真尋の姿があった。
100や200では効かないその量に、流石のニャル子も冷や汗が出ていた。
「まぁ今日会った感じでは理不尽にこちらを殺しに来る事もないでしょうし、念のため、クー子達も一緒に行く感じで予定通りに贈り物を持ってご挨拶に伺いましょう。」
「もし戦闘になったら?」
「ふふ~ん、その時はこの銀の鍵でドリームランドに強制転移した後、改めて皆で袋にします!」
「前から思ってたけど…お前、公務員の筈なのに悪役の方が似合ってるよな。」
「いや~それ程でも♪」
「褒めてない!断じて褒めてないからな!」
………………………………………………………
翌日の午後
「さて、やってきましたご近所さんの家!」
「アシュトンか…こんな所までクトゥルフ神話準拠…。」
「少年、此処で立ってても時間の無駄。」
「お、お兄さん、早くチャイムを鳴らした方が…。」
「あ、あぁ、そうだな。」
ピンポーンと、極普通の一軒家の極普通なチャイムが鳴る。
此処まで、この家の危険性をさんざっぱら聞かされていた身としては、真尋は尋常じゃない緊張感を感じていたのだが、その余りの普通な様子に肩の力が抜けそうになっていた。
だが、此処まで手を繋いできたニャル子の緊張が未だに解けない事からも、警戒を解く訳にはいかなかった。
…その2人の様子をクー子とハス太が嫉妬を込めて見つめている事を、当事者達のみが知らなかったりする。
「はーい!」
とたとたとた…という足音と共に、ドアが開いた。
「え…?」
「うわ。」
「ニャル子そっくり。」
「はわわわっ。」
クー子の言葉が全てを語っていた。
銀髪碧眼に白磁の肌を併せ持った女性。
その姿は正に「ニャル子が大人になった姿」を想像したらピタリと当て嵌まる様な、そんな容姿の女性だった。
ただ、そのキリリと引き締まった表情はニャル子に無いものだし、胸部装甲は現在のニャル子と殆ど差は無いが…それはまぁ個人差と言う事で。
「おや、君は確か惑星保護機構の…。」
「初めまして、八坂ニャル子と申します。事前にお知らせせずにすみませんが、惑星保護機構の当該地域の担当者として挨拶に参りました。あ、これどうぞ。引っ越し蕎麦代わりと言う事で。」
「これはご丁寧に。私はリーア・アシュトン。この家の家長だ。取り敢えず、立ち話もなんだから上がっていかないか?」
これが後にそこそこ長い付き合いになるアシュトン一家との出会いだった。
「おや、先日の子達かい? もうちょいでお昼だし、昼食食べていきなー。」
「い、いえ! そんな厚かましいですよ!」(こんな核兵器貯蔵庫にいられるかー!)
「ニャル子、お腹減った。」
「なんでアンタはこのタイミングでそれを言うか!?」
「あれ、母さんのお客さん? 初めまして、アレクです。よろしくね?」
「あ、はい。 八坂真尋です、お邪魔しててすいません。」
「良いですって。お客さんなんて珍しいですからね、ゆっくり寛いでください。」
(実に絵になりますね…。)
(どっちも優男だから腐女子に掛け算されそう…。)
「ただいまー。あ、お客さん初めまして。妹のアリスです。」
「「似てねぇ(ない)!?」」
「な、なんだよ、失礼な子達だな!? 結構気にしてるんだよこれでも! 仕方ないじゃないか僕だけ父親似なんだからら!!」
「すいませんすいませんうちの連中が本当にすいませんこっちで叱るんで許してやってくださいマジで。」
「「………。」」 フォークで全身刺され中の馬鹿二名
「おや、お客さんかい? こんにちは、僕はぺルデュラボー。こっちの彼女はエセルドレーダさ。」
「こんにちは、皆さん。ご紹介にお預かりしたエセルドレーダです。」
「あ、ご丁寧にどうも。八坂真尋です。」
(なんでこー核弾頭よりヤバいのがぼかすかいますかね此処は…。)
(諦メロン。まぁこっちじゃ手ー出されない限り大人しくしてるからさ。)
(これ、本国にどう報告しろってんですか。胃がマジで痛い…。)
「はぁぁぁぁぁぁぁぁいこぉんばぁんわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!グッッットイブニィィィィィィィィィング!! お子達よ、我輩こそが科学の頂点を直走る世紀の大☆天☆才! 世界も時間も空間も超越した男、ドクタァァァァァァァァァァァァウェェェェェェェェェェェェェストであーるッ!!」
「「「「「「「帰れッ!!」」」」」」
「よく来たねドクター。まぁ座ると良い。」
「呼んだのお前かよ!?」
山なし落ちなしで終わり。