-フエンジム日常記と戦闘記-   作:バルバトスルプスレクス

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フォレストページではBW2小説上げているのですが、懲りずにここにてルビサファリメイク記念で上げました。

実を言うと自分はポケモントレーナーの中ではアスナさんが好みでして、これを上げる事となりました。


一幕

 

 ホウエン地方。その中でも活火山の付近にあるフエンタウンは地方の中でも温泉地としても有名であり、ポケモンセンターにも温泉があるほどだ。巷のアンケートでは『ホウエン住みたい場所ランキング』にてTOP3に入るほど有名でもあり人気である。

 ここフエンにはポケモンリーグへの関門であるポケモンジムがあった。炎タイプを主軸とし、トレーナーの一人一人が日々切磋琢磨している中、フエンジムのジムリーダーは危機的状況に陥っていた。

 灼熱色の髪を纏め、小さな灯にも似たかわいらしげな赤い瞳と、本人曰く邪魔だと言っている豊満な胸を持った彼女の名はアスナ。黒い生地に焔のマークとデニムのへそ出しの格好をした彼女は正座をし、目の前の男を上目づかいに見ていた。

 

「さて、何で正座させられているのでしょーか?」

 

 男は腕を組みながらアスナを見下ろして威圧感を出しながら問う。

 黒い髪に白メッシュのアホ毛、その髪から覗く切れ長の目には黒い瞳。赤いTシャツに迷彩色のカーゴパンツの格好をしているのはジムトレーナー筆頭であり、団体戦での副将に値する男の名はカエンである。その鋭い眼光に曝されて涙目になってきたアスナは、オドオドしながら答える。

 

「…見当がつきませ、いひゃっ! い、痛いよかーくん!」

 

 アスナの答えは最後まで出ずにカエンのでこぴんによって遮られた。カエン自身手加減を加えたはずが、受けた本人からしたらポケモンバトルにおける『こうかは ばつぐんだ!』状態に近いダメージだ。

 尚も憐れなジムリーダーを見下ろし続けているカエンはアスナに忠告を入れて正解を待つ。

 

「下手な言い訳は止めろよな?」

 

「今月間で三連敗です」

 

「あぁそうだな、三連敗だな。後一回負けてみろ、お前はジムリーダーの資格を剥奪されジムは営業停止、その間俺らジムトレーナー達は路頭に迷うか新しいジムリーダーになるべくポケモン協会ホウエン支部にジムリーダー試験を受けるべく勉強をするかだが………暗い未来を想像するのは止そう」

 

 ジムリーダーはポケモンリーグに進むトレーナー達をふるいに掛ける役割を持つ者であり、リーグに行くための技量を持ち、更にジムリーダーに勝利したトレーナーにはそのジムのバッジを差し出さなければならない。そんなジムリーダーのアスナは今月の間に三連敗を記している。協会規定によれば『一ヶ月の間ジムリーダーが四連敗した場合資格を剥奪。次のジムリーダーが決まるまで営業停止とする』と決められている。

 つまりどういうことかと言うと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フエンジムは現在営業停止処分間際だという状況にいるのである。

 

「ネットの掲示板でよ、フエンジムの評判見ちまったんだよ……『町は上々ジムはサゲサゲ』とか『ホウエンで一番良い町、一番弱いジム』とかあるぞ」

 

「面目ありません」

 

「謝る前に、やることあるだろ?」

 

「あ、えっと……温泉でぶべらっ! い、痛いよかーくん! 協会の教本で叩かないでよ、いつの日か快感に変わっちゃ…あ、すみませんなんでもないです」

 

「よろしい、ならば………」

 

 カエンがベルトに付けていたモンスターボールを六つ取り、自身の友を呼び出した。

 一体は翼を持ち、一体は炎の襟巻きを持ち、一体は発達した脚を持ち、一体は燃え盛る炎を頭部で燃やし、一体は鼻から炎交じりの荒い鼻息を漏らし、一体は樹の枝のようなモノを手に持っていた。そのポケモン達はカエンがフエンジムのトレーナーなる前の少年時代、各地方を旅しているときに仲間になったポケモン達である。

 カントー地方でおやに乱数調整の為に捨てられたヒトカゲはカエンの炎の様なオーラを感じてリザードンに進化。

 ジョウト地方で野生で弱っていた所をカエンに保護され彼の力になりたいとバクフーンに進化。

 ここホウエンでカエンの四歳の誕生日に卵からかえったアチャモは時に笑い、喧嘩をし、泣き合って共に成長するかのようにバシャーモに進化。

 シンオウ地方でナナカマド博士から受け取った卵からかえったヒコザルは、速さと拳を追求しゴウカザルに進化。

 イッシュ地方でプラズマ団に捕まっていたポカブは元のおやに拒まれるがカエンが受け入れ、エンブオーに進化。

 カロス地方で野生だったフォッコはカエンの仲間(パートナー)達と共に切磋琢磨して進化。

 カエンの炎に魅せられた彼のポケモン達はカエンと同じ様にアスナを見下ろし、当のトレーナーは口元を釣り上げて、自分で遮っていた言葉を紡いだ。

 

「―――ポケモンバトルで特訓だ」

 

 この様子を遠巻きで見ていたミニスカートは、新人のトレーナーにそれを見せていた。

 

「もう一度言うけど、あの女の人がジムリーダーね。で、その人に説教しているのは、幼馴染みの副将トレーナーね」

 

「えっと…じ、じゃあその副将トレーナーさんの炎タイプのポケモン達は…何なんですか? バシャーモ以外見たことも無いですよ」

 

「バシャーモはその人の一番古いポケモンで、そのほかは昔色んな地方を旅して仲間になったポケモンみたいよ。詳しい事は知らないけど、フエンタウン(ここ)に戻る前は他の地方のリーグに出てたらしいよ」

 

 ミニスカートの言っていた事はジムトレーナー達が知っている事だ。

 十歳で『ポケモン取扱免許』が発行でき、仲間のポケモンと旅に出るのがこの世界の常である。勿論カエンもその一人。地元を離れ、アチャモと共に旅を始めたのだ。最初はホウエンではなくジョウト、カントー、シンオウの順に北上し、海を渡ってイッシュやカロスの地に足を踏んだ。最後にホウエンの地に足を踏み入れたのは、カエン以外誰も知らない。他の地方で先に経験を付けたかったのか、あるいはまだホウエンを旅する時ではないのか、真相はカエンしか知らないのだろう。

 今日はまだ挑戦者の姿が見えない。しかし来ないとは限られない。正座させられたジムリーダーの姿を見て、いつも以上に気を引き締めるジムトレーナー達は、今日もポケモンバトルに余念がなかった。

 

続く


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