ここは魔界。
だがそんなに禍々しいところではない。多少地上世界よりも暗いだけで後はあまり変わりはない。
違うところといえば山は険しく、溶岩の海が多くて、この世界の住民が喧嘩っ早いだけだ。
俺はそんな魔界の神の王であるサタンの子供の邪龍だった。
そう、今日までは...
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「お前わしの子じゃないから、だから魔界から出てけ。」
突拍子もないその言葉を聞いたとき冗談だと思った。
いや、真面目に。これまで三千年生きてきて、ここまで衝撃をうけたのは産まれた時ぐらいだ。
「お前何か天界の神の子らしいんで。最初部下達が何かの卵持ってきたけど、誰の子か分からないからわしが育てたんだわ。黙っててすまね。」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや、なんで!?なんで今言ってみたの!?父さんじゃなくて義父さんって呼ばなくちゃならないの!?しかも魔界から出てけって俺どこで生きていけばいいの!?」
「.....とりあえず落ち着k「落ち着けるか!!」...黙っていたことは悪かった。だが、お前は産まれたときには膨大な量の光と闇の魔力を宿していたから、光だけわしが封印したのだ。だがしかし、もうそろそろ封印が解ける頃だから出ていけと言っているんだ。光の魔力を持つものは魔界には居られない。それはお前も分かっていること。早めに立ち去れよ。」
パニクっている頭にさらに追い討ちをかけられる。
俺が光の魔力を宿している?自分で確かめても闇の魔力しかなかった。何故光と闇という相反しあう属性が?訳が分からない。何故出て行かなければならない?訳が分からない。なにもわからない。ナニモワカラナイ。
怒りはだんだん恐れに変わっていった。
相反しあう属性を宿しているということは、体が砕け散ってしまうのでは?いくら魂さえ消えなければ何回でも再生できるとはいえ、下手すれば魂もいっしょに消し飛んでしまう。それが一番怖かった。魂がなくなってしまえば永遠の眠りに着けず、何度も何度も体が砕け散ってしまうような苦しみをうける。それがたまらなく怖かった。
「....とりあえず魔界から出なければ...」
なにかをしなければそのまま滅びてしまいそうだった。一対の翼をはためかせ、なにも持たずに飛び去った。
「もうこうなれば自棄だ。俺を産んだという神に会いに行ってやる!その前に地上でも滅ぼしてやろう!
そうすれば天界の神も集まってくるだろう!ついでに魔界との次元の狭間を断ち切っておこう。」
地上世界へと移ったのを確認し、自分の最大の魔力を込めたブレスで魔界と地上世界を繋ぐ唯一の次元の狭間を完膚無きまでに破壊した。
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地上世界でも魔界でも天界でも、三指に入るほどの魔力は地上世界に入った瞬間世界の三分の一を破壊した。
その惨状を見て神々が地上世界までやってくるまでにそう時間はかからなかったが、その僅かな間に世界はぼ消し飛んでいた。
「へえ、大地神に太陽神、それに天空神まで。嬉しいね、俺のためにそこまでしてくれるなんて。」
「そりゃあここまで地上世界をズタボロにされると出て行かなければならないじゃん?」
「貴殿がこの災厄の元凶か?魔界の名のある龍とみたが、何故に、何時まで暴れるつもりだ?」
「意味なく、そして死ぬまでだ!!!」
「そうか、ならば殺すまでよ!」
こうして約一万年後も語り継がれている地上世界のかけた、神々との戦いは幕をあけた。