さつきと再会したあの日からかれこれ一週間。その間で特別な何かが起こるでもなく、俺は平和に高校生活を満喫……出来ていなかった。
「また5組に先輩達来てるらしいよ〜」
「西野さんと東城さん可愛いもんねぇ〜」
「ねぇ〜それにくらべて我ら8組の美少女といったら……」
数人の女子達が俺の隣にいる件の『美少女』に顔を向けている。俺もそれにならって横目で見てみると、ふぁ〜……と大きく口を開けて欠伸を一発。それを見た女子達は、はぁ…と一斉に溜め息を吐き出し、俺も苦笑を浮かべる。
さつきが俺の苦笑に気付き、「何?」と聞いて来るがそれに「何でもねぇよ」と返し、次の授業の準備に取り掛かる。
この一週間というもの、先輩達や他のクラスの奴らが一目だけでも件の三人の美少女を見に一年の階に来ていた。
8組にいる美少女と言えば俺の隣にいるさつきなのだが、如何せんこいつの場合『美少女』の頭に『残念』が付く。だからなのか分からないが、早い段階でさつきに見切りを付けた奴らは、5組にいる西野と東城の二人を見に行っているという訳だ。
その西野と東城の二人はというと…。
『中学の時と同じだし、気にしてても仕方ないかな〜って』
『西野さんが一緒のクラスで本当に良かったよ。じゃなきゃ、学校に行けなくなってたかも……』
中学の頃からそんな視線に慣れていたからか西野は笑っていたが、東城は男子からのそういった視線に曝されるのにまだ慣れていないため、泣きそうになっていた。
性格的にもカラッとしている西野と違って、溜めこんでしまう東城には辛いと思う。
何度か二人を見に行っているクラスの男子が言うには、「西野さんはリアルにアイドルっぽくて良い!東城さんは、大和撫子っぽくてそれがまた良い!」という事らしい。
この男子は別に小宮山病を発症していないらしいが、本当かどうか俺には分からん。
そんな俺だが、クラスの一部の男子から嫉妬や憎悪といった中学の時と同じような視線を貰い、一部の女子からは疑問と興味といった視線を貰っている。
一部というのは、どのクラスにも必ずいるイケている男子グループと綺麗系の女子グループの事だ。
ここで冒頭にあった、俺が平和に高校生活を満喫出来ていないという文句につながる。クラスの一部ではあるが男子と女子にそんな視線を貰いながら、平和に高校生活を送れる訳がない。
勿論、他の男子や女子とは普通に会話も出来ているので、孤立無援ということはない。
俺がなぜこのような立ち位置になっているかというと、それは勿論西野と東城、おまけにさつきといった件の美少女達と仲が良かったりするからである。
一緒に下校するのを始め、中学ではもうお約束となっていた昼休み時の西野の俺のクラス訪問は、ここ高校でも続く事になったからである。この時に三人で自己紹介があったりしたが、それは別にいいだろう。
また中学の時とは違い、東城が西野と同じクラスなので二人で来るものだから更に大変だった。金魚のフンよろしく先輩やら同期やらの男子、更には二人と仲良くなりたい女子がゾロゾロと二人の後を付いて歩き、廊下を一時だけ一方通行にするまでとなったのだ。
これはもうあれだ。小宮山病は伝染病であったという事だとこの時俺は悟った。
二人が8組の教室に入るまで廊下はそんな馬鹿達であふれるが、入ってしまえば不承不承散って行くからまだ良かった。そして、二人が俺の席に近付き一緒に食べるとなった時、俺の隣にいるさつきが「あんたも良いわね。両手に花で」と言うものだからまた大変。
教室に残っている男子から殺気と呼ばれる類のものが突き刺さり、廊下に残っている奴らからも同様のモノが飛んでくる。
二人に『昼休みは別に取ろう』と何度頼んでも、『嫌♪』『駄目だよ』と良い笑顔で言われるから困ったものである。さつきとは一緒にご飯を食べるわけでも、下校するわけでもなかったが、無難に仲が良い女友達という関係を築いている。
まぁ、他の男子と比べると俺との仲が最も良いのかもしれないが……。
と、そんなこんなありつつ俺は一週間高校生活を送っていた。
「それにしても一週間もよく飽きないで続けるわよねー男子って」
欠伸をしてから、細目で廊下を行く男子を見ていたさつきが何ともなしに口を開く。俺に言ったのか分からないが、俺はそれに答える。
「お前も三日前までアレの対象だったのにな」
「きっと飽きたんでしょ?ま、ウザくないからあたしとしてはラッキーだけど」
廊下に向けていた顔を俺に向け、頬杖を付くさつき。行儀が悪いぞって言えば、別に良いじゃんと返ってくるので、それに関しては何も言うまい。
「って言うかさーあんたどうやってあんな可愛い子達と仲良くなったのよ。言っちゃ悪いけど、あんたの顔ってそこまで良くないし。如いて言うなら、普通?」
こいつ……口が悪いにも程がある。まぁ、俺も『この顔』は普通だって思うし間違ってないんだが、聞いていて気分の良いモノじゃないのも確かだ。
「うるせーっての。二人とは同じ中学だから仲が良いだけで、他意はねぇよ」
「ふーん…でも、あんたと同じ中学でカッコいい男子がいるらしいじゃん。そいつとは仲良くないみたいだけど?」
それって大草の事だよな。あいつ高校に入ってから俺らと絡まなくなったからなぁ……。ま、女子の話を聞くに西野と東城と似たような状況みたいだし、来れないだけだろ。
「ってかさ、あのエロダコもあんたと同じ中学だったって本当?あいつだけ、他の男子と違って毎日あたしに話しかけてくるんだけど」
小宮山…俺だけじゃなく、こいつにもエロダコ言われてるぞ。ま、あいつは大草と違って昼休みになればここに来ているし、他の男子よりは二人やさつきと話してるかもな。
あいつは良くも悪くも『馬鹿』だから、他の男子のそういった視線なんか感じてないっぽい。ちょっとだけ、小宮山が羨ましいと思ったのは内緒だ。
「大草は、西野が好きらしいけど西野は相手にしてないからな。小宮山は可愛い女子が好きなだけの馬鹿だから、諦めた方がいいぞ」
「……あの顔じゃ無理でしょ」
(またこいつさらっと可愛いって…)
「…そんな事言うなって。小宮山が可哀想だろ?」
「…そんな顔で、そんな事言ってもフォローにならないわよ」
さつきと軽口を言い合っていると、授業開始のチャイムが鳴る。次の授業は、黒川先生の数学だ。……当てられないように静かにしておこう。
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翌日、高校に登校していると何やら廊下で騒ぎが起きていた。それを尻目に、自分の教室に入ろうとすると騒ぎの向こうから知っている声が聞こえてきた。
「サイテーッ!見てくれで態度変わる男って糞以下だね!あんたみたいなアホ共がウロウロしてて、あたしら一年本当に迷惑してんのよ!!とっとと失せなッボケ共!!」
おいおい、さつきの奴また廊下で大声出して何や…ッ!!これって確か!騒ぎの起こっている所に走って行くと、思った通りの状況になっていた。
三つ編みにメガネを掛けた東城を後ろに庇い、大小の先輩二人と対峙しているさつき。と、俺がそれを確認した瞬間、さつきの踵落としが小さい先輩の方に炸裂し、小さい先輩は行動不能になった。
「やったー!見よう見真似のかかと落とし。あたしってば才能ある〜♪」
馬鹿。そんな事言ってないで、もう一人の方に集中しなきゃ駄目だろ。そんな俺の想いも虚しく、原作同様さつきの踵落としは大きい先輩の手に寄って防がれてしまう。仕方ない、助けるか。東城もいることだしな。
「馬鹿か?踵落とし予告されてりゃ防ぐのなんてわけねぇーよ。しっかし、顔は可愛いけど、おっかねぇ奴だな」
「は、離しなさいよ!」
「いや、離したらまた蹴って来るだろッ」
「もーっ!さっきからパンツ丸見えなんだってばー!!」
「え……」
二人が話している間に、野次馬となっている生徒達を縫って進み、大きい先輩の真後ろに着く。そして、大きい先輩がさつきのパンツを見て油断しているところで……俺はその先輩の急所を『思い切り』蹴り上げた。
「☆●〒§¶ΓΘッ!!」
後ろの方で、男子が自分の股間に手をやり内股になっていたりしたようだが、それには目もくれず足を急に離されてバランスを崩し、尻餅を着いたさつきに手を差し出す。
「後先考えずに良くやるよな、お前って。ほら、立てって。さっきからパンツ丸見えだぞ。東城も大丈夫か?」
さつきから東城の方に顔を向けると、少し眉を八の字にしながらも「うん。北大路さんが助けてくれたから」と答えてくれる。その言葉通り怪我もしてないようだし、良かった良かった。
てか、さつきパンツ丸見えだぞ……それに、イチゴ柄はお前に似合わねえよ。
この時の俺は気付いていなかった。原作でも、さつきにフラグをきちんと建てる事になる出来事がコレだったという事に……。
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「なぁなぁ、あの話って本当か?」
「あぁ、東城綾だろ。三つ編みにメガネ掛けたらまるで別人。俺一瞬で冷めたし」
授業中そんな話がそこかしこでされている。朝のあの事件は、なぜか問題にならなかった。なんでも、先輩二人が自分の名誉の為に無言でいるとかなんとか…。
逆に東城の事は噂になり、ついさっきの出来事にも関わらず既にクラスの大半に知られている。東城の事をよく知らない奴らが何を言ってるんだ、という気持ちもあるがそれを抑えて、黒川先生が黒板に書く事をノートに写していく。
東城をあの後直ぐにやって来た西野に任せたが…心配だな。東城の性格上、男は怖いモノと思ってしまったかもしれない。後で、小宮山を連れて行くか。あいつのタコ踊りは、東城のツボだ。きっと、笑ってくれるだろう。
「でも本当にびっくりよねー。助けなきゃって思ったあの子が、東城さんだったなんてねー。皆のヒロインにもああいう一面があるってあたし好きかも。西野さんにもあんな一面あるのかしらね〜」
隣で足を組み、体を俺に向けながら話すのは朝の事件の当事者でもあり、一番の被害者(パンツを不特定多数の奴らに見られたという意味で)のさつきだ。
こいつってば俺の手を掴んで立ち上がるなり、風のように自分の教室に走って行って、俺が教室に入って見たのは机に顔を押し付けて悶えている姿だった。
それが少し時間が経つとこんな感じになるのだから、こいつは本当におかしな奴だと思う。
「ま、それで幻滅した男子はたくさんいるかもしれないけどねー♪」
そう言って俺をからかうさつきに溜め息を一つ出して小声で返す。
「俺は東城のあの姿は前から知ってたし、どうも思わねぇな。ま、それで東城の周りが静かになるんだったら良い事だな」
からかってきたさつきに業とそんな口調で返す。いつもはそこで軽口に発展するのだが、今回ばかりは勝手が違った。なぜかさつきが苛立ちを見せたからだ。
授業中ということもあり小声で話していたのだが、さつきの声が段々と大きくなっていく。
「何それ!分かった風な口聞いちゃってさッ!あんたになんで東城の気持ちが分かるのよ!」
いやいや、まじで勘弁してくれよ。椅子を立ってまで、詰め寄ってくるさつきの体を押しとどめるために肩に手を乗せる。
だが、何を勘違いしたのか近くにいたクラスの奴が「真中が…北大路の胸を掴んでる」いやいやいや!!!どっからどう見ても肩だろ!胸なんて掴んで…。
「変態ッ!!!」
さつきを押さえつけるために俺も立ち上がっていたのだが、咄嗟にそんなことを口走った奴に顔を向けてしまった為にそれを防ぐ事も、避ける事も俺には出来なかった。
さつきの右ストレートという拳を。
「ガフ…」
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「ッツー…まだズキズキする」
「でもさ、ホント見事に赤いよね。拳の痕クッキリ見えるし」
「私のせいで怒られたんだよね?ごめんね真中君…」
放課後。俺は西野と東城の二人と下校中。二人が俺を挟むようにして、右が東城で左が西野だ。これも、もはや定位置となってきている。
さつきに殴られた場所の痛みがまだ消えていない事から、思った以上に強く殴られたという事だと思う。
「東城のせいじゃねぇよ。これはクラスの奴が間違った事をぬかしたから、それに恥ずかしくなったさつきが止むなくやってしまったモンだからな」
これは本当の事。あの後直ぐはさつきも恥ずかしかったからか、『自業自得よ!』なんて言っていたが、帰る際に小さな声で『…さっきはごめん』と顔を赤くしながらも呟いてくれたのだ。
「ま、淳平君がそう言ってるんだし、東城さんももう気にしない気にしない!それより、東城さんに酷い事言った先輩達ホント許せないよ!!あたしがいたら、つかさちゃんパンチ喰らわせてたのにッ!」
シュッシュッと口で言いながら、右に左と拳を突き出す真似をする西野。つかさちゃんパンチて…さつきの踵落としの方が強そうだな。
俺と東城はそんな西野に苦笑で返し、西野はそんな俺達の反応が不満なのか、「何よーあたしのパンチ強いんだよッ!」とむくれてしまう。
「ごめんなさい西野さん。でも、あんまり危ない事はしないでね。真中君も。私のせいで二人が怪我するなんて、嫌だから…」
西野を宥めようとした東城が、再び悲しそうな顔をするから今度は西野が困ってしまったようだ。全く…本当に似てない二人だよな。
「東城も西野も、終わった事なんだからもう気にすんな。じゃないと…小宮山呼ぶぞ?」
『ごめんなさい!!』
……小宮山、お前って二人にどのくらい嫌われてるんだろうな。全く同じタイミングで、頭下げたぞ二人とも。強く生きろよ、小宮山力也…。
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さつきside
「何よ…真中の奴デレデレしちゃってさ!あ、あたしには真中なんて関係ないけど…」
西野さんと東城さんの二人と帰っている真中を、あたしは後ろの方から見ている。本当はこんな事しちゃいけないんだろうけど、二人と一緒に校門を出て行く真中を見たらなんとなく…そう、なんとなくモヤモヤして、気付いたら三人から隠れるようにして付いて来たんだ。
真中…あたしが殴ったとこ摩ってる…やっぱり痛かったんだ。クラスの男子が変な事言うから、恥ずかしくなって目の前にいる真中を殴っちゃった。あたしは真中に怒られても何も言えないのに、真中はあたしを怒りもしないで、逆にごめんって謝って来た。
なんで?どうして?殴ったあたしが悪いのに、なんで何にも悪い事してない真中が謝るの?なんで?ねぇ、なんでよ。
はぁ……何やってんだろ、あたし。こんな事しても、意味ないのに……。それにあの二人と話してる真中は、本当に楽しそう。あたしと話してる時に見せない顔をする真中をこれ以上見たくなくて、三人から目を離す。帰ろ…。
「うーん、まいったなぁ。男と一緒の写真なんて使えねぇもんな…」
帰ろうと思って体を三人と反対側に向けるとそんな声が聞こえた。気になって、声がした方に顔を向けてみたら……高そうなカメラを持った、前髪で顔を半分隠している変な男がそこにいた。しかも、あたしと同じ泉坂高校の制服を着ていることから、同じ学校の男子って事も分かる。
「ん?君も可愛いね。どう?記念に一枚♪」
「……死ね」
機嫌が悪かったのもあるけど、こいつは何だかあのエロダコと同じくらい気持ち悪い感じがしたから、自然とそんな言葉が口から出た。
パシャッ
「うーん♪その顔も良いけど、やっぱり笑った顔が欲しいなぁ」
だけど、こいつにはあたしの言葉は何の意味もなかったみたいで、写真を取られてしまった。……無視しよう。早く帰りたいし。
まだ、何か言っているその気持ち悪い男を無視して真中達とは逆方向にある自分の家に向かって足を進める。はぁ…明日真中に会ったらどうしようかなぁ…。
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その翌日、学校に登校してみるとメガネと三つ編みをしていない東城と西野が俺を見るなり廊下を走って近づいて来た。
廊下を走ると他の奴らの迷惑だぞー。そして、俺が一番迷惑するぞー。そんな俺の願いも虚しく、二人は俺の前で止まり少しだけ前屈みになった。
「おっはよーっ!今日も一日頑張ろうね、淳平君♪」
「真中君おはよう!元気に頑張ろうね」
……それを言うために態々走って来たのか?廊下にいる殆んどの男子から殺気が飛んで来てるんだが…。朝からこれで俺、大丈夫か?
それから二人と別れ、俺は自分の教室である8組に入る。教室に入るまで、無数の殺気が背中に突き刺さって痛い痛い。朝からは勘弁してくれよ、本当に。
はぁ…と溜め息を一つ出して、自分の席に行こうとして気付く。席に行けないという事に。
「聞いたわよ!昨日のあんたの武勇伝ッ!伝統ある泉坂高校女子柔道部を立て直せるのはあんたしかいないわっ!!」
「ううん!その運動神経ならどんなジャンルのスポーツだって完璧にこなせるわ!だから、是非バレー部に!」
「いいえ!あたし達バスケ部にこそ、あなたは必要よ!」
「何言ってるの!囲碁将棋部にこそ必要よ!!」
柔道部、バレー部、バスケ部、囲碁将棋部、etcetc……運動部、文化部の女子の先輩達がさつきの席を取り囲んでいるので俺は席に座る事が出来ない。
と言うより、この熱気…他のクラスの奴ら引きまくりなんだが大丈夫か?勧誘されているさつきに至っては、心ここにあらずって感じでボーっとしている。……黒川先生、早く来てくれ…。
▼ ▼ ▼ ▼
ピピーッと笛の音が校庭に響き渡る。それに続いて「では今から50m走の記録を測る!」という野太い声が続く。今は四時間目、授業は体育。
最初の週だからだろう、体力測定を二時間に分けて行われている。今日は、50m走と100m走、1500m走のタイムを測るらしい。…走ってばっかりだな。
7組から始めるらしく、8組の俺は地面に座って順番を待っている。それにしても暑いな。春だっていうのにこの暑さは異常だろう。そんな事を考えていると、影が差した。
「お前さ、西野つかさと東城綾の二人と仲良いよな。ちょっと話してもいいか?」
顔を上げてみると、そこには前髪で顔が見えない男子がいた。こいつ……誰だ?
「………」
「外村だよ!外村ヒロシ!同じクラスの出席番号14番!!」
おお!そういえば、外村も同じクラスだったな。一週間も同じクラスなのに、俺はこいつを授業中以外見なかったから話せなかったんだが、こいつからコンタクトを取って来るとは…。いや、これ原作でもあったような…。
「お前って人の名前と顔覚えるの苦手だろ?それじゃあ女子にモテないぜ?って、お前の場合あの二人と仲良いから別にいいのか。と、そんな事より、西野つかさと東城綾、二人のスリーサイズ教えてくんない?」
「………」
ストレート過ぎる。というか、そんな事俺に聞いてどうする。知りたかったら当人に直接聞きに行けよ。まぁ、西野にローキック喰らわされて終わりだろうがな。
「…なぁ、聞いてる?スリーサイズだよ、スリーサイズ!お前しかいないんだって。他のどんな奴よりお前が一番あの二人と仲が良いんだからさ!」
しつこく聞いて来るところ悪いが、お前声でか過ぎ。周りの奴らも聞き耳立ててるし、向こうの女子にまで聞こえてるみたいだし…。
「…せめて、何か反応してくれって。話してるの俺だけって結構クるものあるんだぜ?」
「いや、知らねえから何も言えなかっただけ。てか、お前声でか過ぎ」
「………口開いたと思ったら、結構毒舌なのなお前って…」
いや、毒舌も何も本当の事だし。てか、前髪邪魔じゃないのか?漫画だから違和感なかったが、実際にこんな奴近くにいたら話しかけないぞ、絶対。
「まぁ、いいや。てか、知らないなら早く言えって。はぁーみんなからスリーサイズの質問が一番多かったから、その希望に応えたかったのに…まぁ想像で書けばいいか。んー西野のバストはBかな?東城のは…うん、Fだな」
「…一つ質問していいか?」
「ん?何?」
「みんなからの質問って言ってたけど、そのみんなって誰?」
「ネットだよ。ネット!俺自分でホームページ開いててさぁ。『ボクの見つけた美少女♪』ってのがテーマなんだけどな」
…こいつ、通報されたら絶対言い逃れ出来ないで、有罪だな。外村は頼んでもいないのに、ネットアイドルがどうのこうのと熱く語っている。
それに、はいはいと生返事を返しながら順番を待っていると、今度は二人のいる5組と一緒の体育じゃないのが悔しいらしく、手でカメラの形を作って女子の方に向けている。
「今は趣味だけど、将来はそういう芸能プロダクションを設立したいわけよ、俺ってば♪」
「…まぁ、この年で将来設計をきちんとしてるのは凄いと思うぞ」
「そう?サンキュー。それより他の女の子も扱ってんだけどさ、ウチのクラスだと北大路さつき!あの子もかなりの人気だね。ちょっと生意気な表情と以外にセクシーな体つきがいいんだよねぇ〜♪東城に負けず劣らず胸大きいし♪」
小宮山とタメ張れるくらい、ヤバいなこいつ。原作で知っていたが、直に接して初めて分かるキモさだ。二人とさつきに忠告しとくか。小宮山と同じくらいの奴がいるって。
それから外村がさつきが現代のくの一だとか、東城は看護婦だとか、西野はチャイナだとか、などなど色々言っていたが話し半分に聞き流して行く。
順番が来るまで女子の方はどうかと見てみると、女子の方は男子と逆で先に8組が50m走をやるようで、さつきがスタートラインに立っていた。
と、何となく見ていたら…さつきと目が合った。びっくりしたような顔を一瞬浮かべたさつきだが、ニカっと笑みを浮かべ、「真中ぁーあんたもちゃんと走りなさいよッ!」と大声を出した。しかも名指しで。
…はぁ……さすがはさつきだ。予想外の事を簡単にしてくれる。全く、東城、西野、さつきと…いちごのキャラは個性が強過ぎだ。
さつきが俺の返事を待っているようなので、片手を上げて左右に振って返事とした。こんなところで大声を出すなんて、俺には無理だからな。
というか、さっきまで元気に話していた外村が俺の顔を見て「ふーん…」と意味深な視線を送って来るのに気付く。
「何だよ…」
「いやさぁ〜やっぱお前何か持ってるわ。東城と西野だけじゃなく北大路とも仲良いなんて、一年男子全員敵に回しても文句言えないって。ま、俺は黒川先生一筋だから、別にいいけど」
持ってるのは原作知識だけで、他には何も持ってないぞ。まぁ、そんな事は言えないけどな。
「次は8組だ。7組と変わって準備しろー」
と、やっと俺達の番か。腰を上げ7組の奴らと位置を変わる。さて、無理せず走りますかね。
感想の返信ができなくて申し訳ありません。
こちらでは、いちごを更新していくので精一杯で、感想に返信するのが全く出来ておりません。なので、このあとがきで皆様への返信とさせていただきたいと思います。
いちごはナルトの方が詰まってしまったが為に、変わりに書いてみようと思った作品でした。なので、ナルトよりもおろそかにしてしまうのは、本当に申し訳ありませんがある程度そうなのかと思ってください。
しかし、更新が遅くなろうとも、完結だけはしたいと思っていますので、よろしくお願いします!