神々との戦いは一週間続いた。
この邪悪なる龍に負ける可能性はなかった。だが、途中であることに気づいてしまった。それは破壊して何があったのだろう、破壊したところでなにかあるのか、こんなことをしたところで何も変わらない。
とどのつまり、やることなすこと全てにおける虚無感を感じたのだ。
そして生きることに疲れ、死にたいと思ったのだ。
今思えば神々の目からしてみると大層驚愕したことだろう。なぜなら、敵がわざと自分の剣に突き刺さってきたのだから。
「...なっ!」
「ぐっ..はははっ...」
ゴボッと喉の奥から血の塊がこみ上げてきた。
それを地に吐き捨てる前にぐらりと巨体が地に落ち、倒れ込む。
「...何故..何故貴殿は我が武器に突き刺さっているのだ?負けるのは我であったのに。地に伏せているのは我の方だったのに。」
天空神とあろう者が目を見開き唖然としている。その様子に少し笑いがこみ上げてきた。
「...なに、すべて虚しくなっただけのこと。破壊することも、この龍生を歩むのも。なにもかもが嫌になっただけさ。」
間髪入れずに2つめの質問がきた。
「それに君は何故地上世界を破壊してたのかな?」
「プライバシーに関わる事ですので言えません。.....まあ今のは冗談だが、俺の母が凄まじい力を持った神らしい。だから神を集めてみようとおもってね。知らないか?母なる大地神ガイア様。」
そう言うと神々は悩み始めた。
「...知りませんね。」
「凄まじい力を持つ神か...貴殿ほどの者を生む神...むう、わからぬな。」
「僕も色んな女のコと付き合ってきたけど知らないね~。」
知らないということは本当はいないのではないか?
だが、自分の体内から漏れ初めている光の魔力がそれは間違いだと伝えている。
するとだんだん意識が薄れて行くのを感じた。
「あのー、そろそろ死ぬのでわかったら起こしてください。」
「え!?ちょ、ちょっt」
そこで意識が途絶えた。
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...ここが冥界か?暗いな、何も見えない。これならばどっちが上か下か右か左かわからない。なるほど、これなら寝やすそうだ。ではここで永遠の眠りに着くとするか。....うん?なにかが聞こえる。なにを言っているのかはわからない。
「...☆○●▼○☆●...」
「..○▼☆○●▼。」
む、『太古の言葉』は使っていないところを聞くと、比較的新しい種類の言葉なのかもしれない。
「☆○●▼んよ...」
...理解できたのは最後の二文字だけか。それと高い声だ。恐らく雌だろう。..ん、上下左右がわかるようになったか。眠気が酷くなってきたな。とりあえずは先に寝るとしよう。時間は永遠にあるのだから。
ん、起きてしまったか。ならば前に聞こえた声の原因を探るとしようか。目も見えるようになったようだし。またあの声が聞こえた。前よりも鮮明だ。
「▼○ちゃ●、▼○あさんですよ...」
「赤ちゃん、お母さんですよ。」
聞こえた!...これは..人語か?確か地上世界を支配している比較的知能の高い生物だったような。しかし何故冥界で声が聞こえるのだろう?
「明日には産まれるかもね。しかし、なかなか大きな赤ん坊だね。頑張るんだよ!」
「ありがとうございます。」
「アッハッハッハッハ!礼なんかいらないよ!あんたと私の仲じゃないか。」
...赤ん坊...産まれる...ということは、俺は永遠の眠りには着かず、人間に転生してしまったのか!!!??...まあ、今更じたばたしても意味ないか。このまま人間の生を歩むのも悪くはないか。...魔力はどんなものかな。試してみるとしよう。強めかな?弱めかな?
そんな様々な思惑をぶち壊すように確かめた魔力は、生前と同じように想像を遥かに超えるとてつもない強大な光と闇の魔力だった。