-フエンジム日常記と戦闘記-   作:バルバトスルプスレクス

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第二話です

今日もポケモンの裏事情を少し入れてみました


二幕

 

「バクフーン、火炎放射だ!」

 

 今日で彼はもう十二人目の中堅トレーナーの相手をしている。ジムリーダーの一歩手前で待ち構えているカエンは、相手トレーナーのチャーレムを撃退する。そのポケモンが最後なのか、相手トレーナーはチャーレムをモンスターボールに戻すと仕掛けだらけのジム内を出入口へと走り出す。

 先日アスナに説教をしてから数日。今月も残り一週間となり、その間ジムリーダーに到着したトレーナーはいない。今日もいつも以上にジムトレーナー達は奮起していた。後一回でもアスナが負けでもしたら、彼らは路頭に迷うハメになってしまう。何としても、何としてもそれだけは避けたいのだ。

 

「いいかお前ら! 何人足りともジムリーダーに近付けんじゃねぇーぞ!!」

 

『はい!』

 

「アスナが負けることだけを阻止しろ、出来るだけ手持ちのポケモン瀕死にすんな、控えも総動員だ! 何とかして今月を乗り切る。いいな!!」

 

『はいッ!!』

 

 いつも以上に覇気があるフエンジム。その中でジムリーダーではなく筆頭トレーナーがトレーナー達の士気を高ぶらせていた。

 ポケモンジムの営業は午後5時までとなっており、現在は午前11時に差し掛かったところ。交代で食事をとるトレーナーがいる中、カエンは簡易食糧を懐から取り出してそれを食べていた。それはアスナも同じことだ。筆頭とリーダーは営業時間内は極力ジムに居なければならず、ジムリーダーの代理では基本的にバッジのやり取りは例外を除いて出来ない。更に筆頭は一般ジムトレーナーを制したうえでジムリーダーと対峙できるかどうかの資格の有無を判断する役割がある。もっとも、筆頭トレーナーに勝たなければ意味がない。

 それから営業終了までに、ジムリーダーに到達した者はいなかった。

 営業終了後には反省会をして解散。ジムトレーナーが帰路につく中、ミニスカートから説明を受けていた新人トレーナーのじゅくがえりの少年がカエンに近づいて今日まで思った疑問をぶつけていた。

 

「あ、あのカエンさん、前々からちょっと疑問があったんですけど…いいですか?」

 

「ああ。別にかまわん」

 

「じゃあ、何でカエンさんがジムリーダーじゃないんですか? 正直言って、アスナさんより強いですよね、何でですか?」

 

「ん? あー、そういやぁ皆には言ってなかったな。ま、何て言うか……さ、約束なんだよ。アスナとのさ」

 

「約束ですか?」

 

「ああ。俺とアイツがガキの頃立てた目標が、アスナがジムリーダーで俺がそのサポートってな感じでな。だからアスナはこのホウエンでジムリーダーの修業を積んで、俺は他の地方を旅して実力を付けたかったんだよ。丁度カロスリーグを終えた頃に、あいつがジムリーダーになった知らせを聞いて、ホウエンに戻って来たって事だ」

 

「カエンさんはアスナさんを大切に思っているんですか?」

 

「でなきゃフエンジムのジムリーダーは今頃俺になってんだろ? 明日もあるんだ、そろそろ帰れ」

 

「はい。お疲れ様でした!」

 

 じゅくがえりの少年がフエンジムを出ると、カエンは一人ジムの電源を落とす前に懐から手帳を取り出してペンを走らせていた。それは今日のフエンジムの戦績であった。一般トレーナーからカエン含めアスナまで記されており、その日の勝率を名前の横に記していた。

 それが終わると今度は設備の電源を落とし、厳重に戸締りをして家路についた。無人となったフエンジムはポケモンジム御用達の警備会社によって監視されている。空き巣も簡単に御用とされるシステムで、ホウエン地方ポケモン協会本部も利用している。

 カエンの実家は、ジムから歩いて十分程の距離にある。出迎えてくれたのはエスパータイプのポケモンサーナイトとエスパーと格闘のエルレイドの二匹だ。旅の途中で捕まえたオスとメスのキルリア。それらが紆余曲折あってカエンがフエンに戻って来た時からは家の掃除などを任せている。

 

『お疲れ様ですカエン。今日はどうでしたか?』

 

 エルレイドがテレパシーの類でカエンを出迎える。奥の方ではサーナイトが調理場でフライパンを振るっていた。

 

「何とかなった方だった。あと一週間とはいえ、気は緩めらんねぇ!!」

 

『下手したら無職ですもんね。こういう時の受け皿が無いのはトレーナーとしてはきついモノです』

 

 そう、ポケモントレーナーが挫折した場合、その受け皿が世間には無い。それが現在深刻な問題として各地方ポケモン協会でも取り上げられている。しかしながら、やはり解決に至ってないのが現状である。

 カエンは自分がもしそうなった場合の事を考えると、背筋は凍るように冷たく感じ、軽い眩暈に襲われた。

 

「……マジでそんな未来見たかねぇよ。つか今日はもう飯食って風呂入って寝る、早い内に疲れとらねぇといつ負けっかも解らん」

 

『わかりました、晩ご飯の間にお風呂と床の用意を済ませておきますね』

 

「頼む」

 

 エルレイドとの会話を終え、カエンは食卓に着き、サーナイトお手製の晩飯を待ち始めた。

 手持ちのポケモンたちをモンスターボールから呼び出すと、カエンはそれぞれにブレンドしたポケモンフーズを器に盛って差し出した。リザードン、バクフーン、バシャーモ、ゴウカザル、エンブオー、マフォクシーの6体はポケモンフーズの乗った自分の器をカエンから受け取り、主人よりも先に食らいついた。

 少しして、餡かけ野菜チャーハンを持ったサーナイトがカエンの前に置いた。

 

『出来ましたわカエン。今日もお疲れ様ですわね、冷めないうちに召し上がってください』

 

「ああ、頂きます」

 

 リザードン達が半分ほど食している頃に夕食にありつけたカエンは、明日の事だけを考えていた。

 

 

続く




いつの日か、ホウエンジムの筆頭トレーナー達を出そうと思います。主にジムリーダーに対する愚痴やのろけなどを

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