こればっかりの気もするけれど(^^;;;。
次の日、曜日にすれば木曜日。いつものように出勤準備をして、やっぱり頭をぶつけて、役場に出勤する。柚樹とも一緒である。期待通り(?)いっぱい付せんが貼ってあった。水穂さんも出勤しているので挨拶して、付せんを少しずつ片付けて、午後から会議に出てあっという間に終業のチャイムが鳴る。昨日休んだのでちょっと、もうちょっとと思いながら仕事していると午後7時過ぎだった。うわ、神社の剣術練習に遅れる。もちろん、周りには誰もいない。
家に帰ってご飯食べて、一樹の擬態したクルマに乗って、柾木神社へ。ちょっと遅れてしまった。すでに天地君は勝仁さんと打ち合っている。さすがに美しいと言えるレベルであった。ひとしきり打ち合うのを待って声をかける。
「すみません、遅くなりました。」
「お仕事お疲れ様。それじゃあ、剣士とやってください。」
ここしばらく課題になっている動きを復習しながら、剣士君と練習する。剣士君は本当に無駄がない動きである。しかもあの体躯。パワーはともかく切れが良く速い。
「ありがとうございました。」
気付くと午後9時を過ぎている。
「言い忘れてましたけど、遥照様、天地君、剣士君、昨日はごちそうさまでした。本当に極上の鶏鍋でした。」
「田本さん、そんな他人行儀な。良いんですよ。みんな、たまたまそろっていたし。」
また何か買ってこようと思う。
「そういえば西南君達は、まだ休暇なのかな?」
「もう、二、三日いるみたいなこと言ってましたけどね。」
「あらぁ、心配してくれるのぉ。」
この気配は・・・。うぬ、鷲羽ちゃんではなさそうだ。背筋をつつ~~っと人差し指で撫でられる。尋常でない悪寒が走る。
「アイリさん、田本さんが冷や汗流してますよ!」
天地君が見かねて声をかけてくれる。柾木・アイリ・樹雷さんか。なんで鷲羽ちゃんと微妙に似た気配なんだろう。
「ええっと、勝仁さんが遥照様で、その奥様だから、天地君のお婆さま??」
ゆっくり振り返りながら、聞いてみる。
「うふ、こんなに若くて綺麗な女がお婆ちゃんなわけないっしょ~。」
きゅっきゅと音でもしそうな締まってグラマラスなからだである。人差し指でくいっとあごを持ち上げられる。
「瀬戸様があんなに上機嫌だったのがわかるわ~~。天地君も良いけど、剣士君も良いわって思っていたら、こんなダークホースが出てくるとは、ねぇ・・・。」
剣士君は、気の毒そうな表情を浮かべて、音を出さないように後ろに下がろうとしているが右手でがしっと襟首を掴まれて豊満な胸に顔を押しつけられている。天地君と遥照様は仲良くお茶セットを出してお茶をすすっている。おおい、助けてくれよ~~。
あ、そうだ。自分のたよりない記憶よりも天木日亜さんの記憶の方が面白いかもしれない。慌てずゆっくり思い出してみる。・・・・・・あかん、この人も真面目な人であんまり遊び人ではない・・・。
「汗かいちゃって、汗臭いですから・・・」
「あらん、男の汗の匂いもそそるわん。」
空いている手で剣士君の背中に文字を書いて、一緒に逃げるぞ、せ~のっで後ろにと通信。
息を合わせて、二人して後ろに跳ぶ。そのまま振り返らずに走り出す。
「くっっ、逃がさないわよっ。」
「だああああ~~~。怖いよ~。」
「アイリさん、いつもは天地兄ちゃんと遊んでるんですけどね~。」
ちょっと後ろを見ると、ほとんどヤマンバ状態で追ってきている。また新たな妖怪伝説の誕生かも知れない。ほとんどアニメで見たル○ンのように山のなかを走り回っていた。柚樹が気を利かせて、でかい銀毛の妖狐に変化して威嚇するが頭を踏んづけられて踏み台にされている。よ、よしプランその2だ。
「剣士君、二手に分かれて船穂の前に集合だ!。」
「わかった、田本さん!」
枝を飛び、地を駆ける。何か気がつくと忍者だよなとか思う。うわ、アイリさんこっちに来ている。目まで光っているぞ、おい。ぐるっと回って、船穂の樹が見えるところに来た。そのまま境内に走り込む。すでに剣士君は船穂前にいた。二人して叫ぶ。
「やっちゃえ!。船穂!」
船穂の樹から例のもっふもふの子犬の群れがわらわらと走り出てくる。これで止まるはず・・・・・・止まらない!。
「アイリさん、目が攻撃色に染まっている。もう子犬も効かない!」
どこかで聞いた台詞だが、凄く身の危険を感じる。よし、両手で領域を作って、自分たちの前に楕円形の空間障壁を作る。それをアイリさんの背後に接続した。何か発砲されれば背後から自分の発砲したモノに襲われるように空間を接続する。なんと、目から怪光線!空間障壁に当たったビームは間髪入れず、アイリさんの背後からアイリさんを貫く。
「ぐぎゃあああ・・・×○□%」
ビームが胸を貫き、身体が燃え始めその場に倒れる。そして、表面から出てきたのはおよそ人間とは思えない金属製の骨格フレームだった。
「田本殿、みんな大丈夫かい!さっき戦闘用アンドロイドの反応が出たんだ、けど・・・大丈夫のようだったねぇ。」
鷲羽ちゃんが血相変えて転送されてくる。柾木・アイリさんもいっしょである。気がつくと左右に天地君と遥照さんもライトセーバーのようなモノを構えて立っていた。
「むちゃくちゃ怖かったんですけどぉ。」
へたへたっとその場に座り込んでしまった。あたしゃ、ふつーの地球人だいっ。
火が収まったその戦闘用アンドロイドを調べている鷲羽ちゃんと柾木・アイリさん。
「へええ、背後からビームが貫いてるけど、光應翼じゃこうはいかないねぇ・・・。」
「うむ、光應翼を張る準備はしていたのじゃが、その一瞬前に背後から貫かれておったの。」
「鷲羽様。しかもこのビームは減衰していませんわ。」
「反射したのでもない、か。」
ふたりして、にた~りとこちらを見る。さっきと状況は変わらないような気がしてきた。
「さあ、証拠は挙がってんだい!、吐いてもらおうかい」
「・・・ええとぉ、空間障壁を作って、そのままそのアンドロイドさんの背後に空間をつなげたんですよ・・・。」
ほら、って障壁前に回って手を突っ込むとさっきのアンドロイドが立っていたところに僕の手が出てにぎにぎしている。その手を抜いて、空間障壁は両方とも消しておく。
「いよいよ人間離れしてきたねぇ、田本殿も・・・。」
「鷲羽様に言われたくないと思いますわ。」
ごんっと鈍い音がしたかと思うと、アイリさんが頭を抱えてうずくまっている。パンツが見えてるんですけど・・・。そして瞬時に浮かび上がるでかいバッテン印の絆創膏。こっちの方が不思議に見えるけどな。
「このアンドロイドを長距離転送してきたのは、どうもしつこく残っている某海賊のようでね、今西南殿たちがスクランブルかけて追いかけてるよ。もっとも、わたしのシールドを破って転送出来たのはこのアンドロイド一体だったようだけど。」
「カズキ助けて!」
突然、一樹の悲鳴が聞こえた。確かクルマを駐めたのは柾木家前。同時に跳ぶ。
柾木神社の石段をほとんど無視して跳び、クルマの前に降りる。直後に鷲羽ちゃんたちが転送されてきた。クルマが泡を吹きながら溶けている。パンパンとまるで悲鳴のようにタイヤのパンクする音が聞こえてくる。
「鷲羽ちゃん!、一樹を分離出来ますか?」
もしも、一樹までがやられていたら・・・。このとき僕は、足下が崩れて暗闇に落下するような喪失感を感じていた。
「わかった、亜空間ドックへ転送するよ。」
「船穂、光應翼でまず一樹を包め。」
遥照様がマスターキー越しに怒鳴っている。ふわりと溶けかかったクルマは浮かび上がり、
光應翼で包み込まれる。間一髪、溶けたモノが光應翼の下に溜まる。土地には見た限り変なモノは落ちていない。
あわてて、柾木家の階段下の鷲羽ちゃん研究室へ。クルマはほとんど原型がなくなっていた。鷲羽ちゃんの操作で何とか一樹のコアユニット分離が間に合う。しかし、見た目それなりにダメージがあるようだ。
「ナノマシン洗浄を行うから、みんな下がって。」
一樹のコアユニットはゆっくりと亜空間ドックの水面下に降りていく。
「一樹大丈夫か?」
「うん、なんとか。変なナノマシンを吹きかけられて・・・。コアユニットの外装のダメージがひどい。このままでは超空間航行は無理だよ。」
「溶けたクルマの残骸は、こちらで調べさせてもらうよ。」
「ナノマシンを吹きかけたのは、あのアンドロイドかな?」
「違うよ、そこにいる髪が緑の女の人に偽装している人。」
全員が、付いてきていたアイリさんを見る。自分を指さし、「え、わたし?」と言っている。鷲羽ちゃんがいそいでGP理事長あてに連絡を入れる。
「アイリ殿、いまGP本部にいるのかい?」
「ええ、昨日遅くに帰ってきて、わたしはずっとここで仕事していましたけれど・・・。」
眼鏡かけたアイリさんが不思議そうに言う。傍らで立っていた、恰幅の良い年配の女性もそうだという。
「平田兼光ご夫婦がそちらにいらっしゃると聞いて、慌ててアイリ様そちらに伺ったでしょ?でも急に新超空間航路もできたので決裁書類がこんなに・・・。昨日遅くに帰ってきてもらいましたわ。」
大きな机に山積みの書類。ほとんどアイリさん書類に埋もれている。どこもいっしょだなぁ。ってことはこの人は?・・・。見るとすでに光應翼に包み込まれて拘束されていた。次の瞬間、自爆してしまった。光應翼のおかげで他に被害は及んでいない。その包み込んだ光應翼のまま念を入れて鷲羽ちゃんの研究フィールドで密閉して、そこで光應翼を解く。
水穂さんも慌てて研究室に入ってきた。